セーブとロードを操る王女、婚約者の勇者が死ぬと同時にループする~クズ勇者が支援係を追放した後死ぬので全力で食い止めざまぁする~

鉄人じゅす

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 私はかりそめの玉座に座り、冷めた目でそれを見下ろした。

 生き残ったファブリス王国の国民全てを集めて……屋外にあるかりそめの玉座で一大ショーがこれから開催されるのだ。


 私の隣には信頼できる元勇者パーティの1人、ユートが側にいてくれる。
 苦しい時も支えてくれ、本当にこの1ヶ月嬉しかった。

 ただそれももう終わりだ。

 兵に引っ張られ、一人の囚人服を着た男が連れ出される。

 その男の名はカッシュ。

 そう勇者カッシュその人であった。

 勇者の責務から逃げ、各地を転々としていたが私の千里眼から逃れることができるはずもなく、草の根嗅ぎ分けとっ捕まえた。
 ユートのいない勇者など造作も無い。
 他にも勇者を慕う女共もいたが……必要ないので放置してやった。

「お久しぶりですわね。勇者様」

「あ……うぅ……」

 罪悪感があるのか私の目をみようとしない。
 元婚約者だというのに冷たい人よね。

 私は兵士に指示して勇者をギロチンにかけることにした。
 勇者は抵抗をするが容赦なく柱の間にくくりつけた。

「お、俺が悪かった! だから命は……命だけは!」

「やれやれ、困ったさんですわね。わたくし……憎いあなたですらも救おうと思っているというのに……」


【宝剣セーブ・ザ・クイーン】によるセーブはあの日以来行われていない。

 勇者が死ねば……過去は遡る。
 私と【宝剣セーブ・ザ・クイーン】がある限りそのルールが破られることはない。

 ここで勇者が死ねば……全てはありえなかった未来として消し去ることができるのだ。

「ユート、あなたには謝らないといけませんね」

「いいのです。カッシュは許されないことをしました。我が友として思う所はありますが……」


 違うのですよ、ユート。

 私が謝りたいのは……あなたの想いを踏みにじることなのです。

 魔王軍の大軍をくぐりぬけて、ボロボロになりながらも助けに来てくれた勇敢だったあなたの姿を消し去ってしまうのです。

 私のことを好きだと言ってくれたあの想いも消してしまうのです。

 あなたを守りたいと覚悟を決めてくれたあの力強い意志も消してしまうのです。

 この1ヶ月本当に楽しかった。

 あなたが側にいてくれて……本当に良かった。

「さようなら……」

 その言葉を捧ぐのは……勇者ではなく……あなたユート

 そしてギロチンによる死刑は執行された。


 時は遡る。

 ねぇ、ユート。

「……僕の瞳キラキラして綺麗と言ってくれたこと……僕は例え……何度繰り返したって忘れやしません」

 って言ってくれたじゃない。
 あの言葉は遡りの彼方へ消えてしまったはずよね?

 どうしてあなたは覚えていたの?

 もし……次に遡った時、覚えていたら……覚えていたら。








 ※X回目


「今までの冒険を記録致しました」

「ありがとうございます、王女」

 戻ってきた。

 周囲を見渡す。
 あの未来では死んでしまった人達が皆、私を笑顔で見てくれている。

 父もソフラも生きている。

 今や憎しみしかない勇者も罪を犯す前として生きている。

 そして……ユートもそこにいる。

「では俺達は先へ行きます」

「勇者様」

「はい? ごふっ!」

 私は右ストレートで思いっきり勇者の腹をぶん殴った。

 本気での一撃は無事意識を失わせることに成功する。
 さて、5日後には魔王軍がやってくるのだ。さっそく準備を進めないと……。

「アリエヴィラールいったい何を……」

 父である国王が驚いた形相で私に問いかける。

 私の回答は1つだ。

「来い!【宝剣セーブ・ザ・クイーン】」

 天に吊された宝剣は楔を解かれ、再び降りてくる。
 ふふ、未来でやったことと同じことをしただけだ。

 消え去った未来で解放された潜在能力は健在。私は【宝剣セーブ・ザ・クイーン】の力を自由自在に扱えるようになったのだ。


「私が魔王倒します。大事な者を失った世界には絶対しません」

 勇者などに任せる必要なんてない。
 私自身が立ち上がり、敵を滅ぼせばいいのだ。
 勇者はもう……必要ない。

 小間使いにしするか、棺桶に閉じ込めるなどして生かしさえすればいい。

 私は……たじろぐ勇者パーティに近づき……彼を見る。

「ねぇユート様、……いえ、ユート。私を支えてくれますか?」

 前髪で閉じた目が大きく開いたように見えた。
 ユートは一歩近づく。

「はい、喜んで!!」



 ねぇ……ユート。

 あの消え去った世界で1つだけ……1つだけ残っていることがあるんだよ。

 あなたが助けてくれた、守ってくれた時に生じたこの気持ち。

 今のあなたではないけど……きっといつか……あの時のように。

 あなたを好きになれるよね。


 だからこの恋心はいつまでも、いつまでも……心にしまい続けます。

 いつか……両想いとなり結ばれるその時まで……。


 「あなたとループを断ち切ります!」
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