記憶のカケラ

シルヴィー

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ストーリー

行動不審

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ジニアはリュカスに連れられ、フェインの住処すみかに着く。ジニアはフェインの家に来たことがなかった。石造りのほとんど手の入っていない自然そのもののそれは、洞窟とまでは呼べないが、ぽっかりと空いた空間にどこからか陽が差し込む幻想的な場所だった。

リュカス曰く、入ってすぐのここは玄関であり、2つに分岐された1つは倉庫、もう1つが生活部屋になっているという。

ジニアはフェインがいるであろう、生活部屋に入る。


「……ぅ………ぁあ……」


苦しいのか、悲しいのかよく分からない、絞り出すような声が耳から聞こえた。一瞬どこにいるのか分からなかったが、暗闇に溶け込んで隅で転がっていた。

ジニアはすぐに駆け寄る。


「フェイン? どうしたの?」


声をかけるが、ただうなされるだけで反応はなかった。夢を見ているのかも知れない。起きるまで、声をかけよう。そう思って、数分ほど声をかけ続けると、ようやく気づいたらしい。が、話しかけていた位置が悪かった。


フェインは、ハッと飛び起きたのだ。額に思い切り当たり、思わず声を上げる。


「痛っだーー!!」


フェインは額に当たった反動で再び倒れるが、すぐにその場を離れ、出入り口近くの隅へと移動した。

いつものようにフードを被りこちらを見る。その姿は見慣れたものだった。動ける元気があることに安堵して、声をかける。


「……フェイン、良かった。具合はどう?」


ジニアは額を抑えながら、苦笑いを浮かべて聞く。しかし、返答がない。首をかしげて少し不安げな表情をする。


「フェイン? どうしたの? やっぱりどこか悪い?」


フェインは1度口を開いたが、何も言うこともなく口を結んだ。その様子に疑問を浮かべていると、一緒に付いてきたアガーべがジニアを呼ぶ。


「……ん? どうしたの、アガーべ?」

「記憶はペディ姉が持ってるよ」

「……え? どういうこと?」


ジニアはアガーべの言う意味が分からなかった。どういうことか聞き返そうとすると、フェインが逃げるように部屋を出て行ったため、慌てて追う。


「ちょ、フェイン!! 待ってよ!」


追おうとしたが、玄関でリュカスに思い切りぶつかってしまった。


『どうした? 慌てて』

「あ……、リュカスさん。フェインがおかしいの。何も言わずに出て行っちゃったから……」

『無言で出て行くのはいつもの事だろう? 話を聞く。まずは中に入って落ち着け。あるじはああ見えて冷静だ』

「でも……はぁー……」


ジニアはリュカスと話をして少し気持ちが落ち着いた。ペディアはリュカスの背に載ったまま、まだ意識が戻っていなかった。ジニアへ簡易的な布団の上にペディアを寝かせるのを手伝い、フェインとどんなやり取りがあったのかを説明した。
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