208 / 242
第15章 絶望の街『イルニス』
第208話 二人のコア使い
しおりを挟む
セリナの悲鳴すらも聞こえない。しかし、こんな爆発に巻き込まれたら一溜まりもない。彼女の安否がこの砂埃が晴れるまでわからないのがもどかしい。
だが、最初に見つけたのは勝利を核心したように破顔したケインのほうだった。けれども奴は砂埃が晴れて見えた黒い影を見て、大きく目を見開いた。
「お前……なんだよそれ……」
砂埃が完全に晴れると、セリナが顔色変えずに佇んでいた。あれだけの爆発があったのに、かすり傷一つないみたいだ。
彼女の周りには流れが目視できるくらい風が渦巻いていた。
風の盾。リオンと同じように彼女も風の魔力を使って自分の身を護ったのだ。しかし、彼女の属性魔法は「土」。ここまで高度な風の魔法が使えるとは思いもしなかった。
唖然とするケインに対し、セリナは涼しい顔をしたまま自分のショルダーバッグの口を開けた。
「これを使っただけです」
そう言って彼女が取り出したのはトレイ程の大きさの小振りな縦だった。中心には緑色のコア──ウィンド・コアがついている。あれこそが本物の「風の盾」。セリナが作った魔法道具だろう。それを彼女は爆発する直前に、自分の鞄に入れたまま使ったのだ。
「コアを扱うのは、あなただけではないのですよ」
セリナが淡々とした口調で言うと、ケインは悔しそうに歯を食いしばった。
「んじゃ、どっちが優秀なコア使いか試そうじゃねえか」
眉間にしわを寄せた血走った目でケインがセリナを睨みつける。
ケインがポケットに手を突っ込むと、お手玉サイズのコアが何個も出てきた。コアの種類は様々。つまり、あいつの攻撃パターンも様々ということだ。
初めて会った時は、どうして【爆弾使い】が風属性なのかと思ったが、こうして奴の戦いぶりを見ているうちに理解した。あいつは爆風のほうが能力なのだ。
ファイヤー・コアが純粋な爆弾とすると、アイス・コアが氷の塊。ウィンド・コアが爆風。そして、これはあくまでも予想だが、ギルドを襲った時に使った紫色のコアは魔界の瘴気。使うコアで効果は変わってくるから、迎え撃つセリナの判断力が試されることだろう。
──戦いはまだ続く。
「『創造魔法』」
自分の鞄に手を当てながら、セリナが魔法を詠唱する。彼女のオレンジ色に光る手は鞄の中で何を作り出しているのか。中身が見えないせいでケインはもどかしそうにしていた。
「作ってないで、俺とも遊ぼうぜ!」
魔法を使っている最中の無防備なセリナに向けて、ケインがファイヤー・コアを投げる。だが、今度はゴレムンちゃんが飛んでくるファイヤー・コアを拳で殴り飛ばした。
明後日の方向へと飛んだファイヤー・コアは、『アルカミラ』の岳に直撃し、岳にぶつかって爆発した。爆音に混ざってゴレムンちゃんが「ウオォォ!」と声を荒らげる。その勇敢な姿を目の当たりにしたケインは面倒臭そうに顔をしかめていた。
「ったく、ご立派なナイト様なことよ」
そんなことをケインが呟いている間にも、ゴレムンちゃんの怒涛の攻撃は続いていた。
拳を振りかぶっては、ケインに向かって何度も何度も殴っている。けれども、衝撃が大きい分攻撃速度が遅くてケインに見切られていた。当たったとしても、ケイン自身も扱える「風の盾」で防がれる。こんなに攻撃をしてもゴレムンちゃんの拳は全て空振りしており、ただただ地面がぼこぼこと地割れするだけだった。
「いい加減、うざったいんだよ!」
舌打ちをしながらケインが青色のコア──ウォーター・コアをゴレムンちゃんの足元に投げた。
砕けたウォーター・コアがゴレムンちゃんの足元に大きな水溜まりを作りだす。その水を踏んだゴレムンちゃんはつるっと滑り、頭からすってんころりんと転倒した。その衝撃で丸みを帯びた岩が飛んでいったような気がしたが、それが一体なんなのか知る前にゴレムンちゃんはボロボロに砕け散った。
