220 / 242
第16章 魔王は4人で倒すもの
第220話 無理ゲーの勝ち筋
しおりを挟む
「リオン君!」
最悪な事態を悟ったセリナが慌てて自分のショルダーバッグに手を突っ込んだ。何か道具を出すつもりだ。しかし、それを察したセトが冷淡な表情で彼女の腹部を蹴り飛ばした。
蹴られたセリナが地面に転がる。当たり所が悪いのか、セリナはうずくまったまま動かない。
「セリナ!」
「セリちゃん!」
慌ててセリナの名を呼ぶが、そうこうしている間にもリオンの魔力がセトに吸われていく。しかし、半ばリオンを人質に取られたようなものなので、迂闊にセトに攻撃ができない。
歯を食いしばりながらも事の様子を見ていると、やがて魔力がなくなったのかセトはリオンの頭部を掴んだままポイッと投げた。
「くっそ!」
投げ捨てられたリオンを滑り込んで受け止める。怪我はしていないようだが、リオンは目をつぶったまま苦しそうに荒い呼吸をしていた。リオンの魔力が枯渇しているのだ。この様子だと、自分で立ち上がることもできないだろう。
まずい。非常にまずい。これ以上リオンの攻撃も補助も回復も見込めない。それどころか、ここからはダメージを負わされたリオンとセリナを護りながら戦わないとならないだろう。
一方、セトはライトが食らった肉体的なダメージは残っているものの、リオンから魔力を奪ったから力が有り余っているはずだ。これから雨あられと攻撃魔法が飛んでくることだろう。
考えろ。考えろ。
セトが使う攻撃魔法は遠距離攻撃。かといって近づくと三叉槍の電流を食らってしまう。しかし、今動けるのは俺とアンジェだけ。それに加え、今はリオンとセリナを護りながら戦わないといけない。
無理だ。いや、違う。考えろ。考えろ。何か利用できるものはないか。
俺の魔法──は、戦力ならない。霰を飛ばしたところでどうにもならないし、辺りを凍らせるような水もない。アンジェの火炎放射は使えるかもしれないが、ダメージは入らないだろうし、さっきみたいに避けられてしまうだろう。
セリナの魔法道具は? でも、肝心のセリナが使える状況でもないし、誰かが使うにしろ、彼女に使い方を聞ける暇はない。
「いやあ、人の無駄な努力を見るのは楽しいもんだな」
セトの嫌みが胸に突き刺さる。こいつからしてみれば勝ち目のない相手を前にして必死に戦略を練る俺が滑稽で仕方がないのだろう。けれども、俺は諦める訳にはいかないのだ。ここで退いたら、仲間も、弟も、世界も、全てが死ぬ。
だが、セトの言う通り、この考えも無駄な努力なのかもしれない。どんなに考えても、勝ち筋がまったく見えてこない。見えるのは、セトの雷魔法で昇天するビジョンだけ。
文字通り手も足も出ないでいると、猫の姿のノアが俺の頭部に乗った。
急な衝撃にバランスを崩し、前屈みになる。すると、顔をあげたところで青い画面が現れた。俺のステータスボードである。
「貴様の情報だ。あやつには見えねえ。これで何か捻り出せ」
そう言うと、俺のステータスボードが少しずつスクロールしていった。
レベル。魔力。力。知力。全てのステータスが最初に見た時よりずっと数値が上がっていた。だが、どれだけ上がった数値を見せられても、セトへの勝ち筋は見えてこなかった。
だが、ある画面を目の前にした時、俺は思わず息を呑んだ。あったのだ。まだ使っていない、俺の切り札が。しかし、これを使ったところでどうなるかは俺自身も想像がつかない。それくらい、博打の技だ。
浮かぶ策が一つ。彼らには防御に徹してもらうということだ。
「セリナ……あの風の盾ってまだ使えるのか?」
未だ起き上がれないセリナに尋ねると、彼女は息絶え絶えながらもコクリと頷いた。
「アンジェ、その盾で二人を護ってくれ」
「『護ってくれ』って……それ、どういうことよ」
いきなり俺に請われ、アンジェが目を瞠る。当然だ。未だ勝ち筋が見えない状況で敢えて魔王と一対一勝負をしようとしているのだから愕然とするに決まっている。けれども、考えつく手立てはこれしかないのだ。
最悪な事態を悟ったセリナが慌てて自分のショルダーバッグに手を突っ込んだ。何か道具を出すつもりだ。しかし、それを察したセトが冷淡な表情で彼女の腹部を蹴り飛ばした。
蹴られたセリナが地面に転がる。当たり所が悪いのか、セリナはうずくまったまま動かない。
「セリナ!」
「セリちゃん!」
慌ててセリナの名を呼ぶが、そうこうしている間にもリオンの魔力がセトに吸われていく。しかし、半ばリオンを人質に取られたようなものなので、迂闊にセトに攻撃ができない。
歯を食いしばりながらも事の様子を見ていると、やがて魔力がなくなったのかセトはリオンの頭部を掴んだままポイッと投げた。
「くっそ!」
投げ捨てられたリオンを滑り込んで受け止める。怪我はしていないようだが、リオンは目をつぶったまま苦しそうに荒い呼吸をしていた。リオンの魔力が枯渇しているのだ。この様子だと、自分で立ち上がることもできないだろう。
まずい。非常にまずい。これ以上リオンの攻撃も補助も回復も見込めない。それどころか、ここからはダメージを負わされたリオンとセリナを護りながら戦わないとならないだろう。
一方、セトはライトが食らった肉体的なダメージは残っているものの、リオンから魔力を奪ったから力が有り余っているはずだ。これから雨あられと攻撃魔法が飛んでくることだろう。
考えろ。考えろ。
セトが使う攻撃魔法は遠距離攻撃。かといって近づくと三叉槍の電流を食らってしまう。しかし、今動けるのは俺とアンジェだけ。それに加え、今はリオンとセリナを護りながら戦わないといけない。
無理だ。いや、違う。考えろ。考えろ。何か利用できるものはないか。
俺の魔法──は、戦力ならない。霰を飛ばしたところでどうにもならないし、辺りを凍らせるような水もない。アンジェの火炎放射は使えるかもしれないが、ダメージは入らないだろうし、さっきみたいに避けられてしまうだろう。
セリナの魔法道具は? でも、肝心のセリナが使える状況でもないし、誰かが使うにしろ、彼女に使い方を聞ける暇はない。
「いやあ、人の無駄な努力を見るのは楽しいもんだな」
セトの嫌みが胸に突き刺さる。こいつからしてみれば勝ち目のない相手を前にして必死に戦略を練る俺が滑稽で仕方がないのだろう。けれども、俺は諦める訳にはいかないのだ。ここで退いたら、仲間も、弟も、世界も、全てが死ぬ。
だが、セトの言う通り、この考えも無駄な努力なのかもしれない。どんなに考えても、勝ち筋がまったく見えてこない。見えるのは、セトの雷魔法で昇天するビジョンだけ。
文字通り手も足も出ないでいると、猫の姿のノアが俺の頭部に乗った。
急な衝撃にバランスを崩し、前屈みになる。すると、顔をあげたところで青い画面が現れた。俺のステータスボードである。
「貴様の情報だ。あやつには見えねえ。これで何か捻り出せ」
そう言うと、俺のステータスボードが少しずつスクロールしていった。
レベル。魔力。力。知力。全てのステータスが最初に見た時よりずっと数値が上がっていた。だが、どれだけ上がった数値を見せられても、セトへの勝ち筋は見えてこなかった。
だが、ある画面を目の前にした時、俺は思わず息を呑んだ。あったのだ。まだ使っていない、俺の切り札が。しかし、これを使ったところでどうなるかは俺自身も想像がつかない。それくらい、博打の技だ。
浮かぶ策が一つ。彼らには防御に徹してもらうということだ。
「セリナ……あの風の盾ってまだ使えるのか?」
未だ起き上がれないセリナに尋ねると、彼女は息絶え絶えながらもコクリと頷いた。
「アンジェ、その盾で二人を護ってくれ」
「『護ってくれ』って……それ、どういうことよ」
いきなり俺に請われ、アンジェが目を瞠る。当然だ。未だ勝ち筋が見えない状況で敢えて魔王と一対一勝負をしようとしているのだから愕然とするに決まっている。けれども、考えつく手立てはこれしかないのだ。
0
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる