君の金魚を削ぎ落としたい

松原 慎

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このたび入籍により加賀見出雲となりました⑤

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 イヤイヤと首を振っても、抱っこされてしまっているから逃げようもない。
 先生の肩にしがみついたまま、寝室に連れていかれる。廊下を歩く、ぺたぺたとした足音が耳につく。浴室からそのままの、スリッパを履いていない素足の音。
 寝室について部屋の明かりをつける時、水泡さんが片手で俺の身体を支えるためにお尻をグッと強く掴まれ、ビクリと身体が跳ねる。
 大きな手が、そのまま、生の感触と体温で触れてる。
 もこもこパーカーの可愛さに浮かれて気にしていなかったけれど、いつも着用している水泡さんのTシャツより随分と丈が短い。いつものTシャツが太ももと膝の真ん中くらいの丈なのに対し、お尻がやっと隠れるくらいだ。
 下手したらおちんちんが見えてしまうのでは……勃起なんかしてしまったら、丸見えだと思う。
 俺のおちんちんはまた勃起しなくなったし、縮こまって皮に全部収まっちゃうくらい小さいけど……おちんちん見えなくて、たまだけ見えてしまうのも恥ずかしい。
 でも抱っこされてる今はそんな心配する意味がないくらい、全部お尻が見えちゃってる。
 さっきまで気がついてなかったのに、急にスースーと下半身が落ち着かない感じがしてきて、背中がぞわぞわした。
「ビクビクしてる」
「だってみなわさんっ……おしり丸見えで、はずかしい……」
「ずっと、丸出しだったよ? いまさら?」
 ベッドの横までもう来ていたのに、先生の歩みが止まる。そして両手でそれぞれのお尻を掴まれた。
 指の一本一本が尻肉に食い込むのがわかるほど強めにぎゅっと握られたかと思えば、小指から薬指、中指、人差し指と順番に動かしてじっくり揉まれたり、中を暴くように広げられたり。
 ちょっと痛くて、恥ずかしくて、気持ち良くて。
 水泡さんの興奮した熱い吐息が、耳にかかって。
 なんでこんなに二つの身体が重なって高まってるのにエッチできないのって、身体の奥が疼いて気が変になりそうだ。
「はっ、はっ、あっ……」
 お尻を左右に広げた指の一本が、割れ目の奥へ忍び寄ってくるのがわかる。
 あ、きちゃう。
 さっきまで煙草を挟んでいたあの人差し指。
 じりじり、じりじりと。
 指を伸ばすため、尻を掴む手が深く皮膚に沈む。
 はっはっと何度も短く息をして、届くまでの時間が凄く長く感じて。
 とうとう指の腹がおしりの穴の表面を撫でる……いや、かすった時、達してしまいそうなほどの高揚感と身体中をバチバチと走る快感に目の前が真っ白になった。
「あっ……あぁっ……」
 もう触れられてないのに余韻に太ももを震わせながらいやらしい声が漏れる。
「すっごい反応」
「あっ」
 水泡さんの澄んだ声に、粘着質なものが見え隠れする。全てに反応する俺を笑ってる。
「み、みなわしゃ……おしりの穴、なでなでしてぇ……」
「どうしようかな?」
 くつくつと笑いながら、その指はえっちに膨らんだフチよりも外側をくるくるとなぞるように撫でる。
 完全に遊ばれてるのに、こんなので気持ちよくなっちゃう自分が憎い。おちんちんの根元のもっと奥がじんじんする。熱い。気持ちいい、すっごく気持ちいい。
「撫でてあげるだけで、十分みたいだね」
「や、そんな、ことぉ……やですぅ……やだぁ……もっと、もっと奥も……」
「そうかな。穴にすら触ってないのに、とっても気持ちよさそうだよ?」
 水泡さん、楽しそう。
 さっきまでの優しいお声はそのままに、意地悪そうに喉を鳴らして笑う。
 結局それ以上はしてくれずベッドに腰を下ろすと、俺の脇腹に手を添え、対面から後背を抱く形に向きを変えるように促される。それに従い大人しく膝に乗せられたまま水泡さんに背を向けると、膝裏を抱えるようにされて思いっきり股を開かされた。
「あ、やだっ……!」
 服がめくれ上がって下腹部から下が全て光の下に晒される。急いで両手で隠すが、耳元に新たな指示が下される。
「パーカーのファスナー、開けて?」
「で、でも、見えちゃいます」
「そんなこと……恥ずかしがる仲じゃ、ないよね? 可愛いなぁ、出雲は……」
「だってこんな女性みたいな可愛らしいお洋服で、おちんちん丸見えなんて恥ずかしいです……なんだかとても、悪いことをしているみたいで」
