世界の中心は君だった

KOROU

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二章

頭の中の大図書館

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 人には世界観や価値観がある。それはもちろん当然の事だ。
 その事であえて言えば、私の頭の中は大きな図書館になっている。

 よく頭の中を引き出しとかタンスで表す事が多いけれど、私の場合、頭の中は大図書館だ。
 巨大な書庫の中に思い出やら知識やらの本がズラリと並んでいるイメージ。必要な思い出や知識は書庫の本棚から本を開いて見るといった具合だ。

 その書庫は日々を追うごとに蔵書が増えている。正確には、増え続けて困っている。
 そのためか、たまにどこに何の本があるのか分からなくなったり、ずいぶん長いこと開かれていない本も存在する。本にはラベルが貼ってあるので、開けば分かるのだが、開く前に探すのが大変といった具合だ。残念ながら、検索システムという機能や装置はない。

 そんな大図書館には、誰も入れない扉が一つだけ存在する。その奥がどうなっているのか、どうやったら開くのか、他の人格や私すらも分からない。ただ一つ分かるのは、その扉は大図書館と共に生まれたという事だ。最初からそこにあり、図書館から大図書館に増築された時にも場所も見た目も変わっていない。

 つまり、大図書館とその扉はセットだという事だ。私としては、開かずに入れないのであれば興味がないため放置している。見た目はただの扉なのに、開かないのであれば大勢が気にしないのと同義だ。いわば、おまけとして付いているようなものだろう。

 そういえば、大図書館には開けない本がいくつか存在している。私には中身が見れない上に、ラベルがボロボロでタイトルも分からない。そんな本がいくつか存在しているが、それも私はあまり気にしていない。開けないなら読めない。タイトルも不明なため読む必要性があるのかどうかも分からない。
 そう捉えてから、その本がどこにあるのかも忘れてしまった。都合の良い記憶だ。

 そんな謎も多い大図書館だが、不思議と居心地は悪くない。それはきっと幼い頃に私が図書館や書店に住みたかった事と関係しているのだろう。
 図書館や書店に住めば本が読み放題という、いかにも子供らしい考えで生まれた夢だった。
 
 私は本が好きだ。物語、実用書、漫画などジャンルを問わず好きだ。それぞれの本には著者が書いた意味や思いが込められていて、本の意味や物語を解き明かすのが好きなのだ。
 だからこそ、大図書館には今まで読んだ本がぎっしり詰まっている。頭の中でアレはこう、コレはこうと読めるからずいぶん楽な図書館であり頭だと思う。そんな本に囲まれている瞬間、私は幸せと感じる。

 それはきっと、私の好奇心や未知との遭遇を楽しみたい気持ちが埋められるからなのだと思う。
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