153 / 242
第11章 ダンジョン名『旧灯台』
第153話 『旧灯台』へ
しおりを挟む
「……さて、そろそろ答え合わせの時間だぞ」
フーリが低い声でまっすぐ進行方向を見つめる。顔を上げると目の前にレンガ造りの高い塔が見えた。
「あれが、旧灯台……」
余程古い建物なのか、レンガの色が変わり全体的に黒ずんでいた。
森を抜けるとアイーダのばあさんが言うように岬になっており、灯台の麓には小さな波止場がある。アイーダのばあさんたちはあそこに小舟を停めていたのだろう。なるほど、人目につかないいい場所だ。
フーリが馬車を停める。流石に灯台の中までは馬車で移動できないし、何より彼はもうギルドの集会所に戻らないといけない時間だ。
トンッと馬車から降りると、フーリが名残惜しそうな表情で俺たちのことを見つめていた。
「最後まで付き合えなくて悪いな」
「いいや、十分助かったぜ。ありがとよ」
「そう言ってくれて何より。あとは任せたぞ」
「ええ、ちゃんとミドリー神官を助け出すから」
アンジェと共にニッと歯を見せて笑うと、フーリも釣られるように口角を上げた。
風が強く吹く。フーリとセントリーヌとは一旦お別れだ。
最後にリオンがセントリーヌの首元をそっと撫でる。
「またね」
それだけ言ってリオンが数歩下がると、フーリは馬車ごとつむじ風に包まれ、そのまま消えていった。これで一瞬で『オルヴィルカ』に帰れるのだ。いつ見ても便利な魔法である。
「……さ、行くか」
気を取り直して旧灯台に向かう。
旧灯台の目の前に立って、改めて俺の導き出した答えが正しいような気がした。遠くからでも黒ずみがわかるくらい廃れた建物だったのにも関わらず、扉だけここ最近取り換えられたように真新しかったからだ。新築の灯台を建てるのだから扉なんて新しくする必要はないのに。
魔法を使って扉をつけたのは容易に想像できる。ただし、魔法を使ったって「作り変える」ことはできても「元に戻す」ことはできない。これはアンジェの家の床もそうだったから、例外はなさそうだ。
「これはきな臭いわね」
木でできた扉にアンジェがそっと触れる。だが、彼がそのまま扉を開けようとしても鍵がかかって開かなかった。
「鍵をかけるなんて、ここに何かあるって言ってるようなもんだよな」
頬を引き攣らせながら扉を見つめる。しかし困った。こんなにも怪しいのに鍵がかかっていたら中に入れない。かといって鍵を探すような時間もないし、持っているとしてもリチャード市長に化けていたパルス本人だ。
試しに蹴り破ろうとしたが、俺の脚力でもびくりともしなかった。木造の割にはしっかりと硬い材料を使って作っているようだ。何気に抜かりないのがパルスらしくてムカつく。
押しても引いてもだめとなると、どうしたものか。頭を搔いて悩んでいると、アンジェがポンッと俺の肩を叩いた。
「選手交代。あたしに任せて」
パチンとウインクしたアンジェは手招きして俺たちを扉から離れさせる。そしてアンジェはというと扉から数メートル離れた場所で持っていた剣を抜いた。
抜いた剣を扉の一直線上に向ける。この構えだけで彼が何をしたいかわかってしまった。
「そーれっ」
「あ、やっぱり?」
アンジェの掛け声と同時に切っ先から炎が出る。放射された炎は扉に燃え移りメラメラと燃え始めた。幸い周りがレンガのためこれ以上燃え広がることはないが……流石アンジェさん、ためらいが一切ない。
「どうせぶっ壊すんだもの。一つや二つ何か燃やしたって変わらないでしょ?」
燃える扉を見ながらアンジェは頬を綻ばせる。だが、言っていることは物騒だし、その切れ長の目はすでに鋭い。どうやら、もう彼は戦闘モードに切り替わっているようだ。
やがて扉は炭になり、旧灯台の入り口が露わになった。
途端に冷たく、禍々しい空気が入り口から放出される。ほんの二カ月前まで使われていたとは思えないほど廃れた雰囲気だ。空気感は『ザラクの森』とよく似ている。ちなみにこの空気感というのは「瘴気」ではない。第六感を刺激するような――心霊スポット的な空気だ。
