転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第8章 崩壊の足音

第135話 破滅までのカウントダウン 

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「そもそもあのエルフが只者じゃない。たったあれだけのことで貴様のクラスを当てるだなんて正直私も思っていなかった。バレた相手がよかったな」

「ということは、これからもバレないほうがいいってことな……」

「悪魔狩りされたくなければな」

 ククッと肩を揺らしながらノアは小さく笑う。

 なんか今、とても物騒なことを言われたような気がするのだが、気のせいだろうか。

 そもそもそういうことはもっと先に言ってくれませんかねえ、案内人さんよお。

「んで……神の使いの案内人様の報告はないんすか?」

 テーブルに肘を突き、半分やさぐれながらノアに訊く。なんせ、俺の行動はしっかりと監視されていたのに、こっちがこいつの行動を知らないのは癪だ。

「というか、結局なんでお前、神に呼ばれたんだ?」

 神に呼ばれるということは余程のことだと思うのだが、いかんせん相手はノアだ。内容には特に期待はしない。ただ、当の本人は尻尾をゆらゆらと揺らしながら口を噤んでいた。何か考えている様子である。

 ノアの沈黙の珍しさに首を捻る。だが、その少しの沈黙のあと、彼女は端的にこう答えた。

「――現状報告と情報共有だよ」

「情報共有? 魔王に関してか?」

「……聞きたいか?」

 薄笑いするノアに妙な緊迫を感じ、思わずごくりと唾を呑む。そんな意味ありげな言葉を言われると、気になるに決まっている。

「なんだよ……早く言わないと、アンジェたちが帰ってくるぞ」

「そんな長い報告ではない。そう焦らさんな」

 緊張で強張る俺とは裏腹に、ノアはしれっとしていた。

 そしてそのテンションを保ったまま、悠然とした様子でノアは俺に報告する。

「貴様も散々感じているだろうが、ここ最近魔王の配下が増え、魔物も凶悪化しているらしい」

 神いわく、いくら魔王の配下でもこれまで街の中に入ってまで人を襲うことなんてなかったのだという。だが、この世界のあちらこちらで魔物に襲われている人が増えているらしい。アンジェの家族だってそうだ。魔王の配下と言っても強さはピンキリらしいが、それでもここ最近増加しているのは変わりない。

「魔王側も力をつけてきているってことな……」

 腕を組みながら唸っていると、ノアはゆらっと尻尾を振った。

「……増えてるってことは、もう自ずと答えは出てるよな」

「答えって……どういうことだ?」

「誰がそんなに配下を増やしているのかってことだよ」

 にやりと口角を上げたながら言ったノアの発言にぞくりと悪寒が走る。

 いや、彼女がはっきりと口にせずとも、俺だって気づいていた。直接的な名称でなくても、ギルドを爆破させた爆弾クソ野郎とアルジャーも言っていたのだから。


『なんのためって……の命令だよ』


『それはね……の恩恵を受けているからっすよ』


 あいつらの言う「あの人」なんて、この輩しか該当しない。

「貴様の想像通りだ。魔王の奴……もう存在している」

 すべてを悟った俺の答えを合わせるようにノアは告げる。そのはっきりとした告白に、俺の表情も途端に真顔になる。

 ついに来たか。ノアは「まだ時間はある」と言っていたが、今がその時だったのか。いや、もしかしたら俺が知らないだけで、もっと早くから魔王はこの世にいたのかもしれない。

 身構えて心も体も固くなっていると、それを察したノアがため息交じりで言葉を紡いだ。

「と言っても、まだ魔界に潜んでいるだけだ。地上から出たら出たで派手な合図があるから、それまでもう少し時間はあるだろう」

「派手な合図?」

「一発でわかるくらいのな。その辺りの言い伝えはアンジェとかに訊けばいい」

 とにかく今は魔王が地上に上がってくるまでにこちらも戦力を揃えておく。

 やることはこれまでと変わりはないが、神にも明確にそう言われたらしい。

「そろそろ腹括っておけよ、勇者様」

 ノアは見上げながらじっと俺を見つめる。その大きな瞳からの眼光はまっすぐで、迷いなんてこれっぽっちもない。これは彼女なりの期待の眼差しなのだろうか。

「……わかってるよ」
 そう言いながら俺は頭を掻き、彼女から逃れるように窓から外を眺めた。

 窓から緑がいっぱいに広がる草原と、晴れ晴れとした青空が見える。ここからでも感嘆の息が漏れてしまいそうなほど、とても綺麗な光景だ。

 ――いったい、こんな美しき世界の中でもう時期魔王が復活するなんて、何人の者が気づいているのだろうか。

 そんな陰鬱な疑問を抱きながら、俺はしばらくその景色を見つめていた。

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