【完結】インキュバスな彼

小波0073

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最終章 なんとか卒業できそうです

5.

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「ほら。これ」

 みのりの内のおびえに気づかす雄基がアレに手をそえる。ほそい銀色の輪のようなものが、黒い茂みにおおわれた根元にぴったりはまり込んでいた。

「一ノ瀬に正体がバレた時、なんだかおかしな感じがしたんだ。帰って見たらもうこうなってた。……痛くはないけどはずれないんだ。立つけど、出ない。出せない。つらい」

 頬をゆがめた表情で笑う。みのりは引きつつ口を開いた。

「ゆ、雄基君、そのリング……トイレとか、学校でどうしてたの?」
「まあ、根本だし。ちょっとかくして」

 ため息をついてぼそぼそつぶやく。確かに大変だっただろうが、上級者向けプレイのようなえらく卑猥なその光景に、みのりは何だか頭痛がした。
 しかし、雄基はなれた様子でみのりのそばに近づくと、逆に見せつけるように示して来た。

「一ノ瀬、これはずせるか? ちょっとさわってみてくれないか。俺がだめでも一ノ瀬だったら……」
「えっ──むりむりむり、無理だって‼」
 
 言われた言葉の生々しさにますます腰が引けて来る。本気で嫌がるみのりの様子に、雄基が明らかにしゅんとした。

「そうか……まだ無理か」

──まだじゃなくって永遠に無理です。

 口には出さずに思っていると、気を取り直したように顔を上げた。

「じゃ、とりあえずまたそこに寝て。とにかく一度やってみよう」

 まるで新しい公式を試すかのように言われてしまい、脱力感に襲われる。何だかどうでもよくなって、みのりは再び寝転がった。
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