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第1章 異世界《エムメルク》の歩き方
第18話 案内人、仕事をする
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ノアが「生き返させられる者がいない」と言っていたから、てっきり【治療師】がいないオワタ式の世界だと思っていた。しかし、ミドリーさんのような神官がいるなら、この魔王討伐の任務も少しは安全であろう。
ということは、だ。
「あれだけのことができるなら、蘇生もできるんじゃねえの?」
しかし、ノアはすぐに否定した。
「いや……むしろ、治療くらいのことしかできないのだ」
ノアいわく、治療魔法に値する光属性の魔法を扱える人は極端に少ないのだそうだ。それに、治療魔法は魔力の消費量が他の魔法と桁違いに多い。なので、たとえ神官でもそもそも蘇生魔法を使えるほどの魔力がないらしい。
「エルフくらい魔力があるならまだしも、普通の人間じゃまず無理だ。期待するな」
「チッ……そう上手く行かねえってことな」
舌打ちしながら、頭をガシガシと強く掻く。それでも、怪我しても回復してくれる人がいるだけまだマシなのだろう。
「それにしても……クラスがバレそうになるとは思わなかったぜ」
先程の出来事を思い出しただけで冷や汗が出た。やはり、あの時バレていたらアンジェにも切られていたのだろうか。不意にルソードと戦っていた時の彼の鋭い眼差しを思い出すと、恐怖で背筋がゾクッとした。
そんな俺の気も知らず、ノアは相変わらず淡々としている。
「貴様は私と契約しているからクラスも能力値もわかるが、他の連中はああやって『神の声』を聞かないと自分のクラスすらわからないからな」
「神の声?」
「さっきミドリーがやっていた奴だよ」
ノアが言うには、エムメルクではクラスも魔力も神により与えられた力と言われているらしい。そんな魔力を探ることをここでは「神の声を聞く」というのだとか。随分と大それたことだ。
「十五歳から魔力も安定するから、神官はああやって自分のクラスを教えてやるんだ。それも神官の仕事ってことよ。その声を頼りにここの連中は仕事をする。適材適所を最初から見極めているのだよ」
「へえ……いいな、それ」
その部分だけ聞けば、この世界の人が少し羨ましく感じた。
こっちなんざできるかどうかもわからない仕事に対して無理矢理志望動機を書いて会社に「雇ってくれ」と懇願するのだ。最初から出来る仕事に就いたほうが効率がいいに決まっているし、何より気持ち的にも楽だ。現実世界でも「神の声」が聞きたいぜ。
「それでミドリーさんが【治療師】で、アンジェが【剣士】ってとこか……んで、俺は?」
「【赤子の悪魔】」
「やっぱり俺だけおかしくね!?」
思わず声をあげてツッコミを入れると、近くを通っていたマダムたちが俺のほうを見てコソコソと話していた。
やばい。話に夢中になってあまり周りを見ていなかった。傍から見たら頭の上に猫を乗せて話している野郎だ。怪しいに決まっている。
「ったく、面倒臭えなあ……」
ノアごときに一切遠慮したくないのに、会話するにも気を遣わなければいけないなんて、なんて億劫なのだ。
だが、俺の思いとは裏腹にノアは呑気だった。
「今更であろう。それもこれも」
そう言ってノアは俺の頭から太ももに飛び降り、膝の上で背中を丸めてくつろいだ。
くだらない話をしているうちに、遠くからアンジェの姿が見えた。
アンジェが満面の笑みを浮かべながら、手を振って駆けてくる。その姿は先ほどのマダムたちにも見えているようで、「あら」と彼女たちを笑顔にした。
「アンジェ君、今日も素敵ね」
「ええ、本当、すっかりいい男になっちゃって」
彼の姿を見た途端、マダムたちの頬が赤く染まっている。これは夕焼けのせいなのではないだろう。マダムたちの目の保養として扱われているなんて、アンジェも凄いものだ。
そんな彼女たちの熱い視線に気づいたのか、アンジェは二人に向けてウインクしながら両手で手を振った。
彼に釣られてマダムたちも笑顔で手を振る。もうアイドルじゃん。
そういったやり取りを半笑いで見ていると、マダムの一人が一瞬にして表情が暗くなった。
「アンジェ君凄いわ……まだあれから半年しか経っていないのに」
――半年?
