1 / 22
シェイムリルファ
しおりを挟む
魔法少女シェイムリルファは、誰が見ても、誰に言わせても、まごう事なき魔法少女だ。その外見や、立ち振る舞いはもちろんの事、絶対的、圧倒的な実力を誇るナンバーワンの魔法少女。
サラサラで艶のある髪、抜群のスタイルに整ったルックス。そしてその可憐な姿からは似つかない超高火力の魔法であっという間に敵を殲滅する戦闘スタイル。
ピンチになっている所なんか見たこともないし、聞いたこともない。もしも彼女が負けるなんて事があろうものなら、あっという間にこの世界は滅ぼされてしまうかもしれない。
流石にそれは少し言い過ぎたかもしれないけど、そう思わせる程の存在感を彼女は私達に示し続けてきた。
見た目も完璧で、話題性たっぷり。もちろん実力も申し分無し。彼女に私が憧れるのは仕方が無いし、当たり前の事なのだ。
ネットニュースでいつも見かける彼女の活躍。テレビや街中で聞こえる彼女の話題。絶対に手が届かない、まるでアニメのキャラクターみたいなシェイムリルファ。
私にも彼女みたいに才能があればなんて妄想に耽っていた事もあったけれど、現実はそう甘くは無かった。魔法の試験はいつも下から数えた方が早い成績だし、運動神経もからっきし。もっと言うと人付き合いも上手く無いし、会話をしていると笑顔も引きつってしまう。
ペアで実践形式の模擬戦を行う時なんて、まず足を引っ張る事は確実だし、連携なんて取れたものじゃない。作戦を練る時だって顔は強張り、自分の意見なんて言えた事は一度だってない。
小さい時から恋焦がれた存在は、歳を重ねるにつれて露呈していく私という人間の根幹と共に、ますます遠いものとなっていった。
だけど、きっとこれが大人になっていくという事なんだと思う。現実を知り、己を知り、身の程を知る。
憧れや希望を力に、私もいつかシェイムリルファみたいに!なんて思っている子はきっと星の数ほどいるに違いない。
だけど実際の所、彼女に代わる魔法少女はずっと現れていないし、きっとこれからも出現する事はないのだろう。そして今日もシェイムリルファは魔獣を倒す。来る日も、翌る日も。
そんな彼女の衝撃的なニュースが私の目に飛び込んで来たのは、私が魔法少女の道を閉ざされた日の事だった。
その日、教官室に呼び出された私は、魔法少女としての終わりを宣告された。現実を突きつけられた。「今のままでは魔法少女はおろか、彼女達を支える企業に勤める事も難しい」と。これには私も落ち込んだ。まさか魔法少女に関わる仕事すら出来ないとは。
この宣告は、魔法少女育成機関からの除名と言われたも同然なのだ。除名になんてなったら、一般の学生をまた一からやり直す事となる。こうなると本当に最悪で、ただでさえ人付き合いが出来ない性格の私は、年下の同級生しかいないクラスに放り込まれる事となる。
魔法少女の夢が絶たれるだけではなく、私にとって罰ゲームみたいな辛い日々が幕を開けてしまう。
この事実に落ち込む私は真っ直ぐ家に帰る気分に慣れなかった。気分転換にと川を越えた隣町にある気に入りの本屋に足を伸ばす事にした。辺りはすっかり暗くなっていたが、そんな事は気にせずにトボトボと下を向き歩き続ける。
誰もいない陸橋の真ん中に差し掛かると私は工場地帯の灯りに視線を向けた。涙のせいでぼやけて映るその景色は、私の心とは正反対にとても輝いていて、なんだか自分がとてもちっぽけな存在だと思い込まされた。
こんな所を誰かに見られたら恥ずかしいと涙を拭った瞬間、滅多に鳴らない携帯が珍しく音を上げた。
私の携帯が鳴るのは親からの連絡か、かろうじて一人だけ出来た友達、シェイムリルファのニュース位のものだ。どちらにせよ確認しなければと、携帯の画面を開いた私は生まれて初めて自分の目を疑った。
『シェイムリルファ、敗北』
「……シェイム、リルファが?」
自分の描いてた将来が閉ざされ、そして同時に憧れの存在がまさかの敗北という知らせ。何も考えられなくなってしまった私は放心状態のままその場にへたり込んでしまった。
再び携帯から通知音が響く。今度は緊急時に流れる警戒信号だった。近くに魔獣が出現したという知らせだ。だけど私はその場を動けなかった。いや、動こうとしなかった。いっその事こと、もうこのまま魔獣に殺されてもいいと思ってしまったのだ。
辺りにはサイレンが鳴り響き、緊急避難せよとの放送がけたたましく流れる。
目を瞑り空を仰いだ次の瞬間、辺りが一瞬明るくなり、大きな音と共に目の前の川に何かが落ちてきた。落ちた、というよりは墜落だろうか。
その衝撃はかなりのもので、私が座り込んでいた陸橋の上まで水柱があがる程のものだった。
相当な大きさのものが落ちてきたのか、なんにせよ、かなりの衝撃でなければここまでの水柱はあがらないだろう。
「そこ、危ないよ」
唐突に背後から聞こえた聞き馴染みのある声。聴き間違えるはずが無いその声。私は驚きながら振り返る。
そして反対側のアーチ橋を見上げると、そこには敗北したはずの憧れの魔法少女、シェイムリルファが立っていた。
サラサラで艶のある髪、抜群のスタイルに整ったルックス。そしてその可憐な姿からは似つかない超高火力の魔法であっという間に敵を殲滅する戦闘スタイル。
ピンチになっている所なんか見たこともないし、聞いたこともない。もしも彼女が負けるなんて事があろうものなら、あっという間にこの世界は滅ぼされてしまうかもしれない。
流石にそれは少し言い過ぎたかもしれないけど、そう思わせる程の存在感を彼女は私達に示し続けてきた。
見た目も完璧で、話題性たっぷり。もちろん実力も申し分無し。彼女に私が憧れるのは仕方が無いし、当たり前の事なのだ。
