不死姫 忌み子のお姫様が自国の危機に国宝の聖槍を手に女王様となって悪役無双!

秋水

文字の大きさ
3 / 95

03 兄弟

しおりを挟む
同業者がどう思っているかは知らんが、傭兵なんてもんは金さえあればどんなことでもやる便利屋だ。
盗み、用心棒、人攫い、殺し。
農民だろうが、ご立派な騎士様だろうが、それこそ無抵抗の女、子供でも容赦なく殺す。
俺たち兄弟がクソッたれなこの世界で生きるために必要なら何でもやる。

恐れることなんてない。
弟と二人なら何だって出来る。
そう思っていた。

「クソが!何なんだあの女は!」

俺が気圧された。まだ男も知らなさそうな小娘に。
ただそこに立ちはだかっただけでだ。

「あ、兄貴、ブルーノ兄貴大丈夫か?」

取り乱した俺に弟は声をかけてくれる。
俺のたった一人の家族。馬鹿で女好きだが俺に付いて来てくれる大切な家族だ。
悪いと一言返し思案する。

今回の依頼を寄越したのはよく世話になっている仲介屋だ。
馬鹿高い仲介料をふんだくられるのをわかっていてそんなことをするのは、大体後ろ暗い依頼だからだ。
だから依頼人のことは詮索しない、これは俺たちの中で暗黙のルール。

要人の妻か娘の誘拐。莫大な報酬と依頼内容を聞いたときは胡散臭さはあったがそんなところだと納得した。
だが続いての話がさらに不可解だ。
武装して関所に行けば会えると。まぁそれらしい女には会えたわけだが……
それに加えてあの関所、ベルク王国は交通と商業の要衝、そんな所で騒ぎなんて起こしたら帝国やカフマンの連中が黙っちゃいねぇ。

「ああぁぁ!わっかんねぇ!」

あの女はダメだ、この依頼はダメだ。
あいつを肌で感じた体が、依頼の経緯を考えた頭が、俺に言っている。
今回の仕事はヤバい。

だが提示された報酬が俺を素直にさせてはくれない。
あれだけの金が入れば傭兵なんて危険な仕事から足を洗える。
立派な屋敷に旨いメシ、女にだって困りはしない。
弟にだっていい思いをさせてやれる。

「やれるだけやってみるか……」

あの女がヤバいのは確かだがあっちから仕掛けて来るような様子はなかった。
何人かけしかけて様子を見るくらいはやってもいいだろう。
そうと決まれば……。

「バルトルト、一旦帝都まで戻るぞ」

「おう兄貴!なんかいいこと思いついたんだな?」

「まずは仲介屋を締め上げる。それと何人か使えるやつを雇う」

仲介屋にちょっかいを出すのは今後の仕事に響きそうだが、今回の仕事さえ上手くいけば問題無い。

俺たちはブーゼ帝国の首都へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...