異世界転生システム

ぐら

文字の大きさ
2 / 4

転生システムの構築

しおりを挟む
『聞こえますか』
辺りに突然響いた声に、老人たちは視線をキョロキョロと彷徨わせた。
無事聞こえているのようなので早速本題に入ろう。
『私はこの世界の観測者です。今回はあなた方に選択肢を与えに来ました』

途端に、胡散臭そうな表情になる2人。
その気持ちはわからないでもないが、助ける側としてはもうちょっと抑えていただきたい。
コホン、と咳払いをし、そのまま説明を続ける。

『選択肢とは2つ。1つはこの世界でこのまま死んで行くこと。もう1つは別の世界でこと』
この世界で亡くなった場合には、輪廻によりまた同じ世界に生まれ、状況が変わらなければまた同じ事が起こる。それを回避するためにも出来れば別の世界へ行ってもらいたい。

しばらく無言が続いた。
先に話しかけてきたのは老婆のほうだった。


「えぇと、なんと呼び掛けたら良いのかしら。観測者さん?生き直す、というのはどういうことなの?]
『そのままの意味にとってもらえれば結構です。全く違う世界で、全く違う人生を送ってもらうことになります』

その場合には、今の年齢のままか、産まれ直すのか、若返るのかも選択可能となること。
そして、一つだけその世界に持っていけることを伝える。
老人たちは少しの間話し合って、また話しかけてきた。

「一つだけ持っていける、ということですが制限はあるの?生き物はダメとか、そういう・・」
話し合いの内容も聞こえてはいたが、その内容に疑問を持つ。
彼らは先ほどの子供を連れていけないか相談しているようだった。
『特に制限はありません。しかし、先ほどの子供を連れていくのには疑問があります。彼はあなた方を捨てたのでしょう。何故救いを差し伸べるのです』

今度は、老人たちが驚いた顔をした。
会話が聞こえているとは思わなかったのだろう。
「観測者様にはそう見えたかもしれない。けれど、本当はあの子こそ救ってやらねばならない子なのよ」
老婆が悲しそうな顔で語った。


老人たちの住む土地では老人だけではなく子供も間引く対象になっていること。
そして、あの子供もその対象となっており、山に捨てるのは外聞が悪いため、老人を山に捨てた後迷子になって見つからない予定になっていること。
その事実を、あの子供は知らないこと。

なんということだろうか。
確かにここ最近、子供の遭難率は上がっていた。
そんなことに気づいていなかったとは、観測者としての失態だ。

『わかりました。その子供も一緒に連れていきましょう。しかし意思を持つ者の場合には同意が必要になります。同意しなかった場合には連れていけませんがよろしいですか?』
その言葉にゆっくり頷く二人。
それを見て、観測視点を変えた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...