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第10話 貿易の街『カトミア』
第146話 収穫ゼロ
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「お前、クエストで来たんじゃないんかい」
「クエスト? なんの?」
「用心棒だよ。リチャードの奴が死んでからここ数日で一気に傭兵とギルド員が増えただろ。それに、リチャード殺しの犯人捜しもある」
なるほど、それでギルド員の俺を「犬」と呼んだのか。
確かに人が殺されたうえに犯人がわかっていないのなら守りを固めなければならないし、犯人も総出で探さないとならない。そんな訳で、この街は前よりも人が溢れかえっているのだとおっさんは言う。
「人が来るから武器や防具の売り上げは上がったがな。おかげで余計な仕事が増えてたまったもんじゃないよ」
「そ、それは……儲けてるんだからいいんじゃねえの?」
面倒くさそうに舌打ちするおっさんにフーリは苦笑いする。このおっさんにとっては売上が上がろうが下がろうが自分のペースを貫いているみたいだ。
「人が来てるっつうんなら、神官とか見なかったか? めっちゃマッチョでスキンヘッドな人なんだけど」
「……それは本当に神官なのか?」
半目になったおっさんは訝しい顔をする。当然、そんな人は知らないと言う。
「こんな物も人の出入りも激しい貿易の街でいちいち誰が来たとか覚えてられるかってんだ」
「まあ……そらそうだな」
ごもっともなことを言われて、俺もフーリも何も言えなかった。それに加えて言葉に詰まる俺たちにおっさんはシッシッと俺たちを追い払う。
「ほれ、仕事の邪魔だ。用事が終わったらさっさと帰れ」
仕事の邪魔というか、俺たちに構うのが面倒になったようにも見えるが……おっさんがこんな感じならこれ以上情報を得るのは難しそうだ。
「邪魔したな、おやっさん。また来るわ」
「ふん、しばらくはごめんだわい」
笑顔のフーリとは裏腹におっさんの表情は相変わらず厳めしい。ひとまず会釈してフーリと共に工房を出た。
一応フーリの用事は終わったし、次はどうするか。
「とりあえず知り合いに片っ端から神官様の情報を訊くか」
「操作は足からって言うもんな」
うんうんと頷きながら、フーリの後に続く。
それから何件か道具屋や武器・防具屋に回ったが、答えはどこも同じだった。この街の人口密度が高くなっていること。逆に街の人は殺人犯が怖くて家から出られなくなっていること。街の警備がさらに強化されているということ……正直、聞かなくてもわかるようなことばかりだ。
合わせてミドリーさんのような神官の目撃情報も集めようと思ったが、どこも外れだった。
というかそもそも写真もイラストもなく、マッチョとスキンヘッドの風貌しか情報しかないのに人を探すのは無理な話か。それにミドリーさんの見た目だと下手すりゃどっかの武道家を紹介されそうだ。
そうこうしているうちにあっという間に日が暮れた。
もうアンジェとリオンとの待ち合わせの時間になってしまう。
果たしてこの「街の現状」を収穫としていいのだろうか。不穏に感じながらも俺たちはフーリの魔法で一旦待ち合わせ場所にワープした。
◆ ◆ ◆
フーリの魔法で移動すると、ちょうどアンジェとリオンもたどり着いたところだった。
「よお、どうだった?」
二人に尋ねてみると、案の定リオンは不思議そうに目をぱちくりとさせているし、アンジェの表情もどこか浮かない。
「……とりあえず、ご飯食べましょうか」
「そうだな。腹減ったし」
お互い積もる話があるであろう。それならばどこかで座ってゆっくり話がしたい。そんな訳で街の繁華街へと向かった。
ただ、この時間でもどこも店は混雑しており、入れる店を探すのですら苦労した。そしてようやく入れたところも人がごった返すくらいぎゅうぎゅう詰めになった店だった。
「座れたのが奇跡ね……」
「ノアの入店が許されたのもな」
四人ともぐったりとしながら机に突っ伏す。
この中で元気なのはずっと俺の頭上にいたノアだけだ。そもそもこいつのせいで入店できないかと思ったが、この世界には【魔物使い】というクラスがあるから、俺が思っているより動物の入店は緩いようだ。まあ、こんなにも人がいて騒がしかったら、動物が入店していたとして誰も気にしなさそうだが。
「クエスト? なんの?」
「用心棒だよ。リチャードの奴が死んでからここ数日で一気に傭兵とギルド員が増えただろ。それに、リチャード殺しの犯人捜しもある」
なるほど、それでギルド員の俺を「犬」と呼んだのか。
確かに人が殺されたうえに犯人がわかっていないのなら守りを固めなければならないし、犯人も総出で探さないとならない。そんな訳で、この街は前よりも人が溢れかえっているのだとおっさんは言う。
「人が来るから武器や防具の売り上げは上がったがな。おかげで余計な仕事が増えてたまったもんじゃないよ」
「そ、それは……儲けてるんだからいいんじゃねえの?」
面倒くさそうに舌打ちするおっさんにフーリは苦笑いする。このおっさんにとっては売上が上がろうが下がろうが自分のペースを貫いているみたいだ。
「人が来てるっつうんなら、神官とか見なかったか? めっちゃマッチョでスキンヘッドな人なんだけど」
「……それは本当に神官なのか?」
半目になったおっさんは訝しい顔をする。当然、そんな人は知らないと言う。
「こんな物も人の出入りも激しい貿易の街でいちいち誰が来たとか覚えてられるかってんだ」
「まあ……そらそうだな」
ごもっともなことを言われて、俺もフーリも何も言えなかった。それに加えて言葉に詰まる俺たちにおっさんはシッシッと俺たちを追い払う。
「ほれ、仕事の邪魔だ。用事が終わったらさっさと帰れ」
仕事の邪魔というか、俺たちに構うのが面倒になったようにも見えるが……おっさんがこんな感じならこれ以上情報を得るのは難しそうだ。
「邪魔したな、おやっさん。また来るわ」
「ふん、しばらくはごめんだわい」
笑顔のフーリとは裏腹におっさんの表情は相変わらず厳めしい。ひとまず会釈してフーリと共に工房を出た。
一応フーリの用事は終わったし、次はどうするか。
「とりあえず知り合いに片っ端から神官様の情報を訊くか」
「操作は足からって言うもんな」
うんうんと頷きながら、フーリの後に続く。
それから何件か道具屋や武器・防具屋に回ったが、答えはどこも同じだった。この街の人口密度が高くなっていること。逆に街の人は殺人犯が怖くて家から出られなくなっていること。街の警備がさらに強化されているということ……正直、聞かなくてもわかるようなことばかりだ。
合わせてミドリーさんのような神官の目撃情報も集めようと思ったが、どこも外れだった。
というかそもそも写真もイラストもなく、マッチョとスキンヘッドの風貌しか情報しかないのに人を探すのは無理な話か。それにミドリーさんの見た目だと下手すりゃどっかの武道家を紹介されそうだ。
そうこうしているうちにあっという間に日が暮れた。
もうアンジェとリオンとの待ち合わせの時間になってしまう。
果たしてこの「街の現状」を収穫としていいのだろうか。不穏に感じながらも俺たちはフーリの魔法で一旦待ち合わせ場所にワープした。
◆ ◆ ◆
フーリの魔法で移動すると、ちょうどアンジェとリオンもたどり着いたところだった。
「よお、どうだった?」
二人に尋ねてみると、案の定リオンは不思議そうに目をぱちくりとさせているし、アンジェの表情もどこか浮かない。
「……とりあえず、ご飯食べましょうか」
「そうだな。腹減ったし」
お互い積もる話があるであろう。それならばどこかで座ってゆっくり話がしたい。そんな訳で街の繁華街へと向かった。
ただ、この時間でもどこも店は混雑しており、入れる店を探すのですら苦労した。そしてようやく入れたところも人がごった返すくらいぎゅうぎゅう詰めになった店だった。
「座れたのが奇跡ね……」
「ノアの入店が許されたのもな」
四人ともぐったりとしながら机に突っ伏す。
この中で元気なのはずっと俺の頭上にいたノアだけだ。そもそもこいつのせいで入店できないかと思ったが、この世界には【魔物使い】というクラスがあるから、俺が思っているより動物の入店は緩いようだ。まあ、こんなにも人がいて騒がしかったら、動物が入店していたとして誰も気にしなさそうだが。
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