転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

文字の大きさ
18 / 242
第1章 異世界《エムメルク》の歩き方

第18話 案内人、仕事をする

しおりを挟む
 ノアが「生き返させられる者がいない」と言っていたから、てっきり【治療師ヒーラー】がいないオワタ式の世界だと思っていた。しかし、ミドリーさんのような神官がいるなら、この魔王討伐の任務も少しは安全であろう。

 ということは、だ。

「あれだけのことができるなら、蘇生もできるんじゃねえの?」

 しかし、ノアはすぐに否定した。

「いや……むしろ、治療くらいのことしかできないのだ」

 ノアいわく、治療魔法に値する光属性の魔法を扱える人は極端に少ないのだそうだ。それに、治療魔法は魔力の消費量が他の魔法と桁違いに多い。なので、たとえ神官でもそもそも蘇生魔法を使えるほどの魔力がないらしい。

「エルフくらい魔力があるならまだしも、普通の人間じゃまず無理だ。期待するな」

「チッ……そう上手く行かねえってことな」

 舌打ちしながら、頭をガシガシと強く掻く。それでも、怪我しても回復してくれる人がいるだけまだマシなのだろう。

「それにしても……クラスがバレそうになるとは思わなかったぜ」

 先程の出来事を思い出しただけで冷や汗が出た。やはり、あの時バレていたらアンジェにも切られていたのだろうか。不意にルソードと戦っていた時の彼の鋭い眼差しを思い出すと、恐怖で背筋がゾクッとした。

 そんな俺の気も知らず、ノアは相変わらず淡々としている。

「貴様は私と契約しているからクラスも能力値もわかるが、他の連中はああやって『神の声』を聞かないと自分のクラスすらわからないからな」

「神の声?」

「さっきミドリーがやっていた奴だよ」

 ノアが言うには、エムメルクではクラスも魔力も神により与えられた力と言われているらしい。そんな魔力を探ることをここでは「神の声を聞く」というのだとか。随分と大それたことだ。

「十五歳から魔力も安定するから、神官はああやって自分のクラスを教えてやるんだ。それも神官の仕事ってことよ。その声を頼りにここの連中は仕事をする。適材適所を最初から見極めているのだよ」

「へえ……いいな、それ」

 その部分だけ聞けば、この世界の人が少し羨ましく感じた。

 こっちなんざできるかどうかもわからない仕事に対して無理矢理志望動機を書いて会社に「雇ってくれ」と懇願するのだ。最初から出来る仕事に就いたほうが効率がいいに決まっているし、何より気持ち的にも楽だ。現実世界でも「神の声」が聞きたいぜ。

「それでミドリーさんが【治療師ヒーラー】で、アンジェが【剣士ソードマン】ってとこか……んで、俺は?」

「【赤子の悪魔ベビー・サタン】」

「やっぱり俺だけおかしくね!?」

 思わず声をあげてツッコミを入れると、近くを通っていたマダムたちが俺のほうを見てコソコソと話していた。

 やばい。話に夢中になってあまり周りを見ていなかった。傍から見たら頭の上に猫を乗せて話している野郎だ。怪しいに決まっている。

「ったく、面倒臭えなあ……」

 ノアごときに一切遠慮したくないのに、会話するにも気を遣わなければいけないなんて、なんて億劫なのだ。

 だが、俺の思いとは裏腹にノアは呑気だった。

「今更であろう。それもこれも」

 そう言ってノアは俺の頭から太ももに飛び降り、膝の上で背中を丸めてくつろいだ。

 くだらない話をしているうちに、遠くからアンジェの姿が見えた。

 アンジェが満面の笑みを浮かべながら、手を振って駆けてくる。その姿は先ほどのマダムたちにも見えているようで、「あら」と彼女たちを笑顔にした。

「アンジェ君、今日も素敵ね」

「ええ、本当、すっかりいい男になっちゃって」

 彼の姿を見た途端、マダムたちの頬が赤く染まっている。これは夕焼けのせいなのではないだろう。マダムたちの目の保養として扱われているなんて、アンジェも凄いものだ。

 そんな彼女たちの熱い視線に気づいたのか、アンジェは二人に向けてウインクしながら両手で手を振った。

 彼に釣られてマダムたちも笑顔で手を振る。もうアイドルじゃん。

 そういったやり取りを半笑いで見ていると、マダムの一人が一瞬にして表情が暗くなった。

「アンジェ君凄いわ……まだあれから半年しか経っていないのに」

 ――半年?

 不意に聞こえてきた意味深な言葉に思わず眉をひそめる。けれども、マダムたちの顔色を伺う前に、たどり着いたアンジェが俺の肩を叩いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...