フーリが低い声でまっすぐ進行方向を見つめる。顔を上げると目の前にレンガ造りの高い塔が見えた。
「あれが、旧灯台……」
余程古い建物なのか、レンガの色が変わり全体的に黒ずんでいた。
森を抜けるとアイーダのばあさんが言うように岬になっており、灯台の麓には小さな波止場がある。アイーダのばあさんたちはあそこに小舟を停めていたのだろう。なるほど、人目につかないいい場所だ。
フーリが馬車を停める。流石に灯台の中までは馬車で移動できないし、何より彼はもうギルドの集会所に戻らないといけない時間だ。
トンッと馬車から降りると、フーリが名残惜しそうな表情で俺たちのことを見つめていた。
「最後まで付き合えなくて悪いな」
「いいや、十分助かったぜ。ありがとよ」
「そう言ってくれて何より。あとは任せたぞ」
「ええ、ちゃんとミドリー神官を助け出すから」
アンジェと共にニッと歯を見せて笑うと、フーリも釣られるように口角を上げた。
風が強く吹く。フーリとセントリーヌとは一旦お別れだ。
最後にリオンがセントリーヌの首元をそっと撫でる。
「またね」
それだけ言ってリオンが数歩下がると、フーリは馬車ごとつむじ風に包まれ、そのまま消えていった。これで一瞬で『オルヴィルカ』に帰れるのだ。いつ見ても便利な魔法である。
「……さ、行くか」
気を取り直して旧灯台に向かう。
旧灯台の目の前に立って、改めて俺の導き出した答えが正しいような気がした。遠くからでも黒ずみがわかるくらい廃れた建物だったのにも関わらず、扉だけここ最近取り換えられたように真新しかったからだ。新築の灯台を建てるのだから扉なんて新しくする必要はないのに。
魔法を使って扉をつけたのは容易に想像できる。ただし、魔法を使ったって「作り変える」ことはできても「元に戻す」ことはできない。これはアンジェの家の床もそうだったから、例外はなさそうだ。
「これはきな臭いわね」
木でできた扉にアンジェがそっと触れる。だが、彼がそのまま扉を開けようとしても鍵がかかって開かなかった。
「鍵をかけるなんて、ここに何かあるって言ってるようなもんだよな」
頬を引き攣らせながら扉を見つめる。しかし困った。こんなにも怪しいのに鍵がかかっていたら中に入れない。かといって鍵を探すような時間もないし、持っているとしてもリチャード市長に化けていたパルス本人だ。
試しに蹴り破ろうとしたが、俺の脚力でもびくりともしなかった。木造の割にはしっかりと硬い材料を使って作っているようだ。何気に抜かりないのがパルスらしくてムカつく。
押しても引いてもだめとなると、どうしたものか。頭を搔いて悩んでいると、アンジェがポンッと俺の肩を叩いた。
「選手交代。あたしに任せて」
パチンとウインクしたアンジェは手招きして俺たちを扉から離れさせる。そしてアンジェはというと扉から数メートル離れた場所で持っていた剣を抜いた。
抜いた剣を扉の一直線上に向ける。この構えだけで彼が何をしたいかわかってしまった。
「そーれっ」
「あ、やっぱり?」
アンジェの掛け声と同時に切っ先から炎が出る。放射された炎は扉に燃え移りメラメラと燃え始めた。幸い周りがレンガのためこれ以上燃え広がることはないが……流石アンジェさん、ためらいが一切ない。
「どうせぶっ壊すんだもの。一つや二つ何か燃やしたって変わらないでしょ?」
燃える扉を見ながらアンジェは頬を綻ばせる。だが、言っていることは物騒だし、その切れ長の目はすでに鋭い。どうやら、もう彼は戦闘モードに切り替わっているようだ。
やがて扉は炭になり、旧灯台の入り口が露わになった。
途端に冷たく、禍々しい空気が入り口から放出される。ほんの二カ月前まで使われていたとは思えないほど廃れた雰囲気だ。空気感は『ザラクの森』とよく似ている。ちなみにこの空気感というのは「瘴気」ではない。第六感を刺激するような――心霊スポット的な空気だ。
10
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる