転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第15章 絶望の街『イルニス』

第208話 二人のコア使い

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 セリナの悲鳴すらも聞こえない。しかし、こんな爆発に巻き込まれたら一溜まりもない。彼女の安否がこの砂埃が晴れるまでわからないのがもどかしい。

 だが、最初に見つけたのは勝利を核心したように破顔したケインのほうだった。けれども奴は砂埃が晴れて見えた黒い影を見て、大きく目を見開いた。

「お前……なんだよそれ……」

 砂埃が完全に晴れると、セリナが顔色変えずに佇んでいた。あれだけの爆発があったのに、かすり傷一つないみたいだ。

 彼女の周りには流れが目視できるくらい風が渦巻いていた。

 風の盾。リオンと同じように彼女も風の魔力を使って自分の身を護ったのだ。しかし、彼女の属性魔法は「土」。ここまで高度な風の魔法が使えるとは思いもしなかった。

 唖然とするケインに対し、セリナは涼しい顔をしたまま自分のショルダーバッグの口を開けた。

「これを使っただけです」

 そう言って彼女が取り出したのはトレイ程の大きさの小振りな縦だった。中心には緑色のコア──ウィンド・コアがついている。あれこそが本物の「風の盾」。セリナが作った魔法道具だろう。それを彼女は爆発する直前に、自分の鞄に入れたまま使ったのだ。

「コアを扱うのは、あなただけではないのですよ」

 セリナが淡々とした口調で言うと、ケインは悔しそうに歯を食いしばった。

「んじゃ、どっちが優秀なコア使いか試そうじゃねえか」

 眉間にしわを寄せた血走った目でケインがセリナを睨みつける。

 ケインがポケットに手を突っ込むと、お手玉サイズのコアが何個も出てきた。コアの種類は様々。つまり、あいつの攻撃パターンも様々ということだ。

 初めて会った時は、どうして【爆弾使いボマー】が風属性なのかと思ったが、こうして奴の戦いぶりを見ているうちに理解した。あいつは爆風のほうが能力なのだ。

 ファイヤー・コアが純粋な爆弾とすると、アイス・コアが氷の塊。ウィンド・コアが爆風。そして、これはあくまでも予想だが、ギルドを襲った時に使った紫色のコアは魔界の瘴気。使うコアで効果は変わってくるから、迎え撃つセリナの判断力が試されることだろう。

 ──戦いはまだ続く。

「『創造魔法クリエイティッド』」

 自分の鞄に手を当てながら、セリナが魔法を詠唱する。彼女のオレンジ色に光る手は鞄の中で何を作り出しているのか。中身が見えないせいでケインはもどかしそうにしていた。

「作ってないで、俺とも遊ぼうぜ!」

 魔法を使っている最中の無防備なセリナに向けて、ケインがファイヤー・コアを投げる。だが、今度はゴレムンちゃんが飛んでくるファイヤー・コアを拳で殴り飛ばした。

 明後日の方向へと飛んだファイヤー・コアは、『アルカミラ』の岳に直撃し、岳にぶつかって爆発した。爆音に混ざってゴレムンちゃんが「ウオォォ!」と声を荒らげる。その勇敢な姿を目の当たりにしたケインは面倒臭そうに顔をしかめていた。

「ったく、ご立派なナイト様なことよ」

 そんなことをケインが呟いている間にも、ゴレムンちゃんの怒涛の攻撃は続いていた。

 拳を振りかぶっては、ケインに向かって何度も何度も殴っている。けれども、衝撃が大きい分攻撃速度が遅くてケインに見切られていた。当たったとしても、ケイン自身も扱える「風の盾」で防がれる。こんなに攻撃をしてもゴレムンちゃんの拳は全て空振りしており、ただただ地面がぼこぼこと地割れするだけだった。

「いい加減、うざったいんだよ!」

 舌打ちをしながらケインが青色のコア──ウォーター・コアをゴレムンちゃんの足元に投げた。

 砕けたウォーター・コアがゴレムンちゃんの足元に大きな水溜まりを作りだす。その水を踏んだゴレムンちゃんはつるっと滑り、頭からすってんころりんと転倒した。その衝撃で丸みを帯びた岩が飛んでいったような気がしたが、それが一体なんなのか知る前にゴレムンちゃんはボロボロに砕け散った。
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