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12話「便利な道具に使われるな」

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・登場人物

 園原 小雪そのはら こゆき:♀ 22歳。サンタクロース協会、日本支部で働くことになった新人。

 野薔薇 美礼のばら みれい:♀ 25歳。サンタクロース協会、日本支部で働く先輩。ナイスバディの美人さん。

 江野沢 淳太えのさわ じゅんた:♂ 29歳。サンタクロース協会、日本支部で働く先輩。バカその一。

 黒澤 義則くろさわ よしのり:♂ 26歳。サンタクロース協会、日本支部で働く先輩。バカその二。

 ジェイニー・ノリサワ:♂ 28歳。サンタクロース協会、日本支部で働く先輩。バカその三。

 菊竹 旬きくたけ しゅん:♂ 10歳。とある理由でサンタクロース協会、日本支部で働いてる子。


*度々登場する[サンタクロース!]は、場面の転換合図だと思ってください。



ーーーーー



園原「んぁぁ~~! 疲れたぁ~!」


 日本支部、江野沢たちのオフィス。パソコン作業を一通り終えた園原は、椅子に背を預け、大きく伸びをする。


ジェイニー「お疲れサマデス、園原サーン。コーヒー、用意シマしょうカ?」

園原「あっ、お願いしてもいいですか?」

ジェイニー「オ任せくだサーイ!」

園原「ありがとうございます、ジェイニーさん。いやぁ、パソコン作業って疲れますよねぇ。」

黒澤「わかるわかる。座ってるだけだから、疲れもそんなに...って思ってたこともあったけど、意外と疲れるよなぁ~。」

園原「ですよねぇ。ぶっちゃっけ、素行調査とかで歩き回ってた方が楽ですよねぇ。あ~肩凝るぅ~。」

黒澤「肩が凝った、だって? ふっ...園原、仕方ねぇなぁ...! この、優しい先輩である俺様が、お前の肩を揉みほぐしてやろう! 俺の肩揉みは、気持ちがいいと評判ーーー」

園原「遠慮しておきます。肩揉むとか言って、色んなところを揉む気でしょ? ホント、最低。黒澤さんは、なにかあればすぐそういう話に持っていくんだから...。ここは職場だということを、いい加減に自覚してください。」

黒澤「んなこと、一ミリも考えてねぇよ! 最低なのはどっちだ!? 先輩の優しさを無下むげにしやがって! つーか、肩以外にどこを揉めと!? あれか? 胸か!? だーれがお前の胸なんて揉むか! つーか、揉むほど育ってねぇだろうが! 寝言は寝てから言え!」

園原「あ"ぁ"...?」


ジェイニー(M)園原 小雪VS黒澤 義則...ファイッ!!


江野沢「おーい、お前ら。特に園原、いるかー?」


 オフィス内の床には、所々に血が飛び散っており、江野沢の目の前では園原が黒澤の襟元を掴み上げ、威圧している。コーヒーを淹れ終わったジェイニーは、モップで床の血を綺麗に拭き取っている。


園原「言っとくけどな、私だってそこそこあるからな? 野薔薇さんが異常にデカい+お前らが常日頃からデカいもんばっかりみてるから、私のものがとてもとても小さく見えてるだけだからな...? わかったか、おいゴラ...?」

黒澤「へ、へぇ...。それなら、見せてください...よ...。」

園原「おやおや、今日の黒澤はきがいいねぇ...! 早く血抜きして、鮮度を保った状態で出荷しないとねぇ...!」

黒澤「どこに...出荷する気...ですか...?」

園原「墓場。」

ジェイニー「オヤ、江野沢サーン! コンニチハ!」

江野沢「やれやれ...今日は、どっちが悪いんだ?」

園原「まごうことなき。黒澤こいつです。」

黒澤「いやいやいや、今日は誰がどう見ても園原こいつが悪いですよ!! 最初に喧嘩売ってきたのはコイツですし、今の状況見ても、100%コイツが悪いですよ!! 助けてください、江野沢さーん!!」

江野沢「と、双方は申しておりますが...ジェイニー裁判官、真実は?」

ジェイニー「ソウですネ...今回ハ、そ...ウゥ!? 黒澤サンが悪イですネ。」

江野沢「黒澤、有罪。裁判終了、解散っ!」

黒澤「待てぇぇぇ! 江野沢裁判長、ジェイニー裁判官の発言を、もう一度聞き直してください! 一度、「そ」と発言をしております! 明らかに、なにか強力な力が奴の発言を捻じ曲げました! 確認を! 今一度、確認をお願いします! リプレイ検証をお願いします!!」

江野沢「つーかお前ら、特殊なプレイをするのは構わねぇが、ちゃんと仕事してんだろうな?」

園原「誤解を招く発言は、撤回してもらえませんか? あと、ちゃんと一通り仕事は終わってますから、安心してください。」

江野沢「そうか、それなら続けてよし。」

黒澤「よくないですよ! 止めてください!」

ジェイニー「園原サンは、仕事ガ早くてトテモ助かりマース!」

江野沢「うんうん。一年目とは思えない早さだよな。パパッと覚えてささっとやってくれるから、俺たちも助かるよ。」

黒澤「手を出すのも、早いですけど...ごばふぅ!?」

園原「ったく...余計な仕事を増やさないでください。ところで江野沢さん、さっき「特に園原はいるか」とか言ってましたけど...私に何か用ですか?」

江野沢「黒澤をボコりながらも、ちゃんと聞いてたのか。すげーな、お前。えっとな、菊ーーー」

園原「それはむしろ、ご褒美です。何をすればよろしいんですか?」


黒澤(M)仕事も、手を出すのも、菊竹に関することの察しも、マッハでこなす園原 小雪であった。



園原[サンタクロース!]



 日本支部、研究室。白衣を着た菊竹が、自席でカタカタとパソコンをいじっている。


園原「菊竹せんぱーいっ!」

菊竹「あっ、園原さん! 江野沢さんたちも! 来てくださったんですね!」

園原「はいっ! 菊竹先輩の頼みならば、なんでも聞きますよ!」

菊竹「そう言っていただけて、とても嬉しいです! ありがとうございます!」

園原「それで、今日は何をすればよろしいんですか!?」

菊竹「今日はですね...あっ、それよりも、園原さんは、まだ僕がどんなお仕事をしているのかって知りませんよね? まずは、そこからお話しますね!」

園原「はい、お願いします!」

江野沢(いや、知ってんだろ。)

黒澤(絶対知ってんだろ。)

ジェイニー(確実ニ、知ってマスヨ。)

菊竹「僕は「サンタクロース協会日本支部、道具研究員」として、働いています! 道具研究員とは、サンタクロースのお仕事を手助けする道具を開発している人たちです!」

園原「へぇ~知らなかったなぁ~!」

菊竹「そして僕は、道具のアイデアや開発、その他いっぱいのお仕事をしています! 周りの人たちに負けないくらい、頑張って働いているんですよ!」

江野沢「子どもって、大人じゃ思い付かないことを簡単に思いつくからな~!」

黒澤「子どもの発想力は、すごいですよね~!」

ジェイニー「ホント、女子高生ハ素晴らシイですヨネ~!」

江野沢「いや、なんでそうなる!?」

黒澤「お前は、バカか!?」

菊竹「そういえば、園原さんはまだ道具を使ったことないんですよね! 今から、一通りお見せしますね!」

園原「はい、お願いします!」

菊竹「まずは、これです! ジャジャジャ~ンッ!」


 菊竹は、懐からニコニコ笑顔で拳銃を取り出す。


園原「菊竹先輩ぃぃぃぃ!?」

菊竹「え? どうしました、園原さん?」

園原「どうしました?じゃないですよ!? アナタ、懐からなんてもの取り出してるんですか!? 子どもが手にしていいものじゃないですよ、それ!? どっからどうみても、明らかに拳銃ですよね!? 道具ちゃ道具ですけども! 我が社は、子どもに拳銃チャカ作らせる闇会社なんですか!?」

江野沢「落ち着けよ、園原。」

園原「落ち着けるわけないでしょうが!! ヤバいですよ、この絵面は! 警察に見つかったら、ここ潰れますよ!?」

黒澤「大丈夫なヤツだから、ちゃんと説明を聞け。」

菊竹「これは「記憶、なくなーる君」です! これを記憶を無くしたい相手に向けて発砲すると...相手の記憶が、綺麗さっぱりなくなるんです!」

園原「説明聞いたら、ヤバさ倍増!! 菊竹先輩! それ、記憶だけじゃなくて相手もろとも消してますって!! 逃げましょう! 今すぐに、この闇社会から抜け出しましょう! さぁ、お姉さんの手を握って、離さないでね!!」

ジェイニー「園原サーン、これハ安心安全ノ道具ですカラ、落ち着いてクダサーイ。」

園原「お前が持つと、さらにヤバさ増すから!! 今すぐ手放せ、ジェイニー・ノリサワ!」

江野沢「落ち着けって言ってんだろ? これ、見た目は拳銃だけども、中身はそんな大したヤツじゃないから。トリガー引いても、弾は出ないから。」

園原「ほ、本当ですか...?」

黒澤「これな、撃つとこんな感じで...。」


 黒澤が「記憶、なくなーる君」のトリガーを引く。銃口から、ビョーンッと可愛らしい音を発しながら、拳を丸めた手が飛び出してくる。


園原「あっ、思ってた数倍可愛らしい。」

ジェイニー「コレを相手ニ当てるト、指定シタ時間ノ記憶が、綺麗さっぱり消エルんデース!」

園原「えぇ...本当ですか...?」

江野沢「園原、ここのグリップの部分に、タイマーみたいなのがあるだろ?」

園原「え? あっ、はい。」

江野沢「これを...例えば、一分に設定するだろ? そうすると、当てた相手の一分前の記憶が消えるんだ。」

園原「へぇー凄いですねー。」

江野沢「お前、信じてないだろ? まぁ、こういうのは、実践した方がわかりやすいか。おーい、黒澤~。」

黒澤「おい、ちっぱい。今日も貧相な乳してんーーー」


 園原は、丸めた右拳を黒澤の頬へと容赦なく振り抜く。


黒澤「なぶふぁぁぁぁぁ!?!?」

ジェイニー「黒澤サーン!? 大丈夫デスか!? シッカリしてくだサーイ!」

黒澤「うぅ...あ、あれ...? 俺は、なんで研究室にいるんだ...?」

園原「わぁ~本当だ! すご~いっ!」

江野沢「園原、お前は道具を使わずとも、記憶を消せるみたいだな。」

菊竹「このように、相手の記憶を綺麗さっぱりと消してしまうので、気をつけて使ってくださいね。」

園原「はーい、わかりました!」

江野沢「あの、道具使ったみたいな雰囲気出さないで? 使ってないからね? あいつ、自分の拳を振り抜いただけだからね?」

園原「菊竹先輩、他にはどんな道具があるんですか?」

菊竹「他にはですね...あっ、コレも凄い道具ですよ! ジャジャ~ンッ!「頭につけたら、飛べ~る君」です! これを頭につけると、プロペラ部分がものすごい勢いで回って、空を飛ぶことができるんです!」

園原「......。」

菊竹「あれ? 園原さん、どうしました?」

園原「菊竹先輩...それは、どっからどうみてもタケーーー」

江野沢「園原...「頭につけたら、飛べ~る君」だ。」

園原「いや、誰がどうみてもタケーーー」

黒澤「「頭につけたら、飛べ~る君」だ。」

園原「いやいやいや、360度どっからどうみてもーーー」

ジェイニー「「頭につけたら、飛べ~る君」デスヨ。」


菊竹(M)ちなみに、頭ではなくズボンにくっつけて空を飛ぶと、ズボンが脱げて大変なことになるので、絶対に頭につけてくださいね!



青い猫型ロボット様[サンタクロース!]



菊竹「本日は、新しく開発した道具を、園原さんたちに試してもらいたいんです。」

園原「ほうほう、なるほど! わかりました!」

菊竹「えっと...園原さんには、この道具を使っていただきたいです! ジャジャ~ンッ!「魔法少女に大変身! マジカル♡ステッキ・ワンダーくん」です!」

園原「あの、先ほどから思っていたんですが...道具の名前はどなたがつけているのですか?」

黒澤「もちろん、俺だ。」

園原「クソみたいなネーミングセンスしてんな、おい? 今すぐ人生やり直してこい。」

菊竹「黒澤さん、嘘吐かないでください! さっきの道具含めて、僕が名付け親ですよ!」

園原「いや~もうホント、素晴らしいお名前で、園原 小雪は感動しております! ホント、菊竹先輩はすごいお方です!」

黒澤「裁判長、裁判官、これは誰がどう見てもヤツが悪いですよね?」

江野沢「あぁ...これは流石に、そ...うがぁ!? 黒澤だな。」

ジェイニー「これハ間違いなく、そ...オウゥ!? 黒澤サンですね。」

黒澤「あんたたち、さっきから園原の何にやられてるんですか!?」

菊竹「この真ん中のハートの部分を押すと、魔法少女に変身できるんです!」

園原「魔法少女に...つまり、服もフリフリの可愛らしいものになるのでしょうか...?」

菊竹「はい! もちろんです!」

園原「あの...菊竹先輩、私もう22歳なので...流石に、この歳でフリフリの可愛らしい衣装を着るのには、少し抵抗があると言いますか...。」

菊竹「そ、そうですか...。では、江野沢さんたちの誰かに使ってもらいますね。」

江野沢「え!? 俺たちも使っていいの!?」

菊竹「はい。男女どちらでも、使用可能なので。」

黒澤「そ、それは、つまり...!?」

ジェイニー「男の子モ、プリキュアに...!?」

江野沢「胸の高鳴りが、おさまらないわ...!」


園原(M)私の網膜を守るために、プライドを投げ捨て、魔法少女に変身することを決意しました。



江野沢[サンッ!]

黒澤[タクッ!]

ジェイニー[ロースッ!]



園原「くっ...! まさかこの歳で、魔法少女になるとは...! うぅ...私は、こんなことをするためにサンタになったわけでは...!」

江野沢「園原、そんなに嫌なら俺たちがやるから。」

黒澤「後輩に無理はさせねぇよ。」

ジェイニー「私たちガ、世界ノ平和ヲ守りマース。」

園原「誰も見たかねぇんだよ、お前らのフリフリ衣装なんて。はぁ...で、では、いきます...!」


 園原は、ステッキの真ん中のハートの部分をポチッと押す。


園原「あれ? 菊竹先輩、何にも起きませんよ?」

菊竹「えっとですね、しっかりちゃんと変身セリフを言わないと変身出来ないんです。」

園原「めちゃくちゃ凝った作りしてますね、これ!?」

菊竹「変身セリフはですね...「マジカル☆マジカル☆ピュアハート♡へーんしんっ!」です!」

園原「...ん?」

菊竹「「マジカル☆マジカル☆ピュアハート♡へーんしんっ!」です!」

園原「すみません、もう一度。」

菊竹「「マジカル☆マジカル☆ピュアハート♡へーんしんっ!」です!」

園原「ごめんなさい、菊竹先輩... 「マジカル☆マジカル☆ピュアハート♡へーんしんっ!」の部分が聞き取りづらかったので、もう一度お願いできますか?」

江野沢「ばっちり聞こえてんじゃねぇか。」

黒澤「「毛細血管がいっぱい詰まってるところ、ワ~キ~!」よりも聞き取りやすいだろうが。」

ジェイニー「トイウカ、子ども相手ニなにシテルんですカ?」


園原(M)親切に、ゆっくりと大きな声で言ってくれました。とてもとても、可愛いかったです。



吉田さん[ドリルせんのか~~いっ!!]



