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第2章 魔女の森と番人
6 レフラクタ文字
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紙を見たセラスさんは、じっと文字を眺めた後にちょっと困った顔をした。困った顔のまま紙を丁寧に畳むと、僕に返してくれる。
「――これ、もしかして魔女からもらったの?」
「うん、そうだよ。魔女の名前が書いてあるらしいんだけど、僕は文字が読めないから……これが読めたら、また遊びに来ても良いって言われたんだ。それに、いつまでも『キツネ』じゃあ困るしね」
「キツネ」
「魔女は目がくりくりしていて、目尻がちょっと吊ってて、キツネみたいに可愛いでしょう?」
セラスさんは笑って「そうね」って言ってくれた。やっぱり、魔女キツネは可愛いよね!
僕は改めて魔女の名前が書かれた紙を見たけど、やっぱり何が書かれているのか全然分からない。読み書きどころか、そもそも村では文字を見ることもなかったからなあ。
ウネウネっとした文字はひと続きになっていて、どこまでがひとつの文字なのかも謎だ。なんだか段々と、お洒落なツタ模様みたいにも見えてきた。
よく母さんが魔除けの置き物に彫っていた図柄は、こういうのをいくつか組み合わせたお洒落なヤツだった気がする。
僕は期待を込めてセラスさんを見たけど「ごめんなさいね」って謝られて――何がごめんなさいなのか分からなくて、首を傾げた。
「これね、たぶん古代レフラクタ文字だと思うの――今からおよそ700年前に使用されていたものよ」
「……700年?」
「大昔には象形文字と言って、鳥や魚、草花なんかの絵が言葉の意味を表す文字になっているものがあってね。古代レフラクタ文字は、絵がもう少し砕けて今の字体に近付いたものなんだけど……今は一切使われていないから、これを読めるようにするのはちょっと大変かも。翻訳するには、まず専門書が必要だわ」
「……そんなに昔の文字なんだ」
セラスさんは小さく息を吐き出して、椅子から立ち上がった。そのまますぐ近くにある台所に立って、窯に火を入れるためか中に薪を並べて組んでいく。セラスさんの背中を眺めたあと、僕はまた魔女の名前を見た。
――魔女はまだ10歳なのに、どうして700年も昔の文字を知っているんだろう。魔女だから賢い? それとも、やっぱり魔女は不老不死だから?
だけどそれじゃあ困る。だってずっと10歳の子供だったら、本当に僕だけが大人になってしまう。そんな状態で大人の僕を愛してもらおうっていうのは――いや、確かに不老不死であって欲しいと願ったのは僕なんだけど、子供の魔女が相手じゃあさすがに変だよね?
「次にゴードンが来たら、古代レフラクタ文字の専門書を探してもらえないか聞いてみるわね? ……アレクシスちゃんはたぶん、魔女にちょっとだけ意地悪されたんだわ」
「意地悪?」
「だって、まだ普通の文字の読み書きもできないのに「古代文字を読めるようになったらまた遊びに来ても良い」だなんて……それってもう「来ないで」って言っているようなものじゃあ――」
「うーん……でも、魔女キツネは「遊びに来て良い」って言ったよ? 用がないなら来ないでとは言われたけど、でもそれって、用があったら行っても良いってことでしょう?」
「……そうよね。うん、ごめんなさい。意地悪なのは魔女じゃなくて、私だったわね」
僕はひとつも意地悪された感じがしなかったから「平気だよ」って言った。
セラスさんが笑って立ち上がると、いつの間にか窯には火がついていた。あの薪すごいぞ、きっとカラカラになるまで乾燥していて燃えやすくなっているんだ。
僕が家で窯に火を入れる時にはもっと時間がかかるし、たくさんフーッて息を吹きかけないと、上手く燃えないのに。
「ねえアレクシスちゃん、ご飯つくるのを手伝ってもらっても良いかしら?」
「――えっ、僕手伝っても良いの!? 食べるもの触っても、汚くない?」
「ええ? 汚くなんかないわよ。でも手のケガが悪くなるといけないから、ムリだけはしないでね。もし痛くなったら、ちゃんと教えて? それでご飯を食べ終わったら、これからの話をしましょう」
「これからの話? ……うん、分かったよ!」
僕は魔女の名前が書かれた紙をワンピースのポケットに入れて、セラスさんのすぐ横に立った。お料理の手伝いをするなんて初めてで、すごく楽しみだ!
「――これ、もしかして魔女からもらったの?」
「うん、そうだよ。魔女の名前が書いてあるらしいんだけど、僕は文字が読めないから……これが読めたら、また遊びに来ても良いって言われたんだ。それに、いつまでも『キツネ』じゃあ困るしね」
「キツネ」
「魔女は目がくりくりしていて、目尻がちょっと吊ってて、キツネみたいに可愛いでしょう?」
セラスさんは笑って「そうね」って言ってくれた。やっぱり、魔女キツネは可愛いよね!
僕は改めて魔女の名前が書かれた紙を見たけど、やっぱり何が書かれているのか全然分からない。読み書きどころか、そもそも村では文字を見ることもなかったからなあ。
ウネウネっとした文字はひと続きになっていて、どこまでがひとつの文字なのかも謎だ。なんだか段々と、お洒落なツタ模様みたいにも見えてきた。
よく母さんが魔除けの置き物に彫っていた図柄は、こういうのをいくつか組み合わせたお洒落なヤツだった気がする。
僕は期待を込めてセラスさんを見たけど「ごめんなさいね」って謝られて――何がごめんなさいなのか分からなくて、首を傾げた。
「これね、たぶん古代レフラクタ文字だと思うの――今からおよそ700年前に使用されていたものよ」
「……700年?」
「大昔には象形文字と言って、鳥や魚、草花なんかの絵が言葉の意味を表す文字になっているものがあってね。古代レフラクタ文字は、絵がもう少し砕けて今の字体に近付いたものなんだけど……今は一切使われていないから、これを読めるようにするのはちょっと大変かも。翻訳するには、まず専門書が必要だわ」
「……そんなに昔の文字なんだ」
セラスさんは小さく息を吐き出して、椅子から立ち上がった。そのまますぐ近くにある台所に立って、窯に火を入れるためか中に薪を並べて組んでいく。セラスさんの背中を眺めたあと、僕はまた魔女の名前を見た。
――魔女はまだ10歳なのに、どうして700年も昔の文字を知っているんだろう。魔女だから賢い? それとも、やっぱり魔女は不老不死だから?
だけどそれじゃあ困る。だってずっと10歳の子供だったら、本当に僕だけが大人になってしまう。そんな状態で大人の僕を愛してもらおうっていうのは――いや、確かに不老不死であって欲しいと願ったのは僕なんだけど、子供の魔女が相手じゃあさすがに変だよね?
「次にゴードンが来たら、古代レフラクタ文字の専門書を探してもらえないか聞いてみるわね? ……アレクシスちゃんはたぶん、魔女にちょっとだけ意地悪されたんだわ」
「意地悪?」
「だって、まだ普通の文字の読み書きもできないのに「古代文字を読めるようになったらまた遊びに来ても良い」だなんて……それってもう「来ないで」って言っているようなものじゃあ――」
「うーん……でも、魔女キツネは「遊びに来て良い」って言ったよ? 用がないなら来ないでとは言われたけど、でもそれって、用があったら行っても良いってことでしょう?」
「……そうよね。うん、ごめんなさい。意地悪なのは魔女じゃなくて、私だったわね」
僕はひとつも意地悪された感じがしなかったから「平気だよ」って言った。
セラスさんが笑って立ち上がると、いつの間にか窯には火がついていた。あの薪すごいぞ、きっとカラカラになるまで乾燥していて燃えやすくなっているんだ。
僕が家で窯に火を入れる時にはもっと時間がかかるし、たくさんフーッて息を吹きかけないと、上手く燃えないのに。
「ねえアレクシスちゃん、ご飯つくるのを手伝ってもらっても良いかしら?」
「――えっ、僕手伝っても良いの!? 食べるもの触っても、汚くない?」
「ええ? 汚くなんかないわよ。でも手のケガが悪くなるといけないから、ムリだけはしないでね。もし痛くなったら、ちゃんと教えて? それでご飯を食べ終わったら、これからの話をしましょう」
「これからの話? ……うん、分かったよ!」
僕は魔女の名前が書かれた紙をワンピースのポケットに入れて、セラスさんのすぐ横に立った。お料理の手伝いをするなんて初めてで、すごく楽しみだ!
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