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第一章 バレる前
4.
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みのりの意識が周囲の闇をはっきり理解したとたん、前にいた影がうれしそうなしぐさでみのりに体をよせて来た。
──やっぱり来たよ。
見覚えのある光景にみのりは深々と息をついた。多分そうなるだろうとはうすうす感じていたものの、今夜も夢で全裸待機の影と顔を見合わせている。
──昨日の今日だよ。絶倫だね。
内心の思いを胸に押し込み、みのりは前の影を見た。影は明らかにそわそわしながらみのりの様子をうかがっている。それは、まるで子供の頃からなつかれている大型犬に、早く自分と遊んで欲しいと訴えかけられているようだった。
「あの、ちょっと聞きたいんだけど」
彼が全身から放っている甘い期待をいったんしりぞけ、みのりは冷静に切り出した。影が小さく首をかしげる。
「あんた一体何なのよ。どうしてこんなことになったの?」
いきなり核心をついた問いに、影が明らかに動揺した。大きな体をちぢめてうろたえる。
「なんで私の所に来たの。どうやってここまで来るの?」
ずばずば切り込むみのりの質問に、影はしょんぼり肩を落とした。
昨日の逢瀬の続きを期待し、はやる思いを抱えて来たのに、相手をしてくれるはずだったみのりに冷たく質問をつきつけられ、すっかり落ち込んでしまったらしい。
一度何とか顔を上げ、黒く見えない表情で彼は何かを訴えた。だが、やはりその説明はみのりの耳には届かない。どうやら事情をかかえているようだし、相手も語る気があるらしいが、いかんせんこんな状況では意思の疎通もままならない。
みのりはあきらめて息をついた。何も言えない子供相手に意地悪をしているようで、こっちの居心地が悪くなる。
わずかに肩をすくめると、みのりは影を見上げて笑った。
「いいよ、ごめん。何か理由があるんでしょ? それなら、今はまあいいや。──昨日の続き、しよっか?」
みのりに優しく話しかけられ、影の表情が明るくなった(ように見えた)。
そろそろと近づいて来て、みのりの肩に手を乗せる。広く温かな感触が優しく肌をつつみこんだ。次第に黒い顔が近づき、昨夜のように唇が柔らかいものでおおわれる。
──やっぱり来たよ。
見覚えのある光景にみのりは深々と息をついた。多分そうなるだろうとはうすうす感じていたものの、今夜も夢で全裸待機の影と顔を見合わせている。
──昨日の今日だよ。絶倫だね。
内心の思いを胸に押し込み、みのりは前の影を見た。影は明らかにそわそわしながらみのりの様子をうかがっている。それは、まるで子供の頃からなつかれている大型犬に、早く自分と遊んで欲しいと訴えかけられているようだった。
「あの、ちょっと聞きたいんだけど」
彼が全身から放っている甘い期待をいったんしりぞけ、みのりは冷静に切り出した。影が小さく首をかしげる。
「あんた一体何なのよ。どうしてこんなことになったの?」
いきなり核心をついた問いに、影が明らかに動揺した。大きな体をちぢめてうろたえる。
「なんで私の所に来たの。どうやってここまで来るの?」
ずばずば切り込むみのりの質問に、影はしょんぼり肩を落とした。
昨日の逢瀬の続きを期待し、はやる思いを抱えて来たのに、相手をしてくれるはずだったみのりに冷たく質問をつきつけられ、すっかり落ち込んでしまったらしい。
一度何とか顔を上げ、黒く見えない表情で彼は何かを訴えた。だが、やはりその説明はみのりの耳には届かない。どうやら事情をかかえているようだし、相手も語る気があるらしいが、いかんせんこんな状況では意思の疎通もままならない。
みのりはあきらめて息をついた。何も言えない子供相手に意地悪をしているようで、こっちの居心地が悪くなる。
わずかに肩をすくめると、みのりは影を見上げて笑った。
「いいよ、ごめん。何か理由があるんでしょ? それなら、今はまあいいや。──昨日の続き、しよっか?」
みのりに優しく話しかけられ、影の表情が明るくなった(ように見えた)。
そろそろと近づいて来て、みのりの肩に手を乗せる。広く温かな感触が優しく肌をつつみこんだ。次第に黒い顔が近づき、昨夜のように唇が柔らかいものでおおわれる。
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