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第16話:爆弾投下
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俺は今、広島に来ている。新幹線降りて駅から出たらあんまり高い建物なくて驚いた。駅の反対側に行ったらちゃんと高い建物がいっぱいあった。天下の広島なのに人いないんかと思ったわ。
駅の表裏で全然雰囲気違うのな。俺は最寄りの大きめの郵便局に行って、例の爆弾を投下する。
爆弾と言っても爆発物じゃないぞ? ただ、あるものを破壊するのは同じ。木っ端ミジンコに破壊するの。
あ、広島で「爆弾」は不謹慎だったか!? すまん、そんな意図はない。今の今までそんなことは考えもしなかった。
そうそう。俺の書き記した文章を読んでくれている人がいた。アクセスがバチバチに増えてた。今まで誰かが読んでいるとか考えもしなくて書いてた。
漠然とした「誰か」に書くことで自分の中で整理しようと考えてた。でも、俺の文章をWEBで読んでくれている人がいる。それに気づいた。でも、俺の考えは変わらない。浮気されたダメなチー牛だけど、リアルで知ってる人はいないと思うから別に恥ずかしくない。
……ごめん、嘘だ。めちゃくちゃ恥ずかしい。そして、情けない。
だから、俺は復讐する。逃亡して初めてそんな気持ちがわいてきた。これまでの俺は逃げることしか考えられなかった。別に逃げぐせがあるわけじゃない。
以前の仕事ではクレーム先に訪問したこともある。これから絶対怒られるのに、自らその会社に行って怒られるのだ。それでも、俺は行った。ここを乗り越えないとその先はないと思ったから。
どうせ怒られても夜には家にいるし、酒飲んで酔っ払って寝るんだろうって思ってた。多分、リビングで寝落ちして、妻が「風邪ひくよ」とか言って起こすんだ……そんな未来を想像したからクレームだって、どんな試練だって壁だって立ち向かっていった。
でも、ダメだった。妻の不倫が分かってからはなんにもできない。試練とか無理。会社からも、人間関係からも、家からも、住宅ローンからも、子どもからも逃げることしか考えられなかった。
もちろん、妻からも……。
逃亡して、俺の足は地についた。地についたら踏ん張れるのかもしれない。
だから、復讐を開始した。
用意した「爆弾」は既に投下した。それが発動するには1日から2日かかるだろう。その間、俺は広島の街を楽しむのだ。お好み焼きを食べるのだ。
関西風のお好み焼きは関西以外にもある。だから食べたことはある。野菜は小麦粉の中に入っていて一体感がある。ただ、フードコートとかで食べるお好み焼きはどこかべちゃっとしててうまくない。
あれなら家で焼いたお好み焼きの方が安くてうまい。家ではお好み焼きを焼くのは俺の役目だった。リビングのローテーブルにホットプレートを載せて、材料は妻が準備してくれるので焼くんだ。
生地には山芋を入れてふわふわに焼く。でも、表面はパリッというか、少しカリカリというか、そんな感じに仕上げる。ソースをかけて、青のりをかけて、マヨネーズも忘れない。
妻も「お好み焼きを焼くの上手だね! お店出せるんじゃない?」なんて褒めてくれて……。ヤバい。俺泣いてる。涙が出てる。情緒不安定だ。
とにかく、広島のお好み焼きは野菜とかが層になってるらしいから、それらがどうやってつながってるのか知りたい。本場で食べて広島のお好み焼きの秘密を知りたい。
○●○
食ってきたわ。広島のお好み焼き。あれは、関西のお好み焼きとは別の食べ物だ。関西風しか知らない俺としては最初のうっすい生地でどうやってお好み焼き全体をまとめるんだよって思ってた。
薄い生地の上に千切りのキャベツが載る。あの生地の薄さだから、「生地を鉄板に載せたらすぐにキャベツいかないと!」って思ってた。
ところが店員は生地が完全に焼けるまでキャベツを載せないんだ。最初はツヤがあった生地に火が入ってツヤがなくなる。水分が無くなって固くなる。そのあとキャベツだった。しかも、到底まとまらない量のキャベツ。俺は選ぶべき店を間違えたかと思ったほど。
でも、違うんだ。キャベツのあと、天かすとイカ天? あの駄菓子みたいなペラペラのイカの形の天ぷらみたいなやつ。あれを砕いたものと魚粉? なんか粉をかけてた。
俺が頼んだのは豚玉だったから、キャベツたちの上に豚の薄切り肉が載せられた。次々載せるから山になってた。更にその上に生地を少しかけてた。ダメだろあれ。もうまとまらないよ、と。
そして、ボウルをひっくり返したみたいなフタをしてしばらく待ってた。店は繁盛店で席はうまってた。平日なのに! 店員は他の注文も当時に作ってるんだけど、俺のお好み焼きを忘れてるんじゃないかと思うほど放置してた。
本当に大丈夫か俺が不安になったころ、フタがどけられた。手際よくお好み焼きはひっくり返された。そして、またフタだよ。ほんとに大丈夫かよって思ってたら、いつの間にかソースとマヨ、青のりがかけられてた。
目の前に出されたんだけど、ちゃんとひとつにまとまってる。生地とキャベツはどうなのか。
俺はここで1つ困ったことに気がついた。お好み焼きはピザ的に放射線状に切るべきか、四角く切るべきか。
ピザ的に切ると各片は均等な体積になるけど、全部俺が食べるんだ。均等である必要がないことに気がついた。
四角く切ると体積はバラバラになる。しかも、具のバランスがまちまち。でも、同じソースで食べるんだ。一片ごとに少しずつ味とか食感が違うなら、そっちの方が優れた食べ物ではないだろうか。
ナニ頭五郎か分からないけど、目の前のご飯について心の中で考察を述べながら食べていると、単純にうまいことに気がついた。
やっぱり生地とキャベツは一体じゃないんだ。でも、バラバラじゃない。キャベツからの水分が出てしっとりしてまとまってる。そして、その水分は生地にも行くみたいで、薄くカリカリに焼いたと思った生地もやわらかい。
イカ天とか豚肉とかいろんな味がするけど、ソースで味がまとまってる。お好み焼きソースって偉いな。
俺の知らないものだった。普段、お好み焼きはいつでも食べてた。関西風だけど自分で作るほどには。
でも、同じ「お好み焼き」って食べ物でも全く知らないものもあった。
妻もそうかもしれない。高校では同級生だった。そのあと大学では別々だったけど、社会に出て再会して、それなりに付き合って結婚した。
結婚生活をして妻はこんな人って俺の中で固まっていたけど、高校生のときの妻と社会人になってからの妻、家庭に入ってからの妻は少しずつイメージが違う。
人間中身がそんなに変わるとは思えない。これは俺が少しずつ妻のことを知っていっただけってことなんじゃないだろうか。
イケメンの告白を次々断っていった高校生のときの嫁。サッカー部の先輩キャプテンも剣道部の主将もダメ。じゃあ、誰ならOKなんだって高飛車なんじゃないかと思ってた。
そのくせ、社会に出て再会したときは簡単に飲みに行ってくれた。高校を卒業してもう周囲にチヤホヤしてくれる人がいなくなったから、チー牛の俺でも飲み仲間にキープしてくれたのかと思った。
その後も遊びに行く人がいないんだとおもってた。俺は車を持ってたから、俺の立ち位置は「足」兼「おつきの者」って感じかと思ってたんだ。
それでも結婚してくれた。もしかしたら、妻は俺のことを好きなんじゃないかと思ってた。思い始めてた。
俺は妻のことが好きだった。リア充で高校のトップカーストの人だからじゃない。友達に自慢したかったわけじゃない。むしろ、高校時代のヤツらには妻と結婚したことは言いたくなかったくらい。隠しておきたい程だった。
俺は妻のことが好きだった。人間として、女性として。彼女のためならなんでもできると思っていた。彼女との子どもも彼女と同じくらい大事だった。
でも、全部違った。子どもは托卵。俺の子じゃなかった。妻は不倫してる。今現在進行形で不倫してる。
