【完結】インキュバスな彼

小波0073

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プロローグ

9.スキル「エロい」を手に入れました 3

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 ぐっ、ぐっと一定のリズムで奥に切っ先がぶち当たり、そこからわき上がる焦燥感に抵抗できなくなって来る。先ほど達した感覚よりも数段大きな波にせまられ、みのりはうろたえて声を上げた。

「あっだめっ、……っちゃう、だめっ……!」

 下腹の奥が痙攣し、勝手に呼吸が荒くなる。理性のきかない動物になった気がして首を振る。だが、影は今回ばかりはみのりの抵抗を許さなかった。獣のようなうめきを上げながら本能のままに腰を振り、中を激しく蹂躙して来る。

「いや……っ、あ──‼」

 貫かれるものに屈服し、みのりは絶頂の波に飲まれた。それと同時に体の中で再び熱い奔流がはじけ、みのりは顎をはね上げた。

     *

 その後、影は一度も離れずみのりの体を抱き続け、四度は高ぶった思いのたけをみのりの中に吐き出した。
  最後はさすがに声も出なくなったみのりの頬を両手で支え、なごりおしそうにキスをする。そして、指先で頬をなでると互いに汗ばんだ肌を離した。今まで一つにとけ合っていたお腹の中にあるものが、ゲル状の温かい液体と一緒に流れ出るように抜かれる。

 しびれた体を無理やり動かし、みのりが影を見上げると、影はいまだに離れがたい様子でみのりの肩に手を当てた。そろりとふれて、立ち上がる。
 そしてそのまま形がうすれ、つかの間の相手は姿を消した。しかしみのりは確信していた。

──多分、あいつまた来るな。

 何がいいのかよくわからないが、影はみのりが気に入ったらしい。何度も切なげにキスをされ、行為の最中もぎゅうぎゅうと抱きつぶすように抱え込まれた。いくらこういった感情の機微にニブいみのりでもさすがにわかる。

 言葉はなくても十分に愛情表現を示された。これが夢なのはわかっているから忘れてしまうかもしれないが、また夢で会ったら思い出すだろう。
 みのりは苦笑しながらもどこか温かい気分になった。

──ま、いいか。とりあえず気持ち良かったし。

 ただ、これが毎晩続くのはちょっと勘弁して欲しい。足ががくがくで力が入らない。
 ぼんやりそんなことを考えながら、次第にまぶたがとろとろと落ちて行くのを感じていた。

     *

 ピンクのカーテンのすきまからもれる光に気がついて、みのりはがばっと起き上がった。

「──あれ?」

 思わずあたりを見回して、自分の部屋であることを悟る。視線を落とし、全裸ではなくていつものパジャマを着ていることにほっとした。

「夢か……」

 ぼそっとつぶやいて頭をかく。

──ものすごい夢を見た。

 自分が欲求不満なのはどうやら間違いないだろう。しかし、こんなに自身がエロいとは全く思ってもみなかった。
 まだ覚えていた夢の内容に、みのりは深々とため息をついた。自分を襲った強姦魔を言葉たくみに言いくるめ、最後は和姦にまで持ち込んでしまった。今まで気づきもしなかった自身のスペックが恐ろしい。

 十七年間生きて来て、初めてみのりは切実に「彼氏が欲しい」と考えた。今手を打っておかないと、そのうち自分のスキルに負けて、その辺の適当な男の人を襲い出すんじゃないだろうか。
 誰か紹介してくれそうな、男友達がいそうな知り合いを半分本気で考える。勢いよく立とうとしたらがくんと前のめりになって、みのりはその場にしりもちをついた。

 まるで内腿がしびれたようで足に力が入らない。自分の前の日の行動にはまったく心当たりがないから、これはどこをどう考えてもおかしな夢の後遺症だった。
 その時、やっとみのりは濡れたズボンと下着に気がついた。顔を引きつらせ、中をのぞく。そこは感じたなごりの体液でおもらし同然のありさまだった。

 再び大きく息をつき、みのりはすべてはき替えるために何とかその場に立ち上がった。
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