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第55話 少女達の行動原理
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「……」
彼の意図を察して、私は黙り込んでしまいました。
違和感はあったのですが……彼は、1人部屋を取りませんでした。
代わりに2人部屋を取ったので、その部屋に泊まるつもりなのでしょう。
ということは、この男……私を、自分と同じ部屋に泊めるつもりなのでしょうか?
最初からそのつもりだったから、あんなに上機嫌で奮発した、ということのように思えます。
「安心しろ。今すぐに押し倒すつもりなどない」
「……信用できません」
「だが、お前には知りたいことがあるはずだ。この前は、俺の命令に逆らった妹達が、今回はお前を見捨てたんだからな」
「見捨ててなど……!」
少女達は、ただ、彼の命令に従っただけです。
私に、彼女達への不信感を植え付けようとしているのであれば、そんな企みは無駄です。
しかし、彼は、私のことを見下すように笑いました。
「あいつらを信じている、ということか? 甘い。あまりにも甘いな……。お前は勘違いをしている。それを教えてやろう」
「嫌だと言っているでしょう!?」
「……よく考えろ。俺にそのつもりがあるなら、この場で俺を拒んでも、身体を委ねるのが少し遅くなるだけだ。お前の妹達が、俺に逆らって、お前を守らない限りはな」
「……」
「お前は、自分の妹達の行動原理を、正確に把握する必要があるはずだ。たとえ、リスクがあってもだ。違うか?」
そう言って、彼は私を引っ張りました。
結局、私は彼に従ってしまいました。
彼のことは、全く信用できませんが……私の目的は、自分の身を守ることではなく、少女達を助けることなのです。
先日、少女達は彼に逆らって、私のことを助けてくれました。
ところが、今日は、私を置いたまま出かけてしまいました。
彼女達の行動原理に、私が把握していない部分があるのだとすれば、その詳細を、私は知らなければなりません。
彼は、自分の部屋の前まで来ると、私から手を離して先に入りました。
私が逃げ出すことはない、と確信しているのでしょう。
警戒しながら、私はその後を追います。
彼は、部屋の入り口から離れた場所にあるベッドに、倒れ込むようにして寝転がりました。
まるで、私に襲いかかるつもりがないことを、証明しようとしているようです。
「やはり、ベッドはいいな。お前も、こちらに来ないか?」
「お断りします!」
「そうか。まあ、いいだろう」
そう言って、彼は楽しそうに笑いました。
私が逆らったというのに、怒り狂う様子はありません。
「……それで、御主人様は、本当にあの子達のことを把握しているのですか?」
「当然だ。あいつらは、俺が生み出したんだからな」
「ですが……先日、あの子達は、御主人様に逆らいました」
「そうだ。だが、それは当然のことだ。あいつらは、俺から離反したわけではないし、今までと行動原理が変わったわけではない」
「……どういうことですか?」
「忘れたのか? あいつらは、俺の得になるように行動する。たとえ、俺の命令に逆らってもな」
「……」
そのことは、当然ながら覚えています。
ですが、それは……彼が、自分を殺すように命じたような、明らかに不利になる場面の話だったはずです。
「俺は、お前の腕と脚を折るように、ナナに命じた。だが、それは俺の得になる命令ではなかった。そういうことだ」
「……よく分かりません。私が重傷を負っても、御主人様が損をすることは、ないように思えますが?」
「だが、俺はお前のことを愛しているからな」
「……」
信じられない言葉でした。
あれだけ私に暴言を吐き、肉体的な苦痛も与えて、おぞましい方法で性欲を処理させて……散々苦しめておきながら、私のことを愛している……?
この男は、やはり頭がおかしいようです。
そんな私の内心に気付いた様子もなく、彼は言いました。
「お前に重傷を負わせて、普通に愛し合うことができなくなるのは、俺の望みとは違うし、俺にとって損になる。だから、あいつらは俺を止めた。そういうことだ」
「……ですが、ナナは、ルナさんを助けてくれました。あれは、御主人様の得になる行動ではなかったはずです」
「それは、あの女が美人だったからだ」
「えっ……?」
「殺したら勿体ないだろう? だから、マリーは魔法を外し、ミーシャはあの女を即死させなかった」
「……」
この男……私のことを愛していると言った直後に、こんなことを言うなんて……。
本当に、とんでもない男です。
どうしてこんなことを言えるのか、全く理解できませんでした。
彼の意図を察して、私は黙り込んでしまいました。
違和感はあったのですが……彼は、1人部屋を取りませんでした。
代わりに2人部屋を取ったので、その部屋に泊まるつもりなのでしょう。
ということは、この男……私を、自分と同じ部屋に泊めるつもりなのでしょうか?
最初からそのつもりだったから、あんなに上機嫌で奮発した、ということのように思えます。
「安心しろ。今すぐに押し倒すつもりなどない」
「……信用できません」
「だが、お前には知りたいことがあるはずだ。この前は、俺の命令に逆らった妹達が、今回はお前を見捨てたんだからな」
「見捨ててなど……!」
少女達は、ただ、彼の命令に従っただけです。
私に、彼女達への不信感を植え付けようとしているのであれば、そんな企みは無駄です。
しかし、彼は、私のことを見下すように笑いました。
「あいつらを信じている、ということか? 甘い。あまりにも甘いな……。お前は勘違いをしている。それを教えてやろう」
「嫌だと言っているでしょう!?」
「……よく考えろ。俺にそのつもりがあるなら、この場で俺を拒んでも、身体を委ねるのが少し遅くなるだけだ。お前の妹達が、俺に逆らって、お前を守らない限りはな」
「……」
「お前は、自分の妹達の行動原理を、正確に把握する必要があるはずだ。たとえ、リスクがあってもだ。違うか?」
そう言って、彼は私を引っ張りました。
結局、私は彼に従ってしまいました。
彼のことは、全く信用できませんが……私の目的は、自分の身を守ることではなく、少女達を助けることなのです。
先日、少女達は彼に逆らって、私のことを助けてくれました。
ところが、今日は、私を置いたまま出かけてしまいました。
彼女達の行動原理に、私が把握していない部分があるのだとすれば、その詳細を、私は知らなければなりません。
彼は、自分の部屋の前まで来ると、私から手を離して先に入りました。
私が逃げ出すことはない、と確信しているのでしょう。
警戒しながら、私はその後を追います。
彼は、部屋の入り口から離れた場所にあるベッドに、倒れ込むようにして寝転がりました。
まるで、私に襲いかかるつもりがないことを、証明しようとしているようです。
「やはり、ベッドはいいな。お前も、こちらに来ないか?」
「お断りします!」
「そうか。まあ、いいだろう」
そう言って、彼は楽しそうに笑いました。
私が逆らったというのに、怒り狂う様子はありません。
「……それで、御主人様は、本当にあの子達のことを把握しているのですか?」
「当然だ。あいつらは、俺が生み出したんだからな」
「ですが……先日、あの子達は、御主人様に逆らいました」
「そうだ。だが、それは当然のことだ。あいつらは、俺から離反したわけではないし、今までと行動原理が変わったわけではない」
「……どういうことですか?」
「忘れたのか? あいつらは、俺の得になるように行動する。たとえ、俺の命令に逆らってもな」
「……」
そのことは、当然ながら覚えています。
ですが、それは……彼が、自分を殺すように命じたような、明らかに不利になる場面の話だったはずです。
「俺は、お前の腕と脚を折るように、ナナに命じた。だが、それは俺の得になる命令ではなかった。そういうことだ」
「……よく分かりません。私が重傷を負っても、御主人様が損をすることは、ないように思えますが?」
「だが、俺はお前のことを愛しているからな」
「……」
信じられない言葉でした。
あれだけ私に暴言を吐き、肉体的な苦痛も与えて、おぞましい方法で性欲を処理させて……散々苦しめておきながら、私のことを愛している……?
この男は、やはり頭がおかしいようです。
そんな私の内心に気付いた様子もなく、彼は言いました。
「お前に重傷を負わせて、普通に愛し合うことができなくなるのは、俺の望みとは違うし、俺にとって損になる。だから、あいつらは俺を止めた。そういうことだ」
「……ですが、ナナは、ルナさんを助けてくれました。あれは、御主人様の得になる行動ではなかったはずです」
「それは、あの女が美人だったからだ」
「えっ……?」
「殺したら勿体ないだろう? だから、マリーは魔法を外し、ミーシャはあの女を即死させなかった」
「……」
この男……私のことを愛していると言った直後に、こんなことを言うなんて……。
本当に、とんでもない男です。
どうしてこんなことを言えるのか、全く理解できませんでした。
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