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第2部
第15話 操り人形
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「……何言ってんだ、マジで馬鹿かテメェ」
呆れた顔に欠伸を被せて、その場を嘲笑するカマエルの姿。何もおかしなことは無いと言わんばかりのそれを見せるが、対する感情が生み出す表情の変化は無い。
「いいか、アタシらがマジで潰してえのはタブーを認知してる奴らだ。テメェが対象になるのは当然だし、テメェ如きがルシファーの代わりになんてなれねえんだよ」
淡々と語る言葉に、救済は無いだろうか。だが、この行為によって本当に求めているのはルシファーの安全なんてものではない。
そもそも、ルシファーという存在にそれは必要ないだろう。
結果的に、理由がどうであれ。アガリアレプトの想像している結末に『絶対あり得ない行為』を実行することさえ出来ればいい。
「……カマちゃん、もういいんじゃないですか」
「ん……そうだな。おいテメェ、封印された後どこに保管されたい?それくらいの希望はマジメに聞いてやるよ」
その言葉が合図となる様に、下半身から上り詰める感覚によって、身体の能力が奪われていく。サマエルと同じというのは少々嫌な感じがするが、この際だ。仕方がない。
それが顔へと至る前に、口を開く。
「アガりんに見つからないとこなら何処でもいい」
そこから、段々と記憶が薄くなる。サマエルは約四百年という時間を過ごしていたらしいが、これから存在そのものが消えるであろう……
いや、少し待て。
盗み聞きしていたルシファーとサマエルの会話を思い出せ。
過去改編によってアガレスの記憶が書き換えられていたというのにも関わらず、何故サマエルの記憶は皆に残っていたのだろうか。
サマエルの『より強い力を無効化できる能力』は、彼自身にしか効果を及ぼさない。我らの記憶がプロテクト出来るはずがないのだ。
というか、天使という格上の存在にその能力が適応されるかも不明である。
「待……て……‼︎」
「なんだ、やっぱ場所変えとくか?」
ふと浮かんだ疑問の果てに、この眼前に立つ天使から答えが聞けるはずはないと分かっていた。だが、己の思考がそれを知ろうと必死を見せた。
「……まさか、アガレスを殺したのは……‼︎」
その言葉に眉間を寄せるカマエルは不自然に視線を逸らし、舌打ちをして鬼の形相へと変貌する。そして背後のラファエルが口を開き、答え合わせの時間が始まる。
「はい。我々能天使団の目的に邪魔だったのですよ、時間を移動する能力というのは」
「目的……⁉︎」
「どうせ、貴女は今後誰とも出会う事なく生と死を彷徨うのです。別に、教えてあげても構いませんよ」
おっとりとした口調だが、会話の内容は絶望的。ルキフグ配下の悪魔が原因不明の死を遂げた理由が語られようとしているのだから。
「……我ら天使というのは人間を監視し、正しい道へ導く為生まれた存在。死した人間の生前が素晴らしき人物であれば、それを天使に変えて我々は群を増やしています」
フィクションのそれと違わぬ言葉を、動かなくなった身体で聞き入る。
「しかし、あるとき天使の大反乱が起こりました。それに加担した天使は堕天使として獄に送られ、この世界は三つに分類される事となります」
堕天使と呼ばれた存在が、ルシファーやベリアルといった輩。今まで認知できないまでに存在を隠していた天使なら、記憶を消したということにも納得がいく。
「そしてそれから長きが立ち、我々は思ったのです。二つも世界を監視しなくてはならないのは面倒だなと」
「つまり、あのゲートを開いたのはアンタらってわけか……」
「はい、そうなりますね」
別に、それを責める訳ではない。確かに羽島をはじめ、多くの人間と対立を強いられていたのは事実だが、今対立している存在とは関係のない話である。
「そうか、ウチら悪魔はお前らに操作されてたって訳ね……」
人間界と獄を繋げて、その起源をプロテクトするように『とある組織が世界を繋げた』という嘘も流していた。
今思い返せば、こんな噂があったというのに組織の名称等が全く露わになっていない。誰も疑問を持たなかったのが不思議だった。
段々と動かなくなる神経たちが、思考すらも止めてしまう。
次々に知った真実は、この胸中に留めておくことにしよう。
「マジでほっときゃ良いのによ、なんでどいつもこいつも知りたがるかね……」
身体を石に染め、完全に動きを止めたサタナキアの身を眼前にため息を溢す。
「しかし、どういった考えなのでしょうね。この行為がルシファーの安全に繋がらないと知って尚、自ら封印されたというのは」
「ルシファーが捨て駒ってのはありえねぇだろうな。多分コイツ独断で動いてやがる」
二つの姿が、それの意図を汲み取ろうと語る。天使といえど、下界の状況は理解できても思考までは理解できないのだ。
「しかし、このままだと6柱の欠員が発覚して奴らが更なる詮索をするでしょうね」
「あー……そりゃ来るだろうな、マジめんどくせぇ」
なんにせよ、この件を置いたとて能天使団とルシファーたちが戦わねばならない未来に変わりはない。求められるものが戦争という大前提であり、血を流さずして解決できるものではないだろう。
「まあ、良い機会です。このまま悪魔を殲滅してしまうのも一興ですかね」
ラファエルが語るは、せんめつという言葉だった。天使である身から出されるのも、中々珍しい。
「ラファエル、最近マジで野蛮になってきたな」
「カマちゃん、天使だから正しいことをするのではないのですよ」
「……は?」
「生前に正しいことをしたから天使なのです。今の私たちに正しくあれというのは、間違っていますよ」
「馬鹿が、何やってんだよ大将ッ……」
その場に立ち尽くして、変わってしまった結末に苦虫を潰す。これが今できることの精一杯だろうか。いや、何もできないというのが正しいだろう。
低レベルな未来予知は、確かに結末が変わった。戦況が動けば簡単に変化してしまうこの能力だが、今回だけは明らかに異質だ。
サタナキアの存在が完全に無きものとして扱われ、そして大まかな展開が先程と比べ物にならないほどズレしてしまった。サタナキアがなにかしらを起こしたのだろうが、それを調べて知ってしまえば自身がタブーに触れることになる。ルシファーの命令を尊重するならば、詮索はできない。
呆れた顔に欠伸を被せて、その場を嘲笑するカマエルの姿。何もおかしなことは無いと言わんばかりのそれを見せるが、対する感情が生み出す表情の変化は無い。
「いいか、アタシらがマジで潰してえのはタブーを認知してる奴らだ。テメェが対象になるのは当然だし、テメェ如きがルシファーの代わりになんてなれねえんだよ」
淡々と語る言葉に、救済は無いだろうか。だが、この行為によって本当に求めているのはルシファーの安全なんてものではない。
そもそも、ルシファーという存在にそれは必要ないだろう。
結果的に、理由がどうであれ。アガリアレプトの想像している結末に『絶対あり得ない行為』を実行することさえ出来ればいい。
「……カマちゃん、もういいんじゃないですか」
「ん……そうだな。おいテメェ、封印された後どこに保管されたい?それくらいの希望はマジメに聞いてやるよ」
その言葉が合図となる様に、下半身から上り詰める感覚によって、身体の能力が奪われていく。サマエルと同じというのは少々嫌な感じがするが、この際だ。仕方がない。
それが顔へと至る前に、口を開く。
「アガりんに見つからないとこなら何処でもいい」
そこから、段々と記憶が薄くなる。サマエルは約四百年という時間を過ごしていたらしいが、これから存在そのものが消えるであろう……
いや、少し待て。
盗み聞きしていたルシファーとサマエルの会話を思い出せ。
過去改編によってアガレスの記憶が書き換えられていたというのにも関わらず、何故サマエルの記憶は皆に残っていたのだろうか。
サマエルの『より強い力を無効化できる能力』は、彼自身にしか効果を及ぼさない。我らの記憶がプロテクト出来るはずがないのだ。
というか、天使という格上の存在にその能力が適応されるかも不明である。
「待……て……‼︎」
「なんだ、やっぱ場所変えとくか?」
ふと浮かんだ疑問の果てに、この眼前に立つ天使から答えが聞けるはずはないと分かっていた。だが、己の思考がそれを知ろうと必死を見せた。
「……まさか、アガレスを殺したのは……‼︎」
その言葉に眉間を寄せるカマエルは不自然に視線を逸らし、舌打ちをして鬼の形相へと変貌する。そして背後のラファエルが口を開き、答え合わせの時間が始まる。
「はい。我々能天使団の目的に邪魔だったのですよ、時間を移動する能力というのは」
「目的……⁉︎」
「どうせ、貴女は今後誰とも出会う事なく生と死を彷徨うのです。別に、教えてあげても構いませんよ」
おっとりとした口調だが、会話の内容は絶望的。ルキフグ配下の悪魔が原因不明の死を遂げた理由が語られようとしているのだから。
「……我ら天使というのは人間を監視し、正しい道へ導く為生まれた存在。死した人間の生前が素晴らしき人物であれば、それを天使に変えて我々は群を増やしています」
フィクションのそれと違わぬ言葉を、動かなくなった身体で聞き入る。
「しかし、あるとき天使の大反乱が起こりました。それに加担した天使は堕天使として獄に送られ、この世界は三つに分類される事となります」
堕天使と呼ばれた存在が、ルシファーやベリアルといった輩。今まで認知できないまでに存在を隠していた天使なら、記憶を消したということにも納得がいく。
「そしてそれから長きが立ち、我々は思ったのです。二つも世界を監視しなくてはならないのは面倒だなと」
「つまり、あのゲートを開いたのはアンタらってわけか……」
「はい、そうなりますね」
別に、それを責める訳ではない。確かに羽島をはじめ、多くの人間と対立を強いられていたのは事実だが、今対立している存在とは関係のない話である。
「そうか、ウチら悪魔はお前らに操作されてたって訳ね……」
人間界と獄を繋げて、その起源をプロテクトするように『とある組織が世界を繋げた』という嘘も流していた。
今思い返せば、こんな噂があったというのに組織の名称等が全く露わになっていない。誰も疑問を持たなかったのが不思議だった。
段々と動かなくなる神経たちが、思考すらも止めてしまう。
次々に知った真実は、この胸中に留めておくことにしよう。
「マジでほっときゃ良いのによ、なんでどいつもこいつも知りたがるかね……」
身体を石に染め、完全に動きを止めたサタナキアの身を眼前にため息を溢す。
「しかし、どういった考えなのでしょうね。この行為がルシファーの安全に繋がらないと知って尚、自ら封印されたというのは」
「ルシファーが捨て駒ってのはありえねぇだろうな。多分コイツ独断で動いてやがる」
二つの姿が、それの意図を汲み取ろうと語る。天使といえど、下界の状況は理解できても思考までは理解できないのだ。
「しかし、このままだと6柱の欠員が発覚して奴らが更なる詮索をするでしょうね」
「あー……そりゃ来るだろうな、マジめんどくせぇ」
なんにせよ、この件を置いたとて能天使団とルシファーたちが戦わねばならない未来に変わりはない。求められるものが戦争という大前提であり、血を流さずして解決できるものではないだろう。
「まあ、良い機会です。このまま悪魔を殲滅してしまうのも一興ですかね」
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「……は?」
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低レベルな未来予知は、確かに結末が変わった。戦況が動けば簡単に変化してしまうこの能力だが、今回だけは明らかに異質だ。
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