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第16章 魔王は4人で倒すもの
第222話 勇者、ピンチ
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◆ ◆ ◆
それからどれくらい意識を失っていただろう。重たい瞼を開けても、目の前は暗いままだった。
体が圧迫されて指一本動かすことができない。呼吸も上手くできない。おそらく爆発のせいで崩れた岩場の下敷きになってしまったのだろう。こうして生きているのが不思議なくらいだ。
体を動かせられないのは何も岩場の下敷きにされているだけではなかった。
体が融解したように力が入らない。かろうじて浅い呼吸ができるが、それ以外のことはできていない。魔力が枯渇したのだ。当たり前だ。足りないはずの魔力を体中から捻り出して使った。魔力も体力も無になるに決まっている。
ぼうっとしながら意識を闇に溶かしていると、いきなり頭上から光が差し込んだ。突然差し込む光に目が眩む。だが、目を凝らしているうちに突然腕を取られ、力任せに引っ張られた。誰かが俺を救い出してくれた。一瞬抱いたそんな希望は、なんとも淡く儚いものだった。
「よぉ……やってくれたじゃねえか、勇者様」
俺を岩場から引っ張り出したのは、他ならぬセトだった。頭から血を流し、剥き出しになった肌は擦り切れ、土埃まみれになっていたが、それでもセトはまだ動けていた。
引っ張り出されて腕を握られたまま、宙ぶらりんになる。朦朧とした意識と力が入らないこの体では、こいつから逃げることも、握られた奴の腕を振り払うこともできない。ただ、重力に身を任せてゆらゆらと揺れるだけ。
「ちょっとあんた……ムギちゃんに手を出したら容赦しないわよ……」
どこからかアンジェの低い声が聞こえる。
声をしたほうに視線を向けるとアンジェがセリナとリオンをかばいながら、風の盾で必死に押しつぶそうとしている巨大な岩を抑えていた。彼の足元にいるセリナとリオンは目を閉じたまま動かない。気絶しているだけということを、心から祈っている。
「威勢は良いが、どうせそこから一歩も動くことができだろ?」
アンジェが血眼になって睨みつけても、セトは余裕綽々だった。
眉間にしわが堀深く刻まれるくらい険しい顔で威嚇するアンジェだが、盾を支える腕は血管が浮き出るくらい力が込められており、プルプルと震えている。きっと声を発することですらも手一杯なのだろう。セトの言う通り、あの巨大な岩を払いのけない限り、アンジェの助太刀は見込めない。
「そこで指を咥えながら勇者が死ぬのを見ておきな。あ、悪い。指を咥えるのもできないのか」
「クックック」と肩を揺らして嘲るセトを前にアンジェの目がさらに鋭くなる。だが、当の俺はセトに言い返すことも、アンジェにフォローを入れることもできなかった。
途方もなく揺らいでいると、突然掴まれたセトの腕からズシンと重力を感じた。何かがセトの腕に乗ったみたいだ。
セトの腕に乗ったのは、猫の姿をしたノアだった。彼女も爆発に巻き込まれたらしく、小さい体に傷がついて、紺色の毛にべっとりと赤い血がついていた。
そんな満身創痍なノアの姿を見て、セトは愚弄した。
「馬鹿だな。元の姿で高みの見物をしていれば、そんな痛い目を見なかったろうに」
「黙れ。人の意地に茶々入れするな」
言い返すノアだったが、呼吸は「フー」「フー」とひたすらに荒かった。きっと小さな体で受けてしまったダメージは俺たちより過大に入っているのだろう。それでもノアは生傷が絶えない体であっても、ノアは牙を剥き出しにしてセトに威嚇していた。
「邪魔なんだよ」
セトがノアの首根っこを掴んで摘まみだそうとしたが、ノアは爪を立てて抵抗する。絶対にここから離れない。そんな強い意志を感じ取れた。だが、どんなに抗っても、人間と猫では力の差が歴然としている。セトに捕まったノアは、抵抗も虚しくそのまま地面に叩きつけられた。
叩きつけられたノアが地面に転がった頃には、元の神の使いの姿になっていた。もう猫になる力も彼女には残っていないみたいだ。幸い息はあるみたいだが、横たわったまま微動だにしない。
