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第14章 旅立ちへ
第191話 勇者の案内人
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『別に働かなくていいじゃねえか。そもそも、俺たち邪魔者扱いされてるし』
不貞腐れたようにマリア姉さんに返すセトだったが、奴の言う通りでもあった。
若人ということもあり、完全になめられていた私たちはいるだけで邪険に扱われた。存在するだけで空気が悪くなる。それなら、その場にいないほうがいい。現に、こうして私たちがいなくたって連中の仕事は回っている。それでも、マリア姉さんは有無を言わせずに彼の手を取った。
『それなら、なおさら認めてもらわないと! ほら、エスメラルダ様の手伝いに行こう』
そうやって、マリア姉さんはセトの腕を引っ張り、持ち場に戻された。
毎日毎日、同じ流れの繰り返し。マリア姉さんもセトに構わなければいいのに、あの人は何度も奴を探していた。そうしているうちにセトのほうが心が折れてしまい、終いには嫌々ながらも仕事をするようになっていた。
真面目に仕事をしていても、マリア姉さんの監視は続いた。私だったら面倒に思うのだが、セトは満更でもないようだった。
セトとは天界に来てからの仲であったが、短い付き合いであってもあいつがマリア姉さんに気があることはわかっていた。
けれども、他の連中にそのことを言っても誰も信じてはくれないだろう。確かに同期ということもあって共に過ごす時間は長かった。しかし、ドがつくほど真面目でお節介なマリア姉さんをサボり魔な問題児のセトが好むというのはイメージできなかったはずだ。
実際、あやつがマリア姉さんに露骨にアピールしていた訳でもないし、直接セトに聞いたところで否定されていただろう。
そもそもセト自身も自分の気持ちに気づいていなかったかもしれない。だが、傍らで二人のことを見ていた私はわかる。マリア姉さんに対するセトの眼差しには優しさと愛情が籠っていた。あんな姿を見てしまえば、たとえ恋愛沙汰に興味がなくても嫌でも気づいてしまった。
当のマリア姉さんはというと、セトの気持ちはおそらく気づいていなかった。恋愛事には鈍感そうな彼女だから、気づかなさそうだなとは思っていた。
ただ、セトと一緒にいるマリア姉さんはいつも笑っていて、楽しそうだった。その光景は傍から見ると幸せそうで、私でも微笑ましく感じた。
この関係性が、いつまでも続けばいい。私も、多分セトもマリア姉さんもそう願っていると思っていた。だが、事態はそう上手くいかなかった。
きっかけは、いつも突然だった。
謁見の間に使い全員を集めたエスメラルダ様は、仰々しい顔つきで俺たちに告げた。
『魔界に異変が起きました──時期に、魔王が復活します』
それはエスメラルダ様の未来予知で、神のお告げだった。
そのお告げは俺たちにとって一番恐れていたことだった。魔王の復活。それはすなわち、世界の破滅だ。
世界を司るエスメラルダ様は、この『エムメルク』に魔王を倒せる者はいないことを知っている。だから、魔王を倒すには異世界から強者を引きつれ、勇者として転生させなければいけなかった。
神の使いは勇者となる転生者と契約し、勇者の案内人になるのが務め。この「勇者の案内人」に選ばれることは神の使いにとって最大の名誉であった。
しかし、異世界から転生者を連れてこられるのは一人だけ。そしてその転生者と勇者の契約をできる神の使いも一人だけだ。そして、今回その「勇者の案内人」に選ばれたのは、他でもないマリア姉さんだった。
『やった! 私、やったよ! ノア! セト君!』
あの時のマリア姉さんは本当に喜んでおり、私もセトも心の底から祝福した。
中には「どうしてあのドジなマリアが」と妬んだ輩もいたらしいが、私はマリア姉さんが選ばれて当然だと思った。あんな堅物共が異世界の転生者とコミュニケーションが上手く取れるはずがない。案内人には愛嬌があって、人当たりの良いあの人が一番向いている。それはエスメラルダ様もわかっていたのだろう。
しかし、「勇者の案内人」に選ばれた神の使いは地界──すなわち、人間界で過ごすこととなる。
勇者や魔王について情報共有するのに一時的に天界に立ち寄るとはいえ、これまで通りにマリア姉さんと会うことはできなくなる。寂しくもあったが、それが我々神の使いの務めだから、私たちはマリアを激励した。
不貞腐れたようにマリア姉さんに返すセトだったが、奴の言う通りでもあった。
若人ということもあり、完全になめられていた私たちはいるだけで邪険に扱われた。存在するだけで空気が悪くなる。それなら、その場にいないほうがいい。現に、こうして私たちがいなくたって連中の仕事は回っている。それでも、マリア姉さんは有無を言わせずに彼の手を取った。
『それなら、なおさら認めてもらわないと! ほら、エスメラルダ様の手伝いに行こう』
そうやって、マリア姉さんはセトの腕を引っ張り、持ち場に戻された。
毎日毎日、同じ流れの繰り返し。マリア姉さんもセトに構わなければいいのに、あの人は何度も奴を探していた。そうしているうちにセトのほうが心が折れてしまい、終いには嫌々ながらも仕事をするようになっていた。
真面目に仕事をしていても、マリア姉さんの監視は続いた。私だったら面倒に思うのだが、セトは満更でもないようだった。
セトとは天界に来てからの仲であったが、短い付き合いであってもあいつがマリア姉さんに気があることはわかっていた。
けれども、他の連中にそのことを言っても誰も信じてはくれないだろう。確かに同期ということもあって共に過ごす時間は長かった。しかし、ドがつくほど真面目でお節介なマリア姉さんをサボり魔な問題児のセトが好むというのはイメージできなかったはずだ。
実際、あやつがマリア姉さんに露骨にアピールしていた訳でもないし、直接セトに聞いたところで否定されていただろう。
そもそもセト自身も自分の気持ちに気づいていなかったかもしれない。だが、傍らで二人のことを見ていた私はわかる。マリア姉さんに対するセトの眼差しには優しさと愛情が籠っていた。あんな姿を見てしまえば、たとえ恋愛沙汰に興味がなくても嫌でも気づいてしまった。
当のマリア姉さんはというと、セトの気持ちはおそらく気づいていなかった。恋愛事には鈍感そうな彼女だから、気づかなさそうだなとは思っていた。
ただ、セトと一緒にいるマリア姉さんはいつも笑っていて、楽しそうだった。その光景は傍から見ると幸せそうで、私でも微笑ましく感じた。
この関係性が、いつまでも続けばいい。私も、多分セトもマリア姉さんもそう願っていると思っていた。だが、事態はそう上手くいかなかった。
きっかけは、いつも突然だった。
謁見の間に使い全員を集めたエスメラルダ様は、仰々しい顔つきで俺たちに告げた。
『魔界に異変が起きました──時期に、魔王が復活します』
それはエスメラルダ様の未来予知で、神のお告げだった。
そのお告げは俺たちにとって一番恐れていたことだった。魔王の復活。それはすなわち、世界の破滅だ。
世界を司るエスメラルダ様は、この『エムメルク』に魔王を倒せる者はいないことを知っている。だから、魔王を倒すには異世界から強者を引きつれ、勇者として転生させなければいけなかった。
神の使いは勇者となる転生者と契約し、勇者の案内人になるのが務め。この「勇者の案内人」に選ばれることは神の使いにとって最大の名誉であった。
しかし、異世界から転生者を連れてこられるのは一人だけ。そしてその転生者と勇者の契約をできる神の使いも一人だけだ。そして、今回その「勇者の案内人」に選ばれたのは、他でもないマリア姉さんだった。
『やった! 私、やったよ! ノア! セト君!』
あの時のマリア姉さんは本当に喜んでおり、私もセトも心の底から祝福した。
中には「どうしてあのドジなマリアが」と妬んだ輩もいたらしいが、私はマリア姉さんが選ばれて当然だと思った。あんな堅物共が異世界の転生者とコミュニケーションが上手く取れるはずがない。案内人には愛嬌があって、人当たりの良いあの人が一番向いている。それはエスメラルダ様もわかっていたのだろう。
しかし、「勇者の案内人」に選ばれた神の使いは地界──すなわち、人間界で過ごすこととなる。
勇者や魔王について情報共有するのに一時的に天界に立ち寄るとはいえ、これまで通りにマリア姉さんと会うことはできなくなる。寂しくもあったが、それが我々神の使いの務めだから、私たちはマリアを激励した。
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