転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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序章:よくある展開とよくある勘違い

第3話 違法契約にご注意を

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 この発言にノアは目を見開いて素っ頓狂な声をあげた。


「ライトではないって……この画像どう見たって貴様だろ!」


 慌てた様子でノアはくうに手をかざす。すると、彼女がかざした先に四角くて青いモニターのようなものが現れた。


 モニター画面に映ったのは、間違いなく頼人だった。隠し撮りされたのか本人は気づいていないようで、真顔で伸びた茶色の髪を掻きあげている。


 頼人の顔を改めて見てもノアは事態を飲み込めていないようだった。


「この世にまったく同じ顔が二人もいる訳ないだろ!」


 顔をしかめながらノアは奥歯を噛みしめる。どうやら、相当うろたえているようだ。まあ、初めて見る奴ならそんなリアクションにもなるか。


「まったく同じ顔じゃねえよ。目元をよく見ろ」


 俺の言葉にノアはモニターの画像の目元をズームした。そこには、確かに俺と酷似した顔がある。特徴的な三白眼も同じだ。だが、俺と頼人の違いはそこにある。


「ほら、こいつのほうが俺より黒目が大きいだろ。それに、こいつの右目の下には泣きぼくろがあるが、俺にはねえ」


 黒目が大きいことであいつのほうが顔が整っているのは悔しいが、ここが俺と頼人の決定的な違いだから仕方がない。


 それでも信じられないのか、ノアは口をあんぐりと開けながら、震えた手で俺を指した。


「馬鹿な……だって私があの世界を探した時は貴様しか……」


 そこまで言いかけたところでやっと理解したのか、ノアは持ち前の切れ長の目を見開く。


 そんな彼女に俺は呆れた表情で答えた。


「俺は大館麦人オオダテムギト。そいつの双子の兄だ」


「双子……だと……」


 余程衝撃的だったのか、ノアは血の引けた青白い顔になり、崩れるように両膝ついてうなだれた。


「……確かに貴様を見た時、神が言うほど優れた奴にも見えなかったが……そういうことだったのか……」


「おいコラ。全部聞こえてるぞこのアマ」


 ブツブツと呟くノアに思わずツッコミを入れる。
 しかし、ノアはそれどころではないようで、自分の失態に肩を落としていた。


 そう思ったのも束の間、ノアはガバッと顔を上げ、ギラギラとした目で俺を見てきた。


「もうこの際貴様でいい。おい、魔王をぶっ飛ばすぞ」


「どんだけテキトウなんだよ! 嫌に決まってるだろ!」


「しょうがないだろ他に手立てがないんだし! それに普通双子だと思うか!」


「俺のせいかよ! どう考えてもお前の下調べ不足だろ!」


 お互い睨み合い、ワーギャーと叫び喚く。


 正直俺は弟に間違えられた時点で魔王退治のやる気が削がれていた。


 弟の優秀さは俺も身をもって知っている。成績優秀。運動神経抜群。大学も都内の国公立に行ったし、毎年学年首席を取っているらしい。悔しいが、魔王退治に勇者としてスカウトされるのもわかる気がするのだ。


 だが、ノアがこんなに必死なのにも理由があるらしかった。


「もう狭間の世界ここに来ている時点で私は貴様の案内人になる契約が成立してしまってるんだよ」


「待て待て待て。俺がいつお前と契約したんだ」


「ここに来る前に話をつけたであろう」


 ノアに言われ、不審に思いながらも彼との会話を思い出す。


 確か道端で突然猫のこいつに話しかけられたのだ。


 確か……。




 『貴様、この世界を変えたいか?』




 『変えられるものなら、変えたいけど……』




「あれかぁぁぁ!!」


 ちょっと待て。あれが契約か? あんな漠然としているうえに誘導じみた問いで契約が成り立つというのか。


「テメエ! 契約するならもっと丁寧に説明しろよ!」


「説明したところで貴様は魔王を倒すことに同意したのかよ。私の作戦勝ちだ」


「もう詐欺じゃねえかよ! そんな契約破棄しろ、破棄!!」


 喚く俺がうるさいのか、ノアは俺から目線を逸らし、面倒臭そうに息を吐いた。


「できることなら私もしたいさ。でも、一度した契約は案内人からは破棄できないし、貴様も現実世界あっちじゃもう死んでるし、お互い他に方法がないのだよ」


「……は?」


 あまりにもノアがさらりと言うものだから危うく聞き逃すところだった――俺が、もう死んでいると。
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