園原「ん"ん"っ! えー、それでは...園原 小雪22歳、魔法少女に変身させていただきます。」

江野沢「なんでだろうな? 全くドキドキしねぇ。」

黒澤「可愛げが全くねぇ。胸が高鳴りもしねぇ。」

ジェイニー「むしろ、ハラハラドキドキしますネ。」

園原「てめぇら、ステッキで殴り殺すぞ? 黙って見てろ。」

バカサワ「はぁ~い。」

園原「それでは...いきますっ!「マジカル☆マジカル☆ピュアハート♡へーんしんっ!」」

江野沢「躊躇することなく、スッと...さすが園原だ。仕事が早い。」

黒澤「よくもまぁ、あのセリフを恥ずかしげもなくサラッと言えますね。」

ジェイニー「素晴ラシイです、園原サーン!」


 ステッキを高々と掲げ、スイッチを押す。ステッキから光が弾け、園原の顔以外の身体を優しく包み込む。


園原「おぉ!? なに、これ!?」

菊竹「今、ステッキから出た光が、園原さんの衣服を、ナノレベルまで分解して、ステッキ内に一時的に保管する準備をしているんです! そして、ステッキ内にあらかじめ分解していた衣服を取り出して、再構築して園原さんに着せるんです!」

園原「ほ、ほぉ...? とりあえず、アナタたちの技術は素晴らしいということはわかりました!」

菊竹「あっ、言い忘れてたんですが...園原さんの衣服と魔法少女の衣服を交換する数秒間は、すっぽんぽんの裸になりますので、注意してくださいね!」

園原「菊竹せんぱぁぁぁぁい!?!? それ、めちゃくちゃ大事なことですけど!? なんで今言ったんですか!? どうして変身前に...んぎゃぁぁぁぁ!? 私の衣服を剥ぎ取った光が、ステッキに吸い込まれていくぅぅぅ!? やめて、戻ってきてぇぇぇ!!」


 園原を包み込んでいた光が、少しずつステッキに吸い込まれていく。徐々に園原の肌が露出していく。


園原「ちょっ、待って待って!! マジで待って!? タオル! タオルを持ってきてください! 今すぐ! 急いで! 早く!!」

菊竹「園原さん、変身中はタオル使えませんよ。タオルも着ているものと判定されて、ナノレベルまで分解されます。」

園原「つまり、私はどうあがいても裸になると!? うぎゃぁぁぁぁ!? ダメダメ、マジでダメだってばぁぁぁ!! おい、てめぇら! 見んなよ! マジで見んなよ!? フリじゃねぇからな! こっち向いたら、目玉潰してやるからーーー」

黒澤「おっ? 菊竹、これはどういう道具なんだ?」

江野沢「うわぁ~これ、懐かしいなぁ~! こいつにはお世話になったよなぁ~!」

ジェイニー「使い心地ヨクテ、最高デシタよネ~!」


菊竹(M)皆さん、園原さんに言われる前に視線を外していました。チームワーク、凄いですっ!



園原[サンタクロース!]



 変身を終え、ピンクのフリフリ衣装を見に纏った園原の前には、ピクピクと小さく震えながら血を流し倒れているバカサワたちの姿が。


園原「おい、てめぇら...どうして誰一人こっち見てねぇんだ...? 私の裸にゃ、これっぽっちも興味ねぇってか...? あぁん...?」

江野沢「見んなって言ったの...お前じゃん...。」

黒澤「理不尽すぎる...。」

ジェイニー「酷すぎマース...。」

菊竹「園原さん、着心地はどうですか!?」

園原「えっと...少々恥ずかしいですが、着心地は悪くないです。」

菊竹「その衣装を着ている状態だと、身体能力は通常の倍にもなるんですよ!」

園原「へぇ~そうなんですか! だから、さっきすごく身体が軽く感じたんだ~!」

江野沢「パンチの威力が高かったのは...そういうことか...。」

黒澤「さすが...魔法少女...。」

ジェイニー「トテモ強い...デース...。」

園原「菊竹先輩、他にはなにか特殊なことはできないんですか?」

菊竹「できますよ! えっとですね、ハートのボタンの下に、赤いボタンがあるんですけど。」

園原「はいはい、あります。」

菊竹「それを押すと、約700度の熱がステッキの先から発射されます!」

園原(魔法少女とは思えぬ火力...!)

菊竹「名付けて「マジカル☆ファイヤー」です!」

園原(名前と温度設定が全然合ってない! でも、可愛いから許しちゃう!)

菊竹「700度と、とても熱いので...くれぐれも人に向けては発射しないでくださいね。」

園原「はーい、わかりました!」

江野沢「あの、園原さん...先ほどから、ステッキの先がこちらに向いているのですが...?」

黒澤「菊竹先輩のお話、ちゃんと聞いてました...?」

ジェイニー「アブナイので、早く下ろしてくだサーイ...。」

園原「あの、バカサワさん。」

江野沢「なんだ?」

黒澤「どうした?」

ジェイニー「ナンデスカ?」

園原「700度って...熱いんですかね?」

江野沢「熱いに決まってんだろうが! 試さなくても熱いってわかるわ!!」

黒澤「火傷じゃすまねぇよ! 火傷も可愛いレベルだよ! 溶けるわ、多分!」

ジェイニー「ドロドロのベタベタになりますヨ! タブン!!」

園原「ほぉ、そうかそうか。では、ドロドロベタベタのスライムになりたくなければ...わかっているな、お主ら?」

江野沢「ははぁ! 言われなくても、わかっておりますとも!」

黒澤「とてもお似合いですよ、その衣装! アイドルがいると思っちゃいました!」

ジェイニー「可愛いスギテ、トキメキまーす!」

園原「まぁ、悪い気はせん。もっと続けたまえ。ちなみに、菊竹先輩。」

菊竹「はい、なんですか?」

園原「これ、いつになったら元に戻るんですか?」

菊竹「えっとですね、ステッキの中の衣服をいい感じに整えるまで、最低でも30分はかかりますので、30分間は変身を解かないでください。無理に変身を解いてしまえば、着ていた服が再構築できなくなります。」

園原「なるほど、わかりました。」

菊竹「あと、変身時間は長くても一時間なので、一時間経てば自動で元に戻ります。」

園原「つまり、一時間後に私はまた裸になると? それまでには、更衣室に急がねば...。」

菊竹「えっと、衣装の再構築も上手く出来たので、あとは変身解除の時のデータだけですね...。園原さん、ご協力ありがとうございます!」

園原「あれ? これだけでいいんですか? 火炎放射はやらなくてもいいんですか?」

菊竹「はい。火炎放射は、もう実験済みですので、大丈夫ですよ。」

園原「そうですか...。」

江野沢「いや、なんで残念がってんだよ?」

黒澤「というか、火炎放射って言っちゃってるよ? マジカル☆ファイヤーじゃないの?」

ジェイニー「私たちノ命ハ、燃エズにすんだノデ、ヨシとシマショウよ。」

園原「菊竹先輩、他に何か試して欲しい道具はあるんですか?」

菊竹「はい。他にもありますので、もうしばらくお付き合いください。」

江野沢「試したいのって、お前の机に置いてあるやつか?」

菊竹「はい、そうです。」

黒澤「つーことは、この謎のオレンジ色の液体も、誰かが飲まなきゃいけないのか...。」

園原「え? うわっ、ホントだ...なんですか、それ...?」

菊竹「あっ、それはもう試してもらっているので、飲まなくて大丈夫ですよ!」

黒澤「ほっ、よかったよかった。」

ジェイニー「安心安全デース。」

江野沢「ちなみに、これは飲むとどうなるんだ?」

菊竹「これは「本能を呼びさまーすくん」です! これを飲めば、人間の本能を呼び起こして、身体能力を簡単に引き上げられるんです!」

江野沢「へぇ~本能を呼び起こすかぁ~!」

黒澤「面白そうだなぁ~!」

ジェイニー「ワクワクしますネ~!」

園原「お前ら、絶対に飲むなよ? わかってんだろうな?」

江野沢「わかってるわかってる。俺たちが飲むわけないだろ~?」

黒澤「こういうのは、ちょっとエッチな女の子に飲ませて...かぁ~! たまんねぇなぁ~!」

ジェイニー「胸ノ高鳴りガ、止まりマセーン!」

園原「はーい、一列に並んでくださーい! 今から、熱消毒をしまーす!」

黒澤「お、落ち着けよ、園原...冗談だって...。」

ジェイニー「言ってミタだけデスヨ...! ハッハッハ~...!」

江野沢「ちなみに、もう試してるって言ってたが...誰が飲んだんだ、これ?」

菊竹「野薔薇さんです。」

園原「...え?」

江野沢「お?」

黒澤「ん?」

ジェイニー「オォ?」

菊竹「どうしたんですか、皆さん?」

園原「菊竹先輩...だ、誰が飲んだんですか...?」

菊竹「野薔薇さんです。」

江野沢「も、もう一度...。」

菊竹「野薔薇さんです。」

黒澤「ごめん、もう一回...。」

菊竹「野薔薇さんです。」

ジェイニー「最後ニ、もう一回...。」

菊竹「野薔薇さんです。」

園原「き、聞き間違いではないみたいですよ...。」

江野沢「こ、こ、これ飲んだら、理性ぶっ飛んで...とか、ないよな...?」

黒澤「ま、まさかまさか! 江野沢さん、同人誌の読みすぎですよ~!」

ジェイニー「そんなコトが、現実デ起こるワケガーーー」

菊竹「あっ、野薔薇さん! お疲れ様です!」

バカサワ・園原「うひぃ!?」


 四人は、恐る恐る背後へと振り返る。両腕をだらんと下げた野薔薇が、ジッと四人を見つめている。


園原「の、の、野薔薇さん...こ、こ、こんにちは...!」

江野沢「げ、元気ですか~...?」

野薔薇「......。」

黒澤「お、おいおいおい、挨拶くらいしようぜ~...!」

ジェイニー「親しき仲ニモ、礼儀アリですヨ~...!」

野薔薇「......。」

園原「あ、あのぉ...これは、もしかしてなんですけど...。」

江野沢「も、もしかしなくても、これは確実にーーー」

野薔薇「かわいい。」

園原「え?」

野薔薇「小雪ちゃん...とっても、かわいい...。その服...とっても、可愛いわ...。」

野薔薇「可愛い...すごくすごく、可愛い...! あぁ...その服を、めちゃくちゃに剥いで...小雪ちゃんと...小雪ちゃんと...!!」

野薔薇「小雪ちゃんと、めちゃくちゃにセックスがじだぁぁぁぁぁぁいぃぃぃ!!」

園原「んぎゃぁぁぁぁぁ!?!?」


江野沢(M)果たして魔法少女は、悪に心を奪われた同僚を救うことはできるのか!?

黒澤(M)次回「魔法少女、園原 小雪22歳」第13話「エロの化身、現る!」

ジェイニー(M)次モ、マジカル☆ファイヤーで、熱消毒しちゃウゾ☆







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