だが、最初に見つけたのは勝利を核心したように破顔したケインのほうだった。けれども奴は砂埃が晴れて見えた黒い影を見て、大きく目を見開いた。
「お前……なんだよそれ……」
砂埃が完全に晴れると、セリナが顔色変えずに佇んでいた。あれだけの爆発があったのに、かすり傷一つないみたいだ。
彼女の周りには流れが目視できるくらい風が渦巻いていた。
風の盾。リオンと同じように彼女も風の魔力を使って自分の身を護ったのだ。しかし、彼女の属性魔法は「土」。ここまで高度な風の魔法が使えるとは思いもしなかった。
唖然とするケインに対し、セリナは涼しい顔をしたまま自分のショルダーバッグの口を開けた。
「これを使っただけです」
そう言って彼女が取り出したのはトレイ程の大きさの小振りな縦だった。中心には緑色のコア──ウィンド・コアがついている。あれこそが本物の「風の盾」。セリナが作った魔法道具だろう。それを彼女は爆発する直前に、自分の鞄に入れたまま使ったのだ。
「コアを扱うのは、あなただけではないのですよ」
セリナが淡々とした口調で言うと、ケインは悔しそうに歯を食いしばった。
「んじゃ、どっちが優秀なコア使いか試そうじゃねえか」
眉間にしわを寄せた血走った目でケインがセリナを睨みつける。
ケインがポケットに手を突っ込むと、お手玉サイズのコアが何個も出てきた。コアの種類は様々。つまり、あいつの攻撃パターンも様々ということだ。
初めて会った時は、どうして【爆弾使い】が風属性なのかと思ったが、こうして奴の戦いぶりを見ているうちに理解した。あいつは爆風のほうが能力なのだ。
ファイヤー・コアが純粋な爆弾とすると、アイス・コアが氷の塊。ウィンド・コアが爆風。そして、これはあくまでも予想だが、ギルドを襲った時に使った紫色のコアは魔界の瘴気。使うコアで効果は変わってくるから、迎え撃つセリナの判断力が試されることだろう。
──戦いはまだ続く。
「『創造魔法』」
自分の鞄に手を当てながら、セリナが魔法を詠唱する。彼女のオレンジ色に光る手は鞄の中で何を作り出しているのか。中身が見えないせいでケインはもどかしそうにしていた。
「作ってないで、俺とも遊ぼうぜ!」
魔法を使っている最中の無防備なセリナに向けて、ケインがファイヤー・コアを投げる。だが、今度はゴレムンちゃんが飛んでくるファイヤー・コアを拳で殴り飛ばした。
明後日の方向へと飛んだファイヤー・コアは、『アルカミラ』の岳に直撃し、岳にぶつかって爆発した。爆音に混ざってゴレムンちゃんが「ウオォォ!」と声を荒らげる。その勇敢な姿を目の当たりにしたケインは面倒臭そうに顔をしかめていた。
「ったく、ご立派なナイト様なことよ」
そんなことをケインが呟いている間にも、ゴレムンちゃんの怒涛の攻撃は続いていた。
拳を振りかぶっては、ケインに向かって何度も何度も殴っている。けれども、衝撃が大きい分攻撃速度が遅くてケインに見切られていた。当たったとしても、ケイン自身も扱える「風の盾」で防がれる。こんなに攻撃をしてもゴレムンちゃんの拳は全て空振りしており、ただただ地面がぼこぼこと地割れするだけだった。
「いい加減、うざったいんだよ!」
舌打ちをしながらケインが青色のコア──ウォーター・コアをゴレムンちゃんの足元に投げた。
砕けたウォーター・コアがゴレムンちゃんの足元に大きな水溜まりを作りだす。その水を踏んだゴレムンちゃんはつるっと滑り、頭からすってんころりんと転倒した。その衝撃で丸みを帯びた岩が飛んでいったような気がしたが、それが一体なんなのか知る前にゴレムンちゃんはボロボロに砕け散った。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる