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第7章 流浪人とエルフの子
第118話 運命の糸は最初から
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力を借りるにもまずは里の状況を把握しなければならない。ということで、俺たちは三人で里を巡ることにした。
「さあ、行きましょう」
気合十分のオリビアだったが、彼女はわざと鉄仮面を外していた。
「なんでそれを外すんだよ。あぶねえだろ」
周りに人間とバレたらそれこそ彼女の命が狙われ兼ねないのに、どうしてわざわざ自ら危険を冒しに行くのだろう。
そう思っていたのに、彼女の肝は据わっていた。
「そんなコソコソしたらかえって怪しまれるじゃない。それに、自分を隠している人なんて信用されないじゃない?」
「でも、里の人に襲われるかもしれないじゃん。エルフが人間嫌いだってこと知ってるだろ」
「その時はきっと守ってくれるでしょ? ねえ、ジャンさん」
「え、あ! はい!!」
いきなりオリビアに話を振られ、親父は驚いて肩を竦み上げる。この調子だと、どっちが護られる立場かわからない。
「……俺、頑張るよ」
ため息をつきながら頬を掻くと、オリビアは「あら、素敵」と笑った。その様子を見ながら、親父も「あはは……」と乾いた笑みを浮かべた。
三人で里を巡っている間も、案の定というほど他のエルフの連中は彼女の姿に騒ぎ立てられた。
当然、罵声を飛ばす輩もいれば、彼女を見て叫び声をあげて逃げ出す輩もいた。そんなエルフたちに彼女は詫びるようにお辞儀をし、そっと転がった手作り感満載の鍬を手にした。
目をつぶった彼女の手がぼんやりとオレンジ色に光る。すると、今の今まですぐにでも折れてしまいそうだった鍬が新品同様でしっかりとしたものに変化した。原理はどうでもいい。ただ、人間の彼女がエルフに力を貸したということが周りは信じられないようだ。
視線と集めながらも、彼女は無言で作業をしていた。
すでにある道具は先ほどの鍬のように強化をし、足りないものは【創造者】の力で新たに作った。道具が新調されれば作業効率は格段に上がる。生活だってしやすくなる。そんな力を無償で与えられているというのに、里のみんなは誰一人オリビアに礼を言わなかった。それどころか、近づこうとすらしない。少しくらい感謝したっていいのに、この光景をただ見ているのはとてももどかしかった。
ただ、親父だけは違っていた。
「ありがとうございます……ありがとうございます……」
そう言って親父はくしゃっと顔を歪めて、まるで神様を崇めるように彼女に向けて深々と頭を下げた。
そんな彼にオリビアは微笑みながらゆっくりと首を横に振った。そして放心状態のエルフたちとまだまだ荒れている里を一望し、小さく笑った。
「ねえ、ジャンさん……ライザ君……私、もう少しこの里にいていいですか?」
「――え?」
その突然の請いに、俺も親父も、その場にいた他のエルフでさえも驚きで目を丸くした。
だが、親父だけは照れたように顔を赤くさせ、嬉しそうに口角を上げていた。
もしかしてこの時から二人はお互い惹かれ合っていたのかもしれないが、今となってはそれを知るすべはない。
しかし、これが全ての始まりだった。
親父とオリビアのほんの少しの幸せと、これからの苦難と。
ただ俺は、運命の歯車が動き出すのを呆然としながら見ているだけだった。
オリビアが来た日から、俺たちの生活は劇的に変化した。
まず、家具が増えた。というのも、オリビアが生活に必要な家具を作ってくれたのだ。ベッドすらない家だったから、これはとても助かった。
それと、食料の保存が効くようにと「アイス・コア・ボックス」というものを作ってくれた。聞けばこれはかなりの高級品で価値のあるものだというが、正直人間の暮らしのことはわからないから、何も考えずに釣った魚を入れていた。
生活は快適になったはいいが、他のエルフの目は冷たかった。
オリビアの力は認めているようで、オリビアの作った道具は遠慮なく使っていたが、彼女に話かける者はいなかった。
そして、そんな彼女と暮らしている俺たちも、誰も関わらなくなった。
「さあ、行きましょう」
気合十分のオリビアだったが、彼女はわざと鉄仮面を外していた。
「なんでそれを外すんだよ。あぶねえだろ」
周りに人間とバレたらそれこそ彼女の命が狙われ兼ねないのに、どうしてわざわざ自ら危険を冒しに行くのだろう。
そう思っていたのに、彼女の肝は据わっていた。
「そんなコソコソしたらかえって怪しまれるじゃない。それに、自分を隠している人なんて信用されないじゃない?」
「でも、里の人に襲われるかもしれないじゃん。エルフが人間嫌いだってこと知ってるだろ」
「その時はきっと守ってくれるでしょ? ねえ、ジャンさん」
「え、あ! はい!!」
いきなりオリビアに話を振られ、親父は驚いて肩を竦み上げる。この調子だと、どっちが護られる立場かわからない。
「……俺、頑張るよ」
ため息をつきながら頬を掻くと、オリビアは「あら、素敵」と笑った。その様子を見ながら、親父も「あはは……」と乾いた笑みを浮かべた。
三人で里を巡っている間も、案の定というほど他のエルフの連中は彼女の姿に騒ぎ立てられた。
当然、罵声を飛ばす輩もいれば、彼女を見て叫び声をあげて逃げ出す輩もいた。そんなエルフたちに彼女は詫びるようにお辞儀をし、そっと転がった手作り感満載の鍬を手にした。
目をつぶった彼女の手がぼんやりとオレンジ色に光る。すると、今の今まですぐにでも折れてしまいそうだった鍬が新品同様でしっかりとしたものに変化した。原理はどうでもいい。ただ、人間の彼女がエルフに力を貸したということが周りは信じられないようだ。
視線と集めながらも、彼女は無言で作業をしていた。
すでにある道具は先ほどの鍬のように強化をし、足りないものは【創造者】の力で新たに作った。道具が新調されれば作業効率は格段に上がる。生活だってしやすくなる。そんな力を無償で与えられているというのに、里のみんなは誰一人オリビアに礼を言わなかった。それどころか、近づこうとすらしない。少しくらい感謝したっていいのに、この光景をただ見ているのはとてももどかしかった。
ただ、親父だけは違っていた。
「ありがとうございます……ありがとうございます……」
そう言って親父はくしゃっと顔を歪めて、まるで神様を崇めるように彼女に向けて深々と頭を下げた。
そんな彼にオリビアは微笑みながらゆっくりと首を横に振った。そして放心状態のエルフたちとまだまだ荒れている里を一望し、小さく笑った。
「ねえ、ジャンさん……ライザ君……私、もう少しこの里にいていいですか?」
「――え?」
その突然の請いに、俺も親父も、その場にいた他のエルフでさえも驚きで目を丸くした。
だが、親父だけは照れたように顔を赤くさせ、嬉しそうに口角を上げていた。
もしかしてこの時から二人はお互い惹かれ合っていたのかもしれないが、今となってはそれを知るすべはない。
しかし、これが全ての始まりだった。
親父とオリビアのほんの少しの幸せと、これからの苦難と。
ただ俺は、運命の歯車が動き出すのを呆然としながら見ているだけだった。
オリビアが来た日から、俺たちの生活は劇的に変化した。
まず、家具が増えた。というのも、オリビアが生活に必要な家具を作ってくれたのだ。ベッドすらない家だったから、これはとても助かった。
それと、食料の保存が効くようにと「アイス・コア・ボックス」というものを作ってくれた。聞けばこれはかなりの高級品で価値のあるものだというが、正直人間の暮らしのことはわからないから、何も考えずに釣った魚を入れていた。
生活は快適になったはいいが、他のエルフの目は冷たかった。
オリビアの力は認めているようで、オリビアの作った道具は遠慮なく使っていたが、彼女に話かける者はいなかった。
そして、そんな彼女と暮らしている俺たちも、誰も関わらなくなった。
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