嫁が浮気してたので俺は姿を消そうと思う

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

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第21話:決着の話し合いの前に

 俺は全てに決着をつけることにした。色々準備するのに2週間ちょいかかった。

 その間に分かったことがいくつかある。俺が妻に送った離婚届は提出されていない。弁護士経由で提出するように促したが、妻は激しく抵抗しているとのこと。ここにもカタを付けなければならない。

 作戦はいたってシンプルだ。弁護士事務所に妻、妻両親、俺の両親を呼び出す。妻の痴態を晒してやり心を折る。もちろん、例の録音データも使う。

 離婚届を弁護士が回収したら、弁護士が俺と打ち合わせがあると一旦退室。それぞれは部屋に残しておく。その間にまた、姿を消す。二度と俺は姿を現さない。そんな作戦だ。シンプルだけど、確実。この俺の失敗した人生を清算しないと……。俺の人生は間違いだったんだ。

 弁護士も直接の話し合いができるなら、そちらの方がいいと言っていた。ただ、関係者だけだとグズグズになり、言い合いになったら泥沼化するので面会は弁護士立ち合いの下がいいとのアドバイスだった。

 それは俺にとってもありがたいこと。相手は5人。こっちは一人なのだから。俺の両親からも責められるだろう。俺がすべてを捨てて逃亡したのは間違いないのだから。

 俺の母さんの状態も気になる。猫がいなくなっただけで10キロ痩せたことがある。精神的にそれほど強くないのかもしれない。

 子供の頃は、実の親は完璧な人間だと思っていた。この年になるとやっと親も一人の人間で弱いところもあるし、辛い思いもするのだと思えてくる。完璧じゃないし、悪いところもある。ただ、俺に親はちゃんとしてると思わせて育ててくれたことには感謝しないといけないんだろうな、と思う。

 その息子がやらかしたことは逃亡だよ。家庭を作ったと思ったら、子どもは托卵だし、妻は寝取られるし、いや、そもそも俺がメインだったことはないのかも。チー牛だし、小遣い月一万でも文句も言わずにせっせと家にカネを入れ続けるATMだし……。

 ヤバい、泣けてきた。

 妻との結婚生活では俺のことを好きでいてくれているように思っていたんだけど……。それは錯覚か。幻想だったか……。托卵だし……。

 色々の準備ができるまでに俺はネカフェで過ごした。そろそろカネもなくなる。仕事は見つからないみたいだ。一応、偽名での履歴書で面接は可能だった。

ところが、いざ採用の段で住民票の提出を求められたのだ。住民票の偽造は意外となかった。自分で作るにも俺はネカフェ暮らしだし、画像の編集ソフトもない。それどころか、好きな紙に印刷できる様なプリンタすらない。

 つまり、俺はもうちゃんとした仕事には就けない。

 決戦の日、家までは鈍行列車で帰った。いよいよカネがないからだ。これ以上、長引かせることはできない。

 俺は呼び出した誰より早く弁護士事務所に入っていた。久々に会った弁護士からは「やつれましたね」と言われた。俺は苦笑いしか出なかった。

 とりあえず、「今日はよろしくお願いします」とだけ言った。

 俺の呼び出しは弁護士経由だったけど、一遍に5人呼び出すのではなく、まずは妻と妻の両親を呼びだしたのだ。万が一、娘が来るときのために娘は別室で待機できるようにして。

 そして来たのは、嫁、子、嫁の両親の4人だった。彼らは受付の女性に弁護士事務所の打合せ室へ案内された。割と広めの部屋で大きなテーブルが1つと、それに合わせてイスが8席あるようなところ。

 妻と妻両親を呼んでいたが義理の父は別室で娘の面倒を見ることになった。予想通り。

 強面の義理の父だが、娘に好かれている。顔は怖いけど良い人なんだろうな。それもあるけど、義理の両親は再婚で妻は義理の母の連れ子だったから、話し合いには義理の母が参加するらしい。実の娘だから責任とか感じていたのかもしれない。

 弁護士に案内されて、俺は打ち合わせ室に入った。そこにはやつれた妻が下を向いて座っていた。その横には義理の母。同じく下を向いていた。

 俺が入室したと同時に2人は俺の前に飛び出してきて床に手をついて土下座した。

 妻は土下座のまま号泣していて言葉は聞き取れない。俺の足にすがって泣くこいつは俺の知ってる妻じゃなかった。「いぎでだー! よがっだー!」と。涙も鼻水も出てて高校時代のクラスのアイドルの面影はなかった。

 弁護士は「事前にご説明差し上げた通り、本日は話し合いの場です。そのような行為はお話し合いを妨げるのでお控えください」と妻と義理の母をなだめてくれていた。

 妻は全然落ち着かなかった。号泣したままの土下座でずっとなにかを言っているけど、ほとんど聞き取れない。途中、俺の顔を見ると過呼吸になって「はっはっはっ」と素人の俺が見てもヤバい状態になった。

 弁護士の判断で俺は一旦途中退室して妻が少し落ち着くのを待った。そこはお義母さんが対応したので、義理の母に来てもらったのは正解だった。

 過呼吸は何度かあり、ちゃんと話し合いが始められるまでに2時間以上かかっていた。

 妻はずっとティッシュで目と鼻を拭いていた。しゃくりも常に止まらない。そんなに泣くなら最初から浮気なんかしなければいいのに。浮気女の考えは到底俺には理解できそうもなかった。

「それでは、風間様ご夫婦のお話し合いを始めさせていただきます」

 弁護士のイニシアティブで話し合いはやっとスタートした。
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