体中傷だらけの旧友を見ても、セトは渋い顔をしたまま舌打ちするだけで何も言わなかった。だが、ノアが最後に抗った爪の痕は、しっかりセトの腕に刻まれていた。
それからどれくらい意識を失っていただろう。重たい瞼を開けても、目の前は暗いままだった。
体が圧迫されて指一本動かすことができない。呼吸も上手くできない。おそらく爆発のせいで崩れた岩場の下敷きになってしまったのだろう。こうして生きているのが不思議なくらいだ。
体を動かせられないのは何も岩場の下敷きにされているだけではなかった。
体が融解したように力が入らない。かろうじて浅い呼吸ができるが、それ以外のことはできていない。魔力が枯渇したのだ。当たり前だ。足りないはずの魔力を体中から捻り出して使った。魔力も体力も無になるに決まっている。
ぼうっとしながら意識を闇に溶かしていると、いきなり頭上から光が差し込んだ。突然差し込む光に目が眩む。だが、目を凝らしているうちに突然腕を取られ、力任せに引っ張られた。誰かが俺を救い出してくれた。一瞬抱いたそんな希望は、なんとも淡く儚いものだった。
「よぉ……やってくれたじゃねえか、勇者様」
俺を岩場から引っ張り出したのは、他ならぬセトだった。頭から血を流し、剥き出しになった肌は擦り切れ、土埃まみれになっていたが、それでもセトはまだ動けていた。
引っ張り出されて腕を握られたまま、宙ぶらりんになる。朦朧とした意識と力が入らないこの体では、こいつから逃げることも、握られた奴の腕を振り払うこともできない。ただ、重力に身を任せてゆらゆらと揺れるだけ。
「ちょっとあんた……ムギちゃんに手を出したら容赦しないわよ……」
どこからかアンジェの低い声が聞こえる。
声をしたほうに視線を向けるとアンジェがセリナとリオンをかばいながら、風の盾で必死に押しつぶそうとしている巨大な岩を抑えていた。彼の足元にいるセリナとリオンは目を閉じたまま動かない。気絶しているだけということを、心から祈っている。
「威勢は良いが、どうせそこから一歩も動くことができだろ?」
アンジェが血眼になって睨みつけても、セトは余裕綽々だった。
眉間にしわが堀深く刻まれるくらい険しい顔で威嚇するアンジェだが、盾を支える腕は血管が浮き出るくらい力が込められており、プルプルと震えている。きっと声を発することですらも手一杯なのだろう。セトの言う通り、あの巨大な岩を払いのけない限り、アンジェの助太刀は見込めない。
「そこで指を咥えながら勇者が死ぬのを見ておきな。あ、悪い。指を咥えるのもできないのか」
「クックック」と肩を揺らして嘲るセトを前にアンジェの目がさらに鋭くなる。だが、当の俺はセトに言い返すことも、アンジェにフォローを入れることもできなかった。
途方もなく揺らいでいると、突然掴まれたセトの腕からズシンと重力を感じた。何かがセトの腕に乗ったみたいだ。
セトの腕に乗ったのは、猫の姿をしたノアだった。彼女も爆発に巻き込まれたらしく、小さい体に傷がついて、紺色の毛にべっとりと赤い血がついていた。
そんな満身創痍なノアの姿を見て、セトは愚弄した。
「馬鹿だな。元の姿で高みの見物をしていれば、そんな痛い目を見なかったろうに」
「黙れ。人の意地に茶々入れするな」
言い返すノアだったが、呼吸は「フー」「フー」とひたすらに荒かった。きっと小さな体で受けてしまったダメージは俺たちより過大に入っているのだろう。それでもノアは生傷が絶えない体であっても、ノアは牙を剥き出しにしてセトに威嚇していた。
「邪魔なんだよ」
セトがノアの首根っこを掴んで摘まみだそうとしたが、ノアは爪を立てて抵抗する。絶対にここから離れない。そんな強い意志を感じ取れた。だが、どんなに抗っても、人間と猫では力の差が歴然としている。セトに捕まったノアは、抵抗も虚しくそのまま地面に叩きつけられた。
叩きつけられたノアが地面に転がった頃には、元の神の使いの姿になっていた。もう猫になる力も彼女には残っていないみたいだ。幸い息はあるみたいだが、横たわったまま微動だにしない。
体中傷だらけの旧友を見ても、セトは渋い顔をしたまま舌打ちするだけで何も言わなかった。だが、ノアが最後に抗った爪の痕は、しっかりセトの腕に刻まれていた。
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