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世見津悟志
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「見てみたい。」
高校一年の最後の月、来月から高校二年になろうという忙しい時期。桜のつぼみもあと少しほどで咲きそうで、春独特の甘い香りが漂う中、世見津悟志は興奮していた。
「この異類婚姻譚、あまりにも詳細に、しかも祠まで祀られているなんて‼絶対に見てみたい‼」
しかし世見津悟志は納得がいっていなかった。
世見津悟志が厚く握りしめている伝説が書かれている本に書かれている内容は、この異類婚姻譚は最後の最後には蛇と人間は結ばれず、当の村の男もほかの村へ行ってしまったと書かれている。世見津悟志はこんなのはおかしい、ならばなぜ結ばれなかった蛇の女神は村に祀られているのか。ハッピーエンドじゃなきゃ、村に祀られることもないだろうに。と思っていた。
「ほかの文献も見てみなければ。一次資料だけではだめだ。なんなら実際にこの寺集落に行って聞き取り調査してくるか。実際にある村だしな。うん、それはありだ。」
世見津悟志。地域の伝承伝説にはまりつつ、自らも新たな民話を題材にした短編小説をインターネット上で創作公開していた。
悟志は、最近は自分自身の創作だけにとどまらず、実際に行ってみて、そこで出会った実際に伝わっている伝承や民話を見聞することに価値を見出していた。
そんな悟志には秘密があった。この世界でほんの一握りの者だけが持つという特異な力。悟志はそれを持っていたのだった。それでも悟志は日常ではそんなそぶりを一切見せず、ごく普通の一般人として、生きていた。そして普通に趣味に走る、ごく普通の高校生なのである。
「とにかくこの民話はもっと深く探りたい。絶対に実際に見に行ってやるぞ。」
学校のことなど後回しで、趣味に全開であった。それでも先生に目を付けられたくはないから、宿題はちゃんとやっていたし、テストの点数も赤点は避けるようにしていた。それなりにしっかりとは学校生活も送っていたのだった。
休日はとにかく、図書館へ行き、次の創作の手本や素材、そして取材先などを調査していた。
「来年度からは取材も本格始動しよう。蛇と人間の異類婚姻譚もそうだが、そのほかの伝承地もいろいろと行くぞ。」
金のかからない趣味であると、自負していた。いやむしろ、インターネットに投稿して、ほんの少しだが収入も入っていたから、逆に金がはいる趣味であるとも思っていた。ただ特段今は金のことは考えず、純粋に自分の趣味として楽しむのであった。
そんなある時、もう四月に入ろうとしているときだった。あと数日で新しいクラスになり、新しい学校生活が始まろうとするころ。春になると、やはり変な奴が増えるのである。
悟志が図書館から歩いて家に帰る途中、駅裏に差し掛かった時、耳をつんざくようなエンジンをふかす爆音。
「暴走族か。どこか近くにたむろっているな?」
まさに駅裏にバイクと自転車の集団がたむろっていた。
(なんで駅前じゃなくて何にもない駅裏にいるんだよ。しかもバイクと自転車ってどんな組み合わせだよ。こいつら中高生か?)
できるだけ目を合わせないようにしていたが、あからさまに絡まれてしまった。
「ヘーイ!ぼっちかぁ?」
「ギャハハハハ!」
悟志は最悪だと思った。それでも何とか無視し続け、さっさと家に帰ろうとしていた。しかしまた声がする。
「お前、一回あのボッチに絡んで来いよ」
悟志は
(おいおいまじか。)
と思った。
どうやら、上級生とみられる男が、下級生とみられる自転車に乗っていた男に対して、悟志に絡むように指示しているようなのだ。
こんな不運はなかなか無いぞと悟志は今日の運のなさを呪った。そして覚悟した。
「なあ、お前どこ行ってたんだ?いままで。遊んでたのか?」
絡まれたが、金出せとかそんなんじゃなくて、ただの質問かよ、と思った。そして悟志は、
「そんなことどうでもいいでしょう。それに本当はこんなことしたくないなら、いやだって言えばいいじゃないですか。」
「はあ⁉な、なんだよそれ、何言ってんだお前。」
悟志はとにかく、絡んできた男を諭した。
「本当は嫌なんでしょ。いつまでもなめられて、ほかの同級生はこんなこと指示されないのに、なんで自分だけいつもいじられて、こんな指示まで出されるんだって。いつも思ってるんでしょ?」
絡んできた男は動揺を隠せない。
「おい、やめろ、まじで何言ってんだ。先輩に聞かれたらどうすんだよ!」
小声で言った。
悟志は続けた。
「なんなら、今君が思っていること、全部彼らに僕から伝えましょうか?」
「ふざけんな!」
絡んできた男が胸ぐらをつかもうとしてきた。しかし悟志は、そんなものに捕まるわけはなかった。胸ぐらをつかもうとするも、はたまた腕をつかもうとするも失敗し、終いには男は怒りがこみあげてきて殴ろうと決めた。振りかぶるその前に、悟志は言った。
「それはやめたほうがいい。捕まるよ。」
と言われて、振りかぶる最中に思いとどまった。
絡んできた男は恐怖していた。何もかも見透かされていたからだ。
その瞬間、絡んできた男に悟志は言った。
「もう嫌だって言っちゃいなよ。抜けたいっていっちゃいなよ。」
すると、絡んできた男はすぐに振り向いて、たむろしている者たちのところへ行き、何かを言った。
その瞬間悟志は、今来た駅地下道を戻って走って逃げた。
「今のうちにとんずらするぞ!」
すると地下道の入り口の向こうから大声が聞こえてきた。
「はあ⁉抜けたいだと⁉てめぇいきなり何言ってんだ!」
そんな声を背に、悟志は家から遠ざかるようにして駅前に抜け、いったん近くの大きな神社に身を隠した。
「とりあえずしばらくここにいて、少し遠回りだけど、陸橋から帰るか…」
悟志は一息置いて、家路についたのだった。
高校一年の最後の月、来月から高校二年になろうという忙しい時期。桜のつぼみもあと少しほどで咲きそうで、春独特の甘い香りが漂う中、世見津悟志は興奮していた。
「この異類婚姻譚、あまりにも詳細に、しかも祠まで祀られているなんて‼絶対に見てみたい‼」
しかし世見津悟志は納得がいっていなかった。
世見津悟志が厚く握りしめている伝説が書かれている本に書かれている内容は、この異類婚姻譚は最後の最後には蛇と人間は結ばれず、当の村の男もほかの村へ行ってしまったと書かれている。世見津悟志はこんなのはおかしい、ならばなぜ結ばれなかった蛇の女神は村に祀られているのか。ハッピーエンドじゃなきゃ、村に祀られることもないだろうに。と思っていた。
「ほかの文献も見てみなければ。一次資料だけではだめだ。なんなら実際にこの寺集落に行って聞き取り調査してくるか。実際にある村だしな。うん、それはありだ。」
世見津悟志。地域の伝承伝説にはまりつつ、自らも新たな民話を題材にした短編小説をインターネット上で創作公開していた。
悟志は、最近は自分自身の創作だけにとどまらず、実際に行ってみて、そこで出会った実際に伝わっている伝承や民話を見聞することに価値を見出していた。
そんな悟志には秘密があった。この世界でほんの一握りの者だけが持つという特異な力。悟志はそれを持っていたのだった。それでも悟志は日常ではそんなそぶりを一切見せず、ごく普通の一般人として、生きていた。そして普通に趣味に走る、ごく普通の高校生なのである。
「とにかくこの民話はもっと深く探りたい。絶対に実際に見に行ってやるぞ。」
学校のことなど後回しで、趣味に全開であった。それでも先生に目を付けられたくはないから、宿題はちゃんとやっていたし、テストの点数も赤点は避けるようにしていた。それなりにしっかりとは学校生活も送っていたのだった。
休日はとにかく、図書館へ行き、次の創作の手本や素材、そして取材先などを調査していた。
「来年度からは取材も本格始動しよう。蛇と人間の異類婚姻譚もそうだが、そのほかの伝承地もいろいろと行くぞ。」
金のかからない趣味であると、自負していた。いやむしろ、インターネットに投稿して、ほんの少しだが収入も入っていたから、逆に金がはいる趣味であるとも思っていた。ただ特段今は金のことは考えず、純粋に自分の趣味として楽しむのであった。
そんなある時、もう四月に入ろうとしているときだった。あと数日で新しいクラスになり、新しい学校生活が始まろうとするころ。春になると、やはり変な奴が増えるのである。
悟志が図書館から歩いて家に帰る途中、駅裏に差し掛かった時、耳をつんざくようなエンジンをふかす爆音。
「暴走族か。どこか近くにたむろっているな?」
まさに駅裏にバイクと自転車の集団がたむろっていた。
(なんで駅前じゃなくて何にもない駅裏にいるんだよ。しかもバイクと自転車ってどんな組み合わせだよ。こいつら中高生か?)
できるだけ目を合わせないようにしていたが、あからさまに絡まれてしまった。
「ヘーイ!ぼっちかぁ?」
「ギャハハハハ!」
悟志は最悪だと思った。それでも何とか無視し続け、さっさと家に帰ろうとしていた。しかしまた声がする。
「お前、一回あのボッチに絡んで来いよ」
悟志は
(おいおいまじか。)
と思った。
どうやら、上級生とみられる男が、下級生とみられる自転車に乗っていた男に対して、悟志に絡むように指示しているようなのだ。
こんな不運はなかなか無いぞと悟志は今日の運のなさを呪った。そして覚悟した。
「なあ、お前どこ行ってたんだ?いままで。遊んでたのか?」
絡まれたが、金出せとかそんなんじゃなくて、ただの質問かよ、と思った。そして悟志は、
「そんなことどうでもいいでしょう。それに本当はこんなことしたくないなら、いやだって言えばいいじゃないですか。」
「はあ⁉な、なんだよそれ、何言ってんだお前。」
悟志はとにかく、絡んできた男を諭した。
「本当は嫌なんでしょ。いつまでもなめられて、ほかの同級生はこんなこと指示されないのに、なんで自分だけいつもいじられて、こんな指示まで出されるんだって。いつも思ってるんでしょ?」
絡んできた男は動揺を隠せない。
「おい、やめろ、まじで何言ってんだ。先輩に聞かれたらどうすんだよ!」
小声で言った。
悟志は続けた。
「なんなら、今君が思っていること、全部彼らに僕から伝えましょうか?」
「ふざけんな!」
絡んできた男が胸ぐらをつかもうとしてきた。しかし悟志は、そんなものに捕まるわけはなかった。胸ぐらをつかもうとするも、はたまた腕をつかもうとするも失敗し、終いには男は怒りがこみあげてきて殴ろうと決めた。振りかぶるその前に、悟志は言った。
「それはやめたほうがいい。捕まるよ。」
と言われて、振りかぶる最中に思いとどまった。
絡んできた男は恐怖していた。何もかも見透かされていたからだ。
その瞬間、絡んできた男に悟志は言った。
「もう嫌だって言っちゃいなよ。抜けたいっていっちゃいなよ。」
すると、絡んできた男はすぐに振り向いて、たむろしている者たちのところへ行き、何かを言った。
その瞬間悟志は、今来た駅地下道を戻って走って逃げた。
「今のうちにとんずらするぞ!」
すると地下道の入り口の向こうから大声が聞こえてきた。
「はあ⁉抜けたいだと⁉てめぇいきなり何言ってんだ!」
そんな声を背に、悟志は家から遠ざかるようにして駅前に抜け、いったん近くの大きな神社に身を隠した。
「とりあえずしばらくここにいて、少し遠回りだけど、陸橋から帰るか…」
悟志は一息置いて、家路についたのだった。
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