1 / 5
第一話『スケルトン』は追放される
しおりを挟む
「貴様のような出来損ない。王家に相応しくないわ」
豪奢な玉座に腰を下ろし、
凍えるような表情を顔に讃えて言うのはリゼ=フリードリヒ女王その人である。
そして俺の義理の母。
圧倒的な魔力量より、母だった人の蔑んだ目線の方が数倍辛くて。
膝が笑いそうになってしまう。
‥いや、
…上等だ。
俺はねめあげるようにして女王様を見た。
「奇遇だなババア。ちょうど俺も似たような事考えてたぜ?」
玉座から階段を数段跨ぎ、
赤いカーペットをしかれた道の上。
彼女が見下ろす先に突っ立っている人影。
ボロボロのパーカーに似た服を着て、
青い頭巾と赤いマフラーを巻いた俺は。
口汚く女王殿下を罵った。
一瞬の間をおき、
女騎士リオネス及び近衛兵が色めき立つが、
リゼが手で制止した。
それだけで大人しくなるのだからよく躾けられた狂犬だ。
リゼはゆっくり口を開く。
「力も無く、かといえば知恵もなく、」
俺は返す。
「金と権力が一生の伴侶の母を持ちってか?」
しかしリゼは顔をピクリとも変えない。
冗談の効かねえお嬢様だ。
「極め付けに! 魔力は雀の涙ほどしかないとは…!」
ここで初めてリゼが感情を露わにし、その整った顔を歪ませた。
「俺だって、実の息子を殺そうとするような、愛情が雀の涙程しかねぇアンタなんて…。」
片目を閉じ、戯けたように言う。
「絶交だ」
「勘当だ」
「二度とここには戻って来るな」
「来るわけねぇだろこんな肥溜め」
激昂したリゼに対して俺が返すと、言葉に詰まったのか、リゼが白かった肌を赤くして震えていた。
「それに…見た目も可愛げがない!」
「えぇ?そうか?」
俺は目を泳がせながら答えた。といっても俺は泳がせる目が存在しないんだが。
口から火が出そうな女王殿下を前に、寒がりの俺も流石に暑さを覚えた。
それが耐えきれなかったから、
だから、俺は頭巾を取った。
衣擦れの音と、汚らしく埃が舞う。
毛が一本も生えていない俺の頭が露わになって。
思わず近衛兵が息を呑む。
近衛兵士長リオネスが大きな目をさらに見開いて言った。
「本当に、スケルトン…」
白い頭蓋骨。
細い手足。つまり骨。
そしてただ暗い眼窩。
女王殿下は俺の義理の母だ。
母だった人だ。
そして血の繋がった弟がいた。名はクロウス=フォン=ハイネックだ。、
本物の天才だ。最強の魔法属性『雷』に適性があることに加え、膨大な魔力量を持った第二王子だ。
リゼは、夫亡き今、
権力に飲まれ、自らの子供、俺の義理の弟を王に仕立て上げるべく、
底無しの谷に俺をつきおとし、
鎖のように張り巡らされた用水パイプの中に何ヶ月も置き去りにしたり、
もう直接殺しにかかったりした。
何度も。
何度も。
でも、
恨みでもあったのだろう。
それとも、ただ生きたかっただけだったのか。
俺は生き残った。
多大な魔力と引き換えに、皮が剥がれ、肉を失い、
俺はいつしか、そうやって生き残るうちに、
骸骨スケルトンになっていたのだ。
何度も死ぬような仕打ちを受けて、身体が耐えきれなかったのか、俺はスケルトンになっていたのだ。
「それじゃ、ババア。今までありがとうよ。
頭巾。ここに返しておくぜ。」
近衛兵たちが唖然とする中、
カラカラと骨から音を立てながら、母に背を向け、俺はレッドカーペットの上を引き返して行った。
扉を閉める音が響き、リゼはやっと我に帰った。
「何をしているの!! 魔法技術部門に回す約束だったでしょう。早く奴を追いなさい!!」
「あっ!? 申し訳ありませんすぐ行きます!!」
リオネスは弾かれたようにそう言うと、
近衛兵を連れてわたわたと扉の外に出て行った。
…これが3年前の話。
悪夢のような出来事が俺たちを襲うのは、ちょうど今日。
豪奢な玉座に腰を下ろし、
凍えるような表情を顔に讃えて言うのはリゼ=フリードリヒ女王その人である。
そして俺の義理の母。
圧倒的な魔力量より、母だった人の蔑んだ目線の方が数倍辛くて。
膝が笑いそうになってしまう。
