託宣が下りました。

瑞原チヒロ

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番外編R18

出立前――アルテナの場合 1 ★

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 騎士と結婚してから、三日が経とうとしています。
 思っていた以上に平和な毎日でした。エリシャヴェーラ様から頂いたままの家畜の世話が大変だったり、騎士がときどき変なところへわたくしを連れていったり――何でも彼の行きつけの酒場――濃い人物のたまり場――と大変なこともありましたが、幸福な日々です。
 わたくしは相変わらず料理の一部を担当し、騎士の胃袋を掴む努力をしています。修道院で慣れてしまった薄い味付けも、そろそろ修正できているはず。健康のためには薄味が――と思っていたのですが、騎士くらいよく動いて汗をかく人には、塩分は必要です。
 新婚なのでアレス様たちも遠慮してくださるのですが、ときどき魔物討伐の依頼が入ります。そんなときにはいっそう、塩分をしっかりとらなければ――

 汗をかく……
 それを考えて、わたくしは顔が熱くなるのを感じました。
 ――わたくしたちは結婚してからこっち、毎晩『汗をかく』行為をしています。
 し、新婚なのですから当然ですが、まだまだ慣れません。
 もっと慣れて、騎士に想いを返したいと思うのですが――
 彼に愛撫されると、思考能力が全部壊れてしまって。もう何も考えられなくなってしまうのです。



 その日の夜――
 騎士はわたくしの部屋にやってきました。
 いつもなら騎士の部屋で寝るのですが、今夜はどうやらこちらがいいようです。
「だってわざわざ二人で寝られるサイズのベッドを入れたんだぞ? 使わないと損だろう」
 それが彼の言い分のようですが……無性に恥ずかしく思えるのはなぜですか。

 彼は待ちきれないというように先にベッドに飛び込みました。そして、わたくしに向かって両手を広げました。まるで腕に飛び込んでこいとでも言いたげです。
 わたくしはあまりに恥ずかしくて、こっそりとベッドの端に腰かけました。
「なんで来ないんだ」
 不満げな声。そちらを見るのも恥ずかしい。だって彼は今、冬用の厚手のガウン一枚はおったきりの姿なのです。
 しかも彼はまともに服を着る人ではありませんから、胸元がはだけています。部屋に暖炉がなければ風邪を引くこと必定ひつじょう――
 ……そう言えばこの人は病気をしたことがなかったのでしたか。ということは、風邪のほうが逃げていくのでしょう。
 黙ってベッドの端に腰かけていると、急に後ろから抱き寄せられました。
「こっちを見てくれないと寂しいだろう、アルテナ」
 むすっとむくれたような彼。
 耳元に彼の呼吸を感じました。それだけで、わたくしの鼓動は高鳴りました。
「今夜も仲良くしないとな。あと四日の期限つきなのだから」
 彼は弾む声でそう言いました。
 そう、あと四日――
 彼との新婚生活は、一週間で終わりを告げます。それは結婚する前にはもう、決まっていた『期限』でした。
「ヴァイス様」
 たまらず彼のほうを向きました。
 唇が重なりました。優しい、なだめるようなキス。ついばむように、わたくしの唇を愛撫して。
「大丈夫だ。俺は死なない」
 至近距離でそう言ってから、今度は深いキス――
 舌を絡め合いました。ときどきちゅっと舌を吸われると、何とも言いがたい痺れがわたくしの脳の片隅に走ります。
「ん……はぁ……」
 首筋に彼の唇が這いました。
 彼はわたくしの夜着の前を少し開け、何度も何度もあちこちを吸い上げました。
 赤い花の咲き散る胸元――
 やがて彼はわたくしの腰紐を解き、完全に前部をあらわにします。胸が彼の目にさらされ、わたくしはとっさに胸元を両腕で隠しました。小さくたって恥ずかしいのです!
「隠すのはなしだ、アルテナ。俺はあなたのその胸を愛したい」
 彼は優しくわたくしの腕をどけます。
 そう言われてしまうと……抵抗なんてできません。
 微妙すぎるふくらみを眼前にして、騎士は嬉しそうに笑いました。
「あなたの隠したかった場所を俺は見られる。こんな嬉しいことがあるか?」
「………」
 彼の大きなてのひらがわたくしの小さな膨らみを包み込む。
 わたくしは、か細い声で言いました。
「……あ、あなたにしか、絶対見せませんから……」
「―――」
 騎士は驚いた目でわたくしを見て――
 それからにやりと笑いました。
「それはつまり、ここは俺の好きにしていいってことだな?」
「! そんなことは言ってな――!」
 聞く耳もたず、騎士は胸の頂にむしゃぶりつきます。初夜の頃から、彼はここをしゃぶるのが好きになってしまったようです。毎回必ずかぶりついては、舌先でいいように転がします。
 そうされるとわたくしの体が熱くなるのを知っている上で。
 てのひらでかすかなふくらみを撫でながら、舌を出してれろれろと、わたくしに見せつけるようにとがりを舐める彼――
 そしてそうされるたびに、固さを増すわたくしのそれ――
 下腹の奥がきゅんきゅんと啼いていました。わたくしは感じやすいと、騎士は何度も言います。わたくし自身もそう思います――彼に何をされても、内ももの間からあられもない蜜があふれてきてしまう。
「あなたの大事な胸だ。俺も大事にするぞ」
 そんなことを言いながら、彼はてのひらで乳房を包みながら、指先で両の頂をつまんでこねました。
「あ……ん」
 胸がじんじんします。わたくしにもちゃんと胸があったんだと安心する瞬間です――ではなくて、わたくしの女としての芯がうずいて何かを主張し始めます。
 彼は解いたわたくしの夜着を脱がしながら、ゆっくりとお腹辺りに唇を這わせました。
 おへその周りを舐められると、くすぐったい。彼のざらざらした舌の感触。熱い熱の感触。
 やがて――彼はお腹にキスを繰り返しながら、手だけを下に下ろしました。
 内ももに這う右手。それだけで、わたくしの芯がきゅうと締まります。まだ三日目なのにこんなに早く反応するなんて、わたくしの体は本当にいやらしくできているのか。
 わたくしが落ち込んだ顔をしているのを、騎士は敏感に気づいたようでした。
「どうした?」
「……わたくしがいやらしい女で、いいのですか……?」
 彼が知っているのは、自分で言うのも何ですが割と真面目なわたくしのはず。それが夜にはこんなにみだれる女になるなんて。
 騎士はわたくしの笑って、わたくしの頬を撫でました。
「俺しかしらないあなたがいるなんて、大歓迎だぞ?」
「ヴァイス様――」
「気持ちいいなら乱れればいい。そのほうが、俺は嬉しい」
 彼の指先が下着に触れました。彼は下着をそのままあっさりと脱がしてしまいました。
 そして指を舐めて唾液をまぶすと、ゆっくりと秘裂にあてがいます。
「――ここが好きだろう? いいんだぞ、それで」
「ああっ!」
 わたくしの体に電流が走りました。
 恥ずかしい割れ目をなぞられて、体が無条件に悦んでいるのです。快楽が手足の指まで走り、痙攣(けいれん)したように震えます。
 中からあふれだす蜜液――そうすると彼の指の動きはなおさらスムーズになり、彼は何度もそこを擦りました。
 花びらのようになったその場所を丁寧になぞり、くるりと円を描いて。
「ああ……ああっ、ああ――」
「アルテナ……もっと声を出していいぞ」
「ヴァイス様。ああっ!」
 とうとう一番敏感な花芯を撫で上げられて、わたくしは一際高い声を出してしまいました。
 恥ずかしい。声を出せば羞恥で体が熱くなります。でも――彼はそのほうが喜ぶ。そのことは、前日までの行為で分かっていました。
「は、あ……っ、ああ、ああ、ああ――」
 ぬめった指先がつぼみを何度もこねまわす。くにくにと指先を器用に曲げて、騎士はわたくしのそこを翻弄します。
 次には中指を秘裂の中に差し入れ――ゆっくり抜き差ししながら、親指では絶えず膨らんだ花芯をいじる。
 そんなことをされては下半身がおかしくなってしまう。ああ、腰が熱い。熱い――
 やがて彼は体を下まで移動させ、わたくしの両足を大きく開かせて、中央部に顔を埋めました。
 れろりとひと舐め。それから悪戯な目でわたくしを見上げ、
「すっかりとろけてる……ひくひくして、舐められるのを待ってるみたいだ」
「いやっ!」
 わたくしは膝を閉じようとしました。もちろん叶うはずもありません。
 彼はことさらゆっくりと顔を埋めました。そして、舌を突き出しました。
 彼の舌が、わたくしの中を浸食するのが分かりました。
 ざらついた感触で、わたくしの濡れきった肉壁をなぞるのです。濡れた蜜をまぶしつけながらひだをなぶる舌。奥まで差し込まれる熱さ。
 犯されている感触――
 その感覚はどんどんと体中に広がり、まるで体全体を彼の舌で犯されているかのような気分になりました。もちろん――体は悦んでいるのです。もっと、隅から隅まで犯してほしいと。
 彼の舌は深く浅く、何度もわたくしの中を往復しました。
 ときどき、蜜をすする音がします。そのぴちゃぴちゃとした音が、わたくしの情感を煽る。羞恥を煽る。
 悦びを煽る。
「おいしいな、あなたの蜜は」
 顔を上げて、彼はそんなことを言いました。
 おいしいはず……ないじゃないですか。わたくしはそう思います。でも……
 でも、嬉しい。
 下腹の奥がきゅうと啼いて、彼の言葉に応えている。
 早く、あなたの雄々しいもので中を満たして。そう叫んでいる。

