愛に生き哀に死す

軍艦あびす

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one 被害者の皆さん

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青い葉を付けた木々に囲まれ、日本は夏を迎えていた。
 八月は、学校の中では夏休みなんだろう。そんな日に、僕、『鍵倉 白波』は何故か登校していた。
 本来、休みと名のつく夏休みに何故登校日があるのか分からないが、正直に全てを話すと、学校は大嫌いで、夏休みになって嬉しすぎたくらいなのだが、今日は本当に最悪だ。
 教室は騒がしい。本当にうるさい。必死に大声を上げる事でしか笑いを取れないゴミが何か叫んでいる。最も、そんな声で笑う奴はゴミと同格な訳だが。
 僕は他の誰かと関わることをせず、席に着きひたすらにチャイムを待つ筈だった。
 あの女が話しかけてくるまでは。
「ねぇねぇ、鍵倉くん夏休み何か楽しいことあった?」
 落葉 愛。同じクラスの白い髪をした女子生徒。
「…別に。毎日宿題やってただけだよ。それに、僕なんかに話しかける暇があるなら他と会話したほうが楽しいよ。」
 人との関わりを極端に嫌う僕は落葉を追い払う。
「私は楽しいよ?鍵倉くんと話すの。だって君は——」
 言いかけたところで落葉は「また後で」と零し、去っていった。
 気づくとチャイムは鳴っていた。
 全員が席に着く頃、教室の前の扉には見覚えのない少女が立っていた。全員がざわつき始め、またゴミは奇声を上げ始めた。何を言っているのかは聴き取れない。
「えー、初めまして。取り敢えず体育館に移動しましょうか。被害者の皆さん。」
 ヒガイシャ?何を言っているのか僕には理解できない。
 すると、教室の後ろの方に座っていた一人の生徒が立ち上がり、少女に歩み寄り口を開く。
「んだぁテメェはぁ…いきなり入ってきて被害者だ?何言ってんのかわかんねぇが取り敢えず命令してんじゃねぇよ…!」
 教卓を激しく叩き、少女を睨みつける。
「まぁ落ち着いて下さい。スメラギ リュウヤ君。」
 何故か少女は、リュウヤ君の名前を知っていた。本人は困惑している様子なので知り合いではないだろう。
「なんでオレの名前知ってんだぁ⁉︎答えろやクソアマ‼︎」
 エスカレートする暴言は、数人が耳を防ぐほどの声量で放たれる。
「静かにして下さい。さもないと…」
 少女は懐に手を入れ、手が出てくる頃には、銀色の物体が握られていた。
 それは紛れも無い拳銃。それも自動拳銃のコルト ガバメント。
 銃口はリュウヤ君の額に向けられた。眼を塞ぐ者が少数。叫ぶ者は多数。言葉も出ない人間もいる。
 安全装置に手を掛ける少女は笑顔でリュウヤ君を見つめていた。
 いよいよ引き金に人差し指を掛け、弾丸は放たれる寸前にある。
「ぱーんっ。ですよ?」
 囁くように破裂音を口にする少女は拳銃から弾丸を抜き、懐に直す。安全装置を解除したのでてっきり弾は入っていないと考えていたのだが、どうやら実弾が埋め込まれていたらしい。
「これ以上反抗するなら、本当に打ちますからね。さ、体育館に行きましょーか。」
 言われるがまま、体育館で疎らに座る四十二人の生徒がいた。
「えー、まず自己紹介からですかね。私は哀。『哀れむ』の簡単な漢字で哀です。」
 呑気に自己紹介なんて始めた少女は続けて話す。
「それではー、今から皆さんには殺し合って貰いたいと思いまーす。ルールは——」
 無論。ざわざわといつもの休み時間のようにうるさくなる。
「はい、騒がない騒がなーい。さっきの拳銃見たなら分かるでしょうが、これはマジです。状況を理解して下さーい。」
 マイクを持って投げ捨て、喋り続ける。
「ルールはとーっても簡単。六人グループに分かれて他のグループと殺し合って頂きます。体育館と保健室では闘いや殺人を禁止する安全区域として、まぁ仮眠やらご飯やらいろいろしていただいて結構です。その代わり他の場所では殺し合っても問題ありません。むしろやっちゃって下さい。あと、学校の周りには電流フェンス立ててるんで脱獄なんて無謀な事はおやめ下さーい。武器は校内に在るものなら何を使ってもおっけー。他の生徒の文房具だろうが給食室の包丁だろうが何使ってもいいですよー。」
 長ったらしい説明は終わったようだ。しかし、殺し合いか…僕は嫌いな人間が多いからその人達は殺しておきたいな。
 なんて、考えているうちに、眼帯を付けた生徒が手を挙げていた。
「安全区域にずっといる生徒とか出てくると思うんですけど…」
「大丈夫です。やる気の無い生徒は殺します。それとも今参加を断念してここで死ぬ人はいますか?」
 勿論手を挙げる生徒はいない。まぁ、自分は多少戸惑ったが。
「正直全員闘わないなんて事になったら嫌なので…こうしましょう。夏休みが終わるまでに最後の一グループにならなかったら残った人達全員殺します。どうですか?やる気になりましたか?やらないと私に殺されます。やれば殺されないで済むかもしれません。さぁ、どっちを選びますか?」
 全員は頷く。すると少女…哀さんは、大きなポスターを取り出した。
「じゃーこのあみだくじでグループを決めまーす。右から出席番号順に書きますねー?」
 あみだくじによって、僕のグループは決定した。
 メンバーは、
 カギクラ シラハ
 オチバ アイ
 スメラギ リュウヤ
 アカマチ サクラ
 ヒュウガ シグレ
 シキミ ツバキ
 という六人に決まった。
「ではゲーム開始は明日昼一二時なので今日はグループ内で話し合って仲良くなっておくよーに!仲間割れとかめんどくさいから!解散!あ、今日は体育館から出ちゃダメだよ!」
 少女は体育館から出て行った後、何か特殊な機械を扉に取り付け、外側から鍵を掛けた。
「…えー、皆さん。この状況はどうしたら良いのでしょうか…」
 グループの一人、紅街 桜が話を切り出す。明らかに校則違反のゴーグルを頭につけ、オレンジのマフラーに身を包む少女は、何故かセーターに制服の襟を付けている。
「…やってられっか。俺はさっさと全員殺してここから出る。アイツは何も言わなかったけど、結局はここから出られるのは全員殺したらって事だろ?ならさっさと殺して出る。そう考えている奴は何人いる?」
 手を挙げたのは、僕と落葉さん、紅街さんだった。
 残りの二人の内、一人は眼帯の少年 日向 時雨。
「僕は人を殺したりとか…出来るならしたくないです。」
 もう一人、梻さんは、「私もです。」と、小声で言い放つ。
 正直僕は全員で行動したいのだが、気が変わることは無いだろうか。
「取り敢えず、皆さんよろしくお願いします。」
 なかなか悪くないメンバーではある。何故なら自分が消えて欲しいと思ったような人間はこのグループに一人も居ない。
「リュウヤ君もお願いします。」
 手を差し出すが、握手はしてくれない。
「勘違いすんな。今回は協力するだけだ。日常に戻ったらお前と関わることは無いかんな。」
 僕はすかさず口を開く。
「普通の日常が帰ってくるといいですね。」
 この日は、結局みんな快眠に落ちてしまった。中学生のクラス全員と同じ部屋で寝ることは少し気が引けたが、明日に備え今回は眠る事にした。
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