深呼吸

紗雪

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深呼吸

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 白く見えるはずの吐いた吐息がセピア色に見えた。僕には特にやりたいことがない。もう大学三年の冬だが、未だに何も見つからなかった。昔から何でも努力せずにある程度できてしまったせいか、熱中して打ち込むものも無かった。世の中の全てが色褪せて見えた。周りのみんなが疑いもせず揃って同じ行動をしていることがたまらなく気持ち悪い。それだけは変わらなかった。
 このままじゃ就活もダメだな。揃って同じようなスーツを着て、嘘に限りなく近い事実を限界まで膨らませたエントリーシート、そして面接官と会社に媚びを売るような話を考える。考えただけで吐き気がする。せっかく面倒なバイトが終わったのにもっと面倒なことを考えないといけないとは。生きていくのは本当にめんどくさい。
 ふと立ち止まる。雪景色がとても綺麗に見えた。都会の色鮮やかなネオンに雪が反射し、キラキラと光っている。否定する訳ではないが田舎ではこうはいかない。ぼーっとしながら周りを見ていると、なぜか一軒の建物に惹かれた。ライブハウスだろうか。一際強く光っている。
 そこからギターを背負った一人の少女が現れた。心臓が高鳴った。とても綺麗な見た目の少女であったがそれだけではない。とても色鮮やかに見えたのだ。そんな彼女を見ていると、彼女は寒かったのか大きく息を吸い込み吐き出した。ただの深呼吸だ。しかし、僕にはそれが輝いて見えた。まるで光の吐息だ。
 やりたいことがある、やりたいことをやっている。そういった子なのだろうか。とっくにどこかへ行ってしまった彼女を思い出しそう考える。将来も悪くないかもしれない。僕も深呼吸し立ち上がる。吐いた吐息は心做しか少し輝いて見えた。
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