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26【指輪物語】

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次の街サクセスへの馬車は明日の朝一に出発らしいので今日は各自休憩を言い渡した

俺は手に入れた刀を試す為に近くの森に向かった

ザン!

猪の首が綺麗に落ちる

確かに空気を裂いているようだ、しかし切れすぎるのも問題だな、猪もまるで手応えがなかったし
俺は刀に危険を感じながらも魅力されていった

【宿屋】

「ただいまー」

「お帰りなさいお兄ちゃん」

「あれカンナちゃん一人?」

「はい、お姉ちゃんは買い物があるってキューちゃんを連れて出ていきました」

「カンナちゃんは何してたの?」

カンナちゃんは少し照れながら笑顔で

「お昼寝してました」

グハッ!なにこの不意打ちすぎる笑顔ヤバイ!

「じゃあお昼ご飯はまだなの?」

「うん、もしかしたらお兄ちゃんが帰って来るかもと思ったから少し待ってたのエヘヘ」

あぁー心が癒されていくアンデッドならむしろ浄化出来るんじゃね?
そんな事を思いながら俺はカンナちゃんを連れて昼食を食べに街へ出た

【食堂】

「ふぅー食った食った」

「ごちそうさまです」

食後にまったりとしているとふと思いついた事をカンナちゃんに聞いてみる

「そう言えばカンナちゃん」

「なにお兄ちゃん?」

「初めて会った時にもうすぐ16歳になるって言ってたけど誕生日って何時なの?」

下を向いて押し黙るカンナちゃん

「え?どうしたの?」

「き、昨日です」

「昨日?」

「昨日で16歳になりました」

「えっ!そうなの!?」

「はい、でも昨日は男爵様に呼ばれたから言い出しにくくて、それに晩餐会が私にしてみれば誕生日パーティーみたいな物でしたから、もういいかなと」

「いやいや、あれはあれ、これはこれ、ちゃんと祝わないといけないよ」

「ですけど」

「よしプレゼントを買いに行こう」

「そんないいですよ」

「ほら行くよカンナちゃん」

俺はカンナちゃんの手を取り店を後にする

【商店通り】

俺達は各お店のウィンドウを眺めていた

「カンナちゃん何か欲しい物はある?」

「今のところは特に」

そんな中、宝石店に差し掛かった時にカンナちゃんの尻尾が大きくゆらゆらと揺れていた

確か猫が尻尾を大きく振っている時は、何か興味がある時だったような

子供に見えてもそこはやっぱり女の子なんだな

「それが欲しいの?」

「いえ、そんなんじゃないです」

「遠慮しなくていいんだよ?」

「でも、この前お兄ちゃんにペンダント買って貰ったから」

「カンナちゃん成人の日は一生に一度だから遠慮なんかしなくていいんだよ」

「じゃ、じゃあこの指輪が欲しいです」

カンナちゃんが指差し物はペアリングであった

「え?ペアリング?」

「ダメですか?」

うるうると上目遣いで聞いてくる、こんな可愛い子にそんな事聞かれて断れる男なんか存在するわけ無い

「ダメじゃないけど、これペアリングだよね?」

「はい、お兄ちゃんにも着けて欲しいです」

曇り無き笑顔だ

「ん~わかったよ買おう!」

「ホントに?ヤッター!」

ピョンピョンと嬉しそうに飛び回り体全体で嬉しさを表現している

いつもは冷静沈着のカンナちゃんも、こういうのを見るとまだまだ子供なんだなと思うな

「お兄ちゃん早く早く!」

カンナちゃんは俺の手を引きお店に入っていった

「いらっしゃいませ」

カンナちゃんが恥ずかしそうに店内でキョロキョロしていると店員が話しかけてきた

「いらっしゃいませ、お客様何かお探しでしょうか?」

「あ、あのペアリングが欲しいのですが」

「ペアリングですね?此方へどうぞ」

案内された先のショーウィンドーには色とりどりのペアリングが並び
それをカンナちゃんは店員と話し吟味している

数十分経った頃、ようやく話がまとまったようだ

「お兄ちゃんこれ似合うかな?」

カンナちゃんの左手薬指には銀色に輝く指輪(プラチナ)がはめられていた

「うん似合ってるよ」

嬉しそうにそして少し照れた笑顔をこちらに向ける

「じゃあ後はお兄ちゃんのサイズだね」

店員が指のサイズを測りささっと指輪を左手薬指にはめる
指輪は綺麗に俺の指にフィットした

「サイズはいかがでしょうか?」

「うん、いいんじゃないか?」

「うん似合ってるよお兄ちゃん」

「じゃあこれを下さい」

「かしこまりました」

ペアリングの値段は金貨五枚だった

俺達は店員に見送られお店を後にした

「エヘヘ、お兄ちゃんとお揃い」

値は張ったがこの笑顔が見れたから良しとするか

「じゃあ帰るか」

【宿屋】

宿に帰るとターニャが帰っていた

「「ただいま」」

「おかえりー二人で出掛けてたの?」

「うん」

ターニャは見逃さなかった、カンナちゃんの左手薬指にはまっている指輪お

「あらカンナちゃんどうしたのその指輪」

「お兄ちゃんに買って貰いました」

「ふ、ふーんそうなんだ」

この言葉に何かを察したのかキューが俺にフライングボディーアタックを決めてくる

キュキュー!!

「いててて、何なんだよキュー」

キューキューキュー!

「もしかして妬いてるんじゃ無いですか?」

「はぁー?子ドラゴンなのに?」

「でもキューちゃんは女の子ですよ」

「えっ!キューってメスだったの?」

「そうですよ知らなかったのですか?」

「いやー今までの行動が乙女とはかけ離れた行動をしてたからてっきりオスだと」

「そんな事はどうでもいいのよ!てかなんであんたまで指輪してるのよ!」

「カンナちゃんがペアリングを買ったから仕方なく」

「仕方なくでペアリングなんてしないでしょ!?」

「カンナちゃん昨日誕生日だったからそれで指輪を買ったんだよ」

「え?誕生日だったの?」

「すいません、なかなか言い出せなくて」

「昨日は色々あったから仕方ないわよ、それより誕生日のお祝いをしないとね、あと私にも指輪を買って頂戴」

「お祝いは分かるが何故に指輪がいる?」

「貫通した手を治してあげたでしょ?あーあしんどかったなーあそこで治してなかったら今頃感染症でどうなってたんだろなー」

俺はカンナちゃんの方に顔を向けるとカンナちゃんも買ってあげて下さいと言うような顔をしていた

「わかったわかったよ、買いますよ!」

「ええーなんか心がこもってないといー」

うぜぇーこの女神超絶うぜぇ!

「ターニャさんこの前のお礼に指輪をお贈りしたいのですが宜しいですかな?」

「あらそんな気を使わなくてもよいのですよ?」

「あっそ、なら要らないという事で」

「調子に乗りましたごめんなさい、買って欲しいです」

こんなやり取りをカンナちゃんは苦笑いしながら見ていた
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