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7.儀式と苺のアイスクリーム
レオノーラがやってきたのはそれから二日後の昼下がりで、カウンターに腰掛けた女剣士は、大盛りのオムライスを五人前平らげると、食休みを兼ねてラテと戯れ始めた。
「そういえば」
オッドアイの黒猫を撫でながら、思い出したようにレオノーラは呟く。
「透に伝えることがある」
「あらたまってどうした?」
「『魂の晩餐』についてだ。今週末に執り行いたいのだが、都合はどうだろう」
俺は思わず後片付けの手を止めて、レオノーラの顔をまじまじと見やった。今週末って、お前……。
「明日じゃないか」
「だめか?」
「いや、だめもなにも準備が大変だろう?」
「問題ない。儀式に必要なものはこちらで用意する」
透はご馳走の支度さえしてくれればいい、と、続けて、レオノーラはラテを抱きかかえる。……まあ、この前作った『きのこのアヒージョ』だったら、簡単だからいいけどさ。
問題は、俺が魂を相手に食事を振る舞った試しがないという、ごくごく当たり前の事実でね。いったい、どのぐらいの量を用意すればいいのか、見当がつかないってことなのだ。
「そうだな、ざっと見繕って五十人前あれば大丈夫だ」
「ごっ……!?」
いや、待て、儀式にかこつけて、レオノーラがアヒージョを食べたいだけって可能性も捨てきれないぞ? ……と、思っていると、見透かしたように女剣士は一言。
「私は食べないぞ。あくまで『魂の晩餐』に必要な分だ」
なぜか得意げなレオノーラ。自分だったらもっと食べられるとか、そういうことを言いたいんだろうか……って、違う!
「おまっ……、それだけの量を仕込むのがどれだけ大変か、わかっているのか?」
「透はピザをたくさん作れた。だから、大丈夫だろう」
それはまたずいぶんと買いかぶってくれたもんだ。俺としては、あんな目に遭うのは二度とゴメンなんだけど。
……はあ、言ったところで、「なぜだ?」と聞き返されるだろうし、ここは素直に覚悟を決めてしまったほうが得策か。
「わかった、用意しておくよ」
「うん、よろしく頼む。掛かった費用は大聖堂が持つから、遠慮なく請求して欲しい」
そう言い残し、名残惜しそうにラテをテーブルに戻したレオノーラは、オムライス代を置いて店を後にしたのだった。
「大変なことになったなあ、ラテ」
「なぁぁぁぁ」
仕込みの苦労を知ってか知らずか、ラテは同情するように鳴き声を上げてみせる。わかってくれるか、そうか。いい子だなあ、お前は。
とはいえ、愚痴ったところで始まらない。レオノーラが言っていたとおり、『魂の晩餐』に掛かったお金は、そっくりそのまま、カフェ『妖精の止まり木』の売り上げに直結するのだ。
悪評が広まる可能性も捨てきれないけれど、上手くいけば、レオノーラが所属するという一角獣騎士団の人たちや、エリーをはじめとする大聖堂関係者の人たちが、お店に足を運んでくれるかもしれない。
「やるだけやってやりますか!」
俺は意気込むと、儀式に備え、必要な材料などのリストアップを始めるのだった。
***
翌日。
朝市から店に戻った俺は抱えきれないほどの材料を慎重にテーブルへ置き、その一角から漂う甘い香りへ視線を移した。
「うーん。どうしようかなあ、これ」
呟いて、ひとつの袋を取り上げる。中に入っているのは小ぶりな苺である。商品としては売り物にならないからと、ミーナがおまけでくれたのだ。悪いですよと遠慮する俺に、
「いいんだよ! アンタ、この前トマトまとめて買っていってくれたろう? それに今日だって、きのこ類をまとめて買っていってくれた。ウチとしては大繁盛、お得意様にはサービスしなきゃね」
そう言って、気前よく渡してくれたのである。もちろん、
「しかしなんだね、そんなに買い占めて腐らせたりしないのかい? ちゃんと商売をやっているんだろうね?」
という、心配ともお節介とも受け取れる台詞を付け加えられたけど。