ネットニュースでいつも見かける彼女の活躍。テレビや街中で聞こえる彼女の話題。絶対に手が届かない、まるでアニメのキャラクターみたいなシェイムリルファ。
私にも彼女みたいに才能があればなんて妄想に耽っていた事もあったけれど、現実はそう甘くは無かった。魔法の試験はいつも下から数えた方が早い成績だし、運動神経もからっきし。もっと言うと人付き合いも上手く無いし、会話をしていると笑顔も引きつってしまう。
ペアで実践形式の模擬戦を行う時なんて、まず足を引っ張る事は確実だし、連携なんて取れたものじゃない。作戦を練る時だって顔は強張り、自分の意見なんて言えた事は一度だってない。
小さい時から恋焦がれた存在は、歳を重ねるにつれて露呈していく私という人間の根幹と共に、ますます遠いものとなっていった。
だけど、きっとこれが大人になっていくという事なんだと思う。現実を知り、己を知り、身の程を知る。
憧れや希望を力に、私もいつかシェイムリルファみたいに!なんて思っている子はきっと星の数ほどいるに違いない。
だけど実際の所、彼女に代わる魔法少女はずっと現れていないし、きっとこれからも出現する事はないのだろう。そして今日もシェイムリルファは魔獣を倒す。来る日も、翌る日も。
そんな彼女の衝撃的なニュースが私の目に飛び込んで来たのは、私が魔法少女の道を閉ざされた日の事だった。
その日、教官室に呼び出された私は、魔法少女としての終わりを宣告された。現実を突きつけられた。「今のままでは魔法少女はおろか、彼女達を支える企業に勤める事も難しい」と。これには私も落ち込んだ。まさか魔法少女に関わる仕事すら出来ないとは。
この宣告は、魔法少女育成機関からの除名と言われたも同然なのだ。除名になんてなったら、一般の学生をまた一からやり直す事となる。こうなると本当に最悪で、ただでさえ人付き合いが出来ない性格の私は、年下の同級生しかいないクラスに放り込まれる事となる。
魔法少女の夢が絶たれるだけではなく、私にとって罰ゲームみたいな辛い日々が幕を開けてしまう。
この事実に落ち込む私は真っ直ぐ家に帰る気分に慣れなかった。気分転換にと川を越えた隣町にある気に入りの本屋に足を伸ばす事にした。辺りはすっかり暗くなっていたが、そんな事は気にせずにトボトボと下を向き歩き続ける。
誰もいない陸橋の真ん中に差し掛かると私は工場地帯の灯りに視線を向けた。涙のせいでぼやけて映るその景色は、私の心とは正反対にとても輝いていて、なんだか自分がとてもちっぽけな存在だと思い込まされた。
こんな所を誰かに見られたら恥ずかしいと涙を拭った瞬間、滅多に鳴らない携帯が珍しく音を上げた。
私の携帯が鳴るのは親からの連絡か、かろうじて一人だけ出来た友達、シェイムリルファのニュース位のものだ。どちらにせよ確認しなければと、携帯の画面を開いた私は生まれて初めて自分の目を疑った。
『シェイムリルファ、敗北』
「……シェイム、リルファが?」
自分の描いてた将来が閉ざされ、そして同時に憧れの存在がまさかの敗北という知らせ。何も考えられなくなってしまった私は放心状態のままその場にへたり込んでしまった。
再び携帯から通知音が響く。今度は緊急時に流れる警戒信号だった。近くに魔獣が出現したという知らせだ。だけど私はその場を動けなかった。いや、動こうとしなかった。いっその事こと、もうこのまま魔獣に殺されてもいいと思ってしまったのだ。
辺りにはサイレンが鳴り響き、緊急避難せよとの放送がけたたましく流れる。
目を瞑り空を仰いだ次の瞬間、辺りが一瞬明るくなり、大きな音と共に目の前の川に何かが落ちてきた。落ちた、というよりは墜落だろうか。
その衝撃はかなりのもので、私が座り込んでいた陸橋の上まで水柱があがる程のものだった。
相当な大きさのものが落ちてきたのか、なんにせよ、かなりの衝撃でなければここまでの水柱はあがらないだろう。
「そこ、危ないよ」
唐突に背後から聞こえた聞き馴染みのある声。聴き間違えるはずが無いその声。私は驚きながら振り返る。
そして反対側のアーチ橋を見上げると、そこには敗北したはずの憧れの魔法少女、シェイムリルファが立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~
イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。
半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。
凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。
だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった……
同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!?
一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
王女の夢見た世界への旅路
ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。
無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。
王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。
これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。
※小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる