命を詠う華

YUE

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「さて、」
巫女は再び立ち上がり、
「恩人への振る舞いが保存食だけでは味気なかろう。湯が沸くまでの合間に、魚でも獲ってやろう」
川辺へ歩いていく。
「へ?魚って釣竿か網がないと獲れないんじゃ?」
男は首を傾げる?
「まあ、見ておれ」
川辺に立った巫女は、おもむろに帯をほどき始めた。
「な、なななな、何をしてるんですか!?」
突然の出来事に、男の方が狼狽える。
「川に入るのじゃ、厚手の上衣や袴は濡れれば乾きにくかろう?」
巫女は慌てる様子もなく、上衣と袴を脱ぎ、軽く畳んで水辺から少し離して置く。
襦袢(じゅばん)(肌着の1つ)も脱ぎ終え、胸元もあらわに、もっこ褌(この時代の女性用下着の1つ)だけの姿になる。
火傷の跡は左半身に集中しており、首筋から胸元の中心を通り、腹部を迂回するように脇腹に向かい、それから太股に伸び、膝下辺りまで続いた。
ゆえに、乳房の形も大きさも左右で異なっている。
左腕と背中は一面に火傷の跡がある。
だが、巫女の身体にはまだ特筆することがあった。
背中は全体に、正面は、へそを中心に腹部に円を描くように、真言や五芒星、太極図などが刺青されている。
男は言葉を失いながらも、いろんな意味で目が離せないでいた。
「ん?」
その視線に巫女は気付き、平然と、
「この身体はどうやら、ややこ(赤子)の時に焼けたらしい」
身体を隠すことなく言ってのける。
「らしい?」
男が聞き返すと、
「両親はその時に死んだようじゃが、ややこの時のことなど覚えておるものかよ。物心ついた時には既にこの身体よ」
巫女は自嘲気味に笑う。
「儂はその時、偶然通り掛かった術士に助けられ、そのまま社(やしろ)で育った。術も技も、他の修行者と共に習ろうた。お陰で、今では妖退治が生業(なりわい)じゃよ」
巫女は傷だらけの右腕を眺めながら独白する。
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