先日のトマトだったら、レオノーラの胃袋に収まったけど、今回のきのこ類に関しては自信がない。だって、魂相手に振る舞うんだから。要はお供え物みたいな感じでしょう? 作るだけ作って、残って終わりみたいなことになると思うんだよなあ。
とはいえ、引き受けたからには、きっちりと仕事をこなすまでである。儀式の最中、料理を出すタイミングに遅れがないよう、俺は早速、下ごしらえに移るのだった。
一角獣騎士団の兵士たちが訪ねてきたのは午後になってからである。レオノーラを筆頭にやってきた兵士たちは、店内のあちらこちらへ儀式用の飾りを施し始めたのだった。
テーブルには真っ白なクロスが敷かれ、中央には燭台が鎮座している。否応なしに『魂の晩餐』に向けての雰囲気が高まる中、カウンター越しからのんびりとした声が耳に届くのだった。
「透。料理はできたか?」
期待の色を瞳ににじませたレオノーラは、チラチラとうかがうようにキッチンの中を眺めては、こちらの反応をうかがっている。
「まだだよ。儀式が始まる直前に用意するんだから」
「そうか……。できていたのだったら試食したかったのだが……」
しょんぼりとした様子で席を立つレオノーラを見て、ラテが慰めるように足へとじゃれついている。うん、悪いけど励ましてやってくれ、ご覧の通り、俺も手一杯でな。
「透さん」
呼びかける声に視線を向けると、店の入り口前にエリーが佇んでおり、俺はその姿を視界に捉えると、思わず声をなくすのだった。
儀式用の祭礼服に身をまとっているからだろうか、エリーはいつもとは異なる神聖さと静謐の微粒子を全身にまとわせて、声を掛けるのすらためらうほどに美しく見えたのだ。
プラチナブロンドのロングヘア、大きな瞳が印象的な端整な顔立ち。考えてみれば、普段から目を惹く容姿をしている彼女である。
やがて、見とれている俺をおかしそうに見やったエリーは、
「透さん、面白い顔をしていますよ」
と、緊張をほぐすかのように呟くのだった。
「面白い顔で悪かったな」
「ごめんなさい、悪口をいったつもりでは」
「わかってるよ」
すっかり気をそがれた俺は肩をすくめ、あらためてエリーに料理の量について尋ねるのだった。
「言われたとおり、五十人分の料理を用意したけど。これって、儀式に参加する関係者の分も含めてだよな?」
「私たちは儀式用の料理に手を付けませんよ」
「それにしたって、お供え物にしては量が多いだろう?」
当然、作ったまま無駄になるアヒージョが出てくるわけで……。その点について、確認をしておきたかったのだが、エリーといえば、理解に苦しむ言葉を口にするのだった。
「問題ありません。魂が食事をしますので」
「……はい?」
なにを言っているのかわからないと感じにエリーの顔を眺めやっていると、こちらの様子を察したのか、エリーは頷き、それから続けるのだった。
「百聞は一見にしかず、です。とにかく儀式をご覧になっていただければわかります」
***
夜のとばりは下りていく。現在時刻は二十時を過ぎた頃である。
テーブルの燭台に明かりがともされ、俺はといえば各自の席へアヒージョとバケット、それにワインを添えるのだった。
店の扉は開かれたままで、入り口は一角獣騎士団の兵士たちが守りを固めている。レオノーラは一帯を巡回し、不審なものがないか確認に回っているらしい。
店内には数名の神官が集まっていて、それぞれにベルを持つと、エリーへと視線を向けている。
「準備ができましたね。それでは始めます」
神官たちが頷くのを確認したエリーは、手に持ったベルを鳴らし、そしてなにかを呟き始めた。おそらく儀式に必要な詠唱のたぐいなのだろう。
いよいよ『魂の晩餐』が始まるのだ。
そこはかとない緊張感が漂う中、俺はといえば、ラテを抱きかかえ、儀式の推移を見守ることしかできない。
やがて、エリーの口は閉ざされる。どうやら詠唱が終わったらしい。……なにも起きないけれどと、若干の期待外れ感を覚えていた、まさにその時である。
青白い球体のような物体が、店の入り口付近に集まってはふわふわと漂い始めたのだ。
……これが『魂』なのだろうか?
そう思っている間もなく、やがて球体はお互い惹かれるようにして固まると、人の形へとその姿を変え、店内に足を踏み入れる。
衝撃の光景を目の当たりに驚く間もなく、またもや青白い球体が店の入り口へ現れては、集まっては固まり、今度は犬のような形状になって店に足を踏み入れるのだ。
一人、あるいは一体と、人や動物を模した青白い物体は、瞬く間に店内を埋め尽くし、それぞれ席に腰を下ろしていく。
現実味のない、そしてある意味で幻想的な光景に目を奪われていると、青白い物体それぞれに神官たちが近づいては、耳を傾けていることに気がついた。
なるほど、エリーが話していた「魂の未練を断ち切る」というのはこういうことなのか。そう理解した俺は、エリーの姿を目で追った。
人型をした青白い光に近づいたエリーは、熱心に何度も首を縦に振り、あるいは慰めるように背中の辺りを手でさすったりしてみせる。
体感にして五分ほどが経った頃だろうか、エリーが立ち去るのを合図に、青白い光はさらにその輝きを増したかと思いきや席を立ったのだった。
さらに驚くべき事態が起きたのは、この直後のことである。
青白い光がこちらに近づいてきたかと思いきや、一礼してみせたのだ。思わず、反射的に頭を下げてしまったのだが、顔を上げるとすでに光はなく、無人の空間が残されただけだった。
……いや。正確に言えば、青白い光がいた場所にビー玉ぐらいの大きさをした透明な結晶は三個ほど転がっていたのだ。
「にゃあ」
抱きかかえる手から逃れるように飛び降りたラテが、くんくんと鼻を近づかせている。ラテの身になにかあったら大変だと結晶を拾い上げた俺は、結晶の放つ冷たさに驚き、とっさにキッチンの一角へそれを置いたのだった。
これはエリーに尋ねたほうがいいだろう。そう考えていると、タイミングのいいことに、エリーはカウンターキッチンへ顔を覗かせた。
「ちょうど良かった。あのさ、エリー」
「透さん、ごめんなさい。料理を用意してもらえますか?」
そう言ってエリーの指し示した先は、先ほどまで人型の青白い光が座っていた席で、よくよく眺めてみると、テーブルの上の料理が綺麗さっぱりなくなっているのがわかる。
「……いつの間に……?」
「魂が最後の食事を済ませたのです。浄化に必要なエネルギーを、魂たちが料理から吸収した。そう言い換えてもいいでしょう」
気がつけば、あちこちのテーブルが次々と空になっていくのが見て取れる。慌てた俺は、結晶について質問するのを止めておき、次の魂を出迎えるための料理を用意するのだった。
***
『魂の晩餐』から、明けて翌日。
店のカウンター席に並んで座ったエリーとレオノーラは、儀式が無事に終わったことに安堵した様子で、互いの労をねぎらい合っている。
「透さんもお疲れ様でした。慣れないことでご苦労をおかけしたと思いますが」
「大変だっただろう。お疲れ様だったな、透」
「いや、疲れたよりなにより、ビックリし続ける間に終わってしまったというか……」
入れ替わるように青白い光が店内を埋め尽くして、気がついたときには、五十人前のアヒージョがなくなっていたのだ。その上、数体は例の結晶を残していったし……。
まあ、一番驚いたのは、魂も食事をするんだなということだけどね。本当に綺麗に食べていくのなと感心するぐらい、綺麗さっぱり空になるんだもんな。
「それだけ透さんの料理を気に入ったということですよ」
「うん。透の料理は絶品だからな。普通は料理を残していくことがほとんどだ」
……そうなのか? う~ん、料理の腕前を魂に認められるのもなかなかに不思議な感覚だな。
ともあれ、だ。
一方的にいたわりの言葉を掛けてもらってもしょうがないわけで。二人のほうがよほど大変だっただろうと、お疲れ様の意味を込め、俺はエリーとレオノーラのために特別なデザートを用意したのだった。
***
まず、ボウルに卵黄と砂糖を入れてよく混ぜ合わせる。そこにミルクを少しずつ加え、冷やしながらさらに混ぜ合わせていくのだ。
日本にいた頃だったら、氷を張ったボウルの上に、材料を入れたボウルを置いて混ぜ合わせれば良かったんだけど。
あいにくこちらの世界には氷屋がないため、昨日のひんやりした冷気を放つ結晶を氷の代替として使うことにした。
材料が固まり始めたら、刻んだ苺を加え、さらにかき混ぜていく。液体の状態からクリームの状態に変化した材料が、もったりしてきたらラストスパートである。
さらに重く固くなっていくまで、一生懸命にかき混ぜたら、ようやく苺のアイスクリームが完成だ!
