追放された回復術師、実は復元魔法の使い手でした

理科係

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3 追放されし回復術師

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初めて大型モンスターを討伐した夜、満月の微笑みは三日前と同じ宿屋に泊まっていた。
今回はシュードの部屋に皆が集まり、宿屋の外に聞こえてしまいそうなほど賑やかな笑い声が絶えず部屋中に響いていた。
クランクに呼び出されたラノイは、その部屋の前を素通りし、やや駆け足でクランクの部屋へと向かっていく。

部屋の扉をノックし、クランクの返事を聞いた後で、ラノイは部屋へ入る。

「まぁ、そこに座って」

ラノイはおもむろに椅子に座る。

「いいのか。祝勝会に参加しなくて」
「僕が参加しても場がしらけるだけですよ。それよりクランクさんは参加しないんですか?」
「俺は後から参加するつもりだ。でもその前に、やらなきゃいけないことがある」

クランクは咳払いをし、呼吸を整えた。

「ラノイ・ルーカス。君をパーティーから追放する」

隣の部屋ではどんちゃん騒ぎが続いている。

「……やっぱり、そうなんですね」
「ああ、パーティーの意見としてユロの方が優れていると判断した」
「そうですよね。ユロさんは半端な回復しかできない僕とは違いますから。追放されるのも当然です」
「すまないな」
「あ、謝らないでください。」

不気味な静けさに部屋全体が包まれる。

「あ、そうだ」

不意にクランクは胸元から袋を取り出し、机においた。ラノイが中を確認すると、金貨が10枚はいっていた。

「今回の討伐の報酬だ」
「そんな。もらえませんよ」
「いや、お前だって討伐に参加したんだ。もらう権利はある。受け取っておけ」
「……それじゃ、ありがたく」

ラノイはポケットにそれをしまった。その様子を眺めつつ、クランクは話を続けた。

「これからどうするんだ、もう出発するのか?」
「いや、今日は泊まって、明日朝早く出ようと思います」
「そうか、達者でな」
「はい。皆さんもお元気で」

一通り会話を終えると、ラノイは自分の部屋へと帰った。身支度をしていると、ドアがノックされた。開けると、そこにはエルマが立っていた。

「聞いたわよ。追放されたらしいじゃない」
「ああ、そうだよ」

そういうと、ラノイは途中で放棄していた身支度を続けた。エルマも中に入り、ベッドに腰掛ける。

「これからどうするの?」
「特に決めてない。とりあえずフラフラしてみようかな、お金はあるしね」
「そう」

ぎこちない会話は長くは続かず、ラノイの身支度をする音が部屋に響いている。

「ねぇ、最後に私のこと回復してよ」

沈黙を打ち破るように、エルマはラノイに頼む。

「え、なんで今更……」
「いいじゃない、あんたともこれで最後になるんだから、最後にさ」
「……わかったよ」

ラノイはいつものように手をかざし、エルマを回復した。

「じゃあ元気でね」
「そっちもね」

エルマはラノイの部屋を出て、自室へと戻った。
翌朝、ラノイは一人街を出た。
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