【完結】インキュバスな彼

小波0073

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番外編1 溺愛は初生け式の後で

13.

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 ベッドから立ち上がりかけた雄基を小さな声で呼び止める。振り返った彼の顔に、みのりは照れ笑いして告げた。

「あのね。さっき、雄基君が言ってたことなんだけど……」

 もじもじしながら次の句を続けた。

「そんなに心配しないでよ。あの、もし……もし、本当に私がきれいになったんだったら、それは雄基君のおかげだからね?」

 多分思っても見なかっただろう言葉に、雄基の瞳が丸くなった。
 みのりは頬を赤らめながらもまつ毛を伏せてつぶやいた。

「私は雄基君に見て欲しいから、つめもきれいにしたんだし──、雄基君にほめられたいからきれいな格好もするんだよ。だから、そんなに心配しないで」

 それだけ彼に言った後、猛烈な照れにおそわれる。あまりの羞恥に頬を押さえると、いきなり彼に抱きつかれた。

「え、え!? 雄基君!?」
「ああ、もう‼ お前は本当に……ふだん色々ボケてるくせに、どうしてこういう時はピンポイントで──」

 力まかせに抱きしめられてあまりの強さに息がつまる。
 窒息しかけたみのりに気づき、雄基は少しだけ腕をゆるめた。陶然としたまなざしで整った顔をよせて来る。

「……頼む。もう一回」

 熱のある目でのぞき込まれ、みのりは悶絶しそうになった。

「えっ、ちょっと……えええ‼ だから私はお腹へったって──」
「さっきは何だか気が立ってて、お前のこと見てなかったから。今度はちゃんとお前を抱きたい。後でいくらでもおごってやるから……たのむ、もう一回だけ我慢しろ」

 ささやかれながら抱きよせられて弱い耳たぶを優しく噛まれる。
 みのりはぞくっと肩をちぢめた。一旦絶頂を極めた体は、もうそれだけで勝手に息が上がってしまう。

──しょうがない。ここは覚悟を決めるか。

 自身のエロさと彼の絶倫は重々承知の上なのだ。ここで逃げたら女がすたる。
 みのりは再びベッドに倒れ、彼の重みを受け止めた。雄基の甘いまなざしがいつものように落ちて来る。

 自分と彼のスペックを互いのスキルで再確認し、みのりは忙しい正月を終えた。
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