命を詠う華

YUE

文字の大きさ
69 / 71

69

しおりを挟む
刹那と久遠は涙を流していた。
空と茨城の話を聞き、両親の理想を知った。
天はそれを実現しようと、ここで、自分達の帰りを待ちながら、頑張っていたことを知った。
「久遠?」
「はい」
「俺達にも、出来るかな」
「出来ますとも。私達は、母様と父様の子なのですから」
「そうか。そうだよね」
「はい」
意思を固めた刹那は、早速行動に出る。
「ねえ君達?」
今だ自分達の胸に顔を埋める2人に話し掛ける。
「俺は刹那。こっちは妹の久遠って言うんだ」
「・・・せつ、な?」
「・・・く、おん?」
2人は顔を上げる。
「君達の名前も、教えてほしいな」
「・・・りん、どう」
「・・・ことは」
「燐童、琴葉。良い名前だね」
「はい。とても可愛い名前ですね、琴葉」
久遠が名を呼びながら頭を撫でると、琴葉は頬を染めてはにかんだ。
それを見た燐童は、刹那に視線を戻し無言で訴える。
「あ、うん。燐童も素敵な名前だね」
刹那に頭を撫でられた燐童も笑顔を溢す。
「ねえねえ、久遠?」
「はい。何ですか?琴葉」
「久遠と刹那はどうして、天様と同じ匂いがするの?」
「刹那と久遠はどうして、天様と同じ妖気を感じるの?」
琴葉と燐童は同じような質問をする。
「それはですね、私と兄様が父様の、天の子供だからですよ」
「君達は凄いなあ。そんなことまで分かるんだね」
「天様居ないの?」
「天様どこ?」
切な気な燐童と琴葉の問いに、刹那と久遠の表情も曇る。
「俺達も、父上を探しに来たんだけど、とても、遠くに行っちゃったみたいなんだ」
「こんな可愛い娘達を残して行くなんて、酷い父様ですよね」
「「天様ともう会えないの!?」」
刹那と久遠の解答に、燐童と琴葉が涙ぐむ。
「ああ!泣かないで、父上は居ないけど、今は俺と久遠が居るから」
刹那は微笑み、
「俺達の、友達になってよ」
語り掛ける。
燐童と琴葉は顔を見合せ、
「「黙って何処かに行ったりしない?」」
切実な願いを口にする。
「うん。黙って行かないよ」
「約束は守りますわ」
刹那と久遠は真っ直ぐに燐童と琴葉を見詰める。
「「友達になる!」」
燐童と琴葉は笑顔で刹那と久遠に抱き付いた。
「ちょっ!?燐童、く、くるし」
「こ、とはさん?す、こし、力をゆるめ、て」
刹那と久遠の訴えは、
「「刹那、久遠」」
甘えた声を出す2人には届かなかった。
「ふふ。どうやら向こうも、話がついたようじゃな」
「ええ。そのようです」
少し離れた所で、空と茨城は子供達を優しく見守っていた。
それからしばし、空達は山寺に滞在した。
本殿内の片付けと、遺骨を弔うために。
子供達はすっかり打ち解け、片付けを手伝う合間に元気に走り回っている。
そして、空達が下山する日。
再会を約束し、しばしの別れとなった。
泣き愚図る燐童と琴葉を、刹那と久遠がなだめ、説得するのに、丸一日費やしたのは余談である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

処理中です...