(――そんなの、だめ)

 わたくしは体を起こしました。
「アルテナ?」
 そして、ふしぎそうにする彼にがばっと組み付きました。
 彼は湯上がりのガウン一枚です。そしてたぶん――
 思った通り、ガウンを開けばそこに猛々しいものが隠されることなく見えていました。
(本で学んだこと、ちゃんと実行しなくちゃ)
 ――愛し合うためには、一方的ではいけない。わたくしはマリアンヌさんたちにお借りした本でそう学んでいました。
 だから――
 まだ見るのも恥ずかしい彼の雄に、そっと手を当てて。
「あの、わたくしまだよく分かりませんから。き、気持ちのいいところをちゃんと教えてくださいね?」
 そう言って、彼のものを手で擦り始めました。
「アルテナ――」
 彼が感極まった声を出します。今までわたくしのほうから彼を愛撫したことなどなかったのです。
 わたくしは彼のガウンを脱がして、あらわになった広い胸に口づけをしました。
 ぺろりと、彼の肌を――傷痕を舐めました。
 舐めたら傷が治るわけではない。それでもわたくしは熱心に、たくさんある彼の傷痕に口づけます。
 下では手をゆっくり動かしながら、彼の戦いの歴史を愛撫してゆきます。
「アルテナ」
 彼は優しくわたくしの頭を撫でてくれました。「ありがとう」と、囁く声は穏やかに。
 たぶん彼はそれだけで満足したのでしょう。でも――
 わたくしはこくりと喉を鳴らしました。
 そうして――顔を、さらに下へと下げました。
 え、と彼のらしくない声が聞こえました。そう、きっとこれは彼にとっても予想外のこと――
 わたくしは。
 彼の、屹然きつぜんたる雄に、唇を寄せて。
 ちゅっ……
 口づけを、しました。
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