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【第三章 国境への道】
6.拾われた手掛かり
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一同が一息つくと、ケインが改めて被害状況を確認する。幸い、致命傷を負った者はいない。森の中でうずくまっていた中年の男も、疲労と軽い外傷こそあるが命に別状はなさそうだ。
「それにしても、ここ最近は魔物の出現が多すぎる。どの街道を通ってもこんな感じじゃ、どこも安全じゃないぞ」
ケインは苦い表情を浮かべる。
ふと、リュートは倒れた魔物の一匹の近くで、何かが光っているのに気づいた。小さな金属片だろうか。
「ケインさん、ちょっと見てください。何か落ちてる」
リュートはそれを拾い上げる。小さな金の飾りのようにも見えるが、汚れがついていて判別しづらい。
ケインが眉(まゆ)をひそめながらそれを受け取り、近くの水で軽く洗ってみた。すると、どうやらそれは金属製の“刻印のついた札”のように見える。何らかの紋章が彫り込まれているようだが、その意匠は素人目にはわからない。
「魔物がこんなものを……?」
リュートも首を傾げる。魔物が金属を身につけるなど聞いたことがないし、仮に人間の持ち物を飲みこんだのだとしても、これほどきれいな形で残るだろうか。
ケインは札をまじまじと眺め、やがて顔を上げた。
「以前、似たようなものを盗賊団の隠れ家で見かけたことがある。間違いなく、これは人間が作ったものだ。もしかすると、何者かが魔物を飼い慣らしていた可能性もあるな」
「えっ、魔物を飼い慣らす……そんなことができるんですか?」
「普通は無理だ。だが、魔術や呪術の類を使えば、一定の支配を及ぼすことも不可能ではないらしい。詳しいことは俺もわからんが……」
不穏な沈黙が一同を包む。もし本当に魔物の背後に“何者か”が関わっているなら、単なる自然発生の脅威ではなく、意図的に仕組まれたものかもしれない。
「それにしても、ここ最近は魔物の出現が多すぎる。どの街道を通ってもこんな感じじゃ、どこも安全じゃないぞ」
ケインは苦い表情を浮かべる。
ふと、リュートは倒れた魔物の一匹の近くで、何かが光っているのに気づいた。小さな金属片だろうか。
「ケインさん、ちょっと見てください。何か落ちてる」
リュートはそれを拾い上げる。小さな金の飾りのようにも見えるが、汚れがついていて判別しづらい。
ケインが眉(まゆ)をひそめながらそれを受け取り、近くの水で軽く洗ってみた。すると、どうやらそれは金属製の“刻印のついた札”のように見える。何らかの紋章が彫り込まれているようだが、その意匠は素人目にはわからない。
「魔物がこんなものを……?」
リュートも首を傾げる。魔物が金属を身につけるなど聞いたことがないし、仮に人間の持ち物を飲みこんだのだとしても、これほどきれいな形で残るだろうか。
ケインは札をまじまじと眺め、やがて顔を上げた。
「以前、似たようなものを盗賊団の隠れ家で見かけたことがある。間違いなく、これは人間が作ったものだ。もしかすると、何者かが魔物を飼い慣らしていた可能性もあるな」
「えっ、魔物を飼い慣らす……そんなことができるんですか?」
「普通は無理だ。だが、魔術や呪術の類を使えば、一定の支配を及ぼすことも不可能ではないらしい。詳しいことは俺もわからんが……」
不穏な沈黙が一同を包む。もし本当に魔物の背後に“何者か”が関わっているなら、単なる自然発生の脅威ではなく、意図的に仕組まれたものかもしれない。
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