不意に聞こえてきた意味深な言葉に思わず眉をひそめる。けれども、マダムたちの顔色を伺う前に、たどり着いたアンジェが俺の肩を叩いた。
ということは、だ。
「あれだけのことができるなら、蘇生もできるんじゃねえの?」
しかし、ノアはすぐに否定した。
「いや……むしろ、治療くらいのことしかできないのだ」
ノアいわく、治療魔法に値する光属性の魔法を扱える人は極端に少ないのだそうだ。それに、治療魔法は魔力の消費量が他の魔法と桁違いに多い。なので、たとえ神官でもそもそも蘇生魔法を使えるほどの魔力がないらしい。
「エルフくらい魔力があるならまだしも、普通の人間じゃまず無理だ。期待するな」
「チッ……そう上手く行かねえってことな」
舌打ちしながら、頭をガシガシと強く掻く。それでも、怪我しても回復してくれる人がいるだけまだマシなのだろう。
「それにしても……クラスがバレそうになるとは思わなかったぜ」
先程の出来事を思い出しただけで冷や汗が出た。やはり、あの時バレていたらアンジェにも切られていたのだろうか。不意にルソードと戦っていた時の彼の鋭い眼差しを思い出すと、恐怖で背筋がゾクッとした。
そんな俺の気も知らず、ノアは相変わらず淡々としている。
「貴様は私と契約しているからクラスも能力値もわかるが、他の連中はああやって『神の声』を聞かないと自分のクラスすらわからないからな」
「神の声?」
「さっきミドリーがやっていた奴だよ」
ノアが言うには、エムメルクではクラスも魔力も神により与えられた力と言われているらしい。そんな魔力を探ることをここでは「神の声を聞く」というのだとか。随分と大それたことだ。
「十五歳から魔力も安定するから、神官はああやって自分のクラスを教えてやるんだ。それも神官の仕事ってことよ。その声を頼りにここの連中は仕事をする。適材適所を最初から見極めているのだよ」
「へえ……いいな、それ」
その部分だけ聞けば、この世界の人が少し羨ましく感じた。
こっちなんざできるかどうかもわからない仕事に対して無理矢理志望動機を書いて会社に「雇ってくれ」と懇願するのだ。最初から出来る仕事に就いたほうが効率がいいに決まっているし、何より気持ち的にも楽だ。現実世界でも「神の声」が聞きたいぜ。
「それでミドリーさんが【治療師】で、アンジェが【剣士】ってとこか……んで、俺は?」
「【赤子の悪魔】」
「やっぱり俺だけおかしくね!?」
思わず声をあげてツッコミを入れると、近くを通っていたマダムたちが俺のほうを見てコソコソと話していた。
やばい。話に夢中になってあまり周りを見ていなかった。傍から見たら頭の上に猫を乗せて話している野郎だ。怪しいに決まっている。
「ったく、面倒臭えなあ……」
ノアごときに一切遠慮したくないのに、会話するにも気を遣わなければいけないなんて、なんて億劫なのだ。
だが、俺の思いとは裏腹にノアは呑気だった。
「今更であろう。それもこれも」
そう言ってノアは俺の頭から太ももに飛び降り、膝の上で背中を丸めてくつろいだ。
くだらない話をしているうちに、遠くからアンジェの姿が見えた。
アンジェが満面の笑みを浮かべながら、手を振って駆けてくる。その姿は先ほどのマダムたちにも見えているようで、「あら」と彼女たちを笑顔にした。
「アンジェ君、今日も素敵ね」
「ええ、本当、すっかりいい男になっちゃって」
彼の姿を見た途端、マダムたちの頬が赤く染まっている。これは夕焼けのせいなのではないだろう。マダムたちの目の保養として扱われているなんて、アンジェも凄いものだ。
そんな彼女たちの熱い視線に気づいたのか、アンジェは二人に向けてウインクしながら両手で手を振った。
彼に釣られてマダムたちも笑顔で手を振る。もうアイドルじゃん。
そういったやり取りを半笑いで見ていると、マダムの一人が一瞬にして表情が暗くなった。
「アンジェ君凄いわ……まだあれから半年しか経っていないのに」
――半年?
不意に聞こえてきた意味深な言葉に思わず眉をひそめる。けれども、マダムたちの顔色を伺う前に、たどり着いたアンジェが俺の肩を叩いた。
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