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第11章 ダンジョン名『旧灯台』
第157話 アンジェの秘策
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「じゃ、行くわよ」
アンジェがスッと切っ先を向けると、剣が先だけ赤くなった。いつもならあれから火が放射されるのだが、今は何も起こらなかった。
不思議に思ったのは俺だけで、ぬりかべゴーレムは雄叫びをあげながらアンジェに向かって腕を振り下ろした。
しかし、アンジェはそれをひらりと避ける。
ぬりかべゴーレムの腕はというと、床にぶつかった。だが、床は石材がバッキリと割れているのに奴の腕は無傷だ。なんという防御力なのだ。
あれだけの硬度と攻撃力に当たればひとたまりもないのにアンジェは冷静だった。
床を貫いた腕を引き抜く前にアンジェはぬりかべゴーレムの肩に向けて剣を振り下ろす。ちょうど肩と腕との関節を狙ったようで、ぬりかべゴーレムが呻き声をあげた。
こんな絶妙なところをよく狙ったとも思うが、俺とリオンが驚いたのはそこではなかった。
アンジェがぬりかべゴーレムを切ると、奴の体から「ジュッ!」と焼ける音がしたのだ。
「ぬがぁぁ!」
ぬりかべゴーレムの悲鳴と共にアンジェが刃を引く。するとアンジェが切ったところに焦げたような跡がくっきりとついていた。
「熱い? そうでしょ、だって千度は優に超えているもの」
剣を構えながらアンジェはニヤリと笑う。その不敵な笑みは持ち前の切れ長な目が鋭くなるほど冷酷で、見ているこちらも身震いしそうになる。
これがアンジェの本気……いや、本気ではない。これはいわゆる「実験」なのだ。
アンジェの剣を警戒しているのだろう。ぬりかべゴーレムは立ち上がったと思うとすぐに後退りをした。
逃げたいようだがあんな図体ではスピードが足りない。アンジェはそこにも目をつけていた。
「リオちゃん。ジャンプ力ちょうだい」
「あ、うん!」
アンジェに言われ、リオンは彼に向かって腕を伸ばす。するとアンジェの足がぼんやりと緑色に光った。
脚力向上バフがかかった途端、アンジェは地面を蹴ってぴょんっと高く飛んだ。
軽くジャンプしただけで自分の頭部までアンジェが飛んできたものだから、ぬりかべゴーレムは驚いて身じろぎする。だが、アンジェの狙いはそこではなかった。
「よいしょっ」
高く飛んだアンジェはそのままぬりかべゴーレムの頭に手をついてするりと飛び越す。そして奴の背後に着地した瞬間、今度は足に向けて剣を突いた。
悲鳴をあげたぬりかべゴーレムがバランスを崩して前に倒れる。奴が倒れるとまるで地震が来たかのように床が揺れた。
ひざまずきながらハッと顔を上げると、倒れ込んだぬりかべゴーレムの上にアンジェが立っていた。
アンジェの下にいるぬりかべゴーレムはぴくぴくと痙攣するだけで起き上がろうとしなかった。
「えいっ……と!」
可愛げのある声をあげながらアンジェがぬりかべゴーレムの足に刺さった剣を抜く。
恐る恐るぬりかべゴーレムに近づくと、アンジェが刺したところだけくっきりと穴が開いていた。しかも穴の回りだけ黒くなっており、どことなく焦げたにおいがする。
「もしかして……溶けてるのか?」
アンジェに尋ねると、彼は微笑みながら剣を鞘に戻した。
さっきの攻撃もそうだが、きっと斬撃自体は浅かった。しかし、アンジェは最初から斬撃でダメージを与える気はなかった。ぬりかべゴーレムにダメージを与えていたのは「熱」だ。
「流石にどこでも放射できる訳ではないからね。だから練習したのよ――火を押さえ込めるように」
これまでアンジェは切っ先に火を溜めて放射していた。逆に言えばその溜める時間は一瞬で、振るったと同時に火は切っ先から出ていた。だが、『ザラクの森』のような森林地帯や室内のような燃えやすい場所、またはここのような狭い場所では扱うのは難しい。その弱点は俺もわかっていたのだが――
「もしかして、その炎の熱がまるまる切っ先に詰まっているのか?」
つまり切っ先に触れれば熱いことは勿論、触れるだけで燃えるか溶ける。これならば場所を選ばず戦うことができるのだ。
「最近あたしったら上手く戦えてなかったから……ね」
と、申し訳なさそうに眉尻を垂らすが、そんなことはない。ただ、『ザラクの森』での悔しさが彼をここまで強くしたのだ。
「すげぇよアンジェ……」
このぬりかべゴーレムの防御力が高いことはわかっていた。しかし、それを見据えたうえで彼は攻撃が通りやすい関節を狙い、熱で攻撃した。彼は最初から斬撃を入れることは考えてなかったのだ。
アンジェがスッと切っ先を向けると、剣が先だけ赤くなった。いつもならあれから火が放射されるのだが、今は何も起こらなかった。
不思議に思ったのは俺だけで、ぬりかべゴーレムは雄叫びをあげながらアンジェに向かって腕を振り下ろした。
しかし、アンジェはそれをひらりと避ける。
ぬりかべゴーレムの腕はというと、床にぶつかった。だが、床は石材がバッキリと割れているのに奴の腕は無傷だ。なんという防御力なのだ。
あれだけの硬度と攻撃力に当たればひとたまりもないのにアンジェは冷静だった。
床を貫いた腕を引き抜く前にアンジェはぬりかべゴーレムの肩に向けて剣を振り下ろす。ちょうど肩と腕との関節を狙ったようで、ぬりかべゴーレムが呻き声をあげた。
こんな絶妙なところをよく狙ったとも思うが、俺とリオンが驚いたのはそこではなかった。
アンジェがぬりかべゴーレムを切ると、奴の体から「ジュッ!」と焼ける音がしたのだ。
「ぬがぁぁ!」
ぬりかべゴーレムの悲鳴と共にアンジェが刃を引く。するとアンジェが切ったところに焦げたような跡がくっきりとついていた。
「熱い? そうでしょ、だって千度は優に超えているもの」
剣を構えながらアンジェはニヤリと笑う。その不敵な笑みは持ち前の切れ長な目が鋭くなるほど冷酷で、見ているこちらも身震いしそうになる。
これがアンジェの本気……いや、本気ではない。これはいわゆる「実験」なのだ。
アンジェの剣を警戒しているのだろう。ぬりかべゴーレムは立ち上がったと思うとすぐに後退りをした。
逃げたいようだがあんな図体ではスピードが足りない。アンジェはそこにも目をつけていた。
「リオちゃん。ジャンプ力ちょうだい」
「あ、うん!」
アンジェに言われ、リオンは彼に向かって腕を伸ばす。するとアンジェの足がぼんやりと緑色に光った。
脚力向上バフがかかった途端、アンジェは地面を蹴ってぴょんっと高く飛んだ。
軽くジャンプしただけで自分の頭部までアンジェが飛んできたものだから、ぬりかべゴーレムは驚いて身じろぎする。だが、アンジェの狙いはそこではなかった。
「よいしょっ」
高く飛んだアンジェはそのままぬりかべゴーレムの頭に手をついてするりと飛び越す。そして奴の背後に着地した瞬間、今度は足に向けて剣を突いた。
悲鳴をあげたぬりかべゴーレムがバランスを崩して前に倒れる。奴が倒れるとまるで地震が来たかのように床が揺れた。
ひざまずきながらハッと顔を上げると、倒れ込んだぬりかべゴーレムの上にアンジェが立っていた。
アンジェの下にいるぬりかべゴーレムはぴくぴくと痙攣するだけで起き上がろうとしなかった。
「えいっ……と!」
可愛げのある声をあげながらアンジェがぬりかべゴーレムの足に刺さった剣を抜く。
恐る恐るぬりかべゴーレムに近づくと、アンジェが刺したところだけくっきりと穴が開いていた。しかも穴の回りだけ黒くなっており、どことなく焦げたにおいがする。
「もしかして……溶けてるのか?」
アンジェに尋ねると、彼は微笑みながら剣を鞘に戻した。
さっきの攻撃もそうだが、きっと斬撃自体は浅かった。しかし、アンジェは最初から斬撃でダメージを与える気はなかった。ぬりかべゴーレムにダメージを与えていたのは「熱」だ。
「流石にどこでも放射できる訳ではないからね。だから練習したのよ――火を押さえ込めるように」
これまでアンジェは切っ先に火を溜めて放射していた。逆に言えばその溜める時間は一瞬で、振るったと同時に火は切っ先から出ていた。だが、『ザラクの森』のような森林地帯や室内のような燃えやすい場所、またはここのような狭い場所では扱うのは難しい。その弱点は俺もわかっていたのだが――
「もしかして、その炎の熱がまるまる切っ先に詰まっているのか?」
つまり切っ先に触れれば熱いことは勿論、触れるだけで燃えるか溶ける。これならば場所を選ばず戦うことができるのだ。
「最近あたしったら上手く戦えてなかったから……ね」
と、申し訳なさそうに眉尻を垂らすが、そんなことはない。ただ、『ザラクの森』での悔しさが彼をここまで強くしたのだ。
「すげぇよアンジェ……」
このぬりかべゴーレムの防御力が高いことはわかっていた。しかし、それを見据えたうえで彼は攻撃が通りやすい関節を狙い、熱で攻撃した。彼は最初から斬撃を入れることは考えてなかったのだ。
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