‥いや、
…上等だ。
俺はねめあげるようにして女王様を見た。
「奇遇だなババア。ちょうど俺も似たような事考えてたぜ?」
玉座から階段を数段跨ぎ、
赤いカーペットをしかれた道の上。
彼女が見下ろす先に突っ立っている人影。
ボロボロのパーカーに似た服を着て、
青い頭巾と赤いマフラーを巻いた俺は。
口汚く女王殿下を罵った。
一瞬の間をおき、
女騎士リオネス及び近衛兵が色めき立つが、
リゼが手で制止した。
それだけで大人しくなるのだからよく躾けられた狂犬だ。
リゼはゆっくり口を開く。
「力も無く、かといえば知恵もなく、」
俺は返す。
「金と権力が一生の伴侶の母を持ちってか?」
しかしリゼは顔をピクリとも変えない。
冗談の効かねえお嬢様だ。
「極め付けに! 魔力は雀の涙ほどしかないとは…!」
ここで初めてリゼが感情を露わにし、その整った顔を歪ませた。
「俺だって、実の息子を殺そうとするような、愛情が雀の涙程しかねぇアンタなんて…。」
片目を閉じ、戯けたように言う。
「絶交だ」
「勘当だ」
「二度とここには戻って来るな」
「来るわけねぇだろこんな肥溜め」
激昂したリゼに対して俺が返すと、言葉に詰まったのか、リゼが白かった肌を赤くして震えていた。
「それに…見た目も可愛げがない!」
「えぇ?そうか?」
俺は目を泳がせながら答えた。といっても俺は泳がせる目が存在しないんだが。
口から火が出そうな女王殿下を前に、寒がりの俺も流石に暑さを覚えた。
それが耐えきれなかったから、
だから、俺は頭巾を取った。
衣擦れの音と、汚らしく埃が舞う。
毛が一本も生えていない俺の頭が露わになって。
思わず近衛兵が息を呑む。
近衛兵士長リオネスが大きな目をさらに見開いて言った。
「本当に、スケルトン…」
白い頭蓋骨。
細い手足。つまり骨。
そしてただ暗い眼窩。
女王殿下は俺の義理の母だ。
母だった人だ。
そして血の繋がった弟がいた。名はクロウス=フォン=ハイネックだ。、
本物の天才だ。最強の魔法属性『雷』に適性があることに加え、膨大な魔力量を持った第二王子だ。
リゼは、夫亡き今、
権力に飲まれ、自らの子供、俺の義理の弟を王に仕立て上げるべく、
底無しの谷に俺をつきおとし、
鎖のように張り巡らされた用水パイプの中に何ヶ月も置き去りにしたり、
もう直接殺しにかかったりした。
何度も。
何度も。
でも、
恨みでもあったのだろう。
それとも、ただ生きたかっただけだったのか。
俺は生き残った。
多大な魔力と引き換えに、皮が剥がれ、肉を失い、
俺はいつしか、そうやって生き残るうちに、
骸骨スケルトンになっていたのだ。
何度も死ぬような仕打ちを受けて、身体が耐えきれなかったのか、俺はスケルトンになっていたのだ。
「それじゃ、ババア。今までありがとうよ。
頭巾。ここに返しておくぜ。」
近衛兵たちが唖然とする中、
カラカラと骨から音を立てながら、母に背を向け、俺はレッドカーペットの上を引き返して行った。
扉を閉める音が響き、リゼはやっと我に帰った。
「何をしているの!! 魔法技術部門に回す約束だったでしょう。早く奴を追いなさい!!」
「あっ!? 申し訳ありませんすぐ行きます!!」
リオネスは弾かれたようにそう言うと、
近衛兵を連れてわたわたと扉の外に出て行った。
…これが3年前の話。
悪夢のような出来事が俺たちを襲うのは、ちょうど今日。
0
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
〈本編完結〉わたくしは悪役令嬢になれなかった
塚本 結理
ファンタジー
「返しなさい! その体はわたくしのものよ!」
ある日ルミエラが目覚めると、転生者だという女に体を奪われていた。ルミエラは憤慨し、ありとあらゆる手を尽くして己の体を取り戻そうとする。
これは転生者に人生を奪われたひとりの少女のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる