愛してしまうと思うんだ

ゆれ

文字の大きさ
10 / 69
ラブアンドライフ

04

しおりを挟む
 
 極力声を出さないようにと意識すればするほど神経が研ぎ澄まされていくようだ。八色も躍起になって出させようとしてくる。好色な視線に晒されているだけでも正直くるものがあるのに、かりっと齧られて終にあっと上ずった。腰にじわりと熟れた熱がたまってくる。徐々に硬く存在を主張してきて、龍は無意識に舌なめずりした。
 気づいて八色がふっと笑う。何も言わず抱きしめて上下を入れ換えてくれたので、これは許可がおりたのだと思って遠慮なく彼のスウェットに手を掛けた。下着のうえからでも反応しているのがわかる。自分の身体でこうなってくれているなんて未だに信じられないし、純粋に嬉しい。好きがきれいなものだけで出来ていると夢見ているような歳でもない。

 もごもごとくちのなかに唾液を溜めてから、そっと手を添えて咥内に迎え入れる。分泌液の味が染みてくるのを感じつつ呑み込めるところまでまずは挿し入れ、確かめて一度吐き出す。はあっと息をかけるだけでピクピク震える繊細な器官だ。歯で傷をつけないよう細心の注意を払って龍はまた深くまで八色を咥える。

 唇をやや窄め、頭を上下させるようにして口腔で扱いていく。切っ先に上顎のかたい部分を合わせて押しつけるとじゅわっと新しく体液が染みた。ずるずる引き出して濡れた表面を、おうとつをなぞるように舌先で舐める。弱い裏筋をはむはむと含むと、年上の恋人のくちから油断した溜め息が零れた。

「はぁ、……んっ」

 銃口を吸い上げると別の味がし始める。くびれを舌で巻きつけるように擦り、広い面をなすりつけて舐る。いつしか龍のほうまで息があがってきて、それにも昂ってますます硬くなるのを見て、喜んでまた喉で愛撫した。実のところくちに入れるにはサイズが親切じゃないと思うのだけれど、よさそうな顔が好きでつい舐めてしまう。
 でも射精までは至らないように、加減してずるずるしゃぶりつつ下着ごとパンツを引きおろし自分でそっとうしろに指を挿し込む。準備は大体してきたのでもうやわらかくはあった。長風呂になりがちなのはその所為もある。ローションを足せば中も大丈夫だろう。口元に意識を戻す。

「龍、っフェラ、……くっ、うめえよな……ッ」

 れーと吐き出しながら唾液まみれの性器にちゅっとキスをする。そのまま表面をきれいにするみたいに舐め上げる。女性は苦手なことも多いのだろうか。身体がちいさかったり細かったりするので喉が弱いのかも? 褒めてくれるのは悪くないけれど、一抹の淋しさも禁じ得ない。

か?」

 八色と寝るようになったのは夏に二十歳になってからだった。まだ三ヶ月程度だが、解禁した勢いでそこそこ手の内は見せ合っている。ここへ身を寄せる夜は大抵セックスする。とは言っても月水金は八色が遅いため、それ以外の曜日でという条件付きではある。

 直近の恋人は女性だったと聞いているので八色の事情は詳しくは知らない。バイかなと何となく思っている。けれど龍は、高校時代から歩としていた。初体験は歩でもない。龍が察してしまったように、八色も肩の向こうに誰かが見えて不快にさせたのだろうかと一瞬で脳内麻薬が醒めた。過去の話など掘り返しても何の得にもならない。それはわかるが、自分が初めての相手じゃない確率のほうが高い歳になってくるとスルーが一番賢いと頭では理解しているが、龍の場合は元彼がすぐ近くにいる。

 自分がお世辞にも初々しいとは言えないのは知っているし、ネコをする場合は物慣れているほうが延いては自分の身を護ることに繋がるため積極的に慣れようとしてきた。歩の彼氏だった時も、それこそ何でもした。初彼というのもあるが単純に好きだったから必要とされている気がして嬉しかったのだ。

 初めての相手はうんと年上で、いわゆるタチで経験した。そしておなじ人に『いつかバイと付き合うかもしれないから』とネコにもされて、実際歩と付き合って、あの人の教えは正しかったのだと思った。嫌だと言われても仕方ない。だって龍は、結局初めての相手と、そして歩と、おなじやり方をなぞっている。

「あー……ん、ゴム寄越して」
「……は、あっ、……とおるッ」
「まだイくなよ」

 暴発しないよう気を付けて避妊具をまとわせ、自分にローションもたっぷりと仕込んでから、龍は八色の腰に跨る。尻の間に挟んでぬるぬる擦ってゆっくりと先端を窄まりに食い込ませた。ぬち、といかがわしい音を立てて身体が開いていく。重力に従ってなかを降りていく感触は何度やっても慣れないし、それを堰き止めてせりあがってくる圧倒的な質量もどうしようもなく異物だった。
 いとしい恋人の一部であってもすぐは馴染まない。八色の身体に手をつかないよう、シーツを握り、呑みやすい角度をさがしてからじわっと腰を落とした。あばらを突き破って今にも飛び出てきそうなくらい心臓が脈打っている。

「ふっ、ん……うう、ぁ、硬ってぇ……」
「は、お前がしたくせに」
「あっ、ちょ、突き上げんな、って」
「こんな細えのに、なんでケツはやーらけぇんだかな。えっろ」
「んん……っ」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖
BL
☆久田悠人(18)は大学1年生。そそかっしい自分の性格が前向きになれればと思い、ロックバンドのギタリストをしている。会社員の早瀬裕理(30)と恋人同士になり、同棲生活をスタートさせた。別居生活の長い両親が巻き起こす出来事に心が揺さぶられ、早瀬から優しく包み込まれる。 次第に悠人は早瀬が無理に自分のことを笑わせてくれているのではないかと気づき始める。子供の頃から『いい子』であろうとした早瀬に寄り添い、彼の心を開く。また、早瀬の幼馴染み兼元恋人でミュージシャンの佐久弥に会い、心が揺れる。そして、バンドコンテストに参加する。甘々な二人が永遠の誓いを立てるストーリー。眠れる森の星空少年~あの日のキミの続編です。 <作品時系列>「眠れる森の星空少年~あの日のキミ」→本作「海のそばの音楽少年~あの日のキミ」

かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

処理中です...