***
「二人もお疲れ様。よかったら、これどうぞ」
小皿の上に盛られた、薄紅色の球体をまじまじと眺めやった後、二人は揃って俺の顔を見やるのだった。
「透さん、これはいったい?」
「冷たいぞ、透? 食べ物なのか?」
予想していたとはいえ、やはりアイスの文化がなかったか。とはいえ、味は確かである。疲れているときには甘い物が一番だし、とにかく食べてみてよと勧めてみると、二人はスプーンを手に取り、苺のアイスを口へ運んでいく。
「~~~~~~~~~っ!!!!!」
訝しげな顔がとろけたものへと変化したのは、一瞬の出来事だった。恍惚とした表情と、声にならない声を上げたエリーとレオノーラは、手と口を往復させて、あっという間にアイスを平らげてしまったのだ。
「透さんっ! すっごく、すっごく美味しいです!」
「それならよかった」
「透っ! おかわりを! おかわりをくれ! あと五十個ぐらい!」
「そんなに用意してないって。とりあえず、おかわりはあるからちょっと待て」
程なくして二個目の苺アイスを用意する。すると、二人はじっくりと味わうようにして、アイスを口へと運んでいった。
二人とも、一口ごとのリアクションが大きく、「ん~……!」とか「おお……!」とか歓声を上げるのは見ていて微笑ましくなるほどで、アイスクリームを作る大変さを振り返りつつも、その苦労に見合った価値はあったとしみじみ思うのだった。
それもこれも、この冷たい結晶があればこそだよ。これさえあれば、冷たい料理も作れるようになるぞと確認を覚え、俺はボウルに入った結晶を取り出した。
「……あら、それは……聖魂結晶?」
俺が手に持っていた結晶に気付いたのか、エリーはスプーンの手を止めると驚いたように口を開いた。
「せいこんけっしょう?」
「読んで字のごとく、聖なる魂が現世に遺す結晶です。とても貴重なものとして、大聖堂では大切に祀られているのですよ」
「……これが?」
「ああ、透のもてなしを気に入った魂が置いていってくれたのか」
「私たちでも滅多に目にすることができないものなのですが……。さすがは透さんですね」
「……は、は、ははは」
……言えない、そんな貴重なものを氷代わりに使っていましたとか、口が裂けても言えやしないっ!
とにかく手元に置いておくにはもったいないものだと判明したので、結晶はまとめてエリーに預けることにした。
エリーはといえば、結晶をものすごく丁重に扱っていたので、俺の判断は間違っていなかったと思いたいけど……。傷とかついてなければいいなあ。
え? 魂についての質問? 結晶のことで頭がいっぱいで、聞ける余裕なんかなくなったよね。うん、こればかりは仕方ない。
「そういえば」
オッドアイの黒猫を撫でながら、思い出したようにレオノーラは呟く。
「透に伝えることがある」
「あらたまってどうした?」
「『魂の晩餐』についてだ。今週末に執り行いたいのだが、都合はどうだろう」
俺は思わず後片付けの手を止めて、レオノーラの顔をまじまじと見やった。今週末って、お前……。
「明日じゃないか」
「だめか?」
「いや、だめもなにも準備が大変だろう?」
「問題ない。儀式に必要なものはこちらで用意する」
透はご馳走の支度さえしてくれればいい、と、続けて、レオノーラはラテを抱きかかえる。……まあ、この前作った『きのこのアヒージョ』だったら、簡単だからいいけどさ。
問題は、俺が魂を相手に食事を振る舞った試しがないという、ごくごく当たり前の事実でね。いったい、どのぐらいの量を用意すればいいのか、見当がつかないってことなのだ。
「そうだな、ざっと見繕って五十人前あれば大丈夫だ」
「ごっ……!?」
いや、待て、儀式にかこつけて、レオノーラがアヒージョを食べたいだけって可能性も捨てきれないぞ? ……と、思っていると、見透かしたように女剣士は一言。
「私は食べないぞ。あくまで『魂の晩餐』に必要な分だ」
なぜか得意げなレオノーラ。自分だったらもっと食べられるとか、そういうことを言いたいんだろうか……って、違う!
「おまっ……、それだけの量を仕込むのがどれだけ大変か、わかっているのか?」
「透はピザをたくさん作れた。だから、大丈夫だろう」
それはまたずいぶんと買いかぶってくれたもんだ。俺としては、あんな目に遭うのは二度とゴメンなんだけど。
……はあ、言ったところで、「なぜだ?」と聞き返されるだろうし、ここは素直に覚悟を決めてしまったほうが得策か。
「わかった、用意しておくよ」
「うん、よろしく頼む。掛かった費用は大聖堂が持つから、遠慮なく請求して欲しい」
そう言い残し、名残惜しそうにラテをテーブルに戻したレオノーラは、オムライス代を置いて店を後にしたのだった。
「大変なことになったなあ、ラテ」
「なぁぁぁぁ」
仕込みの苦労を知ってか知らずか、ラテは同情するように鳴き声を上げてみせる。わかってくれるか、そうか。いい子だなあ、お前は。
とはいえ、愚痴ったところで始まらない。レオノーラが言っていたとおり、『魂の晩餐』に掛かったお金は、そっくりそのまま、カフェ『妖精の止まり木』の売り上げに直結するのだ。
悪評が広まる可能性も捨てきれないけれど、上手くいけば、レオノーラが所属するという一角獣騎士団の人たちや、エリーをはじめとする大聖堂関係者の人たちが、お店に足を運んでくれるかもしれない。
「やるだけやってやりますか!」
俺は意気込むと、儀式に備え、必要な材料などのリストアップを始めるのだった。
***
翌日。
朝市から店に戻った俺は抱えきれないほどの材料を慎重にテーブルへ置き、その一角から漂う甘い香りへ視線を移した。
「うーん。どうしようかなあ、これ」
呟いて、ひとつの袋を取り上げる。中に入っているのは小ぶりな苺である。商品としては売り物にならないからと、ミーナがおまけでくれたのだ。悪いですよと遠慮する俺に、
「いいんだよ! アンタ、この前トマトまとめて買っていってくれたろう? それに今日だって、きのこ類をまとめて買っていってくれた。ウチとしては大繁盛、お得意様にはサービスしなきゃね」
そう言って、気前よく渡してくれたのである。もちろん、
「しかしなんだね、そんなに買い占めて腐らせたりしないのかい? ちゃんと商売をやっているんだろうね?」
という、心配ともお節介とも受け取れる台詞を付け加えられたけど。
先日のトマトだったら、レオノーラの胃袋に収まったけど、今回のきのこ類に関しては自信がない。だって、魂相手に振る舞うんだから。要はお供え物みたいな感じでしょう? 作るだけ作って、残って終わりみたいなことになると思うんだよなあ。
とはいえ、引き受けたからには、きっちりと仕事をこなすまでである。儀式の最中、料理を出すタイミングに遅れがないよう、俺は早速、下ごしらえに移るのだった。
一角獣騎士団の兵士たちが訪ねてきたのは午後になってからである。レオノーラを筆頭にやってきた兵士たちは、店内のあちらこちらへ儀式用の飾りを施し始めたのだった。
テーブルには真っ白なクロスが敷かれ、中央には燭台が鎮座している。否応なしに『魂の晩餐』に向けての雰囲気が高まる中、カウンター越しからのんびりとした声が耳に届くのだった。
「透。料理はできたか?」
期待の色を瞳ににじませたレオノーラは、チラチラとうかがうようにキッチンの中を眺めては、こちらの反応をうかがっている。
「まだだよ。儀式が始まる直前に用意するんだから」
「そうか……。できていたのだったら試食したかったのだが……」
しょんぼりとした様子で席を立つレオノーラを見て、ラテが慰めるように足へとじゃれついている。うん、悪いけど励ましてやってくれ、ご覧の通り、俺も手一杯でな。
「透さん」
呼びかける声に視線を向けると、店の入り口前にエリーが佇んでおり、俺はその姿を視界に捉えると、思わず声をなくすのだった。
儀式用の祭礼服に身をまとっているからだろうか、エリーはいつもとは異なる神聖さと静謐の微粒子を全身にまとわせて、声を掛けるのすらためらうほどに美しく見えたのだ。
プラチナブロンドのロングヘア、大きな瞳が印象的な端整な顔立ち。考えてみれば、普段から目を惹く容姿をしている彼女である。
やがて、見とれている俺をおかしそうに見やったエリーは、
「透さん、面白い顔をしていますよ」
と、緊張をほぐすかのように呟くのだった。
「面白い顔で悪かったな」
「ごめんなさい、悪口をいったつもりでは」
「わかってるよ」
すっかり気をそがれた俺は肩をすくめ、あらためてエリーに料理の量について尋ねるのだった。
「言われたとおり、五十人分の料理を用意したけど。これって、儀式に参加する関係者の分も含めてだよな?」
「私たちは儀式用の料理に手を付けませんよ」
「それにしたって、お供え物にしては量が多いだろう?」
当然、作ったまま無駄になるアヒージョが出てくるわけで……。その点について、確認をしておきたかったのだが、エリーといえば、理解に苦しむ言葉を口にするのだった。
「問題ありません。魂が食事をしますので」
「……はい?」
なにを言っているのかわからないと感じにエリーの顔を眺めやっていると、こちらの様子を察したのか、エリーは頷き、それから続けるのだった。
「百聞は一見にしかず、です。とにかく儀式をご覧になっていただければわかります」
***
夜のとばりは下りていく。現在時刻は二十時を過ぎた頃である。
テーブルの燭台に明かりがともされ、俺はといえば各自の席へアヒージョとバケット、それにワインを添えるのだった。
店の扉は開かれたままで、入り口は一角獣騎士団の兵士たちが守りを固めている。レオノーラは一帯を巡回し、不審なものがないか確認に回っているらしい。
店内には数名の神官が集まっていて、それぞれにベルを持つと、エリーへと視線を向けている。
「準備ができましたね。それでは始めます」
神官たちが頷くのを確認したエリーは、手に持ったベルを鳴らし、そしてなにかを呟き始めた。おそらく儀式に必要な詠唱のたぐいなのだろう。
いよいよ『魂の晩餐』が始まるのだ。
そこはかとない緊張感が漂う中、俺はといえば、ラテを抱きかかえ、儀式の推移を見守ることしかできない。
やがて、エリーの口は閉ざされる。どうやら詠唱が終わったらしい。……なにも起きないけれどと、若干の期待外れ感を覚えていた、まさにその時である。
青白い球体のような物体が、店の入り口付近に集まってはふわふわと漂い始めたのだ。
……これが『魂』なのだろうか?
そう思っている間もなく、やがて球体はお互い惹かれるようにして固まると、人の形へとその姿を変え、店内に足を踏み入れる。
衝撃の光景を目の当たりに驚く間もなく、またもや青白い球体が店の入り口へ現れては、集まっては固まり、今度は犬のような形状になって店に足を踏み入れるのだ。
一人、あるいは一体と、人や動物を模した青白い物体は、瞬く間に店内を埋め尽くし、それぞれ席に腰を下ろしていく。
現実味のない、そしてある意味で幻想的な光景に目を奪われていると、青白い物体それぞれに神官たちが近づいては、耳を傾けていることに気がついた。
なるほど、エリーが話していた「魂の未練を断ち切る」というのはこういうことなのか。そう理解した俺は、エリーの姿を目で追った。
人型をした青白い光に近づいたエリーは、熱心に何度も首を縦に振り、あるいは慰めるように背中の辺りを手でさすったりしてみせる。
体感にして五分ほどが経った頃だろうか、エリーが立ち去るのを合図に、青白い光はさらにその輝きを増したかと思いきや席を立ったのだった。
さらに驚くべき事態が起きたのは、この直後のことである。
青白い光がこちらに近づいてきたかと思いきや、一礼してみせたのだ。思わず、反射的に頭を下げてしまったのだが、顔を上げるとすでに光はなく、無人の空間が残されただけだった。
……いや。正確に言えば、青白い光がいた場所にビー玉ぐらいの大きさをした透明な結晶は三個ほど転がっていたのだ。
「にゃあ」
抱きかかえる手から逃れるように飛び降りたラテが、くんくんと鼻を近づかせている。ラテの身になにかあったら大変だと結晶を拾い上げた俺は、結晶の放つ冷たさに驚き、とっさにキッチンの一角へそれを置いたのだった。
これはエリーに尋ねたほうがいいだろう。そう考えていると、タイミングのいいことに、エリーはカウンターキッチンへ顔を覗かせた。
「ちょうど良かった。あのさ、エリー」
「透さん、ごめんなさい。料理を用意してもらえますか?」
そう言ってエリーの指し示した先は、先ほどまで人型の青白い光が座っていた席で、よくよく眺めてみると、テーブルの上の料理が綺麗さっぱりなくなっているのがわかる。
「……いつの間に……?」
「魂が最後の食事を済ませたのです。浄化に必要なエネルギーを、魂たちが料理から吸収した。そう言い換えてもいいでしょう」
気がつけば、あちこちのテーブルが次々と空になっていくのが見て取れる。慌てた俺は、結晶について質問するのを止めておき、次の魂を出迎えるための料理を用意するのだった。
***
『魂の晩餐』から、明けて翌日。
店のカウンター席に並んで座ったエリーとレオノーラは、儀式が無事に終わったことに安堵した様子で、互いの労をねぎらい合っている。
「透さんもお疲れ様でした。慣れないことでご苦労をおかけしたと思いますが」
「大変だっただろう。お疲れ様だったな、透」
「いや、疲れたよりなにより、ビックリし続ける間に終わってしまったというか……」
入れ替わるように青白い光が店内を埋め尽くして、気がついたときには、五十人前のアヒージョがなくなっていたのだ。その上、数体は例の結晶を残していったし……。
まあ、一番驚いたのは、魂も食事をするんだなということだけどね。本当に綺麗に食べていくのなと感心するぐらい、綺麗さっぱり空になるんだもんな。
「それだけ透さんの料理を気に入ったということですよ」
「うん。透の料理は絶品だからな。普通は料理を残していくことがほとんどだ」
……そうなのか? う~ん、料理の腕前を魂に認められるのもなかなかに不思議な感覚だな。
ともあれ、だ。
一方的にいたわりの言葉を掛けてもらってもしょうがないわけで。二人のほうがよほど大変だっただろうと、お疲れ様の意味を込め、俺はエリーとレオノーラのために特別なデザートを用意したのだった。
***
まず、ボウルに卵黄と砂糖を入れてよく混ぜ合わせる。そこにミルクを少しずつ加え、冷やしながらさらに混ぜ合わせていくのだ。
日本にいた頃だったら、氷を張ったボウルの上に、材料を入れたボウルを置いて混ぜ合わせれば良かったんだけど。
あいにくこちらの世界には氷屋がないため、昨日のひんやりした冷気を放つ結晶を氷の代替として使うことにした。
材料が固まり始めたら、刻んだ苺を加え、さらにかき混ぜていく。液体の状態からクリームの状態に変化した材料が、もったりしてきたらラストスパートである。
さらに重く固くなっていくまで、一生懸命にかき混ぜたら、ようやく苺のアイスクリームが完成だ!
