転生するのにベビー・サタンの能力をもらったが、案の定魔力がたりない~最弱勇者の俺が最強魔王を倒すまで~

葛来奈都

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第16章 魔王は4人で倒すもの

第227話 『アルカミラ』の火口。魔界の天辺。

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「あばよ、悪友。せいぜい復興を頑張りやがれ」

「ああ……姉さんによろしく」

 無表情に告げられた別れの言葉に目を瞠ったセトだったが、すぐに口角を上げた。それが、堕天使セトの最期だった。

 セトが消滅すると、ノアは面倒くさそうにガシガシと自分の頭を掻いて『アルカミラ』の火口を見上げた。そして、一方的に見守っていた俺たちのほうに振り返り、「はあ」と息を吐いた。

「……行くぞ。多分、これで終わりだ」

 俺も仲間たちも、無言のまま首を縦に振る。その頷きを確認すると、ノアは聖獣の姿となり、俺たちを背中に乗せた。

 行く先は、『アルカミラ』の火口。魔界の天辺と言っても、差支えがないような気がした。


 ◆ ◆ ◆


 あれだけ瘴気が溢れていたはずなのに、火口に充満していたはずの瘴気が綺麗さっぱりなくなっていた。これも魔王が消滅した影響なのだろうか。喜ぶべきところなのに、胸がズキンと痛んだ。

 だが、瘴気がなくなったおかげで、先ほどまで濃厚な瘴気で近づけそうもなかった火口へとたどり着くことができた。

 ノアの背中から火口を覗き込むと、溢れていたはずの紫色のマグマが綺麗さっぱりなくなっていた。直前に噴火して中身が全部からになったのか。理由はともあれ、ノアは『アルカミラ』の火口の中へと降りていった。

 火口には石っころ一つ落ちていないくらい殺風景なところだった。ただ、その中心には大きな紫色のクリスタルが鎮座していた。これは『オルヴィルカ』で見た、魔王の卵……のはず。

「ここは……?」

「魔界と地界の狭間と言ったところだろう」

 話しながら、ノアが地面に着地する。

 殺風景な風景にぽつんとあるクリスタル。存在感が強い。

「でも、どうしてこれが、こんなところに……」

 よくわからないまま紫色のクリスタルに近づく。だが、一歩近づいただけで全身に鳥肌が立つくらいぞわっとした。

 たまらず一歩退く俺に仲間たちが不思議そうな顔を浮かべる。しかし、この感覚をなんて説明しようか。

 リアクションに困っていると、クリスタルを前にノアが「へー」と納得したように頷いた。

「なるほど……魔王の原石とは、よく言ったものだ」

「魔王の原石って、どういうことですか?」

 ノアの意味ありげな発言にセリナが食いつく。すると、ノアは視線だけ俺に向けて問うてきた。

「貴様……今、何かぶっ壊したいと思わなかったか?」

「え?」

 突拍子もない問いに仲間たちが揃って声をあげる。だが、俺はすぐに頷けなかった。図星だったのだ。今さっき、クリスタルに近づいた時に感じた戦慄。それは確かに心が掻き立てられるような、強い破壊衝動だった。

「これは、クリスタルではなくて馬鹿でかいコアなのだろう」

 コアと言われ、あることを思い出した。ライトの胸に埋め込まれていたあの紫色のコアだ。ポケットの中からライトに埋め込まれたコアを出して見比べてみると、確かに色合いが目の前のクリスタルとよく似ていた。

 時同じくして、リオンも思い出したように自分の服のポケットを探った。出てきたのは紫色のコアだ。そういえば、エルフの里でアルジャーと戦った時、ライザがリオンにあげていた気がする。

「リオン……お前、それずっと持っていたのかよ」

「うん。せっかく兄ちゃんがくれたし、綺麗だからずっとお守りにしてた」

 コアがお守り。普通ならやらないことだろうが、リオンにとっては大好きなライザがくれた物はなんでもお宝だったみたいだ。あの激戦の最中でも持っていたことには驚いたが、結果的にこれがファインプレイだった。

「いいのを持っているではないか。貴様ら、ちょっとそれを見せてみろ」

 一瞬で本来の人型になったノアが、俺とリオンからそれぞれコアを受け取る。そして、コアとクリスタルを見比べてにやりと笑った。

「なんとなくわかった。貴様ら、これを見てみろ」

 と、ノアが手のひらにコアを乗せて俺たちに見せつける。そこで二つを見比べて、あることに気づいた。

「あれれ? 色が違う?」

 リオンの言う通り、俺とリオンのコアでは色が違っていた。

 同じ紫であるが、リオンが持っていたほうが色合いが薄い。その代わりに、コアの中でメラメラと炎のようなものが揺らめいている。俺が持っているほうは欠けてはいるが色合いが濃く、目の前にあるクリスタルと色と形もよく似ていた。むしろ、俺にはこのコアがあのクリスタルのかけらに見えた。
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