俺がこれまで見てきた妻は誰だったんだろう。よく知ってると思っていたあの人はなにを考えているんだろう。すべてが分からなくなった。
ヤバイな。逃げてきたはずなのに、何をしてても妻のことを考えてる。俺は会計を済ませて再び福岡に戻ることにした。
駅の表裏で全然雰囲気違うのな。俺は最寄りの大きめの郵便局に行って、例の爆弾を投下する。
爆弾と言っても爆発物じゃないぞ? ただ、あるものを破壊するのは同じ。木っ端ミジンコに破壊するの。
あ、広島で「爆弾」は不謹慎だったか!? すまん、そんな意図はない。今の今までそんなことは考えもしなかった。
そうそう。俺の書き記した文章を読んでくれている人がいた。アクセスがバチバチに増えてた。今まで誰かが読んでいるとか考えもしなくて書いてた。
漠然とした「誰か」に書くことで自分の中で整理しようと考えてた。でも、俺の文章をWEBで読んでくれている人がいる。それに気づいた。でも、俺の考えは変わらない。浮気されたダメなチー牛だけど、リアルで知ってる人はいないと思うから別に恥ずかしくない。
……ごめん、嘘だ。めちゃくちゃ恥ずかしい。そして、情けない。
だから、俺は復讐する。逃亡して初めてそんな気持ちがわいてきた。これまでの俺は逃げることしか考えられなかった。別に逃げぐせがあるわけじゃない。
以前の仕事ではクレーム先に訪問したこともある。これから絶対怒られるのに、自らその会社に行って怒られるのだ。それでも、俺は行った。ここを乗り越えないとその先はないと思ったから。
どうせ怒られても夜には家にいるし、酒飲んで酔っ払って寝るんだろうって思ってた。多分、リビングで寝落ちして、妻が「風邪ひくよ」とか言って起こすんだ……そんな未来を想像したからクレームだって、どんな試練だって壁だって立ち向かっていった。
でも、ダメだった。妻の不倫が分かってからはなんにもできない。試練とか無理。会社からも、人間関係からも、家からも、住宅ローンからも、子どもからも逃げることしか考えられなかった。
もちろん、妻からも……。
逃亡して、俺の足は地についた。地についたら踏ん張れるのかもしれない。
だから、復讐を開始した。
用意した「爆弾」は既に投下した。それが発動するには1日から2日かかるだろう。その間、俺は広島の街を楽しむのだ。お好み焼きを食べるのだ。
関西風のお好み焼きは関西以外にもある。だから食べたことはある。野菜は小麦粉の中に入っていて一体感がある。ただ、フードコートとかで食べるお好み焼きはどこかべちゃっとしててうまくない。
あれなら家で焼いたお好み焼きの方が安くてうまい。家ではお好み焼きを焼くのは俺の役目だった。リビングのローテーブルにホットプレートを載せて、材料は妻が準備してくれるので焼くんだ。
生地には山芋を入れてふわふわに焼く。でも、表面はパリッというか、少しカリカリというか、そんな感じに仕上げる。ソースをかけて、青のりをかけて、マヨネーズも忘れない。
妻も「お好み焼きを焼くの上手だね! お店出せるんじゃない?」なんて褒めてくれて……。ヤバい。俺泣いてる。涙が出てる。情緒不安定だ。
とにかく、広島のお好み焼きは野菜とかが層になってるらしいから、それらがどうやってつながってるのか知りたい。本場で食べて広島のお好み焼きの秘密を知りたい。
○●○
食ってきたわ。広島のお好み焼き。あれは、関西のお好み焼きとは別の食べ物だ。関西風しか知らない俺としては最初のうっすい生地でどうやってお好み焼き全体をまとめるんだよって思ってた。
薄い生地の上に千切りのキャベツが載る。あの生地の薄さだから、「生地を鉄板に載せたらすぐにキャベツいかないと!」って思ってた。
ところが店員は生地が完全に焼けるまでキャベツを載せないんだ。最初はツヤがあった生地に火が入ってツヤがなくなる。水分が無くなって固くなる。そのあとキャベツだった。しかも、到底まとまらない量のキャベツ。俺は選ぶべき店を間違えたかと思ったほど。
