転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第7章 流浪人とエルフの子

第116話 天才と変人は紙一重

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 そんなことしているうちに、親父が魚の調理を終えた。

「ど、どうぞ……」

 親父がコトッと机に皿を置く。皿には焼いただけの魚と、もう片方の小さな皿には今朝のあまりの麦飯が置かれている。客人に出すとは思えないほどの簡素な飯だ。それでもオリビアはキラキラと目を輝かした。

「ありがとうございます! いただきます!」

 オリビアはためらうことなく焼き魚を頬張る。たったこれだけの飯なのに、随分と美味しそうに食べるものだ。それほど食べられてなかったのだろうか。

「ほら、ライザも」

「お、おう」

 親父が俺の分もご飯を置いたので、オリビアと一緒になって食べた。

 変な感じだった。ここに来てから俺と親父の二人だけで食卓を囲んでいた。それなのに今は三人……しかも人間の女と食べている。俺の母親を殺した、人間の。

 けれどもどうしてだろう。憎むべき相手なのに、彼女を見ても憎悪をまったく感じない。むしろ一緒にいて心が穏やかになるような、奇妙な感覚に襲われる。彼女はいったい何者なのだろう。彼女自身が何も警戒していないからだろうか。あれだけ強い魔力があるというのに。

 怪しむように彼女を見ていると、親父がおどおどしながらも彼女に尋ねた。

「あの……つかぬことをお聞きしますが……オリビアさんはどうしてこんなところに来てしまったんですか?」

 まるで腫れ物に触るように尋ねる親父だが、そんなビビりまくりの彼とは正反対に、オリビアはあっけらかんと答えた。

「『ザラクの森』を越えてみたかったんですよ」

「は? 『ザラクの森』を? なんでまた」

 意外、というよりは馬鹿げた理由だった。人間の彼女が、しかもわざわざ危険を冒してまであの森を越えたいなんて、考えられない。

 そう思っていたのに、彼女は笑う。

「知りたかったんだよ。自分の限界を。そして、見たことのない世界を」

「限界……世界……」

 反芻するようにオリビアの言葉を繰り返す。

 オリビアが言うには、言伝でも、書物でも、『ザラクの森』の奥の世界の記録はほぼと言っていいほど残っていないらしい。その理由は明らかだし、明らかにしないことでのデメリットはない。けれども彼女は、たった一人でここまで来た。誰も興味を示さない。知らなくても何も困らないこの土地に、ただ、彼女自身の「知的好奇心」という理由だけで。

「……意味わかんね」

 吐き捨てるように小さく呟くが、彼女は相変わらずニコニコしている。そんな彼女に、親父はさらに問いただす。

「けれども、どうやってここまで来れたのですか? あの森には例の毒霧があるでしょう?」

「ああ、あれですか? 吸わないようにしたんですよ」

「吸わないように……ですって?」

 目をパチクリとさせながら、親父は眼鏡をクイッと上げる。ケロッと当然のように言われたが、あの毒霧を吸わないように抜けるなんて、原理が理解できない。いったい、何を言っているのだ彼女は。おそらく、親父もそう思っているだろう。

 疑る眼差しをオリビアに向けていたが、彼女は得意気な様子で「これこれ」とかぶっていた鉄仮面を指差した。

「これらを改良したんですよ。ウィンド・コアを取り込んで鉄仮面の中で呼吸も可能、かつ毒霧が入らないように風を循環させるようにし、隙間ができないように鎧に形を合わせたんです。あとはこの重量でも扱えるように私の魔法で重力を調整してこれを着たままでも楽に動けるようにして魔物との戦闘も可能にしました。動けるならあとはこちらのものですからね。さっくりと抜けてきましたよ」

「さ、さっくりと……」

 目を輝かせてマシンガンをぶっ放すように語る彼女に、流石の親父も少し退いていた。しかも、自分たちがあそこまで苦労して抜けてきた森を「さっくりと」と表現してきたのだ。ちょっとへこんでいるようにも見える。

「でも、森を抜けられてよかったと思ってますよ。未知なる世界に足を踏み入れることができたし、こうしてあなたたちと出会えたのですから」

 がっくりとうなだれる親父とは裏腹に、オリビアは満足そうだった。彼女の「知的好奇心」は満たされたということなのだろうか。

 そんなことを話しているうちに、彼女が飯を食べ終えた。あんな小量な質素な飯だったのに、彼女は満腹そうに腹を摩って、ホッとしたように息を吐いた。
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