「好きでしょ? 悪いこと。しようよ。ね?」
 悪いことしよう、なんて。
 ドキドキして息苦しい。
 水泡さんのお母様からいただいたものなのに。こんなに愛らしいパステルカラーの、ふわふわと綿菓子みたいな夢のようなお洋服なのに。
 指先でそっと摘むようにして、ファスナーを下ろしてく。
 路彦さんにそこらじゅうキスされて舐められた肌。
 その下で皮から出てこられないおちんちんが、えっちな汁をとろとろと垂らし糸を引き、宙ぶらりんになっている。
 本当に恥ずかしくて、悪辣な身体。
「全身に力が入ってる……恥ずかしい?」
 こくんと頷くと、左耳をちろりと舐められた。
「ひゃぅっ……」
「これ、持って」
「え……」
 ぼうっと、渡されたままに受け取ったのは彼のスマートフォンだった。
 トン、トン、と指先が画面を滑り、動画フォルダが表示される。サムネイルだけでもわかる……自分の痴態が、画面いっぱいにいくつも映し出されている。
「落としちゃだめだよ? どれがいいかな……」
「ほ、本当に見るんですか……? 俺やです、見たくない……この時は本当に怖くて、嫌で、辛くて」
「でも、今も彼と働いてる」
「それは資格のために……」
「ほら、見て」
 動画が、再生される。
 正常位で犯されている自分が動き、鳴き始める。
 最初顔は見えない。精液で汚れたお腹と、先っぽが白く汚れた萎えたおちんちん、俺の中を出たり入ったりを繰り返す路彦さんの筋だった男性器。
「すごいよ。ほら、抜けてく時に吸い付いて……こんなに入口の皮が伸びてる」
「や、いや、吸い付いてなんかないです、変なこと言わないでっ……」
「吸い付いてる。あとここ、ほら。ほら、ちゃんと見て」
「痛っ」
 画面から顔を背けようとしたら、耳たぶに噛みつかれ痛みが走る。それがひと噛みでは終わらず、ギリギリと、水泡さんの口内でピアスがカチャカチャと音を奏でているのがわかるほど続いた。
「い、いたいです、やだ、見たくないもん、嫌です……! アッ、痛い、痛いぃ……」
 痛みで涙声に変わり始めると、耳たぶに食いこんでいた鋭い歯はスっと離れていった。
 その代わりにぺろりぺろりと、何度も舌が往復して痛みのまだ消えない場所を舐められる。
「ごめんね。痛かったね」
「やですっ……」
「ほら、見てよ。ここ」
「いや……」
「じゃあ、説明する。萎えてる君のおちんちんがね、突かれる度にヒクッヒクッて先っぽのほうを揺らすんだよ。すごく、気持ちよさそうに。硬くならないのに、おもしろいね」
「気持ちよくないです、路彦さんとのえっちなんて……っ」
「あ、顔が写るよ。ふふ、こんなに気持ちよさそうな顔してそれは、無理がある」
 せっかく目を瞑っていたのに。
 何故だか気になってしまって、恐る恐る薄目を開ける。路彦さんが見てた俺はどんな姿だったのだろう。
 耳を塞ぎたくなるほどにだらしのない声が聞こえる。言葉は出ず、喘ぎ声にしたって締りがない。舌が動いてなくて、あえ、あえ、て馬鹿みたいな声だ。
『出雲くん、気持ちいいわね。幸せね。たくさん気持ちよくなってね。もう何も怖いことはないからね』
 寸前に見た、根元を見ただけでも硬く凶悪そうな男性器の持ち主とは思えない、柔らかい声。
 真っ赤になった唇の上に舌を乗せ、惚けた、それでも口の端が上がって微笑んでるように喘ぐ自分の顔。
 思わず目を逸らしたくなるような、秘部を晒すよりも恥かしいその顔を、路彦さんの手が触れる。
 頭を撫でて、手の甲が優しく顔を滑っていって、頬を包む。
 水泡さんも路彦さんも、子供をあやすみたいに俺を扱う。
「本当に……しあわせそう」
「あっ……」
 くちゅ、と音がしたと同時に快感がじんわりとやってくる。
 とろとろのおちんちんの皮を、摘んで、引っ張られて。そうかと思えば、おちんちんの先っぽだけ露出させられて。
 やわやわのおちんちんが、皮を弄られて悪戯されてる。おちんちんには触ってもらえなくて、皮ごしに擦られて。
 でもこの、じんわり熱くなるような気持ちよさが、大好き。
 こんな子供おちんちんだから、そんな扱いされちゃうのかな。恥ずかしくて情けない。でもそんな自分にもっと気持ちよくなっちゃう。
 でも、だからってこんなのこれ以上見せられたくない。頭おかしくなっちゃう。
「これも、ほら。おへその下あたり、ひくひくしてる。あー、イッてるイッてる……わかりやすいなぁ。かわいい」
「イッてないもん……もうやだぁ……」
「ほら、あの人もイッてるって。イク度に、褒められてるね。嬉しかった?」
 もう反応しないと小さく首を横に振って口を紡ぐ。水泡さんを飽きさせる為にはそれしかない。
 しかしまた次の動画が始まったみたいだ。今度のはちゃんと俺、喋ってる。やだ、やだって聞こえる。それを聞いて心の底から安心した。
 路彦さんのことなんか、受け入れてない。あの人のセックスは優しくなんかない。
『ほらー、動画撮っちゃうわよー? 泣かないで、出雲くん』
『やだ、やだ、えっちしないっ、あ、きもちいの嫌っ、ん、ん、きもちいよぉ……っ』
『あんたが煽ったんでしょ。お仕事中なのにあんなにくっついて。悪い子よ?』
『えっちしたかったわけじゃないもん、しゃみしかったの、ひとりやだぁ……いっしょがいぃー……』
『ワガママね。じゃあチンポいらない?』
『やだぁ、ずぽずぽしてくだしゃい。お尻ずぽずぽ、きもちいいのくだしゃい……』
『もう。言ってることめちゃくちゃ』
 続く俺の喘ぎ声でおちんちんが中に入っていってるのが分かって、現実の俺のお尻もヒクヒクと反応してしまう。
 路彦さんのいつもすっごく硬くて気持ちいいおちんぽ……さっき挿入したばっかだから、思い出しちゃう。中をズルズルと擦られるの、思い出しちゃう。
 次々に、情事中に交わした卑猥な言葉が耳に入ってくる。
 路彦さんの言葉は乱暴な時もあったけれど、淫乱と罵られた自分は泣きながらも甘い声をあげている。
 俺はこんなにあの人に甘えているの?
 自分で驚くほどに路彦さんを求めてる。
 ずっとレイプまがいな抱かれ方をしてるとか、いやいや抱かれているつもりだったけれど、俺がたくさん求めてる。
『どこも行っちゃやだぁ、えっちしてぇ……!』
『抜いちゃヤ、ずっとおちんちん入れてるの』
『あん、あっ、ぇへっ、きもちいぃ、きもちいのしゅき、きもちいのずっとがいぃ、ずっときもちいぃっ』
 路彦さんの命令で淫語を使っておねだりさせられている時もあるけれど、それだって気持ちよさそうで。
 聞こえてくる声はほとんど、自分から甘えておねだりしてる。
 でも、それでも。
『路彦さんやだ、せんせぇがいい……せんせぇ、せんせぇ……』
 水泡さんを呼んで、泣きじゃくる自分が度々現れる。
 そんな俺に路彦さんは、色んな言葉をかけている。
『寂しいわね、大丈夫よ。僕はずっと離れないから。ずっと一緒』
 頬を撫でて、上目遣いにじっと路彦さんを見つめたままの瞳から零れる涙を優しく拭う指先。
『あんな男もうどうでもいいでしょ?! 集中してしっかりまんこ締めなさい』
 パシンと鋭い皮膚が打たれる音、首にかけられる血管の浮いた手。
『ごめんね。出雲くん大好きよ。かわいい。ごめんなさいね。僕と一緒にいて……たくさん、気持ちよくしてあげるから。ずっとここにいて』
 スマートフォンは手からとっくに離れていたのだろう、画面には見慣れた天井と照明が映し出されている。
 その後に流れたのは、いやいやながら見慣れてきてしまった、喘ぎ声とパンパンと身体のぶつかる音が鳴るだけの映像だった。
 しかし、顔を逸らしてただ気まずさに耐えていたら、俺の我慢汁でぬるついた水泡さんの指がお尻の割れ目をスっと撫でた。そして反応して間もなく、つぷ、と人差し指が中に入ってくる。
「あっ……おしりぃ……あ、あっ……」
 ぬぷ、ぬぷ、と浅い抜き差しが繰り返される。入口がくちゅくちゅして気持ちいい……ちょっとくすぐったさも混じった、ぞわぞわする気持ち良さだ。
「きもちいい? ほら、画面の中の君と、同じリズムだよ……? 入って、出て……入って、出て……」
「あっ、えっ、あ……や、それ嫌ぁ」
「あいつのおちんちんが入って、出て……出雲のお尻のえっちな音、重なって聞こえる。わかる?」
 今日は首を横に振ってばかりだ。でもイヤイヤとしながらも、重なる音はちゃんと耳に届いてた。
 画面からばちゅん、ばちゅん、と弾けるような音に水っぽさが絡んだ音が聞こえてくる。そしてそれと同じタイミングで、ちゅぽっちゅぽっと俺のお尻まんこが水泡さんの指に吸い付く音が響いてる。
 それだけじゃない。
 耳元では水泡さんの、画面からは路彦さんのはぁー、はぁー、と興奮した荒い息遣いが聞こえてくる。
 あぁ、やだ、こんなのダメなのに。
 ゾクゾクしてしまう。
 まるで二人から犯されてるみたい。
「こうして見ていると……彼も、かなり情緒不安定だ。落ち着いてる時は、ちゃんと可愛がられていたんだ。たくさん、気持ちよかったね。よかった」



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