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第18話:爆弾が爆発したらしい
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つい先日俺が投下した爆弾は見事に爆発したらしい。一番最初に反応したのは嫁だった。
俺が投下した「爆弾」ってやつは妻の浮気の証拠だ。探偵事務所に調べてもらった報告書をコピーして送りつけてやった。
送りつけた先は、嫁、嫁実家、俺の実家、店長の奥さんの4件。さすがに音声データは送ってない。
店長の奥さんには普通の郵便じゃなく、内容証明郵便だ。事前に弁護士に浮気の証拠を見せて、裁判になれば確実に勝てると太鼓判を押されていたのだ。
だから、まずは店長の不貞の証拠。更に追加情報がある旨の手紙。もし、店長と離婚するなら追加の資料を渡す準備があることを知らせた。
内容証明は店長本人宛。損害賠償請求の内容を含んでいる。応じない場合は裁判することも書いている。
また、ラブホテルに行っている時間が店長の勤務時間内ではないか、スーパーの本部に弁護士経由で確認を入れることも書いている。
更に、スーパー内部で正社員登用や時給アップを引き換えに不倫を持ちかけている事実を実際に勤務している従業員の証言付きで会社に提出し、会社方針的に適合しているのかを確認する。
ちなみに、弁護士とは打ち合わせをして、動いてもらうときの費用なんかは打ち合わせ済み。現状、この内容証明に弁護士の名前を入れさせてもらうだけでかなりの費用を払っている。
ただ、割と良心的な弁護士なのか、俺が有利だと踏んだのか、着手金は安めに設定してくれているらしく、成功報酬で収益を取ってもらうように話してある。
店長はかなり悪質らしく、「ぎゃふんと言わしてやりましょう!」と不敵な笑みを浮かべていた。敵に回すとヤバそうだけど、味方としては心強い。損害賠償は最初は相場よりかなり高めに請求することになってる。
その後、値引き交渉が入ると思われるので徐々に値引きに応じて早く支払いをさせる作戦だ。これは弁護士のアイデア。あのときは話半分に聞いてきたけど、今となってはかなり心強い。
店長の奥さんがどんな人かが分からない。最初からバチバチに復讐をする気なら、そこまで根回しをしてただろう。残念ながら、あのときの俺にはそこまでの元気はなかった。
なんなら死んでもいいと思っていたからだ。
今は少し違う。俺は俺であって俺ではない。あの店長だけはぶっ潰す。八つ当たりかもしれん。それだけのことはされてるから、八つ当たりではないかもしれないけど。
そんなことはどうでもいい。俺はヤツが気に入らない。徹底的にぶっ潰す。社会的に抹殺してやる。再起不能にする。
ヤツはどんなに慌てても俺に連絡する術はない。そこは弁護士が対応予定だ。内容証明や手紙には弁護士の連絡先しか知らせていないのだから。
弁護士は当然俺の連絡先は知ってる。電話が来たら当然取る。メッセージが着たら返信する。それでも、弁護士には守秘義務があるから俺の居場所も連絡先も連絡方法も妻や店長などに知らせることはできない。
万が一、知らせたら違約金を払うことになるのだから。負けとか払うとかが大ッキライな弁護士だから、情報を漏らしたりはしない。そこは信用できる。
さて、爆弾が投下された妻からはメッセージが送られてきている。相変わらず俺が開かないので「既読」にはならない。スマホの待機画面にプレビューが表示されるので、1行目だけ見える形だ。
『郵便が届いた』とか、『違うの』とか、『ごめんなさい』とか、色々な書き始めで書いているのか、妻が焦っている様子が伝わってくる。
妻の方には、不倫の証拠となる探偵事務所からの報告書のコピーと離婚届を送りつけた。もちろん、離婚届の俺の欄には記入済みだ。
彼女のメッセージを見て、違うもなにも証拠を押さえているのだから違わないのだ。更に、妻にも出していない音声データという切り札もある。
電話は着信が多すぎて、着信が来たことだけしか見てなかった。よく見たら、俺のスマホは留守電が録音できるらしい。今まで一度も使ったことがなかったから知らなかった。
めちゃくちゃたくさん録音されていたので見てみると、そのほとんどが妻からだった。聞いてしまったら、俺の中に罪悪感とかが生まれてしまうかもしれない。でも、聞かないのも怖い。
恐る恐る1個だけ聞くことにした。ここはネカフェだからイヤホンを付けて音漏れもしないようにして聞いてみた。
『ゔぁぁぁぁぁ! あだだぁぁぁぁぁ! ゔぁぁぁぁぁ!』
聞いていたけど、ずっと泣いてる。録音時間には制限があるみたいで、途中で切れる。切れたらまた電話をかけてきてずっと泣いてる。そんな感じだ。
いやいやいや、泣きたいのはこっちだから。
でも、普段おとなしい妻があんなに感情をむき出しにして泣くんだなって冷静に思っている俺がいた。多分、俺の心は壊れたな。妻の声なんか聞いたらもっと動揺すると思ってた。聞いたら最後どこかに全力疾走すると思ってた。
ところが、めちゃくちゃ冷静だった。なんなら慌ててる自分がいるけど、その自分をもう一人の俺が客観的に見てる自分がいる。もしかしたら、これが続いたら精神的に分裂して乖離性同一性障害だっけ? いわゆる多重人格になっていくのかも……ってほんとに思った。
明日か明後日には弁護士に店長か店長の奥さんが連絡してくるんじゃないかな。そしたら、俺のところに報告が来ることになってる。それは楽しみだ。店長はどんな反応をするんだろう。
謝るのか? 怒るのか? はたまた暴れるのか?
いずれにしても、俺はそこにはいない。連絡方法も弁護士事務所しかない。妻に連絡したり、妻を攻撃したりすることは考えてなかった。もしそんなことをしたら……。ああ、妻は要らないんだった。托卵女子だったか……。浮気女で俺が働いてる昼間に店長とラブホに行って楽しんじゃう女だった。
店長から「いたずら」されてんのに、ラブホの出口で車の助手席で顔を隠して、そのあと笑いながら身体を起こすヤツだった。
俺の心はまだ理解してない。あいつは俺が思ってるような女じゃなかったんだ。とりあえず、うちの家庭を壊した不貞の損害賠償を店長にしてもらうところから始めようか。
俺が投下した「爆弾」ってやつは妻の浮気の証拠だ。探偵事務所に調べてもらった報告書をコピーして送りつけてやった。
送りつけた先は、嫁、嫁実家、俺の実家、店長の奥さんの4件。さすがに音声データは送ってない。
店長の奥さんには普通の郵便じゃなく、内容証明郵便だ。事前に弁護士に浮気の証拠を見せて、裁判になれば確実に勝てると太鼓判を押されていたのだ。
だから、まずは店長の不貞の証拠。更に追加情報がある旨の手紙。もし、店長と離婚するなら追加の資料を渡す準備があることを知らせた。
内容証明は店長本人宛。損害賠償請求の内容を含んでいる。応じない場合は裁判することも書いている。
また、ラブホテルに行っている時間が店長の勤務時間内ではないか、スーパーの本部に弁護士経由で確認を入れることも書いている。
更に、スーパー内部で正社員登用や時給アップを引き換えに不倫を持ちかけている事実を実際に勤務している従業員の証言付きで会社に提出し、会社方針的に適合しているのかを確認する。
ちなみに、弁護士とは打ち合わせをして、動いてもらうときの費用なんかは打ち合わせ済み。現状、この内容証明に弁護士の名前を入れさせてもらうだけでかなりの費用を払っている。
ただ、割と良心的な弁護士なのか、俺が有利だと踏んだのか、着手金は安めに設定してくれているらしく、成功報酬で収益を取ってもらうように話してある。
店長はかなり悪質らしく、「ぎゃふんと言わしてやりましょう!」と不敵な笑みを浮かべていた。敵に回すとヤバそうだけど、味方としては心強い。損害賠償は最初は相場よりかなり高めに請求することになってる。
その後、値引き交渉が入ると思われるので徐々に値引きに応じて早く支払いをさせる作戦だ。これは弁護士のアイデア。あのときは話半分に聞いてきたけど、今となってはかなり心強い。
店長の奥さんがどんな人かが分からない。最初からバチバチに復讐をする気なら、そこまで根回しをしてただろう。残念ながら、あのときの俺にはそこまでの元気はなかった。
なんなら死んでもいいと思っていたからだ。
今は少し違う。俺は俺であって俺ではない。あの店長だけはぶっ潰す。八つ当たりかもしれん。それだけのことはされてるから、八つ当たりではないかもしれないけど。
そんなことはどうでもいい。俺はヤツが気に入らない。徹底的にぶっ潰す。社会的に抹殺してやる。再起不能にする。
ヤツはどんなに慌てても俺に連絡する術はない。そこは弁護士が対応予定だ。内容証明や手紙には弁護士の連絡先しか知らせていないのだから。
弁護士は当然俺の連絡先は知ってる。電話が来たら当然取る。メッセージが着たら返信する。それでも、弁護士には守秘義務があるから俺の居場所も連絡先も連絡方法も妻や店長などに知らせることはできない。
万が一、知らせたら違約金を払うことになるのだから。負けとか払うとかが大ッキライな弁護士だから、情報を漏らしたりはしない。そこは信用できる。
さて、爆弾が投下された妻からはメッセージが送られてきている。相変わらず俺が開かないので「既読」にはならない。スマホの待機画面にプレビューが表示されるので、1行目だけ見える形だ。
『郵便が届いた』とか、『違うの』とか、『ごめんなさい』とか、色々な書き始めで書いているのか、妻が焦っている様子が伝わってくる。
妻の方には、不倫の証拠となる探偵事務所からの報告書のコピーと離婚届を送りつけた。もちろん、離婚届の俺の欄には記入済みだ。
彼女のメッセージを見て、違うもなにも証拠を押さえているのだから違わないのだ。更に、妻にも出していない音声データという切り札もある。
電話は着信が多すぎて、着信が来たことだけしか見てなかった。よく見たら、俺のスマホは留守電が録音できるらしい。今まで一度も使ったことがなかったから知らなかった。
めちゃくちゃたくさん録音されていたので見てみると、そのほとんどが妻からだった。聞いてしまったら、俺の中に罪悪感とかが生まれてしまうかもしれない。でも、聞かないのも怖い。
恐る恐る1個だけ聞くことにした。ここはネカフェだからイヤホンを付けて音漏れもしないようにして聞いてみた。
『ゔぁぁぁぁぁ! あだだぁぁぁぁぁ! ゔぁぁぁぁぁ!』
聞いていたけど、ずっと泣いてる。録音時間には制限があるみたいで、途中で切れる。切れたらまた電話をかけてきてずっと泣いてる。そんな感じだ。
いやいやいや、泣きたいのはこっちだから。
でも、普段おとなしい妻があんなに感情をむき出しにして泣くんだなって冷静に思っている俺がいた。多分、俺の心は壊れたな。妻の声なんか聞いたらもっと動揺すると思ってた。聞いたら最後どこかに全力疾走すると思ってた。
ところが、めちゃくちゃ冷静だった。なんなら慌ててる自分がいるけど、その自分をもう一人の俺が客観的に見てる自分がいる。もしかしたら、これが続いたら精神的に分裂して乖離性同一性障害だっけ? いわゆる多重人格になっていくのかも……ってほんとに思った。
明日か明後日には弁護士に店長か店長の奥さんが連絡してくるんじゃないかな。そしたら、俺のところに報告が来ることになってる。それは楽しみだ。店長はどんな反応をするんだろう。
謝るのか? 怒るのか? はたまた暴れるのか?
いずれにしても、俺はそこにはいない。連絡方法も弁護士事務所しかない。妻に連絡したり、妻を攻撃したりすることは考えてなかった。もしそんなことをしたら……。ああ、妻は要らないんだった。托卵女子だったか……。浮気女で俺が働いてる昼間に店長とラブホに行って楽しんじゃう女だった。
店長から「いたずら」されてんのに、ラブホの出口で車の助手席で顔を隠して、そのあと笑いながら身体を起こすヤツだった。
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