2 / 6
世見津悟志
しおりを挟む
「見てみたい。」
高校一年の最後の月、来月から高校二年になろうという忙しい時期。桜のつぼみもあと少しほどで咲きそうで、春独特の甘い香りが漂う中、世見津悟志は興奮していた。
「この異類婚姻譚、あまりにも詳細に、しかも祠まで祀られているなんて‼絶対に見てみたい‼」
しかし世見津悟志は納得がいっていなかった。
世見津悟志が厚く握りしめている伝説が書かれている本に書かれている内容は、この異類婚姻譚は最後の最後には蛇と人間は結ばれず、当の村の男もほかの村へ行ってしまったと書かれている。世見津悟志はこんなのはおかしい、ならばなぜ結ばれなかった蛇の女神は村に祀られているのか。ハッピーエンドじゃなきゃ、村に祀られることもないだろうに。と思っていた。
「ほかの文献も見てみなければ。一次資料だけではだめだ。なんなら実際にこの寺集落に行って聞き取り調査してくるか。実際にある村だしな。うん、それはありだ。」
世見津悟志。地域の伝承伝説にはまりつつ、自らも新たな民話を題材にした短編小説をインターネット上で創作公開していた。
悟志は、最近は自分自身の創作だけにとどまらず、実際に行ってみて、そこで出会った実際に伝わっている伝承や民話を見聞することに価値を見出していた。
そんな悟志には秘密があった。この世界でほんの一握りの者だけが持つという特異な力。悟志はそれを持っていたのだった。それでも悟志は日常ではそんなそぶりを一切見せず、ごく普通の一般人として、生きていた。そして普通に趣味に走る、ごく普通の高校生なのである。
「とにかくこの民話はもっと深く探りたい。絶対に実際に見に行ってやるぞ。」
学校のことなど後回しで、趣味に全開であった。それでも先生に目を付けられたくはないから、宿題はちゃんとやっていたし、テストの点数も赤点は避けるようにしていた。それなりにしっかりとは学校生活も送っていたのだった。
休日はとにかく、図書館へ行き、次の創作の手本や素材、そして取材先などを調査していた。
「来年度からは取材も本格始動しよう。蛇と人間の異類婚姻譚もそうだが、そのほかの伝承地もいろいろと行くぞ。」
金のかからない趣味であると、自負していた。いやむしろ、インターネットに投稿して、ほんの少しだが収入も入っていたから、逆に金がはいる趣味であるとも思っていた。ただ特段今は金のことは考えず、純粋に自分の趣味として楽しむのであった。
そんなある時、もう四月に入ろうとしているときだった。あと数日で新しいクラスになり、新しい学校生活が始まろうとするころ。春になると、やはり変な奴が増えるのである。
悟志が図書館から歩いて家に帰る途中、駅裏に差し掛かった時、耳をつんざくようなエンジンをふかす爆音。
「暴走族か。どこか近くにたむろっているな?」
まさに駅裏にバイクと自転車の集団がたむろっていた。
(なんで駅前じゃなくて何にもない駅裏にいるんだよ。しかもバイクと自転車ってどんな組み合わせだよ。こいつら中高生か?)
できるだけ目を合わせないようにしていたが、あからさまに絡まれてしまった。
「ヘーイ!ぼっちかぁ?」
「ギャハハハハ!」
悟志は最悪だと思った。それでも何とか無視し続け、さっさと家に帰ろうとしていた。しかしまた声がする。
「お前、一回あのボッチに絡んで来いよ」
悟志は
(おいおいまじか。)
と思った。
どうやら、上級生とみられる男が、下級生とみられる自転車に乗っていた男に対して、悟志に絡むように指示しているようなのだ。
こんな不運はなかなか無いぞと悟志は今日の運のなさを呪った。そして覚悟した。
「なあ、お前どこ行ってたんだ?いままで。遊んでたのか?」
絡まれたが、金出せとかそんなんじゃなくて、ただの質問かよ、と思った。そして悟志は、
「そんなことどうでもいいでしょう。それに本当はこんなことしたくないなら、いやだって言えばいいじゃないですか。」
「はあ⁉な、なんだよそれ、何言ってんだお前。」
悟志はとにかく、絡んできた男を諭した。
「本当は嫌なんでしょ。いつまでもなめられて、ほかの同級生はこんなこと指示されないのに、なんで自分だけいつもいじられて、こんな指示まで出されるんだって。いつも思ってるんでしょ?」
絡んできた男は動揺を隠せない。
「おい、やめろ、まじで何言ってんだ。先輩に聞かれたらどうすんだよ!」
小声で言った。
悟志は続けた。
「なんなら、今君が思っていること、全部彼らに僕から伝えましょうか?」
「ふざけんな!」
絡んできた男が胸ぐらをつかもうとしてきた。しかし悟志は、そんなものに捕まるわけはなかった。胸ぐらをつかもうとするも、はたまた腕をつかもうとするも失敗し、終いには男は怒りがこみあげてきて殴ろうと決めた。振りかぶるその前に、悟志は言った。
「それはやめたほうがいい。捕まるよ。」
と言われて、振りかぶる最中に思いとどまった。
絡んできた男は恐怖していた。何もかも見透かされていたからだ。
その瞬間、絡んできた男に悟志は言った。
「もう嫌だって言っちゃいなよ。抜けたいっていっちゃいなよ。」
すると、絡んできた男はすぐに振り向いて、たむろしている者たちのところへ行き、何かを言った。
その瞬間悟志は、今来た駅地下道を戻って走って逃げた。
「今のうちにとんずらするぞ!」
すると地下道の入り口の向こうから大声が聞こえてきた。
「はあ⁉抜けたいだと⁉てめぇいきなり何言ってんだ!」
そんな声を背に、悟志は家から遠ざかるようにして駅前に抜け、いったん近くの大きな神社に身を隠した。
「とりあえずしばらくここにいて、少し遠回りだけど、陸橋から帰るか…」
悟志は一息置いて、家路についたのだった。
高校一年の最後の月、来月から高校二年になろうという忙しい時期。桜のつぼみもあと少しほどで咲きそうで、春独特の甘い香りが漂う中、世見津悟志は興奮していた。
「この異類婚姻譚、あまりにも詳細に、しかも祠まで祀られているなんて‼絶対に見てみたい‼」
しかし世見津悟志は納得がいっていなかった。
世見津悟志が厚く握りしめている伝説が書かれている本に書かれている内容は、この異類婚姻譚は最後の最後には蛇と人間は結ばれず、当の村の男もほかの村へ行ってしまったと書かれている。世見津悟志はこんなのはおかしい、ならばなぜ結ばれなかった蛇の女神は村に祀られているのか。ハッピーエンドじゃなきゃ、村に祀られることもないだろうに。と思っていた。
「ほかの文献も見てみなければ。一次資料だけではだめだ。なんなら実際にこの寺集落に行って聞き取り調査してくるか。実際にある村だしな。うん、それはありだ。」
世見津悟志。地域の伝承伝説にはまりつつ、自らも新たな民話を題材にした短編小説をインターネット上で創作公開していた。
悟志は、最近は自分自身の創作だけにとどまらず、実際に行ってみて、そこで出会った実際に伝わっている伝承や民話を見聞することに価値を見出していた。
そんな悟志には秘密があった。この世界でほんの一握りの者だけが持つという特異な力。悟志はそれを持っていたのだった。それでも悟志は日常ではそんなそぶりを一切見せず、ごく普通の一般人として、生きていた。そして普通に趣味に走る、ごく普通の高校生なのである。
「とにかくこの民話はもっと深く探りたい。絶対に実際に見に行ってやるぞ。」
学校のことなど後回しで、趣味に全開であった。それでも先生に目を付けられたくはないから、宿題はちゃんとやっていたし、テストの点数も赤点は避けるようにしていた。それなりにしっかりとは学校生活も送っていたのだった。
休日はとにかく、図書館へ行き、次の創作の手本や素材、そして取材先などを調査していた。
「来年度からは取材も本格始動しよう。蛇と人間の異類婚姻譚もそうだが、そのほかの伝承地もいろいろと行くぞ。」
金のかからない趣味であると、自負していた。いやむしろ、インターネットに投稿して、ほんの少しだが収入も入っていたから、逆に金がはいる趣味であるとも思っていた。ただ特段今は金のことは考えず、純粋に自分の趣味として楽しむのであった。
そんなある時、もう四月に入ろうとしているときだった。あと数日で新しいクラスになり、新しい学校生活が始まろうとするころ。春になると、やはり変な奴が増えるのである。
悟志が図書館から歩いて家に帰る途中、駅裏に差し掛かった時、耳をつんざくようなエンジンをふかす爆音。
「暴走族か。どこか近くにたむろっているな?」
まさに駅裏にバイクと自転車の集団がたむろっていた。
(なんで駅前じゃなくて何にもない駅裏にいるんだよ。しかもバイクと自転車ってどんな組み合わせだよ。こいつら中高生か?)
できるだけ目を合わせないようにしていたが、あからさまに絡まれてしまった。
「ヘーイ!ぼっちかぁ?」
「ギャハハハハ!」
悟志は最悪だと思った。それでも何とか無視し続け、さっさと家に帰ろうとしていた。しかしまた声がする。
「お前、一回あのボッチに絡んで来いよ」
悟志は
(おいおいまじか。)
と思った。
どうやら、上級生とみられる男が、下級生とみられる自転車に乗っていた男に対して、悟志に絡むように指示しているようなのだ。
こんな不運はなかなか無いぞと悟志は今日の運のなさを呪った。そして覚悟した。
「なあ、お前どこ行ってたんだ?いままで。遊んでたのか?」
絡まれたが、金出せとかそんなんじゃなくて、ただの質問かよ、と思った。そして悟志は、
「そんなことどうでもいいでしょう。それに本当はこんなことしたくないなら、いやだって言えばいいじゃないですか。」
「はあ⁉な、なんだよそれ、何言ってんだお前。」
悟志はとにかく、絡んできた男を諭した。
「本当は嫌なんでしょ。いつまでもなめられて、ほかの同級生はこんなこと指示されないのに、なんで自分だけいつもいじられて、こんな指示まで出されるんだって。いつも思ってるんでしょ?」
絡んできた男は動揺を隠せない。
「おい、やめろ、まじで何言ってんだ。先輩に聞かれたらどうすんだよ!」
小声で言った。
悟志は続けた。
「なんなら、今君が思っていること、全部彼らに僕から伝えましょうか?」
「ふざけんな!」
絡んできた男が胸ぐらをつかもうとしてきた。しかし悟志は、そんなものに捕まるわけはなかった。胸ぐらをつかもうとするも、はたまた腕をつかもうとするも失敗し、終いには男は怒りがこみあげてきて殴ろうと決めた。振りかぶるその前に、悟志は言った。
「それはやめたほうがいい。捕まるよ。」
と言われて、振りかぶる最中に思いとどまった。
絡んできた男は恐怖していた。何もかも見透かされていたからだ。
その瞬間、絡んできた男に悟志は言った。
「もう嫌だって言っちゃいなよ。抜けたいっていっちゃいなよ。」
すると、絡んできた男はすぐに振り向いて、たむろしている者たちのところへ行き、何かを言った。
その瞬間悟志は、今来た駅地下道を戻って走って逃げた。
「今のうちにとんずらするぞ!」
すると地下道の入り口の向こうから大声が聞こえてきた。
「はあ⁉抜けたいだと⁉てめぇいきなり何言ってんだ!」
そんな声を背に、悟志は家から遠ざかるようにして駅前に抜け、いったん近くの大きな神社に身を隠した。
「とりあえずしばらくここにいて、少し遠回りだけど、陸橋から帰るか…」
悟志は一息置いて、家路についたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる