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ラブアンドライフ
04
しおりを挟む極力声を出さないようにと意識すればするほど神経が研ぎ澄まされていくようだ。八色も躍起になって出させようとしてくる。好色な視線に晒されているだけでも正直くるものがあるのに、かりっと齧られて終にあっと上ずった。腰にじわりと熟れた熱がたまってくる。徐々に硬く存在を主張してきて、龍は無意識に舌なめずりした。
気づいて八色がふっと笑う。何も言わず抱きしめて上下を入れ換えてくれたので、これは許可がおりたのだと思って遠慮なく彼のスウェットに手を掛けた。下着のうえからでも反応しているのがわかる。自分の身体でこうなってくれているなんて未だに信じられないし、純粋に嬉しい。好きがきれいなものだけで出来ていると夢見ているような歳でもない。
もごもごとくちのなかに唾液を溜めてから、そっと手を添えて咥内に迎え入れる。分泌液の味が染みてくるのを感じつつ呑み込めるところまでまずは挿し入れ、確かめて一度吐き出す。はあっと息をかけるだけでピクピク震える繊細な器官だ。歯で傷をつけないよう細心の注意を払って龍はまた深くまで八色を咥える。
唇をやや窄め、頭を上下させるようにして口腔で扱いていく。切っ先に上顎のかたい部分を合わせて押しつけるとじゅわっと新しく体液が染みた。ずるずる引き出して濡れた表面を、おうとつをなぞるように舌先で舐める。弱い裏筋をはむはむと含むと、年上の恋人のくちから油断した溜め息が零れた。
「はぁ、……んっ」
銃口を吸い上げると別の味がし始める。くびれを舌で巻きつけるように擦り、広い面をなすりつけて舐る。いつしか龍のほうまで息があがってきて、それにも昂ってますます硬くなるのを見て、喜んでまた喉で愛撫した。実のところくちに入れるにはサイズが親切じゃないと思うのだけれど、よさそうな顔が好きでつい舐めてしまう。
でも射精までは至らないように、加減してずるずるしゃぶりつつ下着ごとパンツを引きおろし自分でそっとうしろに指を挿し込む。準備は大体してきたのでもうやわらかくはあった。長風呂になりがちなのはその所為もある。ローションを足せば中も大丈夫だろう。口元に意識を戻す。
「龍、っフェラ、……くっ、うめえよな……ッ」
れーと吐き出しながら唾液まみれの性器にちゅっとキスをする。そのまま表面をきれいにするみたいに舐め上げる。女性は苦手なことも多いのだろうか。身体がちいさかったり細かったりするので喉が弱いのかも? 褒めてくれるのは悪くないけれど、一抹の淋しさも禁じ得ない。
「嫌か?」
八色と寝るようになったのは夏に二十歳になってからだった。まだ三ヶ月程度だが、解禁した勢いでそこそこ手の内は見せ合っている。ここへ身を寄せる夜は大抵セックスする。とは言っても月水金は八色が遅いため、それ以外の曜日でという条件付きではある。
直近の恋人は女性だったと聞いているので八色の事情は詳しくは知らない。バイかなと何となく思っている。けれど龍は、高校時代から歩としていた。初体験は歩でもない。龍が察してしまったように、八色も肩の向こうに誰かが見えて不快にさせたのだろうかと一瞬で脳内麻薬が醒めた。過去の話など掘り返しても何の得にもならない。それはわかるが、自分が初めての相手じゃない確率のほうが高い歳になってくるとスルーが一番賢いと頭では理解しているが、龍の場合は元彼がすぐ近くにいる。
自分がお世辞にも初々しいとは言えないのは知っているし、ネコをする場合は物慣れているほうが延いては自分の身を護ることに繋がるため積極的に慣れようとしてきた。歩の彼氏だった時も、それこそ何でもした。初彼というのもあるが単純に好きだったから必要とされている気がして嬉しかったのだ。
初めての相手はうんと年上で、いわゆるタチで経験した。そしておなじ人に『いつかバイと付き合うかもしれないから』とネコにもされて、実際歩と付き合って、あの人の教えは正しかったのだと思った。嫌だと言われても仕方ない。だって龍は、結局初めての相手と、そして歩と、おなじやり方をなぞっている。
「あー……ん、ゴム寄越して」
「……は、あっ、……とおるッ」
「まだイくなよ」
暴発しないよう気を付けて避妊具をまとわせ、自分にローションもたっぷりと仕込んでから、龍は八色の腰に跨る。尻の間に挟んでぬるぬる擦ってゆっくりと先端を窄まりに食い込ませた。ぬち、といかがわしい音を立てて身体が開いていく。重力に従ってなかを降りていく感触は何度やっても慣れないし、それを堰き止めてせりあがってくる圧倒的な質量もどうしようもなく異物だった。
いとしい恋人の一部であってもすぐは馴染まない。八色の身体に手をつかないよう、シーツを握り、呑みやすい角度をさがしてからじわっと腰を落とした。あばらを突き破って今にも飛び出てきそうなくらい心臓が脈打っている。
「ふっ、ん……うう、ぁ、硬ってぇ……」
「は、お前がしたくせに」
「あっ、ちょ、突き上げんな、って」
「こんな細えのに、なんでケツはやーらけぇんだかな。えっろ」
「んん……っ」
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