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後編
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ロシュは町を歩くとき、“変装”の魔道具で人間のふりをする。
「でないと、うるさいのに見咎められて鬱陶しい。人間のふりをしていても絡む奴がいるんだ」
「からむの?」
「ああ、だが、今はアトロがいるから面倒は減った。皆、“神混じり”を連れてるだけで、信用できると判断するからな」
「ぼく?」
それだけ種族は重要なんだと、ロシュは機嫌よくくつくつ笑う。
「ぼくは、ロシュのやくにたつ?」
「ああ、お前はかわいいうえに役に立つ」
褒められたアトロは、心から嬉しそうに笑う。
「ぼくは、ロシュのやくにたつ」
歩きながら身体を寄せるアトロの髪を手に取り、ロシュは目を細める。
もともとロシュはどこかひと処に落ち着いて暮らしているわけではない。町から町へと、まるで冒険者のようにふらふらと渡り歩いて生きている。
ひとつの町に留まるのは長くても十日。たとえ冬越しの時期でもそれ以上長く留まることはなく、アトロを拾ってからもそれは変わらない。
アトロのおかげでひと処に留まっても退屈とは無縁になったが、面倒は避けるに限るのだから。
そうやってアトロを連れて歩くようになって、三月が過ぎた。
閨のことをはじめ、ロシュがおもしろがって教える諸々のことを、アトロは瞬く間に覚えてしまう。おそらく、ロシュに飽きられないよう、置き去りにされないよう必死なのだろう。
そう考えると、このきれいな子供は、まるで――。
「アトロ、お前はまるで仔犬か雛鳥のようだな」
ごろりと横になったロシュの身体にぺちゃりぺちゃりと舌を這わせるアトロの頭を撫でながら、吐息混じりにロシュが笑う。
「ぼくは、ロシュのこいぬで、ひなどり?」
「ああ」
頷くロシュに嬉しそうに微笑み返して、アトロはまた舌を這わせる。教えられた指遣いでロシュの胎内を擽り、的確な場所をやんわりと擦る。
「アトロ、上手になったな」
「ほんとう? ロシュ、きもちいい?」
「ああ、入っておいで。もう、言われなくてもちゃんとできるだろう?」
アトロはたちまち陶然とした笑みを浮かべる。
「ロシュ」
昂りきった剛直をあてがい、ゆっくりと沈めながら、「ロシュ、ロシュ」と繰り返し呼ぶ。じっくり味わうように、覚えたロシュの感じる場所を擦りながら動き始める。
「ロシュ、きもちいい?」
「ああ、気持ちいいよ」
嬉しそうに息を弾ませながら、アトロは奥を突こうと腰の動きを大きくする。やや力を込めて叩きつけるように、奥へと当たるように。
襞を擦りながらゆっくりと抜けるぎりぎりまで腰を引いて、思い切り奥を突き上げる。単調ではすぐに物足りなくなってしまう。だから、緩急をつけて、リズムを変えて、ロシュが感じるようにと必死に動いて……。
顔を真っ赤にして汗を滴らせながら、アトロは懸命に耐えるように眉を寄せた。どうしても、ロシュより先に自分がよくなってしまう。
「ぼく、ぼく、もう、だめになりそう」
「アトロはいい子なんだろう?」
こくこくと頷いて必死で堪えながら腰を動かすアトロに、ロシュは艶然と微笑んだ。
ロシュの期待に応えようと、腰を押し当てて擦ろうとするアトロを見つめながら、急にぐっと中を締めつける。さらには、アトロの楔を強く扱くように腰を回す。
「う、あ、ロシュ、ロシュ……っ」
たちまちびくびくと背を震わせて、アトロが爆ぜてしまう。
「……っあ、ロシュ、ぼく」
目を潤ませて荒く息を吐くアトロを引き寄せ抱え込んだ。
指で背中をつつつと辿り、後ろから脚の間に手を差し入れて、ぬるつく体液で指先を濡らした。それから、未だ中に入ったまま震えている肉茎の根元をゆるゆると扱いてやると、アトロの腰がまた揺れ始める。
「アトロは我慢ができない子なんだね」
「ロシュ、ぼく……」
「我慢のしかたは教えただろう?」
「ぼく、ぼく……ごめんなさい。きらいにならないで」
くっくっと笑いながら、ロシュは身体を起こし、くるりとアトロを組み敷いて位置を入れ替わる。
「ならないよ。けれど、我慢の練習をしようか」
「れんしゅう?」
ロシュの指先がアトロの唇をなぞる。
これからされることへの期待感か顔を赤らめ、吐息を漏らすアトロの胎内に収められたままのものに熱が集まり、太さと固さを増す。
「うんと我慢できたあとに、素晴らしいご褒美があることも教えようね」
「ごほうび……?」
「そう。ご褒美だ」
「……あっ、あ、ロシュ……っ」
笑いながら、ロシュが腰を動かし始めた。ぐいと締め付けて絞るように襞を蠢かしながら、腰を擦り付けるようにしてアトロを悶えさせる。
尻尾の先をその後ろの窄まりに埋めて、そこにも隠された場所を擽り、アトロの知らない快感を与える。
「う、あ、ロシュ、あ、ぼく、ぼく……あああっ」
すぐに身体を震わせ、嬌声を上げて頂点に達しようというところで、ロシュはすべての動きを止める。
ぜいぜいと激しく息を吐き、涙を零しながら「やめちゃいやだよ」としがみつくアトロを宥めるように優しく頭を撫でる。
「こうやって我慢を覚えるんだ。そうすれば素晴らしいご褒美が手に入る」
アトロの息が鎮まるころを見計らい、またゆっくりとロシュは動く。
「あ、ロシュ、また、ぼく……ああっ」
息が荒くなり、胎内でびくびくと震え始めると動きを止め、落ち着いたらまた動き出す。
何度も何度も繰り返し、涙と涎を垂らしながら「やめないで」と懇願するアトロに優しくキスをする。
「そろそろ、いきたいか?」
「あ、あ、ロシュ、おねがい。ぼく、いいこにするから……あ、あっ」
ぐり、と後孔の奥を擦られ、膨らみきった剛直を強く絞りあげられて、アトロはひゅっと息を吸い込んだ。
「あ、ロシュ、ぼく、ぼく、どこかいっちゃ……あ、あああああっ!」
がくがくと身体全体を震わせ、アトロは吐き出した。
ロシュに力いっぱい抱きつき腰を震わせながら押し付けて、びゅくびゅくと相当な量の白濁をロシュの奥に放った。
「は……っ、ロシュ、ロシュ……」
あまりの快感に意識が混濁したのか、うわ言のようにロシュを呼ぶ。
「ぼく、いいこ? いいこだから、ごほうび?」
「ああ、いい子だ。お前はいい子でかわいい」
あ、あ、と息を喘がせ腰を揺らしながらしがみつくアトロの頭を、ロシュがゆっくり撫でる。
「もっと、したいよ」
うっとり微笑んでもったりと重たい乳房の間に顔を埋める頭に、笑いながらキスを落とす。
「では、もっと“我慢の練習”をしよう」
「うん」
蕩けた顔で見上げるアトロに深いキスをして、ロシュはまた動き出す。
ああ、ああと喘ぐアトロを達する直前までひたすら悶えさせ……アトロが動けなくなるまで、“我慢の練習”は続いたのだった。
* * *
「ひと処に長くいると、こういうのが出てくるからめんどうくさい」
ロシュは目の前に立つ男に肩を竦めた。
ひとつ前の町で飽きもせずさんざん“我慢の練習”をやった結果、気付いたらひと月近く滞在することになっていた。
そろそろ他の場所へ行こうと町を出た途端、これだ。
「ぼくのせい?」
不安げに瞳を揺らして外套を握り締めるアトロに、ロシュは「いいや」と首を振る。
「こいつらがしつこいだけだよ」
ロシュとアトロの前には、全身を鎧に包んだ堂々たる体躯の騎士が佇んでいた。煌びやかな鎧を覆うサーコートに縫い付けられた紋章は、天秤と剣と馬上槍……つまり、正義と騎士の神を奉ずる教会の聖印だ。
「こいつらは、まるで腐肉に集る蝿のように、わたしを目敏く見つけては追いかけてくるんだ」
角も鱗も尾も出したまま、翼を揺らしてくつくつと笑うロシュをじろりと睨んで、騎士はその手の長剣を向けた。
「その子供を解放しろ、忌まわしき半悪魔め」
「解放しろ、ねえ。どうしようかな」
ロシュはなおも笑いながら、騎士に対する盾にでもするかのように、アトロを前に立てて抱き竦める。
翼でぐるりと身体を覆い頭だけを見せて、騎士を嘲るようにアトロの耳を舐め、齧り、にやにやと目を細める。
このままアトロの生命を盾にしたら、この騎士は引き下がるだろうか。
いや、手勢を連れて出直してくるだけだろう。
なら。
「アトロ」
それだけを囁き、ロシュはアトロを思い切り騎士へと突き飛ばした。続けて腰に佩いた剣を抜き放ちつつ、騎士へと斬りかかる。
「何を!」
よろけたアトロへ手を伸ばしながら、騎士は片手に構えた剣を掲げ、ロシュの斬撃を防ぐ。
「なかなかの腕だ。さすがに斬れなかった」
「子供を盾にするとは……君は、下がって」
おもしろそうに笑うロシュに、騎士の顔は憤怒に染まった。立ち上がったアトロを庇うように背後へと押しやって、改めて剣を構える。
アトロはぼんやりと騎士とロシュを交互に見つめ、視線を彷徨わせる。
ロシュは嘲笑を浮かべたまま剣を振りかぶる。
何合か斬り結び、ふたたび騎士はロシュと剣を噛み合わせた。お互いの柄元からぎりぎりと金属同士が擦れて軋む嫌な音が立つ。
力任せのロシュを押し返そうとして、騎士の腕の力が増して……突然、騎士が驚愕に目を見開いた。
「な、に……?」
ガリッと、騎士の鎧の内側から何か固いものが……金属の擦れる音がした。すぐに身体を激痛が走り、ごほりと血を吐き出す。
「きえてね」
騎士の背に押し当てた手には、鎧の隙間を貫き通すことに特化した“小細剣”が握られていた。その、刃のない細長い刀身を伝って、ぬるりと粘つく、生臭くて生温かい液体がアトロの手を滴り落ちる。
「な……ぜ」
騎士はわずかに振り返って、それだけをようやく言葉にする。無感動に自分を見上げる、きらめく黄金の目を見返しながら。
「まだきえないの?」
アトロは小首を傾げて、騎士の身体をさらに抉るように捻りながら力いっぱいに小細剣を押し込む。
「ぼくからロシュをとるやつは、けさなきゃいけないんだよ」
アトロの言葉にくつりとロシュが笑い、力の抜けた騎士の腕から剣を弾き飛ばすと返す手で斬り裂いた。
ぐらりと彼の身体が傾き、崩れ折れる。
手元を血で真っ赤に濡らして、アトロは横たわった身体の背から突き出た剣の柄を見つめた。
「ロシュ」
不意に顔を上げて、アトロはロシュを呼ぶ。
「ごめんなさい、て、よごしちゃった」
項垂れて、手のひらから袖口までが血の赤に染まった手元へ目を落とす。
「ロシュがくれたふくも、よごしちゃった」
「……いいんだよ。血の赤に濡れたお前はきれいだから」
倒れた騎士は放って、ロシュはアトロへと踏み出した。
「おいで、アトロ」
伸ばされたロシュの手を、アトロはぎゅっと握りしめる。
「お前は本当にかわいいな」
「……ロシュ」
ぐいと引き寄せて、ロシュはかわいいかわいいとアトロの耳に繰り返す。キスをされて舌を絡められて微笑むアトロの頭を、ゆっくりと抱え込む。
「ぼく、おそわったとおり、できた?」
「ああ、できたな。いい子だ」
「ごほうび、くれる?」
「ああ、ちゃんとあげるよ」
熱のこもり始めた吐息を漏らし、とろりと蕩けた目を上げるアトロを、ロシュは笑って抱き上げた。
===== ===== =====
【登場人物】
■アトロ
性格で言えばCN(何もかもがカオス)。
“神混じり”と呼ばれる、遠い祖先に天使の血が混じった種族の少年。14歳くらい。
“魔法嵐”と呼ばれる自然災害により一族郎等財産すべて持ってかれた不幸で頭の中が退行しているため、言動が少し幼い。
■ロシュ
性格で言えばCE(約束なんか知らない悪人)。
聖職者を専門に堕落させることが趣味の女悪魔を母に持つ、“魔人”と呼ばれる種族。いわゆる半悪魔。父はどっかの教会の聖職者だろうが不明。
産み落とされっぱなしのままたくましくフリーダムに生きてきた。
今の趣味はアトロ教育(ほぼ9割エロいこと)
■騎士
性格で言えばガチLG(超騎士道な善人)
“正義と騎士の神”を奉じる通りすがりの聖騎士様。通りすがったら神敵な半悪魔がいたので成敗しようと思った。アトロが普通は善人ばかりな種族の“神混じり”だったため、油断大敵を体現ヤッター。
「でないと、うるさいのに見咎められて鬱陶しい。人間のふりをしていても絡む奴がいるんだ」
「からむの?」
「ああ、だが、今はアトロがいるから面倒は減った。皆、“神混じり”を連れてるだけで、信用できると判断するからな」
「ぼく?」
それだけ種族は重要なんだと、ロシュは機嫌よくくつくつ笑う。
「ぼくは、ロシュのやくにたつ?」
「ああ、お前はかわいいうえに役に立つ」
褒められたアトロは、心から嬉しそうに笑う。
「ぼくは、ロシュのやくにたつ」
歩きながら身体を寄せるアトロの髪を手に取り、ロシュは目を細める。
もともとロシュはどこかひと処に落ち着いて暮らしているわけではない。町から町へと、まるで冒険者のようにふらふらと渡り歩いて生きている。
ひとつの町に留まるのは長くても十日。たとえ冬越しの時期でもそれ以上長く留まることはなく、アトロを拾ってからもそれは変わらない。
アトロのおかげでひと処に留まっても退屈とは無縁になったが、面倒は避けるに限るのだから。
そうやってアトロを連れて歩くようになって、三月が過ぎた。
閨のことをはじめ、ロシュがおもしろがって教える諸々のことを、アトロは瞬く間に覚えてしまう。おそらく、ロシュに飽きられないよう、置き去りにされないよう必死なのだろう。
そう考えると、このきれいな子供は、まるで――。
「アトロ、お前はまるで仔犬か雛鳥のようだな」
ごろりと横になったロシュの身体にぺちゃりぺちゃりと舌を這わせるアトロの頭を撫でながら、吐息混じりにロシュが笑う。
「ぼくは、ロシュのこいぬで、ひなどり?」
「ああ」
頷くロシュに嬉しそうに微笑み返して、アトロはまた舌を這わせる。教えられた指遣いでロシュの胎内を擽り、的確な場所をやんわりと擦る。
「アトロ、上手になったな」
「ほんとう? ロシュ、きもちいい?」
「ああ、入っておいで。もう、言われなくてもちゃんとできるだろう?」
アトロはたちまち陶然とした笑みを浮かべる。
「ロシュ」
昂りきった剛直をあてがい、ゆっくりと沈めながら、「ロシュ、ロシュ」と繰り返し呼ぶ。じっくり味わうように、覚えたロシュの感じる場所を擦りながら動き始める。
「ロシュ、きもちいい?」
「ああ、気持ちいいよ」
嬉しそうに息を弾ませながら、アトロは奥を突こうと腰の動きを大きくする。やや力を込めて叩きつけるように、奥へと当たるように。
襞を擦りながらゆっくりと抜けるぎりぎりまで腰を引いて、思い切り奥を突き上げる。単調ではすぐに物足りなくなってしまう。だから、緩急をつけて、リズムを変えて、ロシュが感じるようにと必死に動いて……。
顔を真っ赤にして汗を滴らせながら、アトロは懸命に耐えるように眉を寄せた。どうしても、ロシュより先に自分がよくなってしまう。
「ぼく、ぼく、もう、だめになりそう」
「アトロはいい子なんだろう?」
こくこくと頷いて必死で堪えながら腰を動かすアトロに、ロシュは艶然と微笑んだ。
ロシュの期待に応えようと、腰を押し当てて擦ろうとするアトロを見つめながら、急にぐっと中を締めつける。さらには、アトロの楔を強く扱くように腰を回す。
「う、あ、ロシュ、ロシュ……っ」
たちまちびくびくと背を震わせて、アトロが爆ぜてしまう。
「……っあ、ロシュ、ぼく」
目を潤ませて荒く息を吐くアトロを引き寄せ抱え込んだ。
指で背中をつつつと辿り、後ろから脚の間に手を差し入れて、ぬるつく体液で指先を濡らした。それから、未だ中に入ったまま震えている肉茎の根元をゆるゆると扱いてやると、アトロの腰がまた揺れ始める。
「アトロは我慢ができない子なんだね」
「ロシュ、ぼく……」
「我慢のしかたは教えただろう?」
「ぼく、ぼく……ごめんなさい。きらいにならないで」
くっくっと笑いながら、ロシュは身体を起こし、くるりとアトロを組み敷いて位置を入れ替わる。
「ならないよ。けれど、我慢の練習をしようか」
「れんしゅう?」
ロシュの指先がアトロの唇をなぞる。
