命を詠う華

YUE

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「ああ、いや、だからって、その・・・」
男はようやく視線を泳がせ、
「いきなり男の前で脱ぐのは、どうかと・・・・」
そわそわしながら言い淀む。
そんな男を見て、巫女は笑いだした。
「この様な身体で、劣情を催す男などおりはせぬよ」
巫女は暫く笑い、一息吐いて、
「賊の一団を壊滅させる時、儂は町娘に変装し、幾度となくわざと拐われた。その先々で何度か他の娘同様に剥かれたりもした。じゃがな、この身を見た者は儂に触れることなく、即座に捨てよる。全員のう。この身体は悪党ですら持て余す」
記憶を手繰る。
「この乳房とて、これ程に歪。我が身ながら滑稽よなあ」
胸元に手をあてがい、巫女は自嘲する。
「そんなことない!」
巫女の言葉に、男は声を荒げた。
「巫女様の身体は、巫女様の心のように、綺麗だ!」
巫女は面食らう。
が、直ぐに、
「お主の知り合った旅人は、女に世辞を言えば飯を食える、とも言っておったのか?」
鼻で笑って一蹴する。
「ち、違うよ。俺は本当に・・・」
「良い良い、今のは世辞として受け取っておこうぞ」
尚も何か言おうとした男の言葉を遮り、巫女は川へと入る。
「暫し黙っておれ、魚が逃げる」
巫女は柔らかく会話を打ち切ると、浅瀬を泳ぐ魚に視線を落とす。
ゆっくりと呼吸をし、心を落ち着ける。
暫く水面を見ていると、唐突だが滑らかな動きで右手を水面に突き入れた。
飛沫はまったく上がらず、音もほぼ鳴らなかった。
巫女がゆっくりと手を引き上げると、魚が1匹握られていた。
後からは感心した男の声が聞こえる。
「(よもやな。先程の言葉に浮かれておるのか?儂は)」
巫女の記憶には、この手法では4??5回試して1度の成功率しかない。
だが、今日は失敗する自分が想像出来ずにいた。
「(どうやら儂も、まだ女であったらしいのう)」
巫女は振り向き、魚を岸辺に放ると、
「お主は運が良い。今日の儂は調子が良いぞ。鱈腹食わせてやろうではないか」
微笑んだ。
「ありがとうございますっ」
男はついに土下座を始めた。
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