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第一話『スケルトン』は追放される

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「貴様のような出来損ない。王家に相応しくないわ」





豪奢な玉座に腰を下ろし、

凍えるような表情を顔に讃えて言うのはリゼ=フリードリヒ女王その人である。
そして俺の義理の母。
圧倒的な魔力量より、母だった人の蔑んだ目線の方が数倍辛くて。
膝が笑いそうになってしまう。


‥いや、
…上等だ。
俺はねめあげるようにして女王様を見た。


「奇遇だなババア。ちょうど俺も似たような事考えてたぜ?」


玉座から階段を数段跨ぎ、

赤いカーペットをしかれた道の上。

彼女が見下ろす先に突っ立っている人影。

ボロボロのパーカーに似た服を着て、

青い頭巾と赤いマフラーを巻いた俺は。

口汚く女王殿下を罵った。

一瞬の間をおき、

女騎士リオネス及び近衛兵が色めき立つが、

リゼが手で制止した。

それだけで大人しくなるのだからよく躾けられた狂犬だ。

リゼはゆっくり口を開く。


「力も無く、かといえば知恵もなく、」


俺は返す。


「金と権力が一生の伴侶の母を持ちってか?」


しかしリゼは顔をピクリとも変えない。

冗談の効かねえお嬢様だ。


「極め付けに! 魔力は雀の涙ほどしかないとは…!」



ここで初めてリゼが感情を露わにし、その整った顔を歪ませた。


「俺だって、実の息子を殺そうとするような、愛情が雀の涙程しかねぇアンタなんて…。」



片目を閉じ、戯けたように言う。






「絶交だ」
「勘当だ」






「二度とここには戻って来るな」


「来るわけねぇだろこんな肥溜め」


激昂したリゼに対して俺が返すと、言葉に詰まったのか、リゼが白かった肌を赤くして震えていた。


「それに…見た目も可愛げがない!」


「えぇ?そうか?」


俺は目を泳がせながら答えた。といっても俺は泳がせる目が存在しないんだが。

口から火が出そうな女王殿下を前に、寒がりの俺も流石に暑さを覚えた。


それが耐えきれなかったから、

だから、俺は頭巾を取った。

衣擦れの音と、汚らしく埃が舞う。

毛が一本も生えていない俺の頭が露わになって。

思わず近衛兵が息を呑む。

近衛兵士長リオネスが大きな目をさらに見開いて言った。


「本当に、スケルトン…」


白い頭蓋骨。
細い手足。つまり骨。
そしてただ暗い眼窩。

女王殿下は俺の義理の母だ。

母だった人だ。

そして血の繋がった弟がいた。名はクロウス=フォン=ハイネックだ。、

本物の天才だ。最強の魔法属性『雷』に適性があることに加え、膨大な魔力量を持った第二王子だ。

リゼは、夫亡き今、

権力に飲まれ、自らの子供、俺の義理の弟を王に仕立て上げるべく、

底無しの谷に俺をつきおとし、

鎖のように張り巡らされた用水パイプの中に何ヶ月も置き去りにしたり、

もう直接殺しにかかったりした。

何度も。

何度も。

でも、

恨みでもあったのだろう。
それとも、ただ生きたかっただけだったのか。


俺は生き残った。

多大な魔力と引き換えに、皮が剥がれ、肉を失い、

俺はいつしか、そうやって生き残るうちに、

骸骨スケルトンになっていたのだ。


何度も死ぬような仕打ちを受けて、身体が耐えきれなかったのか、俺はスケルトンになっていたのだ。


「それじゃ、ババア。今までありがとうよ。
 頭巾。ここに返しておくぜ。」


近衛兵たちが唖然とする中、

カラカラと骨から音を立てながら、母に背を向け、俺はレッドカーペットの上を引き返して行った。

扉を閉める音が響き、リゼはやっと我に帰った。


「何をしているの!! 魔法技術部門に回す約束だったでしょう。早く奴を追いなさい!!」


「あっ!? 申し訳ありませんすぐ行きます!!」

リオネスは弾かれたようにそう言うと、
近衛兵を連れてわたわたと扉の外に出て行った。


…これが3年前の話。


悪夢のような出来事が俺たちを襲うのは、ちょうど今日。
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