転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第16章 魔王は4人で倒すもの

第212話 魔王のお出まし

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「おーおー、豪華な出迎えだな」

 ノアが笑いながらも、猫の姿になって俺の頭の上に乗った。傍から見れば笑いごとでは済ませられない現状だ。

 だが、俺たち男組は誰一人うろたえることなく、「待ってました」と言わんばかりに各々武器を構えた。殺気立っているのは何も魔物だけではない。俺たちだって、先ほどから暴れたくて仕方がなかったのだ。

「ノア……俺のマジックパワー、今、どれくらいだ?」

 唐突に聞いたものだから、頭上のノアが驚いたようにピクッと動いたが、すぐに俺のステータスボードを確認した。

「喜べ。三十だ」

「オーケー。十分だ」

 思った以上に上がっていたのは僥倖。俺は両手を広げ、神経を一気に集中させた。

 俺の両手に青い魔力が溜まる。それと同時に肌が凍りつくような冷気も感じる。この空気の変化に仲間たちも目の前の魔物も困惑していたが、俺は構わず両腕を振った。

「死ねよ。『集団即死魔法ディジリッド』」

 魔法を詠唱すると、両手に込められた魔力が弾け飛び、青い光が骸の形に変化して前方の魔物たちへと飛んでいく。

 骸を模した青い光が魔物に貫通すると、奴らは野太い悲鳴をあげて燃えるように消えていった。魔法が当たった魔物は全員即死。これで半分は消滅。この戦法にノアが「ほう」と感心した。

「足りない魔力は瘴気で補ったのか。やるではないか」

 元々この魔法は一発撃つと魔力が枯渇するし、そもそも自分より弱い相手にしか効かないはずだった。だが、ここが瘴気まみれだったら話は変わる。『ザラクの森』より瘴気があふれているこの『アルカミラ』なら、俺の魔力も爆上がりのはずだ。魔力は三分一削られたが、そもそも使わないからこれくらい屁でもない。

 残りは後方の半分だが、こちらも心配には及ばなかった。

「リオちゃーん。久しぶりに行くわよー」

「うん!」

 アンジェのひと声で、リオンが杖を振る。すると、魔物たちの前にいきなり竜巻が現れ、一瞬で奴らを飲み込んだ。

 竜巻に手も足も出ない魔物は、洗濯機に詰められた衣類のようにぐるぐると回る。逃れられないことを確認すると、今度はアンジェがその竜巻に向かって炎を放った。

「はい、終わり」

 軽い口調でアンジェがそう告げた頃には、竜巻は炎に包まれて燃えていた。

 炎の渦の中で魔物たちの断末魔が聞こえる。そこから間もなくして炎の煙に混ざって紫色の靄が竜巻の風に紛れて流れていくのが見えた。竜巻に巻き込まれた魔物は、きっと骨の髄まで焼かれて絶命したのだろう。その証拠に、竜巻が消えた頃には奴らの姿はなく、地面にコアがコロコロと転がっているだけだった。

 無事に魔物を殲滅させることができたが、俺たちに休息はなかった。

「へえ……やるじゃん」

 頭上から聞き慣れた声がする。徐に見上げると、そこには宙に浮いたライトとセトが俺たちのことを見下ろしていた。

「即死技なんて使えたんだね。ちょっと見くびってたかも」

 楽しげに目を細めるライトだったが、俺のことを舐めくさっていることは見て取れた。だからこそ、あいつに聞こえるくらい大きな舌打ちをしてやった。

「あんな雑魚の相手なんて準備運動にもならねえよ。いいから、そこから降りてこい」

「おや、ムギトは飛べないの? 不便な体だね」

「やれやれ」と言うように、ライトが両手を掲げる。仕種、発言、この一つ一つ全て俺を馬鹿にしている。ムカつくところだが、その怒りはグッと拳で抑えた。こんな挑発など、乗るだけ時間と気力の無駄だ。

 互いにいがみ合っていると、それを見ていたセトが大袈裟にため息をついた。

「お前も懲りないな、ノア。ここで戦ったところで、こいつらの命が無駄になるだけぞ」

 セトがノアを見下ろしながらニンマリとする。だが、かつての同僚に声をかけられても、ノアは何も返さなかった。ただ、無言で俺の頭から降りて、元の神の使いの姿と変化した。

 ノアがじっとセトのことを見つめているうちに、セトから笑顔が消えた。

「なんだよその目……魔王ライトに勝つ気満々か?」

「ああ。その通りだ」

 迷いなく即答したノアに対し、セトはムカついたように顔を歪めた。たったこの一言だけでも、セトを怒らせるには十分だったらしい。
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