転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

文字の大きさ
141 / 242
第9章 束の間の休息

第141話 そして新たなクエストへ

しおりを挟む
 ◆ ◆ ◆


 ミドリー神官の誘拐。

 この一大事に居ても立っても居られない俺たちは昼食を取ったあと、すぐにギルドに向かった。

 かといって事を大きくできることもなく、ごく数人……具体的にはフーリとセバスのみこの現状を伝えた。

「おいおい、マジかよ」

 この事件の勃発にフーリは唖然としていた。魔王の配下が絡んでいる以上、悪戯とも言い難い現状。だが、いかんせん詳細がわかっていない。

「セバちゃん。他の地方で神官様が戻っていないとか情報ないの?」

 アンジェの問いにセバスは腕を組んで「う~ん」と悩む。教会の会合が頻繁に開かれている情報は入っているのだ。帰ってきていないという情報も入っていたっておかしくはない。

 ただ、教会も事を大きくしたくないのか、それとも現状を知っていないのか、そういった情報はまだ入っていないらしい。

「その代わり、新米の【治療師ヒーラー】が派遣させている話はよく聞きます。もしかすると、神官がいなくなっている件のカモフラージュかもしれません」

 クイッと眼鏡を上げながら答えるセバス。これは、一理ありそうである。

「といっても、誘拐された神官を探すって言ったってどこから探せばいいんだ?」

 この世界全域となると雲を摑むような話になる。虱潰しに探したって時間切れになるのがオチだし、その間に魔王復活どころか世界が滅んでいるかもしれない。

 だが、ここはアンジェが目星をつけていた。

「『未解決のクエスト』って言っていたでしょう? それ、多分あたしが前に受けたクエストだと思うのよ」

 そう言ってアンジェは鞄の中から一枚の紙を出す。それはギルドからの依頼書で、前に彼がセリナから受け取ったものだった。

「それ、私も覚えてます。確か内容は、内容は『街の周辺に魔王の配下を見かけたから退治してほしい』というもの。そして場所は――」

「貿易の街、『カトミア』」

 セリナのセリフにアンジェがかぶせるように言う。言われてみると俺も思い出してきた。俺がまだこの世界に来たばかりの時、アンジェが一人で受けたクエストだ。

「その時って結局魔王の配下って見つからなかったんだっけ?」

「そう。結局時間切れで強制終了。その時は魔王の配下の情報も掴めなかった……でも、相手が人に化けるアビリティを持っていたら話は違うわ」

 アンジェがたどり着いた時にはもうすでに街の中にグルがいて、情報を撹乱させているというのであれば自体は変わってくる。

 これは、もう一度『カトミア』に行く価値はありそうだ。

 俺とアンジェは互いを見合わせながら「うん」と頷く。そして二人で同時に、カウンター越しにいるフーリに顔を向けた。

「……あ、やっぱり、そこまで運ぶの俺?」

「モチのロン」

「お願いフーリ~。頼めるのあなたしかいないの~」

 目を光らせながら親指を立てる俺と、わざとらしくくねくねと腰を振って請うアンジェに、フーリは諦めたように息を吐く。

「まあ、そうなるよな……そんな訳で、ちょっと行ってきていいか、セバス」

「当然です。神官様の救出は最優先の任務ですから、みなさんのお力になってください」

「それに、もう私も復帰できます! 物資はゴレちゃんたちに運んでもらうので任せてください!」

 セバスの横でセリナがガッツポーズを取りながら深く頷く。フーリが抜ける穴はセリナが補ってくれるそうだ。

「それに、セリちゃんには個人的なお願いもあるしね」

 にこっと笑いながらアンジェはセリナに一枚の紙を渡す。おそらくこれが先ほど話していた彼女に頼む調べものなのだろう。

「セリナに何を調べてもらうんだ?」

 そう尋ねてもアンジェは人差し指を口に当てるだけで、答えは言わなかった。

「今は内緒。核心が持てるようになってから……ね」

 ウインクしながら返すアンジェ。意味深な言葉が気になるが、彼が話さないならそれまでだ。

「まあ、お前らを送るのはいいんだけどよ……リオンはどうするんだ?」

 頭を掻きながら言うフーリの素朴な疑問に、俺とアンジェは「あ」と口を揃える。

 遠出になるからまた家を空けそうだし、だからと言ってまだ子供のリオンを連れて行くのは気が引ける。

 そう思っていたが、リオンのほうから話を切り出してきた。

「僕も行く。ミドリーのおじさんたちを助ける」

 その大きな眼差しは凛としており、彼の答えに迷いはない。だが、また魔王の配下と戦うのだ。また危ない橋を渡ることになるのだが……意外にもノアが口を挟んできた。

「いいではないか。少なくとも貴様より使える」

「悪かったな、使えなくて」

 ごもっとも。このパーティーで一番弱いのは他でもなく俺である……言わせんなこの野郎。

 顔をしかめる俺だったが、その隣ではアンジェが「よし」と納得するように頷いた。

「リオちゃんがそう言ってくれるなら心強いわ。さっそく行くとしましょう」

「おー」

 アンジェの号令にリオンも気合いを入れるように拳を掲げる。

 目指すは『カトミア』。目的は攫われた神官の救出。気持ちを新たに、次の冒険がスタートする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...