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番外編
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その日、何時もは俺の方が早く起きるのに、瑠衣さんの方が早く起きていた。
「瑠衣さん起きてたんだ」
瑠衣さんは、窓辺に腰かけて外をぼんやりと眺めていた。
手には読みかけの本。
「その本もう読まないの?」
「一区切りついたから今は良い」
少し掠れた声。
すいっとこちらに視線を寄越してそう言って、また外を眺める。横顔が光に照らされて、綺麗だ。長いまつげは、金色にひかっている。外から差し込む光で、いつもより一層浮世離れした雰囲気だ。
俺はコーヒーでも淹れようと、腰を上げる。
いつも通り、2人分入れて戻る。
片方は俺が飲んで、もう片方は瑠衣さんへ。
「瑠衣さん、ここ置いとくからね」
外に視線を向けたままの瑠衣さんからは、何のアクションもない。
気付いてるんだか気付いてないんだか。
反応が無いのはいつものこと。でも、一時放っておいてふと見てみると、カップの中身が減っていたりするのだ。
瑠衣さんにとって、このコーヒーはあっても無くてもどちらでも良いものなのだろう。これは、俺の自己満に過ぎない。
あったら飲むし、無かったとして俺に要求するわけでも自分で用意したりするわけでもない。
ぼーっと瑠衣さんを見つめる。
「…ふふーん、ふふん、ふーん…」
頭の中に浮かんだ適当なメロディが口から流れる。
「…何。その歌」
「ん?適当な歌。今思い付くままにふんふん言ってるだけだよ」
「ふふ」と笑って、またぼーっとする。
瑠衣さんはまた視線を外に戻して言う。
「お前、よくふんふん言ってないか?それなら歌でもつくって仕事にしてみれば良いのに」
そう瑠衣さんから言われる。
「いやぁ、いつでも沢山思い付いたりするわけでもないし、俺には無理かなぁ。瑠衣さんにそう言ってもらえるのは嬉しいけどね」
「歌詞とか考えないといけないし」と呟いて、また沈黙が降りる。
この、たまに訪れる緩い朝の空気が好きだ。
言葉少なで、沈黙の時間の方が多いような時間だけど、たまの瑠衣さんも起きている朝の時間。
読書が好きな瑠衣さんは、夜更かしをして読んでいることが多い。その為、こうやって早くに起きている瑠衣さんは、珍しいのだ。
俺からしたら、仕事でも読んでいるのにまだ読むのかと思わなくもないけれど、きっとそれは別腹的なことなのだろう。
外を眺めるのはもう良いのか、瑠衣さんはまた本を開いて文字を追いかけ始めた。こうなると瑠衣さんはテコでも動かない。
目を閉じると、ページを捲る音が静かな部屋に響く。
しばらくその音に耳を傾けて、朝ごはんでも作ろうと俺は腰を上げた。
名残惜しい思いを胸にしまって、ドアを開けこの部屋を後にした
「瑠衣さん起きてたんだ」
瑠衣さんは、窓辺に腰かけて外をぼんやりと眺めていた。
手には読みかけの本。
「その本もう読まないの?」
「一区切りついたから今は良い」
少し掠れた声。
すいっとこちらに視線を寄越してそう言って、また外を眺める。横顔が光に照らされて、綺麗だ。長いまつげは、金色にひかっている。外から差し込む光で、いつもより一層浮世離れした雰囲気だ。
俺はコーヒーでも淹れようと、腰を上げる。
いつも通り、2人分入れて戻る。
片方は俺が飲んで、もう片方は瑠衣さんへ。
「瑠衣さん、ここ置いとくからね」
外に視線を向けたままの瑠衣さんからは、何のアクションもない。
気付いてるんだか気付いてないんだか。
反応が無いのはいつものこと。でも、一時放っておいてふと見てみると、カップの中身が減っていたりするのだ。
瑠衣さんにとって、このコーヒーはあっても無くてもどちらでも良いものなのだろう。これは、俺の自己満に過ぎない。
あったら飲むし、無かったとして俺に要求するわけでも自分で用意したりするわけでもない。
ぼーっと瑠衣さんを見つめる。
「…ふふーん、ふふん、ふーん…」
頭の中に浮かんだ適当なメロディが口から流れる。
「…何。その歌」
「ん?適当な歌。今思い付くままにふんふん言ってるだけだよ」
「ふふ」と笑って、またぼーっとする。
瑠衣さんはまた視線を外に戻して言う。
「お前、よくふんふん言ってないか?それなら歌でもつくって仕事にしてみれば良いのに」
そう瑠衣さんから言われる。
「いやぁ、いつでも沢山思い付いたりするわけでもないし、俺には無理かなぁ。瑠衣さんにそう言ってもらえるのは嬉しいけどね」
「歌詞とか考えないといけないし」と呟いて、また沈黙が降りる。
この、たまに訪れる緩い朝の空気が好きだ。
言葉少なで、沈黙の時間の方が多いような時間だけど、たまの瑠衣さんも起きている朝の時間。
読書が好きな瑠衣さんは、夜更かしをして読んでいることが多い。その為、こうやって早くに起きている瑠衣さんは、珍しいのだ。
俺からしたら、仕事でも読んでいるのにまだ読むのかと思わなくもないけれど、きっとそれは別腹的なことなのだろう。
外を眺めるのはもう良いのか、瑠衣さんはまた本を開いて文字を追いかけ始めた。こうなると瑠衣さんはテコでも動かない。
目を閉じると、ページを捲る音が静かな部屋に響く。
しばらくその音に耳を傾けて、朝ごはんでも作ろうと俺は腰を上げた。
名残惜しい思いを胸にしまって、ドアを開けこの部屋を後にした
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