でも、違うんだ。キャベツのあと、天かすとイカ天? あの駄菓子みたいなペラペラのイカの形の天ぷらみたいなやつ。あれを砕いたものと魚粉? なんか粉をかけてた。
俺が頼んだのは豚玉だったから、キャベツたちの上に豚の薄切り肉が載せられた。次々載せるから山になってた。更にその上に生地を少しかけてた。ダメだろあれ。もうまとまらないよ、と。
そして、ボウルをひっくり返したみたいなフタをしてしばらく待ってた。店は繁盛店で席はうまってた。平日なのに! 店員は他の注文も当時に作ってるんだけど、俺のお好み焼きを忘れてるんじゃないかと思うほど放置してた。
本当に大丈夫か俺が不安になったころ、フタがどけられた。手際よくお好み焼きはひっくり返された。そして、またフタだよ。ほんとに大丈夫かよって思ってたら、いつの間にかソースとマヨ、青のりがかけられてた。
目の前に出されたんだけど、ちゃんとひとつにまとまってる。生地とキャベツはどうなのか。
俺はここで1つ困ったことに気がついた。お好み焼きはピザ的に放射線状に切るべきか、四角く切るべきか。
ピザ的に切ると各片は均等な体積になるけど、全部俺が食べるんだ。均等である必要がないことに気がついた。
四角く切ると体積はバラバラになる。しかも、具のバランスがまちまち。でも、同じソースで食べるんだ。一片ごとに少しずつ味とか食感が違うなら、そっちの方が優れた食べ物ではないだろうか。
ナニ頭五郎か分からないけど、目の前のご飯について心の中で考察を述べながら食べていると、単純にうまいことに気がついた。
やっぱり生地とキャベツは一体じゃないんだ。でも、バラバラじゃない。キャベツからの水分が出てしっとりしてまとまってる。そして、その水分は生地にも行くみたいで、薄くカリカリに焼いたと思った生地もやわらかい。
イカ天とか豚肉とかいろんな味がするけど、ソースで味がまとまってる。お好み焼きソースって偉いな。
俺の知らないものだった。普段、お好み焼きはいつでも食べてた。関西風だけど自分で作るほどには。
でも、同じ「お好み焼き」って食べ物でも全く知らないものもあった。
妻もそうかもしれない。高校では同級生だった。そのあと大学では別々だったけど、社会に出て再会して、それなりに付き合って結婚した。
結婚生活をして妻はこんな人って俺の中で固まっていたけど、高校生のときの妻と社会人になってからの妻、家庭に入ってからの妻は少しずつイメージが違う。
人間中身がそんなに変わるとは思えない。これは俺が少しずつ妻のことを知っていっただけってことなんじゃないだろうか。
イケメンの告白を次々断っていった高校生のときの嫁。サッカー部の先輩キャプテンも剣道部の主将もダメ。じゃあ、誰ならOKなんだって高飛車なんじゃないかと思ってた。
そのくせ、社会に出て再会したときは簡単に飲みに行ってくれた。高校を卒業してもう周囲にチヤホヤしてくれる人がいなくなったから、チー牛の俺でも飲み仲間にキープしてくれたのかと思った。
その後も遊びに行く人がいないんだとおもってた。俺は車を持ってたから、俺の立ち位置は「足」兼「おつきの者」って感じかと思ってたんだ。
それでも結婚してくれた。もしかしたら、妻は俺のことを好きなんじゃないかと思ってた。思い始めてた。
俺は妻のことが好きだった。リア充で高校のトップカーストの人だからじゃない。友達に自慢したかったわけじゃない。むしろ、高校時代のヤツらには妻と結婚したことは言いたくなかったくらい。隠しておきたい程だった。
俺は妻のことが好きだった。人間として、女性として。彼女のためならなんでもできると思っていた。彼女との子どもも彼女と同じくらい大事だった。
でも、全部違った。子どもは托卵。俺の子じゃなかった。妻は不倫してる。今現在進行形で不倫してる。
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