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犬は飼い主に似る?1
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「グレイス、おいで」
反応なし。
「グレイス、こっちよ」
やはり反応なし。
「グレイスー」
無邪気な仔犬は訓練に飽きてしまったらしく、とってこさせるはずだったボールにじゃれていて沙耶の呼びかけにも反応しなくなってしまった。
グレイスが沙耶の元に来て2カ月。大倉家の広いリビングに続くサンルームは、置かれていたトレーニング用の機材が取り払われてグレイスの運動場に作り変えられていた。予防接種も済んでいるので、外で散歩をさせても問題ないのだが、未だに残暑が厳しく、犬よりも飼い主の沙耶の体を心配した義総がサンルームを改装してくれたのだ。
「グレイス」
沙耶は根気よく呼びかけるが、今度は骨の形をしたおもちゃを見つけてガジガジと歯をたてている。
「相変わらず奔放な姫君だな」
沙耶が顔を上げると、戸口に苦笑する義総の姿があった。その後ろにはアレクサンダーの姿もある。成犬となったアレクサンダーにはサンルーム程度の広さでの運動は充分とはいえず、外で運動させていたのだ。義総自身もそれに付き合って体を動かしていたので、額に汗を浮かべている。
「どうぞ……」
沙耶が用意してあったタオルを差し出すと、義総はそれで汗を拭き、一緒に用意してあったスポーツドリンクで喉を潤す。最新の素材でできたスポーツウエアは汗で張り付くような不快感は無いが、それでもすぐにシャワーを浴びてさっぱりしたい。
「背中を流してくれるか?」
「もう……」
沙耶の腰に手を回し手引き寄せ、その顔を覗き込むと彼女は恥ずかしげに俯く。今までの経験上、それだけでは絶対済まない事を彼女も分かっているので、素直に頷く訳にはいかない。まだ日は高く、今から体を繋げてしまったら、彼女自身の体がもたないだろう。
「それは残念」
沙耶が体を離すと義総は苦笑して彼女の頬に口づける。
飼い主たちがいちゃついている間にアレクサンダーはグレイスに近寄り、フンフンと鼻をならして彼女の匂いを嗅いでいる。グレイスはお尻をぺたりと床につけて座っていたのだが、突然アレクサンダーが彼女の背後から伸し掛かるように覆いかぶさる。
「アレク! 待て、その子はまだ子供だ!」
早まろうとする雄犬を義総は慌てて首輪を掴んで押さえ、クンクン泣いて逃げてきたグレイスを沙耶は抱き締めた。その騒ぎに気付いた塚原と綾乃もサンルームに姿を現す。
「如何されましたか?」
必死に逃れようとしているアレクサンダーを押さえながら義総が事情を説明すると、塚原はすぐに犬の世話係を呼んで暴れる雄犬をサンルームから連れ出し、外の犬小屋(広さ8畳、空調付)へ連れて行くように指示した。
「しばらく母屋へは入れない方がいいでしょう」
「アレクはどうしたの?」
昨日までは2匹を一緒にしても何の問題も無かった。よく訓練されたアレクサンダーの乱行に沙耶は戸惑いを隠せない。
「アレクがどうしたと言うよりは、グレイスが発情期に入ったと言った方が正しいな」
再びかいた汗を拭きながら義総が説明すると、沙耶もようやく納得する。グレイスを飼いはじめた頃に受けた注意点を彼女も思い出したらしい。
「いずれ番わせるつもりだが、子供のグレイスにはまだまだ早いな」
沙耶に抱かれているグレイスの頭を撫でながら義総が苦笑すると、側で聞いていた綾乃が一言感想を漏らす。
「犬は飼い主に似るといいますが、本当にそっくりですこと」
「……何が言いたい?」
「身に覚えはございませんか?」
「……」
義総は返す言葉が無かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
こんなぬるい話ですみません
反応なし。
「グレイス、こっちよ」
やはり反応なし。
「グレイスー」
無邪気な仔犬は訓練に飽きてしまったらしく、とってこさせるはずだったボールにじゃれていて沙耶の呼びかけにも反応しなくなってしまった。
グレイスが沙耶の元に来て2カ月。大倉家の広いリビングに続くサンルームは、置かれていたトレーニング用の機材が取り払われてグレイスの運動場に作り変えられていた。予防接種も済んでいるので、外で散歩をさせても問題ないのだが、未だに残暑が厳しく、犬よりも飼い主の沙耶の体を心配した義総がサンルームを改装してくれたのだ。
「グレイス」
沙耶は根気よく呼びかけるが、今度は骨の形をしたおもちゃを見つけてガジガジと歯をたてている。
「相変わらず奔放な姫君だな」
沙耶が顔を上げると、戸口に苦笑する義総の姿があった。その後ろにはアレクサンダーの姿もある。成犬となったアレクサンダーにはサンルーム程度の広さでの運動は充分とはいえず、外で運動させていたのだ。義総自身もそれに付き合って体を動かしていたので、額に汗を浮かべている。
「どうぞ……」
沙耶が用意してあったタオルを差し出すと、義総はそれで汗を拭き、一緒に用意してあったスポーツドリンクで喉を潤す。最新の素材でできたスポーツウエアは汗で張り付くような不快感は無いが、それでもすぐにシャワーを浴びてさっぱりしたい。
「背中を流してくれるか?」
「もう……」
沙耶の腰に手を回し手引き寄せ、その顔を覗き込むと彼女は恥ずかしげに俯く。今までの経験上、それだけでは絶対済まない事を彼女も分かっているので、素直に頷く訳にはいかない。まだ日は高く、今から体を繋げてしまったら、彼女自身の体がもたないだろう。
「それは残念」
沙耶が体を離すと義総は苦笑して彼女の頬に口づける。
飼い主たちがいちゃついている間にアレクサンダーはグレイスに近寄り、フンフンと鼻をならして彼女の匂いを嗅いでいる。グレイスはお尻をぺたりと床につけて座っていたのだが、突然アレクサンダーが彼女の背後から伸し掛かるように覆いかぶさる。
「アレク! 待て、その子はまだ子供だ!」
早まろうとする雄犬を義総は慌てて首輪を掴んで押さえ、クンクン泣いて逃げてきたグレイスを沙耶は抱き締めた。その騒ぎに気付いた塚原と綾乃もサンルームに姿を現す。
「如何されましたか?」
必死に逃れようとしているアレクサンダーを押さえながら義総が事情を説明すると、塚原はすぐに犬の世話係を呼んで暴れる雄犬をサンルームから連れ出し、外の犬小屋(広さ8畳、空調付)へ連れて行くように指示した。
「しばらく母屋へは入れない方がいいでしょう」
「アレクはどうしたの?」
昨日までは2匹を一緒にしても何の問題も無かった。よく訓練されたアレクサンダーの乱行に沙耶は戸惑いを隠せない。
「アレクがどうしたと言うよりは、グレイスが発情期に入ったと言った方が正しいな」
再びかいた汗を拭きながら義総が説明すると、沙耶もようやく納得する。グレイスを飼いはじめた頃に受けた注意点を彼女も思い出したらしい。
「いずれ番わせるつもりだが、子供のグレイスにはまだまだ早いな」
沙耶に抱かれているグレイスの頭を撫でながら義総が苦笑すると、側で聞いていた綾乃が一言感想を漏らす。
「犬は飼い主に似るといいますが、本当にそっくりですこと」
「……何が言いたい?」
「身に覚えはございませんか?」
「……」
義総は返す言葉が無かった。
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こんなぬるい話ですみません
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