***
「二人もお疲れ様。よかったら、これどうぞ」
小皿の上に盛られた、薄紅色の球体をまじまじと眺めやった後、二人は揃って俺の顔を見やるのだった。
「透さん、これはいったい?」
「冷たいぞ、透? 食べ物なのか?」
予想していたとはいえ、やはりアイスの文化がなかったか。とはいえ、味は確かである。疲れているときには甘い物が一番だし、とにかく食べてみてよと勧めてみると、二人はスプーンを手に取り、苺のアイスを口へ運んでいく。
「~~~~~~~~~っ!!!!!」
訝しげな顔がとろけたものへと変化したのは、一瞬の出来事だった。恍惚とした表情と、声にならない声を上げたエリーとレオノーラは、手と口を往復させて、あっという間にアイスを平らげてしまったのだ。
「透さんっ! すっごく、すっごく美味しいです!」
「それならよかった」
「透っ! おかわりを! おかわりをくれ! あと五十個ぐらい!」
「そんなに用意してないって。とりあえず、おかわりはあるからちょっと待て」
程なくして二個目の苺アイスを用意する。すると、二人はじっくりと味わうようにして、アイスを口へと運んでいった。
二人とも、一口ごとのリアクションが大きく、「ん~……!」とか「おお……!」とか歓声を上げるのは見ていて微笑ましくなるほどで、アイスクリームを作る大変さを振り返りつつも、その苦労に見合った価値はあったとしみじみ思うのだった。
それもこれも、この冷たい結晶があればこそだよ。これさえあれば、冷たい料理も作れるようになるぞと確認を覚え、俺はボウルに入った結晶を取り出した。
「……あら、それは……聖魂結晶?」
俺が手に持っていた結晶に気付いたのか、エリーはスプーンの手を止めると驚いたように口を開いた。
「せいこんけっしょう?」
「読んで字のごとく、聖なる魂が現世に遺す結晶です。とても貴重なものとして、大聖堂では大切に祀られているのですよ」
「……これが?」
「ああ、透のもてなしを気に入った魂が置いていってくれたのか」
「私たちでも滅多に目にすることができないものなのですが……。さすがは透さんですね」
「……は、は、ははは」
……言えない、そんな貴重なものを氷代わりに使っていましたとか、口が裂けても言えやしないっ!
とにかく手元に置いておくにはもったいないものだと判明したので、結晶はまとめてエリーに預けることにした。
エリーはといえば、結晶をものすごく丁重に扱っていたので、俺の判断は間違っていなかったと思いたいけど……。傷とかついてなければいいなあ。
え? 魂についての質問? 結晶のことで頭がいっぱいで、聞ける余裕なんかなくなったよね。うん、こればかりは仕方ない。
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ある日、買い物から帰宅すると――頭に猫耳を生やした幼女が、リビングにぽつんと佇んでいた。
その後、猫耳幼女の小さな手に引かれるまま、朔太郎は自宅に現れた謎の地下通路へと足を踏み入れる。そして通路を抜けた先に待ち受けていたのは、古い時代の西洋を彷彿させる『異世界』の光景だった。
さらに、たどり着いた場所にも獣耳を生やした別の二人の幼女がいて、誰かの助けを必要としていた。朔太郎は迷わず、大人としての責任を果たすと決意する――それをキッカケに、日本と異世界を行き来する不思議な生活がスタートする。
最初に出会った三人の獣耳幼女たちとのお世話生活を中心に、異世界貿易を足掛かりに富を築く。様々な出会いと経験を重ねた朔太郎たちは、いつしか両世界で一目置かれる存在へと成り上がっていくのだった。
※まったり進行です。
畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜
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木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。
SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。
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