これからされることへの期待感か顔を赤らめ、吐息を漏らすアトロの胎内に収められたままのものに熱が集まり、太さと固さを増す。
「うんと我慢できたあとに、素晴らしいご褒美があることも教えようね」
「ごほうび……?」
「そう。ご褒美だ」
「……あっ、あ、ロシュ……っ」
笑いながら、ロシュが腰を動かし始めた。ぐいと締め付けて絞るように襞を蠢かしながら、腰を擦り付けるようにしてアトロを悶えさせる。
尻尾の先をその後ろの窄まりに埋めて、そこにも隠された場所を擽り、アトロの知らない快感を与える。
「う、あ、ロシュ、あ、ぼく、ぼく……あああっ」
すぐに身体を震わせ、嬌声を上げて頂点に達しようというところで、ロシュはすべての動きを止める。
ぜいぜいと激しく息を吐き、涙を零しながら「やめちゃいやだよ」としがみつくアトロを宥めるように優しく頭を撫でる。
「こうやって我慢を覚えるんだ。そうすれば素晴らしいご褒美が手に入る」
アトロの息が鎮まるころを見計らい、またゆっくりとロシュは動く。
「あ、ロシュ、また、ぼく……ああっ」
息が荒くなり、胎内でびくびくと震え始めると動きを止め、落ち着いたらまた動き出す。
何度も何度も繰り返し、涙と涎を垂らしながら「やめないで」と懇願するアトロに優しくキスをする。
「そろそろ、いきたいか?」
「あ、あ、ロシュ、おねがい。ぼく、いいこにするから……あ、あっ」
ぐり、と後孔の奥を擦られ、膨らみきった剛直を強く絞りあげられて、アトロはひゅっと息を吸い込んだ。
「あ、ロシュ、ぼく、ぼく、どこかいっちゃ……あ、あああああっ!」
がくがくと身体全体を震わせ、アトロは吐き出した。
ロシュに力いっぱい抱きつき腰を震わせながら押し付けて、びゅくびゅくと相当な量の白濁をロシュの奥に放った。
「は……っ、ロシュ、ロシュ……」
あまりの快感に意識が混濁したのか、うわ言のようにロシュを呼ぶ。
「ぼく、いいこ? いいこだから、ごほうび?」
「ああ、いい子だ。お前はいい子でかわいい」
あ、あ、と息を喘がせ腰を揺らしながらしがみつくアトロの頭を、ロシュがゆっくり撫でる。
「もっと、したいよ」
うっとり微笑んでもったりと重たい乳房の間に顔を埋める頭に、笑いながらキスを落とす。
「では、もっと“我慢の練習”をしよう」
「うん」
蕩けた顔で見上げるアトロに深いキスをして、ロシュはまた動き出す。
ああ、ああと喘ぐアトロを達する直前までひたすら悶えさせ……アトロが動けなくなるまで、“我慢の練習”は続いたのだった。
* * *
「ひと処に長くいると、こういうのが出てくるからめんどうくさい」
ロシュは目の前に立つ男に肩を竦めた。
ひとつ前の町で飽きもせずさんざん“我慢の練習”をやった結果、気付いたらひと月近く滞在することになっていた。
そろそろ他の場所へ行こうと町を出た途端、これだ。
「ぼくのせい?」
不安げに瞳を揺らして外套を握り締めるアトロに、ロシュは「いいや」と首を振る。
「こいつらがしつこいだけだよ」
ロシュとアトロの前には、全身を鎧に包んだ堂々たる体躯の騎士が佇んでいた。煌びやかな鎧を覆うサーコートに縫い付けられた紋章は、天秤と剣と馬上槍……つまり、正義と騎士の神を奉ずる教会の聖印だ。
「こいつらは、まるで腐肉に集る蝿のように、わたしを目敏く見つけては追いかけてくるんだ」
角も鱗も尾も出したまま、翼を揺らしてくつくつと笑うロシュをじろりと睨んで、騎士はその手の長剣を向けた。
「その子供を解放しろ、忌まわしき半悪魔め」
「解放しろ、ねえ。どうしようかな」
ロシュはなおも笑いながら、騎士に対する盾にでもするかのように、アトロを前に立てて抱き竦める。
翼でぐるりと身体を覆い頭だけを見せて、騎士を嘲るようにアトロの耳を舐め、齧り、にやにやと目を細める。
このままアトロの生命を盾にしたら、この騎士は引き下がるだろうか。
いや、手勢を連れて出直してくるだけだろう。
なら。
「アトロ」
それだけを囁き、ロシュはアトロを思い切り騎士へと突き飛ばした。続けて腰に佩いた剣を抜き放ちつつ、騎士へと斬りかかる。
「何を!」
よろけたアトロへ手を伸ばしながら、騎士は片手に構えた剣を掲げ、ロシュの斬撃を防ぐ。
「なかなかの腕だ。さすがに斬れなかった」
「子供を盾にするとは……君は、下がって」
おもしろそうに笑うロシュに、騎士の顔は憤怒に染まった。立ち上がったアトロを庇うように背後へと押しやって、改めて剣を構える。
アトロはぼんやりと騎士とロシュを交互に見つめ、視線を彷徨わせる。
ロシュは嘲笑を浮かべたまま剣を振りかぶる。
何合か斬り結び、ふたたび騎士はロシュと剣を噛み合わせた。お互いの柄元からぎりぎりと金属同士が擦れて軋む嫌な音が立つ。
力任せのロシュを押し返そうとして、騎士の腕の力が増して……突然、騎士が驚愕に目を見開いた。
「な、に……?」
ガリッと、騎士の鎧の内側から何か固いものが……金属の擦れる音がした。すぐに身体を激痛が走り、ごほりと血を吐き出す。
「きえてね」
騎士の背に押し当てた手には、鎧の隙間を貫き通すことに特化した“小細剣”が握られていた。その、刃のない細長い刀身を伝って、ぬるりと粘つく、生臭くて生温かい液体がアトロの手を滴り落ちる。
「な……ぜ」
騎士はわずかに振り返って、それだけをようやく言葉にする。無感動に自分を見上げる、きらめく黄金の目を見返しながら。
「まだきえないの?」
アトロは小首を傾げて、騎士の身体をさらに抉るように捻りながら力いっぱいに小細剣を押し込む。
「ぼくからロシュをとるやつは、けさなきゃいけないんだよ」
アトロの言葉にくつりとロシュが笑い、力の抜けた騎士の腕から剣を弾き飛ばすと返す手で斬り裂いた。
ぐらりと彼の身体が傾き、崩れ折れる。
手元を血で真っ赤に濡らして、アトロは横たわった身体の背から突き出た剣の柄を見つめた。
「ロシュ」
不意に顔を上げて、アトロはロシュを呼ぶ。
「ごめんなさい、て、よごしちゃった」
項垂れて、手のひらから袖口までが血の赤に染まった手元へ目を落とす。
「ロシュがくれたふくも、よごしちゃった」
「……いいんだよ。血の赤に濡れたお前はきれいだから」
倒れた騎士は放って、ロシュはアトロへと踏み出した。
「おいで、アトロ」
伸ばされたロシュの手を、アトロはぎゅっと握りしめる。
「お前は本当にかわいいな」
「……ロシュ」
ぐいと引き寄せて、ロシュはかわいいかわいいとアトロの耳に繰り返す。キスをされて舌を絡められて微笑むアトロの頭を、ゆっくりと抱え込む。
「ぼく、おそわったとおり、できた?」
「ああ、できたな。いい子だ」
「ごほうび、くれる?」
「ああ、ちゃんとあげるよ」
熱のこもり始めた吐息を漏らし、とろりと蕩けた目を上げるアトロを、ロシュは笑って抱き上げた。
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【登場人物】
■アトロ
性格で言えばCN(何もかもがカオス)。
“神混じり”と呼ばれる、遠い祖先に天使の血が混じった種族の少年。14歳くらい。
“魔法嵐”と呼ばれる自然災害により一族郎等財産すべて持ってかれた不幸で頭の中が退行しているため、言動が少し幼い。
■ロシュ
性格で言えばCE(約束なんか知らない悪人)。
聖職者を専門に堕落させることが趣味の女悪魔を母に持つ、“魔人”と呼ばれる種族。いわゆる半悪魔。父はどっかの教会の聖職者だろうが不明。
産み落とされっぱなしのままたくましくフリーダムに生きてきた。
今の趣味はアトロ教育(ほぼ9割エロいこと)
■騎士
性格で言えばガチLG(超騎士道な善人)
“正義と騎士の神”を奉じる通りすがりの聖騎士様。通りすがったら神敵な半悪魔がいたので成敗しようと思った。アトロが普通は善人ばかりな種族の“神混じり”だったため、油断大敵を体現ヤッター。
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