【完結】インキュバスな彼

小波0073

文字の大きさ
上 下
61 / 81
最終章 なんとか卒業できそうです

10.

しおりを挟む
「やった……!」

 みのりは彼と顔を見合わせ、喜びに目を輝かせた。後ろから自分を抱きしめている腕の力が強くなる。
 そっと片手で顎をつかまれ、雄基の顔が近づいた。みのりも自らのびをして口づけを受ける形になった。

──あれ?

 甘くぼやけた思考の中でみのりは思わず眉をよせた。体の芯を広げたものが再び持ち上がるのを感じる。
 射精した直後のはずなのに、それは確実な固さをおびて存在感を増していた。我慢ができなくなったらしく、雄基が融合したままのそれを奥にぐいっと押し上げる。

「……っ」

 熱いかたまりに内壁をこすられ、みのりは強い刺激にうめいた。息苦しくなって唇を離す。たまらず足に力を入れて太腿で彼の足をはさみ込んだ。

「雄基君、ゆうきく……!」

 伝える言葉が見つからなくて、うわごとのように名前を呼ぶ。ぎゅっとその腕にしがみつくと、雄基が口元をほころばせた。

「俺のこと、知ってる。俺の名前を呼んでくれる。それだけでもうめちゃくちゃうれしい」

 再び唇にキスを落としてなごりおしそうに腕が離れる。優しくみのりを枕に預け、そっと自身を引き出した。

「ちょっと待ってくれ。一度替えないと──くそ、今まではいくらでも生でやれたのに」

 物騒なことをつぶやきながらみのりに広い背を向ける。
 みのりはついついながめてしまった自分の中から抜け出たものに、血の色が見えないことに気づいた。一瞬うろたえてしまい、自身の内腿を確認する。ぬるぬるとした感触と、いまだに何かがはさまるような恥ずかしい違和感はあるものの、話に聞いた出血はどこにも見つけることができなかった。

──あれ? 私、リアルではこれが初めてだよね?

「あ、あの、なんか血が出てないけど。私ほんとに初めてだからね?」

 少々あせって雄基に告げる。彼が疑うとは思わないが、変な誤解を受けるのは嫌だ。
 ごそごそ始末をしていた彼は首だけみのりの方を向き、眉尻を上げて言葉を返した。

「そんなこと、わかってるに決まってるだろ。初めてでも出ないことはあるらしいぞ。運動してる子は特に」

 みのりは大きく目を見開いた。意外とその手の知識が豊富だった彼に驚愕する。どうやら雄基は筋金入りのムッツリスケベだったらしい。つきあう前に彼の真面目さを心配していた自分が馬鹿みたいだ。

「でもよかった。ちゃんとはずれたね」

 始末を終えて向き直った彼に、みのりは笑顔でそう告げた。雄基も満面の笑みを浮かべ、ふとやるせないような表情になる。

「──本当にありがとう」

 それだけ言って再び雄基の精悍な顔が近づいて来た。今度はさすがにみのりも照れず、雄基のキスを受け止めた。自然に太い首筋に腕を回して身をよせる。

──まあ、一回では終わらないとは思ったけど。

 頭のすみで肩をすくめて、その後は甘い雰囲気におぼれた。